発音記号 – おおざっぱに理解しよう

単語を覚えるとき,発音がわからないと覚えられません。つづりだけで覚えようとする人がいますが,はっきりいって邪道,というかムリです。「美しい」発音,「きれいな」発音でなくてもいいから,「正確な」発音を覚えましょう。発音がわかってくると,発音だけでなく英語全体の勉強が進むといってもいいでしょう。「発音きれいだね」なんて言われようものなら,ガゼンやる気が出てきます。辞書・単語集には必ず発音記号がついていますから,単語を調べる時,覚えるときには発音記号を確認する習慣をつけてください。

発音記号
とは, その名のとうり,単語の発音の仕方をあらわす記号です。 発音記号は普通のアルファベットと読み方が異なるもの(たとえば,[ ja ] は「ジャ」ではなく「ヤ」)や普通のアルファベットにはない記号(たとえば,[ æ ]や[ ∫ ])があります。発音記号は普通の文字と区別するため [ kæt ] のように [   ] で囲うことが多いですが, / kæt / のように /   / で囲うこともあります。
発音記号には何種類かあるのですが,ここでは日本で高校生向けに作られている英和辞典で通常使われている発音記号に限定して述べます。(1)

 

母音と子音 (vowel, consonant)
日本語の「ア,イ,ウ,エ,オ」にあたるのが母音。それ以外の音が子音。日本語は,(1) 母音が少なく,(2) 子音と母音がセットになっていることが多い,という特徴があります。(1) に関して言うと,英語は日本語よりも母音が多く,特に「ア」に当たる音がたくさんあるので注意が必要です。また,(2) に関しては,たとえば,「カ」という音は発音記号では[ka]になり,これは [k] と [a] から成り立っているのですが,日本語では [k] だけの音や,[k] で終わる音など子音単独の音節はありません。
長音記号
とは, [long2 ] という記号のことで,音を長く伸ばすマークです。たとえば [ phc-long-o] は「オー」に近い音になります。

 

二重母音
とは, 2つの母音のつながりをワンセットにして,1つの母音のように扱うものです。二重母音には [ei] [ai] [ou] [au] などがあります。この中では特に [ phc-long-o ] と[ou] ([オー]と[オウ])の違いには注意してください。日本語では「おう」と書いて「オー」と読むのが普通な(たとえば,「こうこうせい」は「コーコーセー」と読む)ので,ごっちゃになりやすくなります。

 

音節 (syllable)
1つの単語を母音ごとに, 区切ったものが音節です。逆に言うと,1個の母音と0個以上の子音でセットになったものが音節で,音節が集まって単語を作ります。ただしこの場合,次に述べる二重母音は1つの母音として辞書にのっている単語にはよく見ると音節ごとに区切りがついています。たとえば,interesting という単語は,in・ter・est・ing と区切られていて,4つの音節から成り立っている単語だということを示しています(4音節の単語)。また,strike [straik] は二重母音が1つだけなので1音節の単語ということになります。

 

アクセント記号
とは, 母音の上に付く [´] の記号で,その語の中で一番強く読まれる母音をあらわします。なお,[é] のようなアクセント記号をを第一アクセント(第一強勢),[è] のような逆向きのアクセント記号を第二アクセント(第二強勢)といいますが,第二アクセントが大学入試に出題されることはありません。

 

有声音と無声音
有声音とは, 声帯を震わせて出す音,無声音とは声帯を震わせず,息だけを出す音のことです。母音や[b] [d] [g] [v] [z]や[m] [n] [l] [r] は有声音,[p] [t] [k] [f] [s] などが無声音です。日本語の「にごる音」は有声音で,「にごらない音」や[p] などの半濁点をつける音は無声音です。

 

イタリック体(斜体)
が発音記号の中に入ることがあります。[ j ] の代わりに [ j ] とか,[ r ] でなくて[ r ] とか,[ hw ] でなくて [ hw] のような場合です。このイタリック体の部分は,「読まれることもあるし,読まれないこともある」というマークです。たとえば,when [hwen] は,「ウェン」または「ウェン」になります。

 

 

発音記号をごくおおざっぱに説明します。ほんとうは,ネイティヴの音声を耳で覚えるのがよいのですが,とりあえずその出発点にしてください。

 

母音

日本語の[ア]に近いもの

phc-ae 大きな口で,「ア」+「エ」を同時に   apple, man, bat

phc-A2 大きな口で,のどの奥から「ア」   アメリカ英語の hot, not, fox (2)

phc-at 小さな口で,力を抜いて弱くあいまいに,「ア」+「ウ」 about, today (3)

(「ア」なのか「ウ」なのか「エ」なのかわからないような音です)

phc-invV 日本語の「ア」 に近いが,少しだけ口を大きめに開けます。  sun, but, cup

(「オ」にかすかに似た感じになることも)

phc-a この記号は主に二重母音で使われます。

日本語の[イ]に近いもの

phc-i  はっきりめに「イ」+「エ」    fish, build, pin

(「イ」ではないことに注意。「エ」の口の形で,「イ」と言ってみる。「イエ」ではなく,一気に発音してください。)

phc-long-i口を強く横に引っ張って「イー」    eat, tea, bee

(普通long2記号は音を伸ばすだけですが,これは「イ」+「エ」を伸ばすのではなく,「イ」を伸ばす)

 

日本語の[ウ]に近いもの

phc-u 「ウ」     put, book, good

日本語の[エ]に近いもの

phc-e 「エ」   friend, pen, set

日本語の[オ]に近いもの

phc-o 「オ」     ふつうは[ou] という二重母音で使います。 cold, boat

phc-O2 大きな口で,のどの奥から「オ」  イギリス英語の hot, not, fox (2)

 

子音

 

phc-p 「パ」行の音を作る (無声音)    up, pipe, happy

phc-b 「パ」行の音を作る (有声音)   bird, bad, tube

 

phc-t 「タ」行の音を作る (無声音)    ten, time, Tuesday, ticket

( ただし,[ti] は「チ」ではなく「ティ」,[tu] は「ツ」ではなく「トゥ」)

phc-d 「ダ」行の音を作る (有声音)    desk, suddenly, dig, duplicate

(ただし,[di] は「ヂ」ではなく「ディ」,[du] は「ヅ」ではなく「ドゥ」)

 

phc-k 「カ」行の音を作る (無声音)   kick, keep

phc-g 「ガ」行の音を作る (有声音)   good, leg

 

phc-f2 上の歯を軽くした唇にあてて「フ」 (無声音)  fan, first

phc-v 上の歯を軽くした唇にあてて「ヴ」 (有声音)   voice, love

 

phc-s 「サ」行の音を作る (無声音)   sit, say

(ただし,[si] は「シ」ではなく「スィ」)

phc-z 「ザ」行の音を作る (有声音) zoo, zinc

(ただし,[zi] は「ジ」ではなく「ズィ」)

 

phc-T2 舌先を軽く上の歯にあてて「す」 (無声音)   thin, think, teeth

phc-D2 舌先を軽く上の歯にあてて「ず」 (有声音)   this, the, with

 

phc-S2 「シャ」「シュ」「ショ」のでだしの音 (無声音)   sheep, ship, brush (4)

(シュッシュッポッポという時の「シュッ」のかんじ。「ュ」の音が入らないように。)

phc-Z2 「ジャ」「ジュ」「ジョ」のでだしの音 (有声音)   usual, measure

 

phc-tch 「チャ」「チュ」「チョ」のでだしの音 (無声音)   child, each, rich

phc-dg「ヂャ」「ヂュ」「ヂョ」のでだしの音 (有声音)   joy, page, change

 

phc-r 舌先をどこにもくっつけない状態で,少し巻きながら「る」  red, right, road

phc-l 舌先を上の歯茎あたりにくっつけた状態で,「ル」   led, light, load

 

phc-n 「ン」    name, noon

phc-N2鼻に空気が抜ける 「ン」    king, sing, finger

 

phc-m 「マ」行の音を作る   map, arm

phc-h 「ハ」行の音を作る   have, hat

phc-j2 「ヤ」行の音を作る   young, yes, year

phc-w2 「ワ」行の音を作る   wit, watch, weight

(ただし,[wi] は「ウィ」,[we]は「ウェ」,[wo]は「ウォ」)

 

(1) われわれがふつう英語学習で使う発音記号は国際音声字母(IPA)の簡略バージョンのようなものです。発音記号は,すべての言語のすべての発音を記述するために作られたもので,英語には存在しない音をあらわす記号もあれば,ほとんど似ているが微妙な違いを表すための記号もあります。ここで取り上げているのは,英語のみ,しかも微妙な違いは重視しない,昔から使われている発音記号です。辞書によっては別の表記をする場合もあります。また,多くのアメリカの辞書(英英)は独自の表記法を使っていますが,ここでは取り上げません。

(2) アメリカで短く [phc-A2 ] と発音される音は,イギリスでは [phc-O2 ] と発音されます。ただし,長い [phc-long-a ] と [phc-longo ] は,英米ともに存在します。つまり,car や talk は英米ともに「カー」「トーク」です。

(3) [phc-at] を長く伸ばすと,[phc-long-shwa-r] になります。最後にイタリック体の r がついていることに気づきましたか。イタリックは発音する場合もあるし,しない場合もあるということでした。この場合,アメリカでは r を発音し(つまり「アー」の最後で舌を巻く感じ),イギリスでは r を発音しません(「アー」だけ)。またこれを合体した [phc-er] という発音記号もありますが,同じものです。

(4) 「出だしの音」というのは,たとえば「シャ」と言いかけて,「ャ」が来る直前に止める感じです。

作成日 2008.02.15 Ver. 0.7

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。