早稲田大学・文学部/文化構想学部 5 番(1文英語要約)の対策

指針

2007年度から学部が再編成された早稲田大学の文学部・文化構想学部であらたに取り入れられた問題形式です。新傾向問題で類題も少なく,受験生はとまどっているかもしれません。対策を考えてみましょう。

設問には,次のように書かれています。

Read the following passage and write an English summary in one sentence in your own words.

つまり,「要約を,英語で,1つの文で,自分のことばで,まとめなさい」ということになります。もちろんこの条件に1つでも違反したら(たとえば,2文になってしまったり,本文の文をまる写しにしたら),0点を覚悟しなければなりません。微妙なのは「自分のことばで」という部分で,まる写しはダメだとしても,本文中のことばをどこまで使えるか?ということです。本文中のキーワードが基礎的なことば(languageとかcultureとか)なら使わずに書くことは不可能でしょうから,使ってOKでしょう。ダメなのは,

  • まるまる抜き出す
  • まる写しではないが,同じ構造で単語を少し入れ替えただけ
  • 本文中の文をつなぎ合わせただけ

これらを避けた上でまとめてみてください。

手順としては,

  1. 本文を読みながら topic(その文章のテーマ), key(テーマの中身) となる部分にアンダーラインを引いていく(ここがうまく選べれば半分以上完成したも同然です)
    • topicは冒頭に現れることが多いが,冒頭は前置きで,but(however, yet)の後ろに topic が来ることもある
    • topicの理由,根拠を述べている部分は入れたほうがよい topicの実例を述べている部分はふつう飛ばすが,「~のような」(like ~, such as ~)で入れるほうが適当な場合もある
    • 途中で時制が変化している場合に注意。過去vs現在の対比や実例vs一般論の関係になっている場合がある。実例よりも一般論のほうが重要度は高い
    • 末尾にもう一度まとめのような文が来たり,must, should, have toや命令文などでtopicに対する対策,指針を述べているような場合も入れておきたい
  2. 日本語のメモでよいから,要約となるような文にしてみる
    本文を読んでいない人でも,あなたの書いた要約文だけ読めば内容が理解できる,というような文を要約文といいます。本当にそうなっているかチェック。
  3. それを,本文のまる写しにならないような言い換えをしながら英語に直す
    ピリオドを打つまでが1文ですから,厳密に言えばコロンやセミコロンは入っても構わないはずですが,まあ避けたほうが無難でしょう。その代わり接続詞,関係詞を用いて長くしてもOKです。

以下の練習問題で,考えて見ましょう。実際に12分程度でやってみることを薦めます。

 

新作練習問題

Read the following passage and write an English summary in one sentence in your own words.

The range and quality of human emotions is potentially the same for all human groups. It is in the course of growing up in a particular culture that the range narrows and becomes shaped to a pattern. Fear, love, anger, hostility, shame, guilt, grief, joy, or indifference become channeled by culture so that they appear in different situations, against different objects and persons, or hardly appear at all. Each culture selects, elaborates, and emphasizes certain feelings about the self, others, and the world as appropriate or not. This is communicated in direct and indirect ways. A boy who learns not to cry may have been told that crying is only for girls. He also is surrounded by males who do not cry. Both experiences help pattern his inner responses to situations.

 

解法

どうでしたか?単語が少し難しいですね。でも,感情と文化の関係について書かれていることくらいは分かるでしょう。「感情と文化の関係?日本人とアメリカ人では喜びや悲しみが違うの?」というような問題意識を持って読めば少しずつ見えてきます。

以下,1文ずつ考えてみます。ただ文の意味を取るだけでなく,文と文の関係(逆説?実例?詳述?)を考えてください。

  1. 「人間の感情の幅や性質は,おそらくあらゆる人間集団に共通のものである。」

    感情というのは潜在的には万人共通だ,ということです。 重要ではありますが,ある意味で当たり前のことだから,この出発点からどう流れていくのか,これを詳しく述べるのか,それとも「しかし」という風に持っていくのか,待ち構える気持ちで次を読みます。

  2. 「その幅が狭まって,ある型にはまってくるのは,特定の文化の中で成長していく途上でのことである。」

    「しかし」とは書かれていませんが,「しかし」があるのと同じだと分かりますか?前文の「あらゆる人間集団に共通」と「特定文化の中で」が対立しているからです。ここは重要ですね。

  3. 「恐怖,愛,怒り,敵意,恥,罪責感,悲しみ,喜び,無関心などは文化によって方向づけられ,その結果さまざまな状況でさまざまな対象・人間に対してその感情が起きたり,まったく起きなかったりする。」

    「文化によって方向づけられ」とありますから,2を詳しく述べていることになります。

  4. 「それぞれの文化が,自己・他者・世界についてのある感情を,これは適切これは不適切とえり分けたり,磨き上げたり,際立たせたりしているのである。」

    これも2の詳述です。でも,3も4も,2で言っていた「成長していく途上」については何も言っていないことを思い出しておくといいです。

  5. 「こうしたことは,直接的に伝承されることもあれば間接的に伝えられることもある。」

    ここで「成長」のはなしが絡んできます。「成長していく途上」におとなから子供へと伝承されるわけです。

  6. 「泣いてはいけないと学習する男の子は,泣くのは女の子だけだと 教わったのかもしれない。」

    これは5で触れた「直接的伝承」の例。直接大人に教わったのかもしれない,ということ。

  7. 「周囲にいる男たちも泣いたりしない。」

    こっちは「間接的伝承」の例。教わってはいないが,周りを見て自分で学ぶのが間接的伝承。

  8. 「この両方の経験によって,状況に対するその男の子の内面的反応を形成するのに役立っているのである。」

    「この両方」とは直接的に学ぶことと間接的に学ぶこと。「内面的反応」(inner response)はfeelingsを言い換えたものです。

現実的には....

しかし,試験場で時間内にこんな詳しい分析をしている時間があるでしょうか。 あるわけないですね。当然,わからない単語だってあるでしょう。ではどうするのか?

文と文の関連だけでも見抜ければ,完璧な答案ができます。この文章は3つの部分からなり,

1 感情は万人共通。

2 ~ 4 しかし,それは成長過程で,文化によって形成される。

5 ~ 8 こどもは直接・間接にそれを学び,感情を形成していく。

そして,これを英文にまとめます。中心はあくまで2 ~ 4の文化による感情形成。5 ~ 8 は感情形成の方法を述べているだけ。

【解答例】

Though human feelings are almost universal among mankind, people, directly or indirectly,  learn and develop the patterns of their feelings through the culture into which they were born.

 

※ 上の文章はもともと青山学院大学・国際政経学部2002の1番の問題で,本来の設問は,「次の文章を読んで,人間の感情と文化の関係について日本語で簡潔に述べてください。」というものです。

※ 上の英文の著作権者の方,または著作権者をご存知の方はご連絡ください。

* If you are (or know) the copyright holder of the passage above, please let me know.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。