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英和辞典を比較する (9)

3月
2008
29
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「ジーニアス」「ルミナス」「ウィズダム」「ロングマン」の4英和辞典の比較のシリーズ第9弾!

今回は,いわゆる新語がどの程度載っているかの比較です。新語は毎日地球上のどこかで生まれては消え,そのごく一部が生き残る,そういうものです。あっという間に消えるのものもあれば,定着したと思いきや消えてしまうもの,消えたかに見えて復活してメジャーになるもの,いろいろあるはずです。従って,辞書にすべてを載せることは原理的に不可能でもあるし,その必要もありません。のせ過ぎても困るし,載っていなさすぎるのも困ります。まして,このシリーズで扱っているのは英語学習者向けの辞書ですから,そのバランスは難しいでしょうね。

まず Oxford 出版局が出版している”Language Report” が選んだ,”A Word a Year” の語彙の中から,1998 ~ 2006 を取り上げてみます。直訳すれば「一年一語」,つまりその年を象徴する単語ということですから,必ずしも新語だけとは限らないわけですが,そこそこ定着した代表的なもの(ややイギリスにかたよりがちですが)ですから,学習英和でも取り上げていておかしくはない単語ということになります。

ちなみにこの “A Word a Year” はけっこうおもしろくて,1907 cat burglar (猫泥棒が流行ったの?)1920 T-shirt(この頃できたんだ),  1933 power politics (Nazisが政権を取った年), 1947 bikini (もちろん水爆実験), 1970 Big Mac, 1979 karaoke(!) なんてのもあります。

 

1998 to Google 「ググる」

全辞書に載っていますが,「ロングマン」には慣用句も出ています。

google for sth <…>を検索する | be /get googled 《米》 <ホームページなどが>アクセスされる

 

1999 blogger 「ブロガー」「ブログ作者」

「ウィズダム」を除いて全部に載っています。「ウィズダム」には blog はありますが, blogger はありません。その代り,「ルミナス」「ロングマン」には出ていない, blog の動詞用法が出ています。いずれにせよ大差ないですが。

 

2000 bling

  • ジーニアス –  bling (-) bling 《主に米略式》 [形][名]人目を引く高価なアクセサリー(をつけた)《♦ 単に bling という》
  • ルミナス –  bling bling [名] 高価[派手]な装飾品,ピッカピカ《宝石など》
  • ウィズダム –  bling 《くだけて》(宝石などの高価な)けばけばしいアクセサリー (bling bling)
  • ロングマン – bling bling [名] 《インフォーマル》(ラップミュージシャンなどがするような)派手なアクセサリー

ロングマンがおもしろいですね。ラップ系(派手)とセレブ系(高価)ではモノがかなり違うような気がしますが...

 

2001 9/11  読みは nine eleven

当然,全辞書にあります。「ウィズダム」が 「NY の貿易センタービルと Washington D.C. の国防総省」という場所を特定してやや詳しいですが。まあ引き分け。

 

2002 metatarsal

  • ジーニアス –  metatarsal 《解剖》 [形][名] 中足骨(の)
  • ルミナス –  なし
  • ウィズダム –  なし
  • ロングマン – metatarsal 《専門》[名] 中足骨(足首と足指の間にある骨) – metatarsal [形] 《通例名詞の前で》《専門》 中足(骨)の

おお,ロングマンの勝利。これは新語ではなく,単なる専門用語。これがなぜこの年に流行ったかというと,2002年の日韓ワールドカップでベッカムの不調の原因がここの怪我だったということ。のちに,ルーニーもこの怪我に泣くことになったというはなし。

 

2003 to sex something up

  • ジーニアス –  sex [動](他)《略式》<人>の性的魅力を増す (+ up) [語法] 動詞 sex には「性交する」の意味はない。
  • ルミナス –  なし
  • ウィズダム –  sex A up [up A]  A<文書など>を大げさにする,おもしろくする
  • ロングマン – なし

Oxford がどの意味で取り上げているのかは不明なのですが,おそらく「ウィズダム」の意味でしょう。というわけでウィズダムの勝利。

 

2004 chav

  • ジーニアス –  chav [名]《英俗》流行を追う無教育の若者
  • ルミナス –  chav [名]《英俗》[軽蔑]チンピラ,チャブ《派手な装飾品を身に着け,野球帽をかぶるなどした無教養な若者》
  • ウィズダム –  なし
  • ロングマン – なし

新語では大敗するかに見えたルミナスが,意外に健闘。ルミナス一勝。

 

2005 biosecurity

  • ジーニアス –  なし
  • ルミナス –  なし
  • ウィズダム –  なし
  • ロングマン – なし

ちなみに,逆の状況である biohazard は「ルミナス」「ウィズダム」にあります。ゲームじゃなくて,生物実験,院内感染などによる危険性のこと。

 

2006 bovvered

  • ジーニアス –  なし
  • ルミナス –  なし
  • ウィズダム –  なし
  • ロングマン – なし

bovver なら,ロングマン以外にはあります。若者の暴力行為,喧嘩沙汰のこと。英・古 という表記つき。

 

今度は,Oxford から離れて勝手に思いつくものを調べてみます。結果的に日本語でも使われるようなものばかりになってしまいましたが。✔ は載っているものです。

 

新語 意味 Genius Luminous Wisdom Longman
crawler 検索エンジンのサイト巡回システム × ✔*
copyleft 自由著作権(運動) × × ×
adult child 幼少期の心的外傷による未成熟 × × ×
day trading 日計り商い
MERCOSUR 南米の関税同盟 × × × ×
transgender 性同一性障害の一種
iPod   ×
V-chip 児童向けでない番組を規制するテレビ用LSI

 

transgender については,Wikipedia などをご参照ください。語義が変化していて,「ジーニアス」「ルミナス」は古い意味のようです。現在の語義はウィズダムの「性転換手術までは行わないが,異性の社会的・性的役割を実践したい[できる]人についていう」がこの中ではいちばん近いように思われます。

 

 

 

 

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英和辞典を比較する (8)

3月
2008
22
この記事の印刷用バージョン

「ジーニアス」「ルミナス」「ウィズダム」「ロングマン」の4英和辞典の比較のシリーズ第8弾!

現在の学習用英和辞典には,さまざまな「囲み記事」「コラム」的な追加情報が載せられています。既に取り上げた語法以外にも,「文化」に関する情報であったり,会話上の注意事項であったり,各社がそれぞれ工夫を凝らした「囲み記事」を掲載し,これがあるためにかつての小さな文字の羅列という印象が薄れ,辞書自体がちょっと楽しいカタログ的読み物になっています。今回はその中から「類語」の比較を取り上げます。「傷つける」という意味を持つ injure と wound と hurt はどこが違うのか,というようなポイントですね。

まず,類義語としてどんな単語を選ぶのか,という問題があります。

各辞書の A のページから「類義語」の囲み記事になっているものをピックアップしてみました。ただし,ルミナスは囲み記事になっておらず,解説の末尾に小さめの活字で類義語が説明されています。(そのため見落としがあるかもしれません。)

ジーニアス は, ability, capacity, talent, gift / act, action / admittance, admission / almost, nearly / alone, lonely / area, region, district, zone / ashamed, embarrassed, shy / attempt, try / authentic, genuine の9項目

ルミナス は, ability, faculty, capacity, talent, capability / about, almost, nearly / accept, receive / accompany, attend / achieve, accomplish, attain / acknowledge, admit, confess / act, action, behavior, conduct / advice, counsel, recommendation / angry, furious, mad, indignant / answer, reply, respond / anxious, concerned, nervous / appointment, engagement, date / argument, dispute, debate, discussion, controversy / arms, weapon / arrive, reach, get to / aware, conscious の16項目

ウィズダム は, ability, capability, capacity, skill, talent, gift  / about, on, of, over / above, over / achieve, accomplish / across, over, through / action, act, deed, behavior, conduct / after, later, in, from now / ago, before, earlier / alive, living / allow, let, permit / almost, nearly / among, between, amid / anger, rage, fury, wrath / anyway, anyhow / apt, likely, liable / area, region, district, zone / at, in / aware, conscious の18項目

ロングマン は, about, on, concerning, regarding / accident, event, incident / act, action, behavior, conduct, deed / allow, permit, let / area, region, district, zone の5項目

「ジーニアス」「ロングマン」に比べ,「ルミナス」「ウィズダム」は多めです。しかし,実際探してみて気づいたのですが,たとえば alive と living のように意味よりも語法上の違いが大きいものは,「類語比較」の項目ではなく,「語法」囲みに載っている場合があります。また,囲みにせず,本文中に記載してある場合(特に前置詞)もあります。そしてもちろん,area と region の違いを area の項目ではなく region の項目で説明していることもあります。ここでの多い少ないはあくまでも A のページに載っていたのはたまたまこれらだったというにすぎません。

4つの辞典で共通していた area を取り上げてみます。

 

ジーニアス

【類語比較】 [area, region, district, zone] area は「地域」を表す最も一般的な語。region は地理的・文化的・社会的特徴によって区分された地域を表す。district は region と同じように使うこともあるが,行政上の区域についてはもっぱらこの語を用いる。zone は特別な現象の生じる地帯や特別な用途・目的のための地域を表す: Major industrial areas [districts, regions, zones ] of Japan are in Tokyo, Osaka and Nagoya. / Each election district [×area, ×region, ×zone] elects one member. / Los Angeles is in an earthquake zone [ area, ×district, ×region].

ルミナス (region の項)

【類義語】 region かなりの広さを持つ地域で,何か他と区別する特徴を持つ地域を意味する: a wooded region 森林地帯 district region よりも小さく,明確な行政区画,あるいは地域の特徴などによって明らかに区画されている地方などに用いる: an electoral district 選挙区 area 広い狭いには関係なくある region や district をいくつかに区分した場合の1つの地域: a cultivated area 耕作地域 quarter 都市の区分で,同じ種類のものが集まっている地域: the Chinese quarter 中国人居住地域 zone 用途・生産物・生息している動物,繁茂している植物などで分けた地域: a demilitarized zone 非武装地帯

ウィズダム

【類義】 [コーパス] area と region, district, zone など

area は面積の大小を問わず,一般的に地域を表す語で,明確な境界線は持たない。 region は邦楽や地名をしばしば伴い,地理的特徴などが他とは区別される広い地域をさす。 district は region よりは狭い地域をさし,school, business, financial といった目的を示す語をしばしば伴う。 zone は time zone (時間帯)のようなある基準で指定された地域や,war, parking などの特定の行動を行う区域をさす。 country は farming, rugby, wine といった特別な活動や物で知られる地域のこと。

ロングマン

【類語】 area は広さに関係なく,ある特定の地域を漠然とさす : mountainous areas 山岳地帯

region は主に地理的なかなり広い地域をいう : the northwest region of Russia ロシアの北西地域

district は国や都市の行政上の区域や特定の「地区」をいうことが多い : the shopping district 商店街

zone はある目的などのために指定された「区域」や気温などで分けられた「地帯」をいう : a no-parking zone 駐車禁止区域

 

どうでしょうか。たとえば zone の説明だけを比較すると,違いがわかりやすくなるかもしれません。

説明の仕方や用例の挙げ方にいくらか個性が見られます。「ジーニアス」は説明が少し抽象的で分かりにくいのですが,ほかには見られない用例の × 印があって,それでいくらか救われています。(余談ですが,ジーニアスはこの× 印を多用していて,日本人にはいいのですが,ネイティブには批判的な人もいるようです。)

「ルミナス」は「ジーニアス」よりは具体的な説明になっています。region と district を「広い」⇔「狭い」としているのは「ウィズダム」も同じです。意味だけで説明するとすればこの辺が妥当なのかもしれません。

「ウィズダム」は用例を入れない代わりに,修飾語を列挙するという形で説明しています。これが案外わかりやすいかも。

「ロングマン」はいちばん短い説明で,その分いちばんわかりやすいですね。「地区」,「区域,地帯」などの対応語の記述はロングマンだけです。もちろん短い説明は,切り捨てているものも多いわけですから危険と言えば危険なのですが,学習英和である以上,こういう切り捨て方もアリだとは思います。

ところで,「ウィズダム」「ロングマン」の記述を読んだ後で,「ジーニアス」の記述を読み直すと,案外すんなりと読めてきます。一つの視点からだけではなく,いろんな視点からの説明によって全体像がはっきりしてきます。よく,辞書は何がいいのか,「ジーニアス」の時代は終わったとか,いやまだまだだとかいう議論が聞こえてきますが,辞書は一つより二つ,二つより....だと思いますよ。「話せればいい」「読めればいい」という考えなら話は別ですが,外国語に対して,単なる道具以上の興味を持っているのであれば複数の辞書は必要でしょう。もちろん,特に電子辞書などという高価なものも使うとなれば,財布との相談になるわけですが...

 

 

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英和辞典を比較する (7)

3月
2008
19
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「ジーニアス」「ルミナス」「ウィズダム」「ロングマン」の4英和辞典の比較のシリーズ第7弾!

 
 

語法上いちばん問題になるのはなんといっても動詞でしょう。今回は動詞の語法をどのように表記しているのかを取り上げます。不定詞目的語をとれるか,that節をとれるかなどがわかりやすく記述されているかが比較のポイントになります。とりあげるのは,advise の他動詞。語法表記を比較したいので,必要でない例文はカットします。

ジーニアス

advise

(他)(1) a) [SVO to do / SVO that 節] <人・広告などが>O<人>に・・・するように[・・・することを]助言する勧める; [直接話法で]「・・・」と勧める; [SV that節] ・・・だと忠告する

[語法] (1) (1)a)の意味では,that 節の動詞は《米・英正式》仮定法現在; should を用いるのは《英正式》。 (以下略)

b) [ SVO1 not to do / SVO1 against doing / SVO1 against O2 ] <人が>O1<人>に・・・しないよう[O2<事>をしないよう] 戒める,警告する

c) [SVO1 on [about, in] O2] <人が>O1<人>にO2<物・事>について助言する忠告する 《◆ wh節が来る場合は前置詞の省略不可》

(2) [ SVO / SV doing ]  <人が>O<事>を[・・・することを]勧める 《◆<物>をOとしない: recommend [× ~] a good book 》

(3) 《正式》《◆主に《商》で用いる堅い表現;一般には tell, inform, 《正式》notify 》 a) [SVO1 (of O2)] <人が>O1<人>に(O2<決定・日時など>を)通知する,<人>に[・・・について]知らせる[about]

b) [SVO (that) 節 / SOV (of) wh句] <人が>O<人>に・・・だと通知する

 

特徴は,advise という語をまず語法で分類し(1a, 1b, 1c, 2, 3a, 3b),その分類の下に意味を配置していることでしょう。ルミナスと比較してみるとこの特徴がよくわかると思います。見た目としては,この「ジーニアス」の分類法の方が整理された印象を与えます。

that 節の後ろが仮定法現在またはshould が来ることは,例文中には全辞書に書かれていますが,語法として記されているのは「ジーニアス」だけです。ただし,仮定法現在という文法用語ではちょっと不親切かもしれません。原形と書けばいいのですから。概して「ジーニアス」は利用者の文法力をやや高めに想定している感があります。

なお,(1)の c) に「《◆ wh節が来る場合は前置詞の省略不可》」という記述がありますが,これはほかの辞書には見当たりません。 wh 節が後ろに来るのはここだけなのですが((3) b) は句),google で “advised me which” という検索をかけたところ48400件該当し,この中にはwh 句も入っていますが,ざっと見積もるとその半分は節になっています。”advised me about which”は10件のみ,”advised me on which”だと20400件で,これらは句の方が多そうな感じです。「ジーニアス」のこの記述は勇み足の感を免れません。

 

ルミナス

advise

(他) 1 <人>に忠告する助言する; (・・・に)<–すること>を勧告する; <事>を勧める: He ~d me on this problem. <V+O+on+名・代> / [言い換え] We ~d them to start early. <V+O+C(to 不定詞)> = We ~d (them) that they should start early. <V+(O+)O(that節)> = we ~d (them), “You should start early.” <V+(O+)O (引用節)> = 《格式》 We ~d their starting early. <V+O(動名)>

[語法] (1) to 不定詞の方が動名詞よりも普通。 (以下略)

You are strongly ~d to have a medical checkup. <V+O+C (to 不定詞)の受身> / [言い換え] She ~d me which to buy. <V+O+O(wh句)> = She ~d me which I should buy. <V+O+O(wh節)> / Please me whether I should accept the offer. <V+O+O(whether節)>

2 《格式》《主に商》 <・・・>に通知[通告]する

advise をまず意味で2つに分け,その下に例文を置き,その例文を公式化した形をその後にまとめる,という形をとっています。ジーニアスよりもこちらの方が自然な分類でしょうが,自然な分,ごちゃごちゃした印象があります。advise A against B については,この分類法では収まりが悪かったのか,熟語として別扱いをしています。例文が先で,公式を後に置いているのは一長一短ありで,微妙なところです。辞書は例文を読むもの,なのですからこれでいいと言えなくはないのですが。

もうひとつ,他の辞書に見られないのは,[言い換え]が多用されていることです。何か,大昔の大学入試問題をほうふつとさせますが,でも悪くはないですね。

 

ウィズダム

advise

(他) 1 a advise A to do<専門家・物事にくわしい人などが>A<人>に・・・するよう忠告する強く勧める](日本語の「アドバイス」と違い強制を含意)

badvise (A) that 節/ wh 節・句 (A<人>に・・・ということ[・・・か]を忠告する; 《書》[直接話法] ・・・と忠告する  (1) should の省略については→suggest (2) I advise him [his] starting at once. とすることもできるが《まれ》で,to 不定詞の型がもっとも普通)

2 advise A not to do <人などが>A<人>に・・・しないように警告する,戒める;  【~ A against B/ doing】 A<人>にB<事>を[・・・]しないように忠告する

3 advise A on B / about B <人などが>A<人>にB<物・事>について専門的助言をする

4 advise A/ doing <人が>A<事など>[・・・すること]を勧める (具体的な物品の推奨はrecommendを用いる)

5 《かたく》advise A of B /(that)節/ wh 節・句 A<人>にB<事実・状況など>を[・・・だと/・・・かを]通知[通告,伝達]する一般的な tell, inform と違い,ビジネス文書などに多用される)

分類は語法→意味という「ジーニアス」型です。「ウィズダム」はいちばん整理されて読みやすい印象があります。前二者にあっただいじなところはすべて押さえていて,SVOCではなく,do や A,B という記号表記も親しみやすいでしょう。

以前に触れておくべきだったかもしれませんが,見出し語が例文中に出てくる時,「ジーニアス」「ルミナス」は「~」という記号を使っていますが,「ウィズダム」「ロングマン」は基本的に見出し語をそのまま例文中で用いています。「~」はスペースの節約上使っているのでしょうが,見出し語そのままの方がはるかに読みやすく,「ジーニアス」「ルミナス」もそろそろこちらにした方がいいと思いますよ。

 

ロングマン

advise

1 a) 他 <人>に忠告する,助言する,アドバイスする | advise sb about/on sth <…>について<人に>アドバイスする | advise sb to do sth <人>に<…>するようにアドバイスする | advise sb against doing sth <人>に<…>しないように忠告する | advise that  ・・・ということを勧める | advise caution/ patience/ restraint 用心[忍耐,自制]するよう忠告する

b) 自 略

2 a) 他 ・・・のアドバイザー[顧問]を務める | advise sb on sth <人>の<…>について顧問をする

b) 自 略

3 他 《フォーマル》<人>に伝える | advise sb of sth <人>に<…>について伝える | advise sb that <人>に・・・ということを伝える | keep sb advised of <人>に<…>を絶えず知らせる

分類タイプとしては,意味→語法の「ルミナス」型です。SVOC, A, B という記号ではなく,sb (=somebody) と sth (= something) を使っていますが,これは英英辞典で使われている方法です。前三者が「語法公式」のようになっているのに対し,「ロングマン」は文を切り出しているような印象を与えますが,これはこれで一つのポリシーになっています。自動詞と他動詞を大別してから解説するという従来の英和のやり方を捨てていますが,これも英英型です。仮定法現在の指摘がまったくないなど,語法説明は少し不親切な感じを受けざるを得ませんが,訳語のスッキリ感はあいかわらず個性的でいいと思います。「アドバイスする」という訳はこの辞書だけですね。

 

 

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英和辞典を比較する (6)

3月
2008
14
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「ジーニアス」「ルミナス」「ウィズダム」「ロングマン」の4英和辞典の比較のシリーズ第6弾。

今回は語法解説の比較で残っている,副詞と動詞の語法解説を取り上げてみます。

副詞で取り上げるのは, only の位置。only は修飾する語の直前に置くことが多いのですが,それが別の位置に移動することがありますよね。それをどう説明しているのかを比較してみたいわけです。only の位置だけでも論文が1本書ける,という話もありますが,そんなに複雑でしたっけ。

ジーニアス

[語法] (1) only は通例修飾する語・く・節の直前か,時に直後に置く: O~ he [He ~] solved that problem yesterday. 彼だけが昨日その問題を解いた / He solved ┇ ~ that problem yesterday. = He solved that problem ~ ┇ yesterday. 彼は昨日その問題だけしか解いていない / He┇ ~ solved that problem yesterday. 彼は昨日その問題を解いただけだ / He solved that problem ┇ ~ yesterday [yesterday ~]. 彼はつい昨日その問題を解いた。

(2) 《略式》では動詞の直前[be 動詞,助動詞はその後]に置かれる傾向にあり,only に修飾される語は強く発音される: He ~ solved the problem yesterday. → (1) / I can take ~ [《略式》 ~ take] two of you in my car. 私の車には君たちのうち2人しか乗せられない。

(1) の「時に直後に」というのがくせ者ですね。挙げられている例文の中ではひとつめの Only he = He only 以外は後置する例はあまり見かけません。話し言葉では,間とアクセントで識別できる(辞書にはアクセント記号がついています。めんどくさいので省きましたが)わけですが,書き言葉では He solved  that próblem ònly ┇ yesterday. と He solved that problem ┇ ònly yésterday. は区別がつかないわけですから,慎重な書き手ならば前者は避けるでしょう。(ó が第一アクセント,ò が第二アクセント。第一が一番強く,第二は二番目に強い。)

「ジーニアス」は全体的に,英語に出現する語法のあらゆるパターンの解説を目指しているようです。これは「読む」際にはおおいに助けになりますが,「書く」時,つまりnon-native として,相手に誤解を与えないような標準的英語は何なのかを知りたいときには,逆に足かせになるかもしれません。non-native が「発信」する時には,できるだけ標準的な英語での「発信」をこころがけるべきで,「そういう言い方もあるが,特殊な状況・文脈でのみ使える」とか「ある種の意図せざるニュアンスが含まれてします」英語は避けた方が無難でしょう。非常に詳しい記述は,「受信」型には懇切丁寧,「発信」型には不親切,になりえるということです。

 

ルミナス

[語法] only の位置

(1) (a) 《格式》では only は修飾する語の直前に置き,「…だけ」と強調する語が強く発音されるのが普通: O~ Tom saw the panda. トムだけがパンダを見た / Tom ~ saw the panda. トムはパンダを見ただけだった。(写真をとったりはしなかった) / Tom saw ~ the panda. トムはパンダしか見なかった。

(b) 話しことばでは(時に書きことばでも)動詞の後に来る語句を強調するときでも,only を動詞の前(助動詞や be 動詞の後)に置く傾向がある: Tom ~ saw the pánda. トムはパンダしか見なかった。 / Tom ~ saw [has seen] pandas on télevision. トムはパンダをテレビでしか見ていない。

(2) 《格式》では only が文頭に来る場合,語順が転倒することがある: O~ in sóme zoos can we see pandas. いくつかの動物園だけでしかパンダは見られない。

「ジーニアス」とは異なり,後置修飾の only については書かれていません。これは「ウィズダム」も同じです。

(2) の書き方は少しミスリーディングです。語順の転倒が起きるのは,原則として文頭に only のついた副詞的要素が来る時であって,たとえば主語に only がついても倒置にはなりえないからです。また,文頭に only つき副詞(句・節)を置くこと自体が《格式》ですから,「《格式》では文頭に only のついた副詞的要素が来ることがあり,その際は必ず語順が転倒する」という表記にした方がいいと思います。

 

ウィズダム

[語法] only の位置

(1) 主語を修飾する場合,《書》《話》を問わず直前に置かれる » Only my mother knew the truth. 母だけが真実を知っていた。

(2) 主語以外の語句を修飾する場合,《書》では修飾する語句の直前に置かれる。《話》では be 動詞,助動詞の後か一般動詞の前に置かれ,修飾語を強く発音することで区別する。» 《書》 I have visited Italy only once. ≒ 《話》 I’ve only visited Italy once. イタリアに行ったのはたった1回だけだ。

(3) 次のような例での意味の違いに注意 » Lisa is only a child. リサはまだ子供だ (only は[副]) / Lisa is an only child. リサは一人っ子だ (only は[形])  /  Lisa was the only child in classroom who knew the answer. リサはクラスで答えがわかったただ1人の子だった ( only は[形])

(1), (2) で主語を修飾する場合と,主語以外を修飾する場合を分けて書いてあるのが特徴です。動詞付近に only が移動する現象は主語に only がかかる時には起きないという指摘です。確かに,言われてみればそのとうりですね。「ウィズダム」はときどきこの「そういえぱそうだよな」という指摘をしてくるようです。(3)については,「ジーニアス」では形容詞の only の項で説明されています。

 

ロングマン

only の位置を説明する項目・記述はありません。

ただし,例文には,直後を修飾する only と,動詞の直前(be, 助動詞の直後)に位置する only の両方の例が挙げられてはいます。たとえば, only because の例として,「 I only came here because I wanted to be near you. ここに来たのは,ただあなたの近くにいたかったからです。」が載っています。「自然な英語」のコーパスを用いているというのがロングマンの自慢のようです。

 

あ~,動詞に入らないうちに,もう時間になってしまった。まだまだつづきます。

 

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英和辞典を比較する (5)

3月
2008
13
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「ジーニアス」「ルミナス」「ウィズダム」「ロングマン」の4英和辞典の比較のシリーズ第5弾。今回は,語法の最後として,名詞・形容詞・動詞の語法の表記について考えてみたいと思います。

まず必ず必要になるのは,名詞の場合は可算不可算,形容詞の場合は比較級の有無および形と限定用法叙述用法のどちらで使えるかです。

まず,名詞の可算・不可算の表記については,4辞典とも四角で囲った[C], [U]で,両方で使える場合は[CU]または[UC]になっています。では,snow のように通常不可算だが,形容詞を伴った具体的な一回一回の雪は a heavy snow のようになるという場合はどうでしょうか。

ジーニアス

snow 1 [U] | play in the ~ 雪の中で遊ぶ / The ground was covered in [with] ~. 地面は雪で覆われていた / walk through deep ~ 深い雪の中を歩く  2 [a ~;形容詞を伴って] (1回の)降雪; [無冠詞で](ある期間の)降雪量; [the ~s] 降雪期 | We had a heavy [much, ×big] ~ yesterday. 昨日大雪が降った / We had heavy ~ last winter. 去年の冬(全体で)雪が多く降った

 

ルミナス

snow 1 [U] ; 降雪; 積もった雪; walk in the ~ 雪の降る中を歩く / a blanket of ~ 一面の雪 / We didn’t have much ~ last year. 去年はあまり雪が降らなかった / They traveled over the ~ on skis. 彼らはスキーをはいて雪の上を行った / Four inches of ~ fell overnight. 一晩で4インチ雪が積もった。[語法]降雪を1回,2回と数えるとき,またはいろいろな状態の雪をいうときには[C]となることもある; We had a heavy ~ last week. 先週大雪が降った。

 

ウィズダム

snow 1 [U] 降雪量(→ sleek, flake); [C] [通例 ~s](1回分の)降雪期間 》 Snow fell throughout the night. 一晩中雪が降り続いた / We had no snow this winter [a light snow yesterday]. この冬は雪が降らなかった[昨日少し降った] / shovel [remove] snow 雪かきをする / The streets are covered in [ with, (時に) by ] snow. 街路は雪に覆われている / The snow lay thick on the ground. 雪が地面に厚く積もっていた / go out to play in the snow 雪遊びに出かける / 10 inches of snow 積雪10インチ / the heaviest snows of the year 今年一番の大雪

 

[表現] 雪の種類

a heavy [× big] ~ 大雪 / deep [soft] ~ 深く積もった[やわらかな]雪 / powdery ~ 粉雪 / a fresh ~ 降ったばかりの雪,新雪 / wet ~ 湿った雪

 

ロングマン

snow 1 [U] : footprints in the snow 雪の上の足跡 / There is a chance of snow tonight. 今夜は雪が降る可能性があります。 | deep snow 深い雪 | heavy snow 大雪 | snow falls 雪が降る: Over six inches of snow fell last night. 昨夜,6インチ以上の雪が降った。 | a fall of snow 降雪 | a flurry of snow にわか雪 | snow shower にわか雪,小雪 | snow flurry にわか雪 2 [C] (1回の)降雪: the first snows of winter 初雪 [同意] snowfall

 

「ジーニアス」と「ロングマン」は不可算のsnow と可算の snow を別項目として扱い, 「ルミナス」「ウィズダム」は1つの項目の中で扱っています。特別に語法ポイントとして説明しているのは「ルミナス」だけ。

ただ,この項目は各辞典の例文がなかなか面白いですね。それぞれに異なる例文が多く,「ウィズダム」の[表現]欄は便利だし,「ロングマン」も同等の工夫があります。「ジーニアス」の最後の2つの例文違いは特に興味深いと思いますが,どうでしょうか。

 

今度は形容詞の語法を見てみましょう。

形容詞の語法表記はジーニアスが [限定] [叙述] (どちらでも使えるものは表記なしで,この点は他の辞書もおなじ),ルミナスが四角で囲った [A] [P] ,ウィズダムは [名詞の前で] [be ~],ロングマンは 《[名]の前でのみ》 《[名]の前不可》 になっています。「ウィズダム」「ロングマン」は「限定用法」「叙述用法」という文法用語を避けたわけです。

また,叙述用法の形容詞は,名詞に対して後置修飾できるという問題に関しては,たとえば見出し語 present の項目を見てみると,

ジーニアスは, 「the members ~ 今出席している人たち( the ~ members は「現在の会員たち」)」という例をあげるだけですが,ルミナスは「[語法]名詞や代名詞を直接修飾する時はそのあとに置く」という説明をつけた上で例を挙げています。ウィズダムは,「the staff members present 出席している[いた]職員たち (present の前に who are [were] が省略されている; the present staff members なら「現在の職員」の意味になる)」という指摘です。ロングマンはこの点の指摘はありませんが,表記が先ほど挙げた《[名]の前不可》ですから,後ろはOKという意味に読めることは読めます。

 

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英和辞典を比較する (4)

3月
2008
11
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「ジーニアス」「ルミナス」「ウィズダム」「ロングマン」の4英和辞典の比較。

文法系(正確には文法ではないが)の記述のつづきです。今回は come と go の使い分けがどう書かれているかをチェックします。

よく知られていることだと思いますが,英語の come が日本語の「行く」にあたる場合があります。

自分が今話している相手のところへ「行く」場合には, come を用いる,ということです。たとえば,人に呼ばれた場合,「今行きます」は, I’m coming. と言い,I’m going. とは言いません。知っている人には当たり前のことなのですが,実際に使う時には案外間違えやすいポイントです。

これを各辞典の記述の中に探してみます。

ジーニアス

come (1)(a) <人・動物・車などが>(話し手の方へ)(やって)来る; (聞き手の方へ)行く

この項目に関しては,「ジーニアス」は本文中のこの部分だけで,特に囲み記事などはありません。come の意味の一番めにふつうの「来る」と並べて書いてあるだけで,特に注意すべきポイントだとは考えていないようです。「来る」「行く」の例文として,9個程度の例文が並んでいますが,そのうちcome = 「行く」の例文としては

  • “C~ downstairs. Dinner’s ready.” “I’m coming.” 「下へ降りておいで,夕食ですよ」「今行きます」《この場合 ×I’m going. とは言わない》
  • I’ll ~ to the party. バーティに出席します 《聞き手の主催するまたは出席予定のパーティーについて言う発話で,go では関係のない相手に述べていることになる》
  • I’m coming to Kobe next week. 《手紙で神戸の友人に書く時の表現》

などの例が挙げられています。

結局,「ジーニアス」は「来る」の come と「行く」の come を統一的に説明したいのでしょう。しかし,そのわりには統一的な説明になるような共通項についての記述がありません。

 

ルミナス

come 2 (相手の方へ)行く,伺う,参上する: I’m coming[Coming]. 今行きます《呼ばれた時の返事》 / I’ll ~ tomorrow afternoon. 明日の午後伺います。 / I came to your office yesterday, but you went out. 昨日おたくの事務所に伺ったのですが,ご不在でした / [会話] “Why don’t you ~ with us?” “Oh, I’d love to (~).” 「いっしょに行きませんか」「ええ,喜んで(行きます)」 / May I ~ to the party? パーティーに伺ってもよろしいですか。

 

[語法] come と go の違い

dic4.JPG

go が話し手を中心に考えて「自分が・・・の方へ行く」という意味であるのに対して,この用法の come は中心を相手に置き — 相手に対して親しみや敬意を持っているときが多い — 「自分が相手の方へ行く」という意味を表す。従って come が日本語の「行く」に相当することもある。

「ルミナス」は「来る」の come と「行く」の come を別項目として扱っています。そして「行く」の come については絵入りの囲み記事(上の絵は私が書いたもので,現物はもっとまともな絵です)で丁寧に説明しています。学習用にはこれが一番わかりやすいと思いますが,どうでしょうか。

 

ウィズダム

[語法] (1) come と go の視点  come は発話の時点または発話の中で話題になっている時点において,話し手・聞き手や話題になっている場所に近づいていくことを表し,必ずしも日本語の「来る」と一致しない。 go が話し手や聞き手の視点から離れていることを表すため,否定的な態度や疎外感を暗示することが多いのに対し,come は逆に話し手・聞き手の視点に近づいていくことを表すため肯定的な態度や親近感を暗示することが多い。これらの特性はcome を使った多くの句動詞でも受け継がれる。

 

come 【話し手・聞き手・その場に近づく】 1 a [場所など]《話し手・話題の場所の方に》来る,《聞き手の方に》行く

come = 「行く」の例文が以下に続きます。

  • “Susan, are you ready?” “I’m coming [× going].” 「スーザン,用意はいいかい」「今行くわ」(聞き手の方に近づくので go は用いない)
  • “I’m going to Ginger’s house tonight. Would you like to come with me?” 今晩ジンジャーの家に行くのだけれど,一緒に行くかい(前半はジンジャーの家に行く移動自体に触れているので go を使うが,後半は話し手の移動に聞き手が加わることについて述べているので come を用いる)

基本的には「ジーニアス」と同様に,「来る」の come と「行く」の come に対して統一的な説明を与えようと試みていますが,「ジーニアス」に欠けていた共通項の説明を語義の前,冒頭に持ってきています。こういう説明はどうしても抽象的にならざるを得ませんが,評価はできます。

 

ロングマン

come 1 (話し手の方へ)来る,やって来る,(相手の方へ)行く

囲み記事も解説なし,例文は I’m coming. だけ。う~ん。

 

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英和辞典を比較する (3)

3月
2008
7
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「ジーニアス」「ルミナス」「ウィズダム」「ロングマン」,4つの英和辞典を比較するシリーズ。

今回は,文法関連の記述を比較してみます。「ルミナス」にはたとえば「仮定法過去」とか「原形不定詞」とかを扱う文法専門の囲み記事が本文中に多数あります(第1版で巻末付録だったもの)。それ以外の3冊にはこのようなものはありません。ワンランク下の辞書についている場合があります。

そこで,個々の語の中にある文法解説を取り上げてみましょう。どれを取り上げるか,ちょっと迷いますが,could にしてみました。

could はもちろん can の過去形ですが,「できた」とイコールではないことはよく知られています。たとえば,「昨日横浜に行って,おじに会うことができた」という内容を述べたいとき,*I could meet my uncle in Yokohama yesterday. とは言えません。could は「実際に~できた」の意味ではなく,「~する能力があった」の意味ですから,「おじに会う能力があった」ということになってしまうわけです。さらに,この could が否定文になった場合はどうか,知覚動詞が後ろに来る場合はどうかなどが注意すべき点なのですが,これがどのように記述されいてるか見てみましょう。なお,下線部は筆者によるものです。

 

ジーニアス

could [語法] (1)[couldとwas able to] 「(・・・する能力があり,それゆえ実際に)ある1回限りの行為をした,できた」場合はcould は不可: I was able to [× could] pass my driving test. 車の運転免許試験に通ることができた《◆ I could pass … という文単独では「私なら[その気になれば]運転免許試験に通ることができるのに」などの意味になるのがふつう; この意味の場合 could は仮定法》。 so … that … のthat 節内でも同様に不可: She was able to [× could]  swim across the river then. その時彼女は川を泳いで渡ることができた。 was able to 以外に, managed to do, succeeded in doing も用いることができる。しかし「・・・できた」は英語では I passed my driving test. のように単に動詞の過去時制であらわすことが多い

(2) [couldn't と was not able to] 「できなかった」では両者は交換可能: She couldn’t [was not able to] swim across the river. しかし完全に同義ではなく,was not able to swim では実際に泳いでみたが川の流れが急などの理由で渡れなかったことを, couldn’t ではこの意に加えて,もともと泳ぐ能力がなくそれゆえ泳いで渡れなかったことなどの意を含む。

囲み外

[ S could + 感覚や理解などを表す状態動詞(hear, see, feel, smell, taste; understand, guess など)] ・・・が聞こえて[見えて]いた 《◆(1) 過去進行形の代用。 (2) 通例 could の代わりに was [were] able to は用いられない》 I could hear the door slamming. ドアがバタンバタンと音を立てるのが聞こえていた《◆ある一定期間聞こえていたことを含意; × I was hearing … の代用; cf. I heard [× could hear] a door slam shut. ドアがパタンと閉まるのが聞こえた》 / I could see the divers’ bubbles coming to the surface. 潜水夫の出すあぶくが水面に上がってくるのが見えていた / We could understand everything he said. 我々は彼の言ったことはすべて分かっていた。

全体的に,説明もポイントを押さえたわかりやすい説明になっています。

1つめの下線部は,意外に重要な指摘かもしれません。これは日本語の「できる(た)」と英語 can (could) の表現頻度の差異の問題がからんでいます。話は少しズレますが,native は Can you speak English? よりも Do you speak English? を用いることが多いと言われます。むろん相手に失礼になるかどうかの問題もかかわりますが,ことさら can を使えば「能力の有無」に重点を置いてしまうことになるからでしょう。この could でも,同様のことが言えます。上の例文は pass my driving test というそれ自体能力に関連した表現なのであまり適切な例とは言いにくいかもしれませんが,日本語に訳すときに,英文に can, be able to が使われていなくても「できる」と訳した方がいい場合はよくあります。この指摘はほかの辞書にはありません。

第2の下線部は,「ルミナス」の(4) 「過去のある時点のことに言及する」や「ルミナス」can の語法3 「『知覚している状態』を表す」,「ウィズダム」の「過去の特定時における(継続的)行為を表す」にあたっています。「過去進行形の代用」という言い方は多少言い過ぎの感もありますが,とらえやすさという面では他の辞書より(おおざっぱな分)すぐれているかもしれません。

 

ルミナス

[語法] (1) 用法について詳しくは→can

(2) 肯定文では過去の時を指していることが文脈によって示されない場合には could はむしろ B1 の仮定法過去の意味になるのが普通で,直接法の意味では代わりに was [were] able to とか managed to とか succeeded in …ing を用いるのが普通: He was able to solve [managed to solve, succeeded in solving] all the problems in an hour. 彼は1時間で問題を全部解くことができた。

(3) could は肯定文では過去のある時期に「・・・の能力があった」というときには用いるが,たまたまそのとき(1回)だけ「・・・できた」という場合には用いない。従って John was able to win the game. (ジョンはその試合に勝つことができた)とは言えるが, John ~ win the game.とは言えない。

(4) 感覚・知覚動詞と共に用いた場合は過去のある時点のことに言及する《→can 語法3》 I ~ see a few stars in the sky. 空に星がいくつか見えた。

can 語法3 普通進行形にしない see, hear, feel, smell, taste, understand, believe などの感覚・知覚動詞と共に用いた場合は意味が弱く,全体としての意味は動詞だけの時とほぼ同じで「知覚している状態」をあらわす: I (can) see two birds over there. 鳥が2羽向こうに見え(てい)る / C~ you hear someone coming this way? だれかがこっちへ来るのが聞こえるかい / I ~ feel something crawling up my leg. 何かが脚をはい上がっているのが感じられる。次の文は「瞬間的な知覚」を表している: I see a bird! あっ,鳥だ。

「ルミナス」は「ジーニアス」とそれほど変わりません。(2)と(3)に分けている理由がよくわからず,それゆえ「ジーニアス」より整理されていない印象を与えますが,基本的には同じでしょう。

なお,このポイントは「英英辞典」ではあまり突っ込んだ解説がありません。(まあ,これ以外でも語法説明は英和辞典の方が詳しいわけですが。) LDOCE や COBUILD にはまったくなく,OALD は”generally に able”な場合がcould,”on a particular occasion” では,was able to や managed to とさらっと書かれています。これはこれでわかりやすいのですが。

 

ウィズダム

could 「できた」

(1) could は人が過去にあることをする能力や機会を持っていて,しようと思えばいつでもできたことを表す。過去のある特定時に,努力の結果実際に何かができたという場合には,could を使わず was able to, managed to などを使う。→ The injured man was able [managed] to walk to a phone box. その人はけがをしていたが電話ボックスまで歩けた[どうにか歩けた]。

(2) not および hardly, barely, only, just の準否定を伴う場合と,before (・・・しないうちに)の節内では,過去の特定の行為に使える→ I could hardly breathe. ほとんど息ができなかった / Before I could finish, she had broken in. 私が言い終わらないうちに,彼女が割り込んできた。

(3) see, hear, feel などの知覚動詞や understand, remember などの認識動詞では肯定文でも用いられ,過去の特定時における(継続的)行為を表す → I could hear someone in the garden last night. 昨夜庭にだれかいる物音がしていた。

(4) could tell (わかった), I’m so glad you could come. (よくお越しくださいました)などの決まり文句では could が肯定文でよく使われる → I could tell he was drunk. 彼が酔っているのがわかった。

(5) Could you … ? の疑問文で特定の行為の達成を問うことはできるが,「依頼」の意味にとられやすいので, Were you able to …? を用いた方がいい

もちろん基本的には「ウィズダム」も「ジーニアス」「ルミナス」と同じですが,下線を引いた個所は他の辞書にはない部分です。どれも言われてみればあたりまえ,と思いますが,初学者にはこういう指摘はありがたいのかもしれません。

 

ロングマン

could 1 《can の過去形》 (能力的に)・・・することができた,(許可を示して)・・できた,・・・することが許されていた

「ロングマン」は特に囲み記事として注意を促す部分はなく,語義説明の中に「(能力的に)」と書かれているだけです。「ジーニアス革命」以来,各社の学習英和が語法重視に流れている中では異質に見えますが,これが初版ゆえの準備不足に由来するのか,「英和」の本来(?)の役割に立ち返ろうとする確信犯的原理主義(!)なのかは不明です。

逆にいえば,「語法重視」がスタンダードとなって,「ロングマン」以外が少なくともこの項目のような語法・文法説明に関しては似てきてしまったということは,英和辞典のある種の飽和状態が近づいている証左なのかもしれません。

 

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英和辞典を比較する (2)

3月
2008
6
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単語の引き比べ –  訳語・語義はどのように選定されているか

それでは実際に単語を引き比べてみます。ここで調べたいのは,訳語がどうなっているかです。したがって,例文や解説,語法説明,囲み記事などがあってもカットすることにします。

日本語にしにくい単語,今までの辞書でイマイチだった経験のある単語を選びたいのですが,今ここでパッと思いつくのがあんまりありませんでした。思い出したら,またやってみたいと思います。この単語はどう?というご注文・ご提案がありましたらどうぞ。

形容詞 classic

ジーニアス

(1) <文学・芸術などが>最高級の,第一級の,見事な (2) 典型的な(typical),模範的な,標準的な (3) 古典の,古典的な(classical) (⇔ romantic) (4)(文学上・歴史上)由緒ある,伝統的な,有名な (5) <衣服・スタイルなどが> (流行に左右されずに)伝統的な,簡素で上品な

ルミナス

1 (スタイルなどが)伝統的な,はやりすたりのない 2 一流の(first-rate),優れた 3 典型[代表]的な 4 古典の,古典的な《古代ギリシャ・ローマ時代の芸術・文化を指す》

ウィズダム

1 典型的な標準的な<事例など> 2 (古代ギリシャ・ローマの)古典の,古典に関する 3 一流の,最高級の,見事な<芸術・文学など>; 模範的な定評のある<研究など> 4 (時代に流されずシンプルで)伝統的スタイルの,定番の<衣服・デザインなど> 5 (文学的・歴史的に)名高い,由緒ある

ロングマン

1 (作品などが)愛され続ける,傑作の,最高水準の 2 (芸術・服装などが)流行に流されない,オーソドックスな,正統派の 3 典型的な,代表的な 4 すばらしい,見事な

「ジーニアス」はまあ標準的というか,伝統的というか,ふつうの定義で,それこそ classic な説明になっています。classic と classical の違いは有名ですよね。「ルミナス」はかなり「ジーニアス」を意識しているらしく,ここだけではないのですが,「ジーニアス」に似た説明が多くなっている気がします。「ウィズダム」の「定番の」,「ロングマン」の「正統派の」なんていう訳語はなかなかいいかんじです。

各社とも独自のコーパスを使っていることを売り物の一つにしています。しかし,コーパスは「この語の後ろには不定詞が来る」といった「形」として現れる語法などを扱うのは得意ですが,「意味」についてはあまり使えません。最近はなにかと,コーパスという言葉が magic word となっていて,謳い文句に何億語のコーパスを使ってどうのこうのと言っていますが,大量のコーパスを使えば使うほど意味の処理は機械的にはいかず,難しくなるはずです。今のところコンピューターは意味を全く扱えないと考えた方がいいと思います。

これらの辞書はみな,コーパスを使って語義を頻度順に配列するとしていますが,たとえば「はやりすたりのない」という語義は,「ジーニアス」で5,「ルミナス」で1,「ウィズダム」で4,「ロングマン」で2と,見事にばらばらです。意味というものは,もともとそんなにきれいに分類されるものではない(つまり,1の意味と3の意味を両方含むなんてことがありうる)わけですから,べつに不思議ではないのですが)。

辞典作成者は意味を選定するにあたって,各種英英辞典・先行英和辞典を参考にしつつ,若干のコーパスを使って語義とその配列を決定しているはずです。最終的には個々の項目の著者の経験とセンスが物を言うので,コンピューターでできることは限られています。

 

名詞 agenda

ジーニアス

(1) 協議事項,議事(日程(表)),議題 (2) (業務の)予定表,備忘録,覚書,予定,するべきこと;(行動の)指針

ルミナス

1  (政治上の)検討課題;予定,行動計画 2 協議事項,議題;議事(日程)

ウィズダム

1 (しばしば政治における)重要課題 2 (会議などの)協議事項;予定(表),覚え書き

ロングマン

1 行動指針,政策 2 課題,問題点 3 議題,協議事項,アジェンダ

agenda は,もともとは「議題」の意味だったが,今では「課題,行動方針」の意味の方が優勢である,というのが私の個人的な考えです。「ジーニアス」以外はそうなっています。

概して言うと,「ジーニアス」の説明は長く・詳しい,「ロングマン」は短く・あっさりという感じですね。詳しい説明が不可避になることはよくありますし,とくに上級者は単に語義を文脈にあてはめるのではなく,与えられたたくさんの語義を手がかりに,その語の中核的イメージを作り上げることが可能です。載っている意味の一つを選び出すというよりも,載っている日本語から英単語の意味を多分に感覚的にとらえるわけです。その点では長く詳しい説明はたくさんのヒントとなっていいのですが,逆に初級者にはどれを選んでいいのかわからなくなって,かえって足かせになるかもしれません。詳しければいい,というものではないわけです。「ロングマン」の見切り方も一つの方針としてはありうると思います。

 

名詞 identity

ジーニアス

(1) 本人であること,同一物であること;自己同一性,帰属意識,(自己の)存在証明,生きた[ている]証し;独自性,自己認識;身元,正体;《略式》 = ~ card[certificate] (2) 個性;独自性,固有性,主体性;(作家・芸術家などの)作風;芸風 (3) […と]同一である[類似している]こと,一体性,[…との]同一性 [with]; 一致点 (⇔ difference)  (4) 《豪略式》(ある地域で)よく知られている人,名士 (5) 《数》恒等式; 単位元

ルミナス

1 身元,正体; 同一人[同一物]であること,本人であること《略 ID》 2 独自性主体性;個性,アイデンティティ 3 《格式》同一であること,一致(sameness);一体(感); 《数》等値

ウィズダム

1 身元正体当人[当の物]であること (《略》 ID) 2 アイデンティティ自己同一性独自性個性 3 《かたく》《・・・と》同一であること;《・・・との》酷似一体感 «with» 4 《数》恒等式単位元

ロングマン

1 身元,素性 2 個性,独自性,アイデンティティー 3  《フォーマル》同一性,一致

これなんかは「ジーニアス」の長所と欠点が如実に表れている項目ですね。「下手な鉄砲」とまでは言いませんが,いくらなんでも列挙しすぎの感があります。「帰属意識」「存在証明」ねえ... 

「ルミナス」の「同一人[同一物]であること」というのも,昔から辞書にはそう載っているわけですが,ちょっと misleading ですね。これだと「AとBが同一であること」のようにも読めますが,identity は「AがAであること」です。「ウィズダム」の「当人であること」の方がいいと思います。どっちにせよ,舌足らずですが。COBUILD では,Your identity is who you are. です。お見事,というか,この単語はもともと英英で引くしかない単語なのでしょう。

ここでも,「ロングマン」は何か悟っているかのように,あるいは諦めてでもいるかのように簡潔です。いさぎよささえ感じさせます。

 

形容詞 available

ジーニアス

(1) 入手できる,購入できる,利用できる (⇔ unavailable) (2) [補語として]<人が>(手があいて)会う[来る]ことができる,忙しくない(free);[遠まわしに]結婚相手になりうる,未婚の

ルミナス

 1 手に入れられる,入手できる 2 (物や場所などが)利用[使用]できる,役に立つ 3 (人が)手が空いている,忙しくない,(面会などに)応じられる;(会などに)出席できる;(妻・異性の友人がいないので)結婚[交際など]の相手になれる

ウィズダム

1 《・・・に/・・・するのに》利用可能な役立つ «for, to/ to do»;《・・・の種類で/場所で》(容易に)入手可能な求める[得る]ことができる «in/in, at» (⇔ unavailable)  2 [be ~]<人が>(手がすいて)話す[会う]ことができる体があいて(free) 3 《くだけて》<人が>交際相手のいない恋人募集中の口説きやすい

ロングマン

1 <物が>入手できる,利用できる,購入できる [ + for ] 2 《名の前不可》<人が>時間がある,手が空いている [+for]  3 《名の前不可》<人が>都合がつく 4 <人が>(配偶者・恋人がいなくて)フリーの

「入手」「購入」「利用」「交際」などをひっくるめてスパッとひとまとめで言える日本語があればいいのですが,そうもいかないのでどの辞書も苦労しています。「ロングマン」の「都合がつく」なんてのはいいとおもいますが,日本語の「都合」という語も漠然としていますね。ちなみに,

OALD は 1 (of things) that you can get, buy or find   2 (of a person) free to see or talk to

LDOCE は 1 something that is available is able to be used or can easily be bought or found   2 someone who is available is not busy and has enough time to talk to you  3 someone who is available does not have a wife, boyfriend etc, and therefore may want to start a new romantic relationship with someone else

COBUILD は If something you want or need is available, you can find it or obtain it.

です。英和よりもすっきりはしていますが,みんな or を使っていて「スパッ」とまではいきません。

 

動詞 appreciate (他動詞のみを掲載)

ジーニアス

(1) <人が>O<物・事>を[・・・であることを,・・・かを]正しく理解する,正しく認識する;・・・を察する(understand);・・・を鑑賞する,・・・のよさを味わう (2) (正しい判断・分析などによって)<人が><人・物・事>の価値を認める,・・・を正しく評価する (3) <人が>O<物・事>をありがたく思う,<人が>・・・することを感謝する (4) 《やや古》・・・の価格[相場]を上げる

ルミナス

1 <…>を認識する,理解する,識別する,感知する 2 <…>の真価を認める,(正しく・高く)評価する 3 <芸術[文学]作品など>を鑑賞する,<…>のよさを味わう 4 <好意など>をありがたく思う,<…>に感謝する 

ウィズダム

1 <人が><状況・問題など>を正しく理解[認識]する 2 <事・物>に感謝する,…をありがたく思う; 3 a <人が><人・物・事>のよさ[素晴らしさ]を認める評価する b <芸術など>を鑑賞する;<食べ物>を味わう,楽しむ 4 ・・・の価値を下げる

ロングマン

1 ・・・に感謝する,をありがたいと思う 2 ・・・の良さがわかる,<ワインなど>を楽しむ,<音楽・芸術など>を鑑賞する 3 ・・・を認識する,理解する

これもあんまり大差ないようですね。

そういえば,村上春樹がどこかで,彼の高校時代のある英語教師は,そんなにいい先生ではなかったが,appreciate の説明を聞いて英語がわかった気がした,という趣旨のことを言っていた記憶があります。その先生はどういう説明をしたのでしょうか。

私は,単語の語源からの説明や,接頭辞や語幹の説明から入る「語形成」的な説明は,何か牽強付会と言うか,すでにその単語を知っている人には面白いかもしれないが,知らない人には参考にならない気がして,あまり授業で使うことはないのですが,appreciate は,「これはねぇ,あるものの price (ここでは価値)を知ったり,あることを『precious だなぁ』 ,と思うことです。」ってな説明をすることがあります。これだってappreciate の全貌をとらえているわけではないですが。

 

どうも「ジーニアス」と「ロングマン」が対極を行っているようです。「できるだけ詳しく」という方針で得られるものと失うものがありますから,「ロングマン」にはこの路線をさらに進めて,「訳語」革命を期待したいですね。日本の辞書は常に昔の訳語を踏まえて作られているようですから,この辺であたらしいスタンダード訳語が欲しいところです。

 

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英和辞典を比較する (1)

3月
2008
5
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2008年春の時点で,辞書をちょっと比較してみよう,というのがこの企画です。

日本の英語辞典,つまり英和辞典は世界に類をみないほど進歩を遂げています。辞書が単に語義を説明するものにすぎないと考えれば,ネイティヴの辞書でかまわないわけですが,英語を外国語・第二言語として学ぶという観点に立てば,日本の学習用英和辞典は世界に誇れるものです。特に,語法や後の使い分けなどの情報の詳しさ,説明の懇切丁寧さとここ十数年での進歩は目を見張るものがあります。(これほどの辞書を持ちながら,日本人の英語力はちっとも進歩しないということは別途論じる必要がありそうですが。)

辞書を比較すると言うと,あれよりこれが優れているとか,こっちを買うべきだとか,を論じたがる人も多いのですが,ここではそういう切り口で語ろうとは思いません。間違いを探してあれこれ言う趣味もありません。それぞれに個性がありますから,それを楽しもうという趣旨です。たいていの場合,ある点では辞書Aが,別の点では辞書Bが優れているということが起こります。間違いも見つかれば結構楽しめるものです。

もっとも,紙の辞書としては依然として「ジーニアス」優勢であり,電子辞書にいたっては「ジーニアス」独り勝ち状態ですから,こういう取り上げ方をすれば「ジーニアス」以外の辞書へのエールになるかもしれません。

 

dic3.jpg

ここで取り上げるのは,大学受験(高校上級)~一般向けの学習用英和辞典です。ランクとしては大英和辞典の次に位置するレベルの辞書で,各社の主力商品になります。

の4つに絞りました。研究社には上記「ルミナス」以外にも「ライトハウス英和辞典」があり,学研「アンカー・コズミカ」,小学館「プログレッシブ」,旺文社「レクシス」,東京書籍「アドバンスト・フェイバリット」など個性あふれる面々が控えているのですが,全部フォローするわけにもいかず,とりあえずこの4冊に限ることにします。ごめんなさい。

 

基礎データ

  編者 発行日 収録語数 ページ数 税込価格 ホームページ
ジーニアス英和辞典 第4版 主幹 小西友七・南出康世 2006/12/20 9万6000 2249 ¥3,465 大修館
ルミナス英和辞典 第2版 竹林滋・小島義郎・東信行・赤須薫 2005/10/1 10万 2152 ¥3,360 研究社
ウィズダム英和辞典 第2版 井上永幸・赤野一郎 2007/1/10 9万 2125 ¥3,465 三省堂
ロングマン英和辞典 第1版 監修 Geoffrey Leech・池上嘉彦・上田明子・長尾真・山田進 2007/2/1 10万2000 2040 ¥3,465 桐原書店

  値段は,「並装」のもの。

 

各社の英和辞典ラインナップ

大修館

ペーシック・ジーニアス < プラクティカル・ジーニアス < ジーニアス < ジーニアス大英和

大修館は「ジーニアス」の下位バージョンとしてかつて,「ヤング・ジーニアス」,「フレッシュ・ジーニアス」,「アクティブ・ジーニアス」 というラインナップを持っていたが,これらを整理して改名したのが現行ラインナップ。すべて小西友七(故人)を中心とする編纂者。

研究社

ライトハウス < ルミナス < 新英和大辞典

すべて竹林滋を中心とする編纂者。これ以外の学習英和として,歴史のある「新英和中辞典」を持つが,ラインナップの中での位置づけがよくわからない。

三省堂

ヴィスタ < グランドセンチュリー < ウィズダム < グランドコンサイス

編纂者はバラバラ。

桐原書店

ロングマン英和辞典は,桐原書店唯一の英和辞典。同社で出している「Longman 現代英英辞典」を参考にしつつもゼロから作り上げた。

 

各辞典の特徴をひとことで

  • 「ジーニアス」 従来から「語法のジーニアス」と言われているように,語法説明が詳しい
  • 「ルミナス」 「語法」だけでなく,「文法解説」「リスニング」(上のポイント)「日英語義比較」「語形成」「構文」などの多くの囲み記事を持つ
  • 「ウィズダム」 見やすさ,引きやすさ。辞書作成のために使われたコーパスがwebで利用できる特典。
  • 「ロングマン」 英語コーパスだけでなく,日本語コーパスを使った,一工夫ある訳語選定

 

見た目の印象

ほんとは,画像を公開したいのですが,まあ大人の事情ということで。

研究社さん,見本くらいサイトに載せてください。

「ロングマン」がカラフルで,生徒には受けるかもしれませんが,慣れてくるとちょっとうるさいかも。逆に「ジーニアス」は品詞マークに赤を使っているくらいで,全般的に地味め。

  • 「ジーニアス」は見出し語は黒太字,重要見出し語は黒大活字,メインの訳語を黒太字,それ以外を標準字体
    例)   distinct (1) [・・・と]まったく異なった,別個の(different)[from]; 独特な
  • 「ルミナス」は見出し語は黒太字,重要見出し語は赤大活字,メインの訳語を黒太字,それ以外を標準字体
    例)   distinct 1 別の,違った,異なった
  • 「ウィズダム」は見出し語は黒太字,重要見出し語は黒大活字,メインの訳語を赤太字,それ以外を太字,かっこの中や例文を標準字体
    例)   distinct 1 別個の独特な;《・・・と》まったく異なった « from »
  • 「ロングマン」は見出し語は青字,重要見出し語は赤字,メインの訳語を赤太字,それ以外を標準字体
    例)   distinct 1 《フォーマル》別個の,別々の,別種の [+from]

「辞書を引く」,つまり見出し語に対応する訳語を探す面からすると,「ウィズダム」がいちばん読みやすく感じるでしょう。「辞書は読むもの」と考えるなら,どれでも大差ありませんが。


 

英和辞典比較シリーズ  総評

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by rickie | Posted in その他(高校生向け), 英語の周辺, 辞書のはなし | 1 Comment »

和英辞典の憂鬱

2月
2008
29
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「和英辞典はなかなかいいものがなくてね」と,私の学生時代の頃に教師たちはよく言っていた。「そのうち,いいのができるかもしれない」という教師もいた。それからずいぶんの時間が過ぎ,しかし「いいの」はなかなか見当たらない。「英和辞典」も「英英辞典」もかなりの進歩をとげたといっていいのだが,「和英辞典」をめぐる事情はあまり変わらない。工夫はされている。語彙数も,例文も,説明も充実した。しかし根本的なところで変化はない。魅力もない。日本語に対する英単語が列挙され,ちょこっと例文や説明が載っている。それだけだ。もはや期待は持てないのかもしれない。「和英辞典」というものは,その本質上,今のようなものでしかないのかもしれない。

そもそも「和英辞典」は必要なのか,という問いに突き当らざるを得ない。だが,その答えはイエスとしか言えない。必要なのだが,そんなには必要じゃない。というか,必要なのは一瞬で,和英辞典だけ引いて解決することはほとんどないからである。

たとえば,ある目的で英語の文章を書かなければいけないとする。手紙でも,レポートでも,論文でも,エッセイでもいいのだが,あらかじめ翻訳用の日本語の原文はないものとする。当然,自分で全体の組み立てから,ここの英文までを作っていかなければならない。そしてある語句が思い浮かばなかったらどうするか?まあ,和英を引くでしょうね。日本語と英語が一意で決まる語句であれば,これで解決するかもしれない。「在庫って何ていうんだっけ?」 –> inventory 「東京都議会は?」 –> the Tokyo Metropolitan Assembly 。しかしそういうもの以外は,まず和英辞典で得られた情報をきっかけにして,そこで得られた語句を英和や英英で引きなおし,何かしっくりこなければ thesaurus でいい言葉を探す。もちろん「英和活用大辞典」(研究社)にもお世話になる。つまり,和英はきっかけであり,突破口であり,第一走者ではあるが,それ以上のものではない。

というわけで,「きっかけ」にすぎない以上,そこにすべてを求めるわけにもいかない。和英が進歩しない理由はそのへんにあるのか。

いや,待てよ。逆に和英+英和+英英+シソーラス+活用・連語情報辞典 がワンセットになった辞書があればいいのか。「ジーニアス和英」はすでに和英+英和的な構成になっているし,書籍版では不可能だろうが(1巻3万くらいはするでしょうね),電子辞書なら不可能ではないかも。研究社でも大修館でも小学館でもいいから,作ってみませんか?私は買いますよ。ほかの人は知りませんが。

 

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by rickie | Posted in 英語の周辺, 辞書のはなし | No Comments »

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