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高校生用の分厚い英文法参考書のはなし (6)

7月
2008
24
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英文法参考書をさらっと見ていくシリーズの第6弾。

そもそもこの種の文法参考書が書店から消えつつあるような印象を受けます。中高の英語教育がコミュニケーション重視となっているというのが理由の一つに挙げられるのかもしれません。コミュニケーション重視については今は取り上げませんが,学校教育で文法に真正面から向かわないのであれば,なおさらこの種の文法書が必要になるはずです。コミュニケーション重視型教育では文法項目順に進んでいくわけではないので,「なぜ」という疑問には答えずにはなしが進んでいきがちだからです。

 

★ マスター英文法 (全面改訂版 中原道喜 著 聖文新社 2008)

これは以前はメジャーだった本。著者はあの開成高校教諭。受験英語に関して多くの著書があり,業界では有名な方です。

2008年に改訂版が出たのですが,本屋で立ち見した限りでは旧版とあまり変わっている気がしなくて,実は買っていません。買ってもいない本をコメントしたくないのですが,一応参考まで。以下はあくまでも旧版についてです。

内容的には非常にまとまった大学受験生向きの英文法書です。

レイアウトや叙述のしかたは,すこし(かなり)古めかしい感じがしますが,そういうのが好みの読者もいると思います。見映えを変えればまだまだ使えると思うのですが,出版社ももう少し考えればいいのに。

 

  • 読者対象 英語が平均レベルの高校生~大学生(英語専門以外)
  • 使用目的  大学入試レベルの英文法知識の確認
  • 長所  ほかの本の著者が大学教授であるのに対し,この著者は高校教師であることから,受験を念頭に置く度合いは高い。
  • 短所 レイアウト的に見て,大きな本から必要な情報だけを読み取ることに慣れていない人にとっては,とっつきにくいかも。

 

★ depth 英語総合 (町田健,高沢節子,豊島克己 著 河合出版 2005)

河合塾で出している問題集系はたくさんありますが,英語参考書はこれだけ。著者代表の町田先生は最近ではよくテレビにも露出している言語学が専門の名古屋大教授です。(昔はモー娘時代のなっちファンだと書いていましたが,最近は時東あみファンを公言しています。どうでもいい情報だが。)この先生は以前河合塾に出講していて,他の二人の著者も河合の先生です。

全体的にはイラスト満載で,余白が多くて(他の本は余白がかなり少ないです),内容の図解もあり,ここで取り上げた本の中ではいちばん取っつきやすいでしょう。逆に言えば辞書的に情報を詰め込んではおらず,大学受験に必要ないものは徹底的に省いてあるという印象です。これくらいなら通読は不可能ではありませんが,時間効率を考えればやはり辞書的使い方でよいと思います。

 

  • 読者対象 高校生1年生~大学受験生
  • 使用目的  大学入試レベルの英文法に不安を感じる人のレファレンス
  • 長所  読みやすい。説明が簡潔。意外な切り口や詳しいところも。
  • 短所  ポイントが絞り込んであるので,探しても知りたいことが見つからないこともあり得る。

 

ほかにも,参考書はあるのですが,とりあえずこんなところで。

次回は,とりあげた8冊の横断的比較の予定。

 

 

 

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by rickie | Posted in 高校生向け | No Comments »

『より良い外国語学習法を求めて』『「達人」の英語学習法』

7月
2008
22
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著者:竹内理 |出版社:松柏社|2003年|2500円|英語教師・研究者・一般向け|独断的おすすめ度 ★★☆☆

著者:竹内理 |出版社:草思社|2007年|1500円|高校生・一般向け|独断的おすすめ度 ★★★☆

 

同じ著者による同じテーマの2冊の本。実は,この2冊は読者対象が違うだけで,中身はほぼ同じといってもいい。

「より良い」が,データをもとにした研究発表の形式であり,「達人」はその研究成果を一般向けにかいつまんで述べたものです。従って,調査方法やデータを含めて知りたいのであれば「より良い」を,結果だけ知りたければ「達人」を読めばいいわけです。

調査目的は,「英語ができるようになった人に共通する学習法はあるのか」ということ。調査対象は3種類で,第二言語習得論の先行研究を踏まえて,

  • 英語ができる大学生とできない大学生
  • おそらく筆者周辺の,英語の達人たち
  • 世間に出回っている「私はいかにして英語の達人となりし乎」といった類の本

を扱っています。「より良い」の第9章で,これらのデータと既存の理論を踏まえた結論を述べていますが,この部分を敷衍ふえんして,英語学習者へのアドバイスの形で1冊の本に独立させたのが「達人」です。

調査方法も,そこから導き出されている「学習法」のアドバイスも,ハッタリのない信頼できるものです。たとえば,「学習法」の議論はそもそも万人共通の学習法が存在するのかどうかから出発すべきなのですが,筆者はその前提を踏まえた上で,調査対象から共通項が引き出せるという順当な手順を踏んで議論を組み立てています。その上で,学習者全般だけでなく,初級段階(中~高レベル)に必要なことと,中上級で必要なことを分けていたりと,あたりまえなんだけど実際には雑に扱われることが多い手順をしっかり押さえて考察を引きだしています。

リスニングは初級レベルでは正確さを重視すべきだが,上級では形式的正確さよりも内容重視に移行する傾向が英語の達人には多いパターンであるという記述があります。細かいことをいえば,「達人にはこのパターンが多い」というデータから「学習者はみなこの方法を採用すべき」という結論を引き出すには少し飛躍があるわけですし,私の経験的(データに基づかない)問題意識から言えば,中上級者も正確さ重視の方法を適宜組み込まないと進歩が止まるという感想を持っています。しかし,日本人の学習成功者対象のデータにもとづいたこの種の議論は今までありそうで,案外なかったような気がします。

英語学習法本には,自分の経験だけが最良の学習法であるかのような語り口の本がよく見られますし,そこに売らんがための宣伝文句が加わるとほとんどウソに近いものも存在しますが,この本は安心して全レベルの学習者にお勧めできるでしょう。もちろんその分,「楽にペラペラになれる」「いつのまにかあなたも達人に」といった魔法のような学習法を探している人にはがっかりするようなことしか出ていません。逆にしっかり腰を据えて勉強しようと思っている人,特に英語初心者にはぜひ読んで欲しい本だと言えます。

 

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by rickie | Posted in 一般の語学学習, 勉強法の勉強, 英語の周辺 | No Comments »

高校生用の分厚い英文法参考書のはなし (5)

7月
2008
16
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英文法参考書をさらっと見ていくシリーズの第5弾。

毎回書いているのだけれど,基礎的なことはおおざっぱであれ理解しているという人向けであり,そういう人が学習過程で文法に関する疑問を持った場合に辞書的に使う文法書の紹介をする目的で書かれています。「基礎的なこと」を「おおざっぱ」に理解するとはここでは,品詞の働きや簡単な文法用語(不定詞の形容詞的用法とか副詞節とか)がわかっているくらいのレベルを想定しています。そのへんがまだ危なっかしい人は,基礎事項をひと月くらいの短期間仕上げてしまう必要があります。

目的が,疑問を解決するために辞書的に使うことだとすると,これらの本には当然高校レベルの説明をはみ出す部分が出てきます。出てこないと疑問に答えられないからです。逆に言えば,暗記用の本ではなく,調べて納得するためのものです。少なくとも「ふーん,よくわかんないけど,この点は学者も問題としてとらえていることなんだな」くらいの理解が得られれば収穫かもしれません。私たちがいだく疑問には,そこを掘り下げていくとすごい物が出てくる場合と,ガラクタしか出てこない場合があります。「よくわかんないけど,ここを掘り下げると結構いいものがでてくるかも」という発見も重要な発見なわけです。

 

★ 英文法総覧 (改訂版 安井稔 著 開拓社 1996)

文法についての学問は,1957年にチョムスキー(Noam Chomsky)という学者が登場して「生成文法」という考え方を提起する以前と以後とでは大きくちがっています。それ以前の文法は「伝統文法」と総称的に呼ばれていますが,「生成文法」は,外国語を学習するという目的のために作られたわけではないので,われわれが英語を学ぶときに使いやすい文法は「伝統文法」の方ですし,高校生用の(あるいは学習用の)文法参考書は「伝統文法」をベースに書かれています。

この本の著者である安井稔先生は「生成文法」を含む現代の言語学の大家のひとりに数えられる人です。ビッグ・ネームが執筆した高校生・一般向け文法参考書なわけです。といっても,安井先生はゴリゴリの生成文法家ではなく,語用論や機能文法や意味論といった領域も広くカバーしている方ですし,第一,この本はそれほど専門的に書かれているわけではありませんから,基礎的なことがわかっていれば,高校生でも読めるでしょう。難しい本という評判もあるようですが,それほどでもないと思います。

  • 読者対象 英語が得意~大学生・一般・英語教師レベル
  • 使用目的  大学入試レベルの英文法の各事項を理解している人が,さらに興味・疑問を持ったときのレファレンス
  • 長所  「参考」の部分は入試レベルを超えているものを含む。英語を体系として理解したい人にはいいでしょう。
  • 短所 例文が多いわりに,案外解説部分が少ない(特に基本部分)用に思います。「ロイヤル」のようなリストになっている部分が少なく,そうした情報を求めている人には「ロイヤル」の方がハズレがすくないかな。

全体としては第3回で取り上げた「英文法解説」と似た位置にありますね。

 

★ 英文法詳解 (杉山忠一 著 学習研究社 1998)

これまでの本はまあメジャーと言っていい本でしたが,ここからややマイナー(「やや」ですよ,やや)なものに入ります。ヤクルトファンとかAB型とか,世の中には「マイナーなものが好きっ!」っていうひともいるわけで,ちゃんと紹介しておきましょう。

この本は有名ではないのですが(というか有名ではないがゆえに点が甘くなるのかもしれないけど),なかなかいいんじゃないの,という本ですね。二色刷,レイアウトも地味で気づきにくいが読みやすさに工夫がある。内容的に見ても,基礎的なこともはしょっていないが,意外に突っ込んだ記述もある。文法オタクっぽい人にはもの足りないかもしれませんが,ふつうの高校生でも何とか使えるでしょう。言語学的理論よりも,筆者の経験的な知恵で書いたという趣きの本です。

 

  • 読者対象 英語が平均レベルの高校生~大学生(英語専門以外)
  • 使用目的  大学入試レベルの英文法にやや不安な人の総合的レファレンス
  • 長所  読みやすい。(読みやすさは,情報量が多いこのタイプの本ではばかにならない)「訳し方」の説明などは特徴的。
  • 短所 リスト的なものはあまり見当たらない。プロっぽい人にとってはおもしろみが少ないかも。新しい知見の組み込みも少なそう。

意外なダークホースです。人とはちがうものを求めるヤクルトファンの高校生必見。

 

 

 

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by rickie | Posted in 高校生向け | No Comments »

『16歳からの東大冒険講座 [3] 文学/脳と心/数理』

7月
2008
9
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東京大学教養学部編 |出版社:培風館|2005年|1300円|高校生・一般向け|214p.|独断的おすすめ度 ★★☆☆

東京大学が高校生向けに行っている講座を書籍化したシリーズの第3弾。全三巻完結。

第2弾について書いたのはずいぶん前のような気がする。

第1冊め 「記号と文化/生命」はこちら

第2冊め 「情報/歴史と未来」はこちら

 

学問紹介や高校生のための大学教授による授業は最近ではだいぶ増えてきましたが,あまりうまくいっていないケースもあるようです。このシリーズは今でも続いていて,成功している方でしょう。

 

1部 文学

● 常識を破る ― ハムレットが太っていた  河合祥一郎

専門はイギリス演劇。

「ハムレット」にはハムレットに関して,He’s fat. という記述がある。だけどこのfatについては「汗かき」の意味だと解釈されてきた。「悩めるハムレット」という先入観がハムレット= fat というあたりまえの解釈を阻んできた。

そういうところから,文学や文化がいかに先入観から自由でないか,という方向へ話は進みます。

 

 21世紀に読み直す宮沢賢治 小森陽一

専門は近代日本文学。

宮沢賢治の『狼森と笊森,盗森』という童話を解読していきます。人間と自然との関わり,制度と権力の発生という視点での解釈です。文学の解釈としてはよくあるパターンの1つですが,高校生には強引に見えたり新鮮に感じるかもしれません。

 

 翻訳の不思議,文学のたくらみ エリス俊子

専門は日本近代の詩。

芭蕉の「古池やかはづ飛び込む水の音」の英訳18種類や,俳句に触発されたイマジズム運動,川端康成,村上春樹の英訳を紹介しながら,翻訳について語ります。翻訳家志望の高校生は時々いるのですが,これは翻訳の技術的なはなしではありません。文化の衝突としての翻訳論です。

 

 イタリア!イタリア!イタリア! 村松真理子

専門はイタリア文学,地域研究。

イタリアのあれこれを語っていて,ちょっとまとまりがないのですが,こういう語り口の方が高校生には興味が持てるかな。

 

2部 脳と心

 大学で心理学を学ぶ ― 心理学との出会い,心理学のおもしろさ ― 丹野義彦

専門は臨床心理。

心理学はいま高校生には人気が高い学問なのですが,心理学についての誤解も多く,ちょっと心配ではあります。心理学はおおざっぱに言うと,科学であることを強く志向する「認知心理学」系と,より文系的というか(こちらだって「科学」と自称するでしょうが)われわれがふつう「こころ」ということばで理解しているものを扱おうとしている「臨床心理」系の2つに分けられます(ホントはさらにこまかく分かれます)。前者は「悲しみ」とか「悩み」とか「不安」といったとらえどころのない「こころ」ではなく,人間の情処理機構としての「こころ」を扱います。そして学問的にはこっちの方が今の心理学のメジャーとなっています。大学選びの際はよくよくその辺の情報を集めておいてください。

この筆者は「臨床心理」系なのでとっつきやすいかもしれません。

 

 言語と脳から見た健康と病 酒井邦嘉

専門は言語脳科学。

こちらは認知科学系というか,脳科学のはなし。言語能力生得説(ヒトは言語を使う能力を遺伝的に持っているという説)は,今や言語学(生成文法派)のセントラル・ドグマになっていて,それを脳科学的に解明したいらしいです。わたしは,この説には???ですので,ふーんという感じですけど。

 

3部 数理

 21世紀の物理学 ― 超弦理論とはどんなものか ― 米谷民明

専門は理論物理学(素粒子論)。

「物理学って何」というすごく大きなはなしから,超弦理論というすごく高級(というかわけわかんない)理論まで,おおざっぱに語っています。物理の知識不要。

 

 知覚の複雑系理論 池上高志

専門は複雑系科学。

理系よりの認知科学。難しいですが,なんかすごいことを言っているな,おもしろそうだな,という気にはなれます。「自分がくすぐってもくすぐったくないのに,他人にくすぐられるとくすぐったいのはなぜか」なんていう問題意識はすごいと思いませんか。

 

 微積分の力 薩摩順吉

専門は応用数理。

差分から微積を考える,というはなしかな。数式は出てきますけど,それほど難しくはありません。話題のでかさから考えると,ちょっと物足りない感はありますが,時間がないんでしょうね。

 

 

このシリーズは幅広い興味がないと通読しにくいでしょう。図書館で見つけて,ぱらぱらめくって,おもしろそうなところを読む,というのがいいでしょう。

 

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by rickie | Posted in いろんな本, 学問を知る | No Comments »

高校生用の分厚い英文法参考書のはなし (4)

7月
2008
8
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英文法参考書をさらっと見ていく企画の続き。

しつこく繰り返しますが,文法上の疑問を抱いたときに辞書的に使うというのが高校生が゜この種の本を使うほとんど唯一の使い方です。通読する必要はありません。

 

徹底例解 ロイヤル英文法 (改訂新版 綿貫陽,宮川幸久,須貝猛敏 著 旺文社 2000)

この本の特徴はひとことで言えば,標準的・網羅的・手堅いということでしょうか(「ひとこと」じゃない?)。

標準的とは,あまり個性的ではないということ。「目次と索引を使って辞書的に使う」という使い方を想定しているわけですから,あまり個性的な記述でない方が便利です。最新の理論を取り入れている場合,しばしばその理論についてのおおざっぱであれ全体像の理解が必要になり,そうするとAということが知りたいのに,その説明を理解するためにA’ を調べなければならず,A’ を理解するのには...となってしまいます。

辞書的に使うには,ある程度網羅的でないと意味がありません。こまかすぎると目的の情報が見つからない危険性もあるわけですが,今はおおざっぱな文法のしくみについては理解している前提で話しています(理解していない場合はこのシリーズの(1),(2)へ)。本文中には,その説明項目と同パターンの語句のリスト(たとえば,I don’t think の型を取る動詞とか,It is ~ that で使えるが It is ~ to V では使えない形容詞とか)がボックスの中に挙げられていて,これが非常に便利です。

  • 読者対象 英語力が平均レベルの高校生~大学生レベル
  • 使用目的  文法について基礎的なことはわかっている人が,さらにすすんで調べたいと思った時のレファレンス
  • 長所 こまかい事項まで,網羅されている。リストやQ&Aのコーナーはかなり詳しく,興味を持てる人にはおもしろいだろう。
  • 短所 英語が苦手な人には知りたいポイントにたどり着くのがむずかしいかも。伝統文法の枠内で書かれている,というのはこのテの本では短所にはならないでしょう。

わたしとしては,中レベル以上の生徒には,このへんがいちばんオススメですね。売れている方なので今後も改訂が期待できます。もっとも,これ以上の改訂の余地はあまり残っていそうにないですが。

なお,別売の準拠問題集もあります。私は未見ですが。

 

表現のための実践ロイヤル英文法 (綿貫陽,マーク・ピーターセン 著 旺文社 2006)

文法書としては最新・最後発の本で,なかなかおもしろい記述が詰まっています。

「表現のための」というのがこの本の特徴でもあり,上の「徹底例解」との違い(ビミョーですが)ということになります。とくに英文を読むという受信型学習の際のレファレンスとしては,「徹底例解」の方が緻密・網羅的かもしれませんが,「表現のための」の方はポイントをいくらか絞って(いるような気がする),見方を変えて発信の視点で書かれています。といって,「読む」のには向かないというわけではなく,項目としては十分な記述がされていますから,高校生には十分でしょう。

「英文法解説」(江川)の特徴が『解説』,「徹底例解」の特徴が『リスト』と『Q&A』だとすれば,「表現のための」の特徴は『Helpful Hints』(全部で128ある)でしょう。こまかいポイントというよりも,あまり気づきにくいポイントが挙げられていますから,高校生にも有益です。おまけとしてついている「英作文のための暗記用例文300」は使えそうです(詳しく見てないけど)。

  • 読者対象 英語力が平均レベルの高校生~大学生・一般レベル
  • 使用目的  文法上の疑問点,とくに「どう書いたらいいのか」という疑問の解決に便利
  • 長所 例文や表現が新しめのものです。生徒にはこれで十分ですが,教師にも発見がいっぱいあります。
  • 短所 「読む」時には新しい英語だけを読むとは限らないのですから,その点の不満はありえますが,一冊にすべてを望むのもムリな話です。

捨てがたい本ですね。「第1回国際理解促進図書優秀賞」というのを受賞したようです。

「英語教育のコミュニケーション重視」には異論もあり得ますが,その方向性で書かれている文法参考書はこれくらいでしょう。今後のスタンダードになるかもしれません。

 

 

 

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by rickie | Posted in 高校生向け | No Comments »

高校生用の分厚い英文法参考書のはなし (3)

7月
2008
3
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現在手に入る主な英文法書を取り上げていきます。

通読用の本ではなく,あくまでもぶ厚い,文法辞書的な使い方をするための参考書で,かつ高校生にも使えるものを見ていくことにします。

総合英語 Forest (第5版 石黒昭博 監修 桐原書店 2006)

英文法の参考書としては,売れている本のようです。帯には「もっともうれている・大人気190万部突破」とあります。本屋でも平積みになっているところが多いですね。売れているだけあって,装丁もカラフルで親しみやすく,読みやすいでしょう。ただし,極論すれば,「わかりやすい」「読みやすい」本にするために切り捨てたものもあるということです。情報量は類書と比べるとかなり抑えてあります。中学レベルもクリアできていない人にはこれでも難しいかもしれませんが,ふつうは高1からでも使えると思います。使い方はこのシリーズの 1, 2 を参考にしてください。

厚さも薄め(といっても600ページ程度)で,通読できない量ではないですが,やはり通読は捨てて検索用に使う方が現実的です。繰り返しますが,例文をしっかり読みましょう。また,この本に限らず,分厚い参考書の中にある練習問題は無視してかまいません。

  • 読者対象 英語が苦手レベル~まあまあレベル
  • 使用目的 大学入試レベルの英文法の各事項の確認
  • 長所 全体的に説明がすっきりしている,ところどころイラストもあり生徒には読みやすい。
  • 短所 あまり細かい事項は記載されていない(よく言えば,必要なポイントに絞られている)。よって,疑問がすべて(大半)が解決できるわけではない。

現実的に考えて,ここに載っているポイントを完全に押さえていれば,最難関大を含めて対応できます。もともと細かいすべてのポイントまで1冊の本に載せることは不可能ですし,そっちに力を入れるより語彙を増やし読解力を上げる方がだいじです。

逆に,文法にかなり自信がある生徒にとっては,「それ,知ってるんですけど」というレベル以上のものは期待できません。

 

英文法解説 (改訂3版 江川泰一郎 著 金子書房 1991)

生徒よりも英語教師に人気があった参考書です。教師もハイレベルの生徒には推薦していました(今でもしているかも)。「人気があった」「推薦していた」と過去形を使いましたが,内容が古いというわけではありません。

英文法の参考書で,あまり気づかれていないけどホントはすごく大事なことに「挙げられている例文の量や質の問題」があるのですが,この本の特徴は例文がなかなか格調高い文が結構出てくるという点です。江藤淳という評論家は,高校の時の英文法の授業で先生が板書する例文が著名な作家の文章からの引用になっていて感動した,という内容のことを書いていましたが,そこまでハイレベルではないにせよ,そういうことに感動できるかどうかが,この本を評価できるかどうかの分かれ目になります。残念ながら最近は,あまりそういうことが評価されない時代のようで,それが過去形を使った理由です。

  • 読者対象 英語が得意~大学生・英語教師レベル
  • 使用目的 大学入試レベルの英文法の各事項を理解している人が,さらに興味・疑問を持ったときのレファレンス
  • 長所 解説の特に小さな字で書かれた部分は入試レベルを超えた内容。英語・英文法に専門的に 取り組んでみたい人には,入門書的に使えるかも。
  • 短所 これに限らず詳しい本は,しょっちゅう出てくるポイントと,たまーーーーにしか出てこないポイントが同じような比重で扱われるので,「しょっちゅう出てくるポイント」がよくわかっていない人には向かない。

詳しいですが,最新の言語学的知見が取り入れられているわけではありません。改訂3版が出てからもう17年程度たっていますし,筆者江川泰一郎氏は残念ながら物故されています。いい本ですが,今後はどうなるのか気になるところです。

〈つづく〉

 

 

 

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by rickie | Posted in 高校生向け | No Comments »

高校生用の分厚い英文法参考書のはなし (2)

6月
2008
25
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本題の「英文法参考書」に触れる前に,文法系の力をどのようにつけていけばいいのかの道筋を少し考えておきたいと思います。文法の勉強の全体の方向性を考えて,その中で参考書をどう使うかを位置づけよう,というわけです。そしてその方向性は,自分の目標と今の実力によって,いくつかのパターンに分かれます。

 

☆ とりあえず大学入試だけを視野に

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この場合,文法が好きだろうと(そんな人いない,と思われがちですが,案外いるんですね)嫌いだろうと,志望校で出題されるレベルまでは伸ばさなければなりません。ただし上位校には文法プロパーの問題は出題されない大学もあるので注意。まあ,その大学一校しか受けないという人は少なく,何校も受ければ文法重視大学もあるでしょうから,最低センターレベルまでの力はどの大学を受けるにせよ必要でしょう(実力のある人ほど失敗例が多いので注意しておきますが,センターをなめないように)。

● 高校・塾・予備校で文法の体系的授業が行われていて,順調に力がつきつつある場合

この場合は授業(+予習・復習)を中心に勉強を進めていけば十分です。不明なところを参考書で補っていきます。11月頃から過去問などで実践的な力を養ってください。

● 文法授業についていけない,文法授業がなくて自分でも実力不足だと感じる場合

いちど基礎的な文法について概説した本を短期間で仕上げておくといいですね。「短期間」でいっきにというところが大事。文法のおおまかな全体像をつかんでおきたいのです。目標は,品詞の働き・品詞の区別・文型あたりの基礎知識をつけることです。

この目的の文法書は少し前までは,

NEW・山口英文法講義の実況中継―高2~大学入試 (上)

NEW・山口英文法講義の実況中継(下) [改訂新版]

基礎英文法問題精講

あたりだったのですが,最近はこれでも難しいと感じる生徒が増えてきました。そういう人は,題名に「はじめから」とか「基礎から」という文句がついている本の方がいいかもしれません。このサイトにも基礎概念だけを解説したページを近日中に載せます。

 

☆ 入試と関係なく,英語力全体を伸ばしたい場合

この場合でも,文法は基礎レベル(大学入試で言えばセンターレベル,英検で言えば2級レベル)までは押さえておく必要があります。その以上のことは,文法として勉強するのではなく,本を読んだり,リスニングをしながら疑問が湧いたときに文法書で調べるという勉強法がオススメです。そのときに使う「文法書」は,受験生の場合と同様に考えていいでしょう。

 

「分厚い参考書」のはなしに入る前に終わってしまった。以下次号(って,つまり来週)。

(つづく)


 

 

 

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『人間は動物である。ただし・・・』 爆笑問題のニッポンの教養

6月
2008
20
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著者: 山岸俊男・爆笑問題(太田光・田中裕二)|出版社:講談社|2007年|760円|高校生・一般向け|独断的おすすめ度 ★★★☆

社会心理学の紹介。

爆笑問題は研究室に到着するや,実験台にされてしまいます。この最初のカマシのせいか,太田の牙が抜かれて今回は少しおとなしめです。そのせいか,このシリーズの中では,学者と爆問とのかけあいがなかなかうまくかみ合っている方だと思います。山岸氏の提示のしかた,プレゼンテーションもうまくて,もちろん入門の入門の入門にしかなっていないとしても,読んでみると社会心理学への興味が湧いてくるのではないでしょうか。

心理学は昔の行動主義心理学の時代からよく実験をしていて,それで「マウスで実験して人間心理の何がわかるんだ」というある意味紋切り型の批判を浴びてきました。大昔わたしも図書館で「心理学概論」なる本を読み始めたものの,そんな話ばかりですぐに放り出してしまいました。でも時代は変わって,行動主義はすたれ,実験もちょっとばかりおもしろくなってきたようです。見知らぬ人同士のグループを対象にした実験で,協調して行動すれば全員に利益が少しあるが,自分だけ出し抜こうとすれば大きな利益になりうるという実験で,この実験を日本人とアメリカ人に行ってみると,日本人はおおかたの予想を裏切って,必ずしも集団の利益をアメリカ人より重視しているわけではないが,相互に監視しあう状況だとアメリカ人よりも集団志向になる,なんていうおもしろい結果が出ているそうです。(番組での実験では太田の一人勝ち。)

心理学というのは高校生には(一般にも)誤解されがちで,人間の心のひだの隅々まで知っているのが心理学者だと思っている人が多いのですが,心理学はふつう我々が使っているような意味のよろこびとか悲しみといった「こころ」を研究しているわけではないといった方がいいでしょう。そして「心理学」は個人を対象にしているのに対し,「社会心理学」は社会と個人の相互作用の中での心理を研究対象にしている学問です。

タイトルの「人間は動物である。ただし・・・」は,山岸氏の発想の基本形を簡略に言ったものなのでしょう。

山岸: だから問題の立てかたとしては二とおり考えられます。

「人間と動物とは違うのだ。なぜならば人間はむちゃくちゃ頭がいいからだ。どうしてそんなに頭がいいんだろう。」

「人間だって動物だ。それなのに人間は社会を作って暮らしている。どうしてそんなことができるんだろう。」

田中: ああ,センセイは後者なんだ。

山岸: そう。これが経済学者だったら,人間はむちゃくちゃ頭がいいっていう前提で理論を作る。むちゃくちゃ頭がよくて,自分の利益だけを考えて行動をする。

田中: しかし,さっきやったような実験ではそれを裏切るような結果が出る。

太田: さあ,どう説明する,経済学!

どうやら,社会心理学はゲーム理論を横糸にして,生物学-社会心理学-経済学をつないでいくという構想を抱いているようです。人文・社会科学系の中ではどちらかというとマイナーな社会心理学ですが,けっこう大きな野望を秘めているのですね。

 

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by rickie | Posted in 学問を知る | No Comments »

高校生用の分厚い英文法参考書のはなし (1)

6月
2008
18
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大学受験に限った話ではありませんが,英文法を勉強しようと思ったら,最初からひとつひとつの項目に深入りするのではなく,(1) まずおおざっぱに英語のしくみ(品詞・句・節・構造・語順)を理解し,(2) 次いで各項目をおおざっぱに理解して,(3) その上で長文を読んだり,英作文をしながら,その中で出会った文法事項をきちんと理解していく,という順番でやっていくのがいいと思います。

他の教科であれば「微積はまずまずなんだけど,ベクトルはダメ」とか,「西洋史は終わったけど,中国史は手をつけてない」とかいうこともありえます。でも英語の場合,「仮定法は完璧だけど,関係詞は全然ダメ」なんて勉強の仕方だと,あまり使い物になりません。だって仮定法しか出てこない長文なんて存在しませんから。英語は文法全体がわかんないと,文法の細かい項目も理解しにくい,というようにできています。

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上の(1)はすでに理解している人が多いでしょう。あいにくと,理解していない人向けの参考書はあまり見あたりません(そのうちこのサイトにアップする予定)。(2) の段階が文法の勉強の中心になりますから,学校・塾・予備校などの授業や多くの問題集・参考書などで扱われています。でも「読む」・「書く」を置き去りにして,文法だけを深く勉強しようとしてもうまくいきません。文法はあくまでも「読む」・「書く」ための道具です。読解や英作文のチカラがついてこないと,文法だけしかできないというのは,得点的な意味でも,広い語学力という観点からもかなり問題の多い勉強法です。

逆に,「読む」「書く」に重点を置きながら,そこで出てきた文法ポイントを押さえていくという方法が,中レベル以上の人におすすめです。今回のテーマ,「高校生向け文法参考書」は,そうした「読む」「書く」の勉強をしているときに出てきた文法上の疑問を解決するための重要なリソースです。

ここで「高校生向け(の分厚い)英文法参考書」と言っているのは,ふつう500ページ以上ある,「こんなの読めねえよ」と思ってしまう本です(読む必要はないことはすぐに述べます)。具体的に現在出版されているものを挙げると,

  • ロイヤル英文法―徹底例解 綿貫 陽 (旺文社)
  • マスター英文法 中原 道喜 (聖文新社)
  • 英文法解説 江川泰一郎 (金子書房)
  • 英文法総覧  安井 稔 (開拓社)

などが,代表的なものです。後の回でこれらを含めそれぞれ取り上げていきます。

まず注意したいのは,この種の参考書は1ページめから順に読んでいくものではない,読んでいってはいけないということです。少なくとも時間に余裕のない受験生は,「読む」というより「引く」というイメージで使ってください。

きまじめな人の中には,順に読んでやろうとチャレンジする人もいると思いますが,99%以上最初の方で挫折するでしょうし,最初の項目だけ詳しくなっても意味がありません。

使い方は,さきほど言った,長文や英作で文法上疑問に思った点,教師の解説でよくわからなかったところ,いつも間違えるポイント,この用語って何?と思った言葉,苦手意識を持っている項目,そうしたところに関連したページだけを読むことです。読んで理解することが主眼です。暗記する必要はありません。全部通読する必要もまったくありません。これらは辞書・事典と同じものだと思えばいいんです。

辞書・事典と同じように使うためには,「引き方」を知っておきましょう。知っている人はいいのですが,最近は知らない人も多いようなので確認しておきます。「本」を「引く」方法は二つあって,一つは「目次」,もう一つは「索引さくいん」を使う方法です。

目次は,調べたいことが文法体系の中でどのような位置にあるのかがわかっている場合に使います。「仮定法過去完了」について調べたいときは,目次の「仮定法」の章の中の第X項に載っているのを見つけて,そのページを探します。

索引には,項目があいうえお順・アルファベット順に並べられています。通常,索引は「項目別索引」と「英語語句索引」の2種類に分かれていて,さらに「日本語表現索引」のようなものがついていることもあります。「項目別索引」はあいうえお順,「英語語句索引」はアルファベット順です。「仮定法過去完了」なら「項目別索引」の中の「か」の欄を探します。また,come と go の違いを調べたいような場合,目次の「動詞」の章に載っていそうですがその中のどの辺にあるのかは目次では見つけにくいので,こういう場合「英語語句索引」の come または go を探せばいいわけです。

参考書がこういうふうに使えるようになると,自分の勉強スタイルを作る上ですごく楽になり,選択肢も広がります。ぜひおすすめします。

 

(つづく)

 

 

 

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by rickie | Posted in 高校生向け | No Comments »

『タイムマシンは宇宙の扉を開く』 爆笑問題のニッポンの教養

6月
2008
12
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著者: 佐藤勝彦・爆笑問題(太田光・田中裕二)|出版社:講談社|2007年|760円|高校生・一般向け|独断的おすすめ度 ★★☆☆

むかし,もっと限定すると中学二年頃まで,ぼくは理系の少年でした。

● 小学校4年 解剖に目覚める

近所に小川が流れ,その向こう一帯は田んぼだったので,カエルには事欠かず,捕まえてくると家の玄関前のコンクリートに叩きつけて失神させ(麻酔の代わり),親に買ってもらった顕微鏡+解剖セット(メスとピンセットだけだけど)で解剖というか解体するのであった。何度もやっていると飽きるもので,開腹した時点でそのまま御遺体を放置したこともある。今であれば,こういう少年は危険人物として警察か児童相談所に通報されるのかも。

● 同じく小4 理科の実験に目覚める

塩酸と水酸化ナトリウムを薬屋で親に買ってきてもらい(劇薬だから子供は買えない),その二つを中和させて喜んでいた。何ができるかお分かりですよね。塩化ナトリウム,ふつう食塩と呼んでいる物質です。

● 小学校5年 天体観測に目覚める

「展望台」と近所で呼ばれていた,アパート群のかたわらの児童公園にある高さ2メートルくらいの楼の上に屈折式天体望遠鏡を持ち込んで,友人2人といっしょに明け方まで観測をした。何を観測したかは覚えていない。覚えているのは初めての徹夜に興奮して夜明けに3人でジェンカを踊ったことである。「れっつ・きす・ほほ寄せて...」

● 小学校6年 東京に戻ったので自然と断絶した

● 中学校1年 相対性理論に目覚める

講談社ブルーバックスの相対論関係の数式が出てこない本を読み漁った。わかっていたのがどうかは,定かではない。なにせ,発表当時だって,わかった学者は世界に10人しかおらず,そのうち9人は誤解していたとか何とか言われる理論ですから(数字には異説あり)。男の子はこのテの話にロマンを感じたりするというだけです。

さて,爆笑問題太田くんもこういう男子の一人だったようで,この本でも解説しようとする宇宙物理学者・佐藤勝彦氏を押さえて田中くんにウンチクをたれています。「すみません,田中はバカですから,先生を前にしてアレですが,私に説明させてください。アインシュタインは,・・・。それをハイゼンベルクっていう人が,・・・」ってなかんじ。

佐藤氏の関心の一端は,冒頭の次の部分で語られています。

田中 できるんですか,タイムマシンって。

佐藤: ええ。タイムマシンは「理論物理の範囲では,できるように見える」んですよ。だから困っているんですけどね。

太田 困っているねえ。

(中略)

佐藤 そうなんですよ。相対論という,今の物理学の基本になっている法則が,タイムマシンができていいようになっているんですよね。だから,考えるんです。でも一所懸命,何とかタイムマシンをできなくしたいのが本音なんですけどね。

相対論はタイムマシンの可能性を排除しない→でも,タイムマシンが可能ならさまざまな論理的パラドクスが生じる→よってタイムマシンの不可能性を証明したい→その糸口は量子論にあるのでは? というのが佐藤氏のテーマのようです。

後半はいつものことながら,太田くんが文系にありがちな神秘主義・不可知論の方向へ暴走し始め,対するに佐藤氏がナイーブな(失礼)科学主義・決定論の線で対抗します。方程式に宇宙のはじまりの時点の初期値を代入すれば,宇宙の歴史すべてが算出できるというやつです。

もちろんこのシリーズはうわっつらをなめるだけですから,あまり議論は進展しません。中1の時のぼくでも「そんなの知ってるよ」といいたくなるレベルですから,むしろあまりこういうことに関心がなかった人にお勧めなのかもしれません。

 

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by rickie | Posted in 学問を知る | No Comments »

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