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高校生用の分厚い英文法参考書のはなし (10)

9 月
2008
4

今回はちょっと専門的なものを取り上げようかと思いましたが,あまり難しくてもそもそも載っていない場合があるので,「そこそこむずかしい」くらいにしておきます。

というわけで今回は,S + V + O + O (第4文型の受動態)のはなし。

 

第4文型 (S+V+O+O) の受動態

まずは復習。すっごい基本からでごめんなさい。

第4文型とは,ふつう「S が O に O をVする」という意味になる文型です。O は,名詞のなかま(名詞,代名詞など)であり,前に前置詞はつきません(つくと違う文型になります)。たとえば,次の二つは意味は基本的に同じですが(微妙に重点の置き方がちがうけど),文型は異なっています。

  • I gave him a book yesterday. (第4文型)
  • I gave a book to him yesterday. (第3文型)

そして,第4文型の場合,ひとつめの「~に」に当たる部分の目的語を間接目的語( I.O. = indirect object),ふたつめの「~を」に当たる部分の目的語を直接目的語( D.O. = direct object)といいます。

今度は,受け身のはなし。

受け身「~される,~られる」の文は次のように作られます。

つまり,受動態にするということは

  • 能動文の O が受動文の S に。 (O→ S)
  • 能動文の V が受動文では be + p.p.(過去分詞)に。 (V→ be p.p.)
  • 能動文の S は受動文では by ~ に。ただし,省略されることが多い。 (S→ by ~)
  • それ以外はそのまま。

に変える,ということです。基本ルールはこれだけ。

さて,本題の第4文型の受け身。

第4文型は O が2つあるわけですから,O → S の変化も2とおりある,つまり,2種類の受け身の文が作れるということになります。

問題は,

  1. 上の [DO を S に]型では,to が用いられることが多い
  2. 下の [IO を S に]型は,いつも作れるわけではない

ということです。toを用いる場合,第4文型の受け身というよりも,最初で述べた第4文型と同じ意味の第3文型(I gave him the book)を受け身にしたもの(He was given the book.)と考えられます。このへんに注意しながら,各参考書を見ていきましょう。

図は,クリックで拡大する(はず)。閉じるときは右下のCLOSE。

 

★ 総合英語Forest

総合英語Forest

総合英語Forest

まず,例によってできるだけ文法用語を使わずに説明しようとしていることに気づきます。「第4文型の動詞」ではなく,「目的語を2つ続ける動詞」としていますし,間接目的語は「相手」,直接目的語は「物や情報」と表現しています。これらの用語を知らずにこの部分を読む人には親切ですが,かえってわかりにくくなる場合もあります。専門用語の羅列には誰だって辟易へきえきしますが,専門用語は,きちんとした定義があるので誤解が少ない,長ったらしい説明を簡略化できるなど,それが使われるだけの理由があるものです。この程度なら覚えておく方があとあと楽ですよ。

上の問題点のうち,1のtoについては,toがつく方をふつうとし,toの後ろに人称代名詞が続く場合は省略できる,という書き方です。

問題点2の[IO を S に]型については,make, sing, find, cook などのbuy型動詞では「相手」を主語にした受動態の文を作ることはできない,としています。なぜなのかは書いてありませんが,書くとちょっとすごいことになってしまうからです。

でも,必要な情報はすべて載っています。文法用語を避けたことによって,わかりやすいと思うか,わかりにくいと思うかが意見の割れるところでしょう。

 

★ ロイヤル英文法―徹底例解

ロイヤル英文法

ロイヤル英文法

すさまじい量の記述です。文法用語も直接・間接目的語どころか,保留目的語,新情報―旧情報ということばまで導入しています。

[DO を S に]型と[IO を S に]型の両方できるもの,[DO を S に]型が多いもの,[IO を S に]型がふつうのもの,という3つのタイプに大きく分類して,そのそれぞれをこまかく再区分・説明しています。問題点2は詳しすぎるほど説明されています。

問題点1については,「一般に動詞と間接目的語の結びつきが強いので」と理由をあげたうえでtoなしでつかえるが,人称代名詞以外ではtoを入れるのがふつうだとしています。理由があげられていること以外は「Forest」と同じですが,その理由が次の[参考]で新情報―旧情報という概念を用いて,さらに詳しく述べられています。

ここを簡単にまとめておくと,

  • 英語では,新しい情報は古い情報よりも後ろに来ることが多い
  • 代名詞は前の名詞を指しているのだから旧情報である
  • ふつう,a がつく名詞は新情報,the や this がつく名詞は旧情報

この新情報―旧情報については,Forestでも別の箇所で言及されいてます。

 

★ 表現のための実践ロイヤル英文法

表現ロイヤル

表現ロイヤル

全体として,「ロイヤル―徹底例解」を多少簡略にまとめた感じ。

受動態の作り方としては「ロイヤル―徹底例解」が3つに分類していたのに対し,この「表現ロイヤル」では,[IO を S に]型がふつうのものを省いて2分類になっています。toのあるなしの説明も「徹底例解」と同じ。

でも,いちばん違うのは最初の部分の記述でしょう。この本以外に多い,どういう形の文が正しい文なのかという視点,どういう動詞ではどういう形をとるのかという視点ではなく,その形はどういう文脈で用いられるか,その形の表現は何を言いたい時に使われるのかという視点です。前者には,[DO を S に]型と[IO を S に]型は意味が同じであるという前提がありますが,後者では2つの型は意味の重点が異なるという機能的・談話構造的な観点があります。これがいちばんの特徴ですね。

 

★ 英文法解説

英文法解説(江川)

英文法解説(江川)

短いですが,まあ「Forest」と同じくらいの分量の記述でしょう。いちおう大ざっぱに理解している人なら,これくらいの記述でも重要な点は押さえられます。でも,他の本と比べると,説明が少なくて寂しげなのはいなめない。「具体的なものの授受を表さない」give についての言及はこれだけかな。新情報―旧情報のはなしは別の箇所にあります。

 

★ 英文法総覧

英文法総覧(安井)

英文法総覧(安井)

基本事項はあまりことばでは説明せず,例文を多めにしているのが特徴といえば特徴ですね。

でも最大の特徴は[研究]の部分です。ここでは *The book was given John by Mary. という文の不適格性を,統語論と情報構造論の両方から論じています。でもはしょりすぎでは?

「能動文の直接目的語が受動文の主語になってはいるが,間接目的語を飛び越えて,受動文の主語となっているから」「一種の規則違反」というのは,生成文法における「格フィルター」の理論を踏まえているのだと思われますが,これだけの説明ではわかりにくいでしょう。といって,ゼロから生成文法を説明するわけにもいきませんが。

 

★ 英文法詳解

英文法詳解(杉山)

英文法詳解(杉山)

説明そのものは,情報構造も出てこない伝統文法的記述に終始していますが,結構ていねいですね。英米差として取り上げている部分は,単純に英米でスパッと分かれているわけではないと思われます。この本らしいのは4や5の日本の高校生がやってしまう一見つまらないミスについて指摘していることでしょう。

 

 

この項目は,学問的な研究が比較的進んでいる部分です。これらを生かそうとしているのが,2つの「ロイヤル」と「総覧」でしょう。今回は特に2つの「ロイヤル」に感心しました。

でも,大学受験にでないことは知りたくもないという向きには,どの参考書だって同じようなものですけどね。

 

 

 

 

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by rickie | Posted in 高校生向け | No Comments »

『高校生のための東大授業ライブ』

8 月
2008
29

東京大学教養学部編 |出版社:東大出版会|2007年|1800円|高校生・一般向け|249p.|独断的おすすめ度 ★★☆☆

 

すでに紹介した『16歳からの東大冒険講座』全3巻と同じく,東大が行う「高校生のための金曜特別講座」からピックアップした授業の書籍化。通算4巻目だが,出版社も変わり,ベネッセの援助も受け,本はオール・カラーになって,紙質も,ついでに定価も上がった,というわけですね。書店ではこれがいちばん新しく,いちばん手に入りやすいでしょう。

各講義のレベルはさまざまで,予備知識なしで読めるものもあれば,高校レベルの教科をきちんと頭に入れている人でも難しいものもあります。「学力低下」というレッテルが貼られることの多いいまどきの高校生の目線にまで何とか降りようとしている先生がこの本では多いのですが,高校生のレベルを無視した,または高校生に何がわかっているかがわかっていない先生も中にはいます。でも,わかる・わからないが問題なのではなく,興味が持てるかどうかが問題だと考えて読むのがいいと思います。全体的には,少しでも高校生の興味を引こうと考えた授業がいっぱいあります。わたし的には今回は文系的な話の方が面白かったかな。前は理系の方が面白かったんだけど。生物学関係がちょっと専門的すぎる気がしました。わたしには,ということですが。

ところで,第1講には,余談っぽく次のような話が載っています。

「大学で専攻する分野を大学入学前に決めるのが日本の主流です。ちょうど,皆さんは専攻分野の決定で悩んでいるのではないでしょうか?」

「しかし,全ての若者が高校生時代に自分の興味や適性を活かす分野を見つけることが本当にできるのか,わたしは疑問に思っています。」

「高校生時代では早すぎてデータ不足,根拠に乏しく,結局,本人の適性に即した選択ができていないのではないかと危惧します。大学に入る前に大学での専攻を決めるのではなく,大学でじっくり時間をかけていろいろな分野の学問に触れ,自分の適性にあった分野を探すことが必要だと思います。そのような,大学で広くじっくりと学ぶ時間を許すのが『リベラル・アーツ教育』です。」

これはわたしも賛成ですし,そのように考えている高校生・父兄・高校教師・大学教師はかなりたくさんいると思うのですが,なかなか,というか全く事態は変わりません。このへんのことは,またあらためて考えてみたいと思います。

 

《 目次 》

PART 1 : リベラル・アーツの世界へようこそ

第1講 スーパーマンを救え ― 再生医学の最前線 松田良一

第2講 あみだくじの数理 ― 「自由」な数学の魅力 桂利行

第3講 民主主義は今も魅力があるのか ― 問い直す意味 森政稔

第4講 「今ここにいる自分」の謎を解く ― 哲学への招待

 

PART 2 : 学問と実践 地球大の広がり

第5講 地球は「やさしい惑星」か ― 生命の絶滅と進化 磯﨑行雄

第6講 人生をファンタジー化しよう ― 中国・黄土高原から 安富歩

第7講 アフリカの飢餓・貧困と闘う ― 日系人科学者として Gordon H. Sato

 

PART 3 : 知る・学ぶことの意味,その喜び

第8講 榎本武揚から見た明治維新の世界 ― 領土国家の形成 臼井隆一郎

第9講 イングリッシュ・ガーデン誕生の裏側 ― その美学と政治学 安西信一

第10講 ふるまいと記述 ― 文化人類学の異文化理解 森山工

第11講 朝永振一郎と湯川秀樹 ― 高校時代からの軌跡 岡本拓司

 

PART 4 : 人間と社会を支える科学の力

第12講 先天的な運命は変えられるか ― 生命科学の発展 安田賢二

第13講 生物が持つ分子機械 ― 形と働きを解明する 栗栖源嗣

第14講 エネルギー源としての乳酸 ― 運動と疲労の関係 八田秀雄

第15講 快適生活を支える物性物理 ― 身近な世界への応用 前田京剛

 

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by rickie | Posted in いろんな本, 学問を知る | No Comments »

高校生用の分厚い英文法参考書のはなし (9)

8 月
2008
28

今回は「分詞構文」取り上げて,各参考書を比較してみます。前回・前々回の「同族目的語」,「劣等比較」に比べて,もっとも基本レベルに属する項目です。受験生なら誰でも「分詞構文」という名前くらいは知っているはずなので,目次から探せるはずです。

「分詞構文」という項目の中にもいろいろなポイントがあるので,そもそも「分詞構文」って何?という定義・前置き部分と「分詞構文の意味」に限定することにします。

 

「分詞構文」とは?

総合英語Forest

分詞の導く句が副詞的に用いられることがある。次の2つの文を比べてみよう。

【比べてみよう】

(1) Bob was waiting for Mary.  (ボブはメアリーを待っていた。)

(2) Bob was waiting for Mary reading a newspaper.  (ボブは新聞を読みながら,メアリーを待っていた)

(2) の文は (1) の文の後に reading a newspaper という分詞が導く句を加えた文である。この文では,「ボブがメアリーを待っていた」という状況について「新聞を読んでいた」という説明を加えている。このように,副詞的に文の情報を補足する分詞句を 「分詞構文」 と呼ぶ。

他と比べると,いちばん親切な情報です。この部分に求められているのは,分詞構文の定義ですが,「分詞構文って何?」という疑問をいだいてこのページにたどり着く生徒の立場から見れば,簡潔すぎる辞書的定義では「意味わかんないんですけど」という印象を与えてしまい,以下を読む気力をなくしてしまうかもしれません。

このイントロでは,「副詞的」「句」ということば以外は文法用語は使われておらず,「文の情報を補足する」という説明もすばらしいですね。他の分詞が,名詞を修飾して名詞句に組み込まれたり,補語として機能して文の不可欠な一部に組み込まれたりするのに対し,分詞構文は分詞構文は文の中心部の外にあって情報を補足する働きをするということが,いちばんのキモなのですから。

 

ロイヤル英文法―徹底例解

分詞が動詞と接続詞の働きを兼ねて,その分詞の導く句が副詞句として用いられるとき,これを分詞構文(Participial Construction) という。

短いですね。一度でも分詞構文を理解した(でもうろ覚えの)人にはこれでも大丈夫でしょう。

これはある意味,昔ながらの定義です。「動詞と接続詞の働きを兼ねて」というのは私たちもよくやる説明ですが,実例抜きでは初対面の人には意味不明でしょう。当然,筆者は「次で説明するからね」というつもりで書いているわけですが。

 

表現のための実践ロイヤル英文法

分詞を使って副詞節を句の形に圧縮したものを分詞構文という。「時」や「理由」を表すものが多いが,等位接続詞的に「継起」を表す場合も少なくない。

文を簡潔にする効果があるので,書き言葉では比較的よく用いられるが,統計から見ると,日常の会話で用いることは少ない。

「節」と「句」の違いを理解していることを前提にしています。「圧縮」ということばは僕もけっこう好きでよく使いますが,むずかしいのかな。「書き言葉」がなぜ太字なのでしょうか。

 

英文法解説

定義・前置き部分なし。さすが。

 

英文法総覧

分詞構文 (participial construction) と呼ばれ,主として文章体に用いられる。

【解説】 分詞構文というのは,分詞を主要素とする語群が文全体を修飾して副詞的に用いられている場合にいう。この構文では,述語動詞の時制と同時のことを表すには現在分詞を用い,それより以前に起こったことを表すには完了分詞を用いる。分詞構文が,時,原因・理由,付帯状況などのどの意味関係を表すかということは文脈によって決まってくることで,そのいずれであるか常に明確に識別できるとは限らない。

「分詞構文と呼ばれ」って,何が? まあ,その前の項目タイトルに「分詞の副詞的用法」とありますから,「分詞の副詞的用法は分詞構文と呼ばれ」ということなんでしょうけど。

この本はもともと教師用指導書が母体で,それを「中学上級の生徒から一般読者」対象に書き改めた(『はしがき』)ものですから,その原型をとどめているところなのでしょうか。

 

英文法詳解

分詞を含む文句が,時間・理由などを表す接続詞で導かれる文句(副詞節という)と同等の意味を表す場合がある。このような分詞を含む文が,分詞構文 (Participial Construction) である。

「文句」に異和感がありますが,無難なイントロです。

 

 

「分詞構文」の意味

日本の大学受験英文法の伝統では「時,理由,条件,譲歩,付帯状況(,継起)」という用語による分類がよく用いられています。でも,きちんと訳せることはだいじですが,分類自体にたいした意味はないでしょう。もともと多様な意味を持ちうるのが分詞構文の特徴なのだし,最近は入試問題でもほとんど見かけません。

ちなみに僕は,訳すときに「と,て,ながら,ので」(たまに「~けれど,ば」)というつなぎの助詞を使えばいいよ,くらいに話しています。

図は,クリックで拡大する(はず)。閉じるときは右下のCLOSE。

★ 総合英語Forest

Forest 分詞構文

Forest 分詞構文

時・理由...という用語での分類を捨てて,「『その時何をしているのか』を表す」という説明を理解させるねらいのようです。暗記しようというなら,時・理由・条件という用語の方が暗記しやすいでしょうが,暗記が必要なパートではないので,こういう説明は面白いと思います。僕は好きですね。レイアウトもきれいです。

when や because を使って書き換えさせる問題をテストに出す先生も探せばいるでしょうから,ちらっと書いとかなきゃ,というかんじで書かれています。

 

★ ロイヤル英文法―徹底例解

分類は伝統的。使われている例文もなんか昔から使われているような例文ばかりのような気がする(それはそれで無難ではある)。

分詞構文は書き言葉的とか,条件・譲歩は慣用的なもの以外はあまり使われない,という指摘はだいたい各参考書に載っています。でも,そうきっちりと口語・文語が分けられるわけではありません。だいぶ前のことですが,ネイティブと本の話をして,Having read that book, what do you think about ~? (あの本読んだんだったら,~はどう思うの?)というような内容のことをいわれたことがあります。特にフォーマルな会話ではありません。「会話で,分詞構文,特に完了分詞構文を使うんだ」とちょっと驚きでした。まあ慣用的と言えば言えるのですが,慣用的と言っても広いわけで,けっこう出会うものですよ。へたに使うのは危険ですが。

 

★ 表現のための実践ロイヤル英文法

表現のための実践ロイヤル英文法 分詞構文の意味

表現のための実践ロイヤル英文法 分詞構文の意味

ここでは条件・譲歩はふつう接続詞をつけて使う(つまり,接続詞なしではあまり使わない),と分類されています。付帯状況や継起は話し言葉でも使うという指摘はこの「表現ロイヤル」だけ。

例文は「ロイヤル―徹底例解」よりもやや「生きた」英語っぽいです。

 

★ 英文法解説

英文法解説(江川) 分詞構文

英文法解説(江川) 分詞構文

この本が,英語の教師や英語オタク(?)に評価が高いのは,選ばれている例文や『解説』欄の情報の質の高さですが,ここではそれほどでもないかな。例文と訳だけのそっけなさですが。

「分詞構文を時・理由などに分けたのは,分詞を含む文全体からそういう意味が出てくるのであって,分詞自身にそういう意味があるわけではない。」という指摘は大切です。

 

★ 英文法総覧

英文法総覧(安井) 分詞構文

英文法総覧(安井) 分詞構文

この本は,英語学(言語学)の最新の理論を学校文法の中に組み込もうとしている点で評価されているわけですが,その特徴はここではあまり出ていません。

なお,「時を表す場合」「原因・理由を表す場合」など各項目にクロスリファレンスがついていますが,これは第35章に,「時」の副詞句・副詞節などの意味別の表現が集められている一章があるということです。

 

★ 英文法詳解

英文法詳解(杉山) 分詞構文

英文法詳解(杉山) 分詞構文

この本は,「日本語に訳すとき(解釈するとき),何に注意をしたらいいのか」という視点を重視しているという特徴を持っています。ここでもそれが如実に表れています。特に,最後の「分詞構文全般についての注意」はなかなか見事です。わかりやすさや見やすさもかなりいいですね。

 

今回は,基礎レベルのポイントで,こういうものでは「FOREST」のよさが出ています。「詳解」のくわしさも捨てがたい。

次回は,ちょっと特殊なもの,専門的なものを取り上げる予定です。

 

 

 

 

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by rickie | Posted in 高校生向け | No Comments »

高校生用の分厚い英文法参考書のはなし (8)

8 月
2008
17

いくつかの英文法参考書でひとつのポイントを調べて比較するという企画のつづきです。

前回は「同族目的語」という高校レベルではあるけれどさほど頻度は高くないポイントでした。今回は少し重要度が上がって,「劣等比較」にしてみます。まあ,テキトーな選択ではありますが。

 

「劣等比較」とは?

more や -er の比較級ではなく, less という比較級を使う表現を「劣等比較」といいます。

a_ilst075.gif

形としては,

less + 形容詞・副詞の原級 + than ~

となります。than に引きずられて比較級を使ってしまいやすいので注意。 ☓ less bigger than → 〇 less big than 。

意味は,ふつう否定で訳されて「~ほど・・・でない」となります。直訳だと「~よりも・・・の程度が低い」ということですが,これはさすがに日本語としてこなれていないし,「~ほど大きくない」を反対語を使って「~より小さい」としても悪くはないですが,形容詞が価値判断を伴う語だとちょっと言い過ぎになってしまいます(「~ほど美しくない」と「~より醜い」はニュアンスがかなりちがいます。 less beautiful than のニュアンスは前のものに近いでしょう)。

 

さて,今回は内容比較もさることながら,レイアウトや見た目にも注目です。

★ 総合英語Forest

FOREST-less

FOREST-less

項目名が「 lessを用いて『~ほど・・・でない』を表す」となっていて,本文中にも「劣等比較」ということばは見当たりません。索引にもありません。従って教師が「これは劣等比較だから...」という説明をしてそのことばを引こうとしてもダメということになります。「比較」の章全体なり,大項目なりをある程度まとめて読む前提で作られているようです。説明の方は,ほかと比べると特に詳しくはなく,必要最小限のことをうまくまとめている,という印象です。これは特に英語が苦手な生徒(つまり大半の生徒)対象という範疇内ではほめことばになるでしょう。

A is not 比較級 than B. は A ≦ B を, A is less 原級 than B は A < B を表す という記述もあります。まあ,当たり前なのですが,現実の英語では厳密には言い切れない場合はよくあるような気がします。

全体的には,教師から見るとおもしろみはないが,生徒にはこのあたりで十分だし,その範囲でみっちりことばを費やして理解させようという意図がはっきりしています。

 

★ ロイヤル英文法―徹底例解

less ロイヤル

項目タイトルは「劣等比較の構文」。でも意外にあっさりした記述で,例文もひとつだけ。

「マイナス方向の意味を表す語の場合は,一般に劣等比較では用いない」という記述もあります。ふつう as young as よりも as old as が使われるというのと同じポイントと言っていいでしょう。 less tall がふつうで, less short はあまりない,ということです。

このポイントを取り上げているのは「ロイヤル―徹底例解」だけです。

 

★ 表現のための実践ロイヤル英文法

項目タイトルは「比較級の特殊な形式 lessを使った比較」で,「劣等比較」という用語は使われていません。

訳が受験常識的な「~ほど・・・でない」でなくて,「栄養価が低い」「危険度が低い」になっているところがおもしろいですね。これは注として出ている less … than ~ と not as … as ~ の違いの話に関わっています。

less ~ than … ≒ not as ~ as … となるのはすべての本に載っていますが(「解説」以外),違いに触れているのは,「表現ロイヤル」だけです。

A is less tall than B. は,A, B 両者があまり背が高くない場合に, A is not as tall as B. は,Bは結構背が高い場合にふさわしい,という内容です。

「表現のための」というタイトルはこの説明の微妙なワーディングにも表れている気がします。受信型・英文理解に重点を置く書き方なら「~場合にふさわしい」という表現ではなく,「A is not as tall as B. という英文からはBが背が高いという前提が読み取れる」のような表現になるでしょう。

 

★ 英文法解説

項目タイトルは「 less について」で,解説も短く,「日本語では通例『より少なく~である』とは言わないので,英語のlessの訳し方には工夫の必要がある。」という書き方です。

なんか,「こんなポイント,説明する必要ないと思うけど,いちおう書いとくね。」ってな書き方ですね。

 

★ 英文法総覧

less 英文法総覧

これもあっさりした説明。というより,ふつうの比較級の説明の中に less も入れているだけで,独立項目としては扱っていません。not as ~ as に相当するという記述があるだけで,他の情報はなし。そのわりに,比較級構文は変形操作としては最も解明しにくいもののひとつである,といった記述もあり,生徒にはあまり縁のない説明です(教師にはおもしろいが)。

 

★ 英文法詳解

less 英文法詳解

less 英文法詳解

項目タイトルは「劣勢比較」。あまり使われない,文語である,little の比較級としての less と区別せよ,といった記述があって,それなりに詳しいです。生徒が陥りやすいポイントは何かということを,この筆者は意識して書いているな,という印象です。

 

基本項目になると,「解説」「総覧」は記述が(雑とは言わないが)短くさらっと流している感じです。

そういえば,同一物比較の less の用法の説明がどの参考書にも見当たりません。同一物比較の more の方はあるのですが。大学入試にもたまに取り上げられることがあります。

He is less tired than sleepy. 「彼は疲れているというよりも眠たいのだ。」

これは, not as ~ as … ではなく, not so much ~ as … で書き換えられます。

どこかに紛れて載っているのかな?

 

 

 

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by rickie | Posted in 高校生向け | No Comments »

高校生用の分厚い英文法参考書のはなし (7)

8 月
2008
6

今回から,

あなたが英文法の何かのポイントについて疑問をいだいたら,参考書はどのように解決してくれるのか?

ということについて,適当なポイント(まったく恣意的)を選んで,各参考書を調べて比較してみることにします。

 

「同族目的語」って何?

先に答合わせをしてしまうと,。「同族目的語」はふつうは自動詞なのに,同形(派生形)の目的語ならばとれる(つまり他動詞として使える)というポイントですね。

a_ilst075.gif

たとえば...

dream 「夢見る」という動詞は,日本語では「明るい未来を夢見る」といえますが,英語では dream a bright future とは言えません。正しくは, dream of a bright future です。dream は自動詞であり,自動詞は目的語をとれず,前置詞(ここではof)がないと a bright future は目的語になり,dream は自動詞でなくなってしまう,というわけです。ま,「~を夢見る」は dream of ~ だと覚えればいいということです。

ところが...

その自動詞の dream が他動詞として使える場合があります。それが「同族目的語」の場合です。 dream a beautiful dream 「美しい夢を見る」という表現では, of なしで動詞 dream が dream という目的語を伴っています。直訳すると「美しい夢を夢見る」ということになります。一部の自動詞は,その動詞と同じ形(または親戚の)名詞に限り目的語を取ることができる,これが「同族目的語」というポイントです。ただし,dream a ~ dream という形はかなり古めかしい英語になっていて, have a ~ dream のほうがふつうになってしまいました(haveだと「同族」とは言えませんが)。日本語では「見る」ですが, ☓see a ~ dream ではないことも注意が必要です。

 

こういうのは,目次では探しにくい参考書ではたいてい「動詞」の章の「自動詞」か「他動詞」の項に載っているだろう。「目的語」について「動詞」の項目を探すなんてのは,「同族目的語」がどういうものか知っていて可能になるので,それを知らない人にはムリ。ということは,索引で探すしかありません。以下,参考書をいくつか当たってみましょう。

 

総合英語Forest

あれっ?「同族目的語」という項目が索引にない。本文の動詞の章にも見当たらない。

やはり,項目を絞って通読用に作っているのでしょうか?

 

ロイヤル英文法―徹底例解

「同族目的語をとる動詞」という項目にほぼまる1ページ使っていて,さらに巻末にはその形になる動詞のリストがあります。他書と比べ,量的にいちばん多いでしょう。

定義は,「本来は自動詞だが,動詞と語源的に,または意味上関連のある語を目的語としてとる場合がある。こういう目的語を同族目的語( Cognate Object )という」。

詳しく分類していて,(1) 同族目的語が動詞と同形または同語源である場合 (a) 動詞+副詞でかき変えられるタイプ die a ~ death (= die ~ly) (b) られないタイプ sing a ~ song (≠ sing ~ly )(2) 同族目的語が動詞と意味上関連のある場合 fight a ~ battle (3) 最上級の形容詞だけが残り,同族目的語が省略される場合 breathe one’s last (breath) 「息を引き取る」 に分けられています。それ以外には,よく使われる例と,使われない例(dream),巻末リストには20の動詞が挙げられています。

 

表現のための実践ロイヤル英文法

全体的には,ロイヤルとほぼ同じです。ロイヤルの定義から「語源的に」の部分を削除していたり,4タイプの分類だったのを2タイプにしていたりと簡略化が目立つが,「リスト」がないのが残念。最上級付きの場合のこともなくなってますね。

特徴は,ロイヤルにあった「よく使う例」を前面に打ち出して,「統計によると,最近の例文では, smile a ~ smile, live a ~ life が最も多く, die a ~ death, sing a ~ song, laugh a ~ laugh などがその次に多い。ほかに, fight a ~ fight[battle], sleep a ~ sleep, breathe a ~ breath なども見られる」という部分。

 

英文法解説

《参考》欄に 「通例は自動詞として使われる動詞の中に,a) 動詞と同語源の名詞または b) 動詞と縁のある名詞を目的語とするときに,他動詞化するものが少数ある。この場合の目的語は同族目的語(Cognate Object)と呼ばれる」という説明と,smile, live, dream, run の例文があります。

簡潔な,他よりも少なめの説明ですが,「他動詞化」だけで理解できるならこれで十分です。

 

英文法総覧

「同族目的語」はこの本の中の2カ所で項目として取り上げられていますが,定義は後の方で出てきます(なぜ?)。説明はあっさりしていて,「本来自動詞である動詞が,意味上,密接な関係にある名詞を目的語とすることがある。この種の目的語を同族目的語という。」後は例文で,live, die, fight, run など。

「研究」の項には,他書と同じく,同族目的語は形容詞を伴うのがふつうであると記されていますが,「同族目的語は,意味上,それ自身ではなんら新しい意味要素を付加するものではな」く,「形容詞的修飾語句がついてはじめて言うに値する意味情報が加えられる」という,形容詞を伴う理由が書かれています。このへんがこの本らしいところかな。

 

英文法詳解

「注意すべき目的語」という項目があって,「通常は自動詞として用いられる動詞も,時により,次のような目的語を取って他動詞的に用いられることがある。」という説明の下に (1) 同族目的語 (定義 「動詞と同形または語源的に関係のある名詞。《このような目的語を同族目的語(Cognate Object)という》」)(2) 「~によって・・・を示す」と訳すのがよい場合 (3) 目的語が,動詞の表す動作の道具や結果を表す場合 という3つのポイントを挙げています。(2), (3) は同族目的語とは直接関係はないのですが,(2) nod his approval (承認をうなづく→うなずいて承認の意を示す)とか (3) fire a hole (「銃を撃つ」ならふつうだが,「穴を撃つ」→「撃って穴を開ける」)などは,読解・翻訳で取り上げられる(文法ではあまり取り上げない)ポイントなので興味深いところです。

同族目的としては「研究」の中で,1. 同族目的語には形容詞がふつう付く 2. 動詞と同語源ではない類語の場合 (fight a battle, run a race) 3. 同族目的語に最上級が付くと名詞が省略 という3つの注意点が挙げられています。ほぼロイヤルと同じくらいの詳しさです。

 

今回は,詳しさで「ロイヤル」「詳解」の二つがほぼ同点。「リスト」がある分「ロイヤル」の勝ち,というところ。「解説」「総覧」はすでにだいたいのことがわかっているのが前提になっているようです。

これだけでも各書が何がやりたいのかが少し見えてきます。「表現のための」はタイトルどおり,「今,使うとしたらどう使うか」という視点を(すでにある英語を理解するよりも)重視していますし,「詳解」は日本語との差異,訳す上での注意点などを意識しています。


 

 

 

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高校生用の分厚い英文法参考書のはなし (6)

7 月
2008
24

英文法参考書をさらっと見ていくシリーズの第6弾。

そもそもこの種の文法参考書が書店から消えつつあるような印象を受けます。中高の英語教育がコミュニケーション重視となっているというのが理由の一つに挙げられるのかもしれません。コミュニケーション重視については今は取り上げませんが,学校教育で文法に真正面から向かわないのであれば,なおさらこの種の文法書が必要になるはずです。コミュニケーション重視型教育では文法項目順に進んでいくわけではないので,「なぜ」という疑問には答えずにはなしが進んでいきがちだからです。

 

★ マスター英文法 (全面改訂版 中原道喜 著 聖文新社 2008)

これは以前はメジャーだった本。著者はあの開成高校教諭。受験英語に関して多くの著書があり,業界では有名な方です。

2008年に改訂版が出たのですが,本屋で立ち見した限りでは旧版とあまり変わっている気がしなくて,実は買っていません。買ってもいない本をコメントしたくないのですが,一応参考まで。以下はあくまでも旧版についてです。

内容的には非常にまとまった大学受験生向きの英文法書です。

レイアウトや叙述のしかたは,すこし(かなり)古めかしい感じがしますが,そういうのが好みの読者もいると思います。見映えを変えればまだまだ使えると思うのですが,出版社ももう少し考えればいいのに。

 

  • 読者対象 英語が平均レベルの高校生~大学生(英語専門以外)
  • 使用目的  大学入試レベルの英文法知識の確認
  • 長所  ほかの本の著者が大学教授であるのに対し,この著者は高校教師であることから,受験を念頭に置く度合いは高い。
  • 短所 レイアウト的に見て,大きな本から必要な情報だけを読み取ることに慣れていない人にとっては,とっつきにくいかも。

 

★ depth 英語総合 (町田健,高沢節子,豊島克己 著 河合出版 2005)

河合塾で出している問題集系はたくさんありますが,英語参考書はこれだけ。著者代表の町田先生は最近ではよくテレビにも露出している言語学が専門の名古屋大教授です。(昔はモー娘時代のなっちファンだと書いていましたが,最近は時東あみファンを公言しています。どうでもいい情報だが。)この先生は以前河合塾に出講していて,他の二人の著者も河合の先生です。

全体的にはイラスト満載で,余白が多くて(他の本は余白がかなり少ないです),内容の図解もあり,ここで取り上げた本の中ではいちばん取っつきやすいでしょう。逆に言えば辞書的に情報を詰め込んではおらず,大学受験に必要ないものは徹底的に省いてあるという印象です。これくらいなら通読は不可能ではありませんが,時間効率を考えればやはり辞書的使い方でよいと思います。

 

  • 読者対象 高校生1年生~大学受験生
  • 使用目的  大学入試レベルの英文法に不安を感じる人のレファレンス
  • 長所  読みやすい。説明が簡潔。意外な切り口や詳しいところも。
  • 短所  ポイントが絞り込んであるので,探しても知りたいことが見つからないこともあり得る。

 

ほかにも,参考書はあるのですが,とりあえずこんなところで。

次回は,とりあげた8冊の横断的比較の予定。

 

 

 

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『より良い外国語学習法を求めて』『「達人」の英語学習法』

7 月
2008
22

著者:竹内理 |出版社:松柏社|2003年|2500円|英語教師・研究者・一般向け|独断的おすすめ度 ★★☆☆

著者:竹内理 |出版社:草思社|2007年|1500円|高校生・一般向け|独断的おすすめ度 ★★★☆

 

同じ著者による同じテーマの2冊の本。実は,この2冊は読者対象が違うだけで,中身はほぼ同じといってもいい。

「より良い」が,データをもとにした研究発表の形式であり,「達人」はその研究成果を一般向けにかいつまんで述べたものです。従って,調査方法やデータを含めて知りたいのであれば「より良い」を,結果だけ知りたければ「達人」を読めばいいわけです。

調査目的は,「英語ができるようになった人に共通する学習法はあるのか」ということ。調査対象は3種類で,第二言語習得論の先行研究を踏まえて,

  • 英語ができる大学生とできない大学生
  • おそらく筆者周辺の,英語の達人たち
  • 世間に出回っている「私はいかにして英語の達人となりし乎」といった類の本

を扱っています。「より良い」の第9章で,これらのデータと既存の理論を踏まえた結論を述べていますが,この部分を敷衍ふえんして,英語学習者へのアドバイスの形で1冊の本に独立させたのが「達人」です。

調査方法も,そこから導き出されている「学習法」のアドバイスも,ハッタリのない信頼できるものです。たとえば,「学習法」の議論はそもそも万人共通の学習法が存在するのかどうかから出発すべきなのですが,筆者はその前提を踏まえた上で,調査対象から共通項が引き出せるという順当な手順を踏んで議論を組み立てています。その上で,学習者全般だけでなく,初級段階(中~高レベル)に必要なことと,中上級で必要なことを分けていたりと,あたりまえなんだけど実際には雑に扱われることが多い手順をしっかり押さえて考察を引きだしています。

リスニングは初級レベルでは正確さを重視すべきだが,上級では形式的正確さよりも内容重視に移行する傾向が英語の達人には多いパターンであるという記述があります。細かいことをいえば,「達人にはこのパターンが多い」というデータから「学習者はみなこの方法を採用すべき」という結論を引き出すには少し飛躍があるわけですし,私の経験的(データに基づかない)問題意識から言えば,中上級者も正確さ重視の方法を適宜組み込まないと進歩が止まるという感想を持っています。しかし,日本人の学習成功者対象のデータにもとづいたこの種の議論は今までありそうで,案外なかったような気がします。

英語学習法本には,自分の経験だけが最良の学習法であるかのような語り口の本がよく見られますし,そこに売らんがための宣伝文句が加わるとほとんどウソに近いものも存在しますが,この本は安心して全レベルの学習者にお勧めできるでしょう。もちろんその分,「楽にペラペラになれる」「いつのまにかあなたも達人に」といった魔法のような学習法を探している人にはがっかりするようなことしか出ていません。逆にしっかり腰を据えて勉強しようと思っている人,特に英語初心者にはぜひ読んで欲しい本だと言えます。

 

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by rickie | Posted in 一般の語学学習, 勉強法の勉強, 英語の周辺 | No Comments »

高校生用の分厚い英文法参考書のはなし (5)

7 月
2008
16

英文法参考書をさらっと見ていくシリーズの第5弾。

毎回書いているのだけれど,基礎的なことはおおざっぱであれ理解しているという人向けであり,そういう人が学習過程で文法に関する疑問を持った場合に辞書的に使う文法書の紹介をする目的で書かれています。「基礎的なこと」を「おおざっぱ」に理解するとはここでは,品詞の働きや簡単な文法用語(不定詞の形容詞的用法とか副詞節とか)がわかっているくらいのレベルを想定しています。そのへんがまだ危なっかしい人は,基礎事項をひと月くらいの短期間仕上げてしまう必要があります。

目的が,疑問を解決するために辞書的に使うことだとすると,これらの本には当然高校レベルの説明をはみ出す部分が出てきます。出てこないと疑問に答えられないからです。逆に言えば,暗記用の本ではなく,調べて納得するためのものです。少なくとも「ふーん,よくわかんないけど,この点は学者も問題としてとらえていることなんだな」くらいの理解が得られれば収穫かもしれません。私たちがいだく疑問には,そこを掘り下げていくとすごい物が出てくる場合と,ガラクタしか出てこない場合があります。「よくわかんないけど,ここを掘り下げると結構いいものがでてくるかも」という発見も重要な発見なわけです。

 

★ 英文法総覧 (改訂版 安井稔 著 開拓社 1996)

文法についての学問は,1957年にチョムスキー(Noam Chomsky)という学者が登場して「生成文法」という考え方を提起する以前と以後とでは大きくちがっています。それ以前の文法は「伝統文法」と総称的に呼ばれていますが,「生成文法」は,外国語を学習するという目的のために作られたわけではないので,われわれが英語を学ぶときに使いやすい文法は「伝統文法」の方ですし,高校生用の(あるいは学習用の)文法参考書は「伝統文法」をベースに書かれています。

この本の著者である安井稔先生は「生成文法」を含む現代の言語学の大家のひとりに数えられる人です。ビッグ・ネームが執筆した高校生・一般向け文法参考書なわけです。といっても,安井先生はゴリゴリの生成文法家ではなく,語用論や機能文法や意味論といった領域も広くカバーしている方ですし,第一,この本はそれほど専門的に書かれているわけではありませんから,基礎的なことがわかっていれば,高校生でも読めるでしょう。難しい本という評判もあるようですが,それほどでもないと思います。

  • 読者対象 英語が得意~大学生・一般・英語教師レベル
  • 使用目的  大学入試レベルの英文法の各事項を理解している人が,さらに興味・疑問を持ったときのレファレンス
  • 長所  「参考」の部分は入試レベルを超えているものを含む。英語を体系として理解したい人にはいいでしょう。
  • 短所 例文が多いわりに,案外解説部分が少ない(特に基本部分)用に思います。「ロイヤル」のようなリストになっている部分が少なく,そうした情報を求めている人には「ロイヤル」の方がハズレがすくないかな。

全体としては第3回で取り上げた「英文法解説」と似た位置にありますね。

 

★ 英文法詳解 (杉山忠一 著 学習研究社 1998)

これまでの本はまあメジャーと言っていい本でしたが,ここからややマイナー(「やや」ですよ,やや)なものに入ります。ヤクルトファンとかAB型とか,世の中には「マイナーなものが好きっ!」っていうひともいるわけで,ちゃんと紹介しておきましょう。

この本は有名ではないのですが(というか有名ではないがゆえに点が甘くなるのかもしれないけど),なかなかいいんじゃないの,という本ですね。二色刷,レイアウトも地味