高校生用の分厚い英文法参考書のはなし (3)

現在手に入る主な英文法書を取り上げていきます。

通読用の本ではなく,あくまでもぶ厚い,文法辞書的な使い方をするための参考書で,かつ高校生にも使えるものを見ていくことにします。

総合英語 Forest (第5版 石黒昭博 監修 桐原書店 2006)

英文法の参考書としては,売れている本のようです。帯には「もっともうれている・大人気190万部突破」とあります。本屋でも平積みになっているところが多いですね。売れているだけあって,装丁もカラフルで親しみやすく,読みやすいでしょう。ただし,極論すれば,「わかりやすい」「読みやすい」本にするために切り捨てたものもあるということです。情報量は類書と比べるとかなり抑えてあります。中学レベルもクリアできていない人にはこれでも難しいかもしれませんが,ふつうは高1からでも使えると思います。使い方はこのシリーズの 1, 2 を参考にしてください。

厚さも薄め(といっても600ページ程度)で,通読できない量ではないですが,やはり通読は捨てて検索用に使う方が現実的です。繰り返しますが,例文をしっかり読みましょう。また,この本に限らず,分厚い参考書の中にある練習問題は無視してかまいません。

  • 読者対象 英語が苦手レベル~まあまあレベル
  • 使用目的 大学入試レベルの英文法の各事項の確認
  • 長所 全体的に説明がすっきりしている,ところどころイラストもあり生徒には読みやすい。
  • 短所 あまり細かい事項は記載されていない(よく言えば,必要なポイントに絞られている)。よって,疑問がすべて(大半)が解決できるわけではない。

現実的に考えて,ここに載っているポイントを完全に押さえていれば,最難関大を含めて対応できます。もともと細かいすべてのポイントまで1冊の本に載せることは不可能ですし,そっちに力を入れるより語彙を増やし読解力を上げる方がだいじです。

逆に,文法にかなり自信がある生徒にとっては,「それ,知ってるんですけど」というレベル以上のものは期待できません。

 

英文法解説 (改訂3版 江川泰一郎 著 金子書房 1991)

生徒よりも英語教師に人気があった参考書です。教師もハイレベルの生徒には推薦していました(今でもしているかも)。「人気があった」「推薦していた」と過去形を使いましたが,内容が古いというわけではありません。

英文法の参考書で,あまり気づかれていないけどホントはすごく大事なことに「挙げられている例文の量や質の問題」があるのですが,この本の特徴は例文がなかなか格調高い文が結構出てくるという点です。江藤淳という評論家は,高校の時の英文法の授業で先生が板書する例文が著名な作家の文章からの引用になっていて感動した,という内容のことを書いていましたが,そこまでハイレベルではないにせよ,そういうことに感動できるかどうかが,この本を評価できるかどうかの分かれ目になります。残念ながら最近は,あまりそういうことが評価されない時代のようで,それが過去形を使った理由です。

  • 読者対象 英語が得意~大学生・英語教師レベル
  • 使用目的 大学入試レベルの英文法の各事項を理解している人が,さらに興味・疑問を持ったときのレファレンス
  • 長所 解説の特に小さな字で書かれた部分は入試レベルを超えた内容。英語・英文法に専門的に 取り組んでみたい人には,入門書的に使えるかも。
  • 短所 これに限らず詳しい本は,しょっちゅう出てくるポイントと,たまーーーーにしか出てこないポイントが同じような比重で扱われるので,「しょっちゅう出てくるポイント」がよくわかっていない人には向かない。

詳しいですが,最新の言語学的知見が取り入れられているわけではありません。改訂3版が出てからもう17年程度たっていますし,筆者江川泰一郎氏は残念ながら物故されています。いい本ですが,今後はどうなるのか気になるところです。

〈つづく〉

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