『タイムマシンは宇宙の扉を開く』 爆笑問題のニッポンの教養

著者: 佐藤勝彦・爆笑問題(太田光・田中裕二)|出版社:講談社|2007年|760円|高校生・一般向け|独断的おすすめ度 ★★☆☆

むかし,もっと限定すると中学二年頃まで,ぼくは理系の少年でした。

● 小学校4年 解剖に目覚める

近所に小川が流れ,その向こう一帯は田んぼだったので,カエルには事欠かず,捕まえてくると家の玄関前のコンクリートに叩きつけて失神させ(麻酔の代わり),親に買ってもらった顕微鏡+解剖セット(メスとピンセットだけだけど)で解剖というか解体するのであった。何度もやっていると飽きるもので,開腹した時点でそのまま御遺体を放置したこともある。今であれば,こういう少年は危険人物として警察か児童相談所に通報されるのかも。

● 同じく小4 理科の実験に目覚める

塩酸と水酸化ナトリウムを薬屋で親に買ってきてもらい(劇薬だから子供は買えない),その二つを中和させて喜んでいた。何ができるかお分かりですよね。塩化ナトリウム,ふつう食塩と呼んでいる物質です。

● 小学校5年 天体観測に目覚める

「展望台」と近所で呼ばれていた,アパート群のかたわらの児童公園にある高さ2メートルくらいの楼の上に屈折式天体望遠鏡を持ち込んで,友人2人といっしょに明け方まで観測をした。何を観測したかは覚えていない。覚えているのは初めての徹夜に興奮して夜明けに3人でジェンカを踊ったことである。「れっつ・きす・ほほ寄せて...」

● 小学校6年 東京に戻ったので自然と断絶した

● 中学校1年 相対性理論に目覚める

講談社ブルーバックスの相対論関係の数式が出てこない本を読み漁った。わかっていたのがどうかは,定かではない。なにせ,発表当時だって,わかった学者は世界に10人しかおらず,そのうち9人は誤解していたとか何とか言われる理論ですから(数字には異説あり)。男の子はこのテの話にロマンを感じたりするというだけです。

さて,爆笑問題太田くんもこういう男子の一人だったようで,この本でも解説しようとする宇宙物理学者・佐藤勝彦氏を押さえて田中くんにウンチクをたれています。「すみません,田中はバカですから,先生を前にしてアレですが,私に説明させてください。アインシュタインは,・・・。それをハイゼンベルクっていう人が,・・・」ってなかんじ。

佐藤氏の関心の一端は,冒頭の次の部分で語られています。

田中 できるんですか,タイムマシンって。

佐藤: ええ。タイムマシンは「理論物理の範囲では,できるように見える」んですよ。だから困っているんですけどね。

太田 困っているねえ。

(中略)

佐藤 そうなんですよ。相対論という,今の物理学の基本になっている法則が,タイムマシンができていいようになっているんですよね。だから,考えるんです。でも一所懸命,何とかタイムマシンをできなくしたいのが本音なんですけどね。

相対論はタイムマシンの可能性を排除しない→でも,タイムマシンが可能ならさまざまな論理的パラドクスが生じる→よってタイムマシンの不可能性を証明したい→その糸口は量子論にあるのでは? というのが佐藤氏のテーマのようです。

後半はいつものことながら,太田くんが文系にありがちな神秘主義・不可知論の方向へ暴走し始め,対するに佐藤氏がナイーブな(失礼)科学主義・決定論の線で対抗します。方程式に宇宙のはじまりの時点の初期値を代入すれば,宇宙の歴史すべてが算出できるというやつです。

もちろんこのシリーズはうわっつらをなめるだけですから,あまり議論は進展しません。中1の時のぼくでも「そんなの知ってるよ」といいたくなるレベルですから,むしろあまりこういうことに関心がなかった人にお勧めなのかもしれません。

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