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さまざまな発音表記

6月
2009
13
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発音記号をマスターしておくことは,単語を増やす上での前提条件です。

なのですが...

発音記号にもいろいろな種類があって,またアメリカ英語とイギリス英語では発音に違いがあり,さらに同じ種類の記号体系でも約束ごと(この音を発音してもしなくてもいい場合どう表記するかとか)があって,それらが辞書によって違うことがあります。

とはいえ,日本のメジャーな辞書ではそれほど大きな違いはなく,市販の単語集であればそれをさらに簡略化したものを使っているので,そんなにむずかしくはありません。

学習者用の発音記号については,

発音記号 – おおざっぱに理解しようgoup

のページに載せておきましたので,参考にしてください。そろそろこれも改訂版を出したいのですが,その準備も兼ねて,かつ入試から離れて少し考えてみます。

 

いろいろある発音表記の中で,もっとも「権威のある」ものは国際音声字母(国際音声記号) International Phonetic Alphabet です(略して IPA)。しかしこれは本来,音声学で利用されるものであり,つまり地球上のすべての言語のすべての方言も含め,すべての音を正確に記述するために作られたものです。ということは,標準的な英語(「標準ってなに?」という問題は措いといて)の発音を記すのには必要ない記号がいっぱい入っていることになります。/ θ / という記号は英語で使うから目にしたことがあるでしょう(舌先を歯に軽く当てる『ス』)。発音記号の/ a / と/ ɑ /は違う音,なんてことも英語の音を知る上では知っておかなければなりません。辞書によっては,/ i /と/ ɪ /や/ u /と/ ʊ / を区別するものもあります。さらに英語以外では,/ ɥ /, / ʨ /, / ɰ /, / ɕ / といった記号もIPAにはあるのですが,こうなるとどう発音したらいいのか僕にもわかりません。

 

IPAでは専門的すぎるという理由でしょうか,ふつうの学習用英和辞典ではいくぶんそれを簡略化したものを載せています。各辞典で微妙に違っているのがふつうなので,凡例なので確認しておく必要があります。ジーニアス第4版なら表の見返し(表紙をめくったところ),ルミナスなら巻末にあります。

「発音なんか教わったこともない」という人はざっくりと勉強しておいた方がいいかもしれません。薄い本でCD付きの「ルミナス英和辞典―つづり字と発音解説」(研究社)あたりがお奨め。少し専門的には「ファンダメンタル音声学」(ひつじ書房)か「英語音声学入門」(大修館)ってところでしょうか。あとの2冊はもちろん受験生には必要ありません。学生・教師・一般向けです。

 

アメリカで出ているアメリカ人向けの辞書(英英)の多くでは,困ったことにIPAやその簡略バージョンが使われず,その辞書の独自ルールで発音を表記しています。 a という文字でIPAの/ æ /を表すことに決めているわけで,新たに覚えるのがかなりめんどくさいしろものです。辞書同士で似ているものもありますが,違うルールで書いてあるものも多いようです。一覧は,アメリカのWikipedia にあります。

Pronunciation respelling for English (Wikipedia-en)

それを元に,メジャーなものだけを pdf にしましたので,参考にしてみてください。これも高校生には不要です。

アメリカの辞書の発音表記pdfgoup

 

上のWikipedia のページもそうですが,発音記号をパソコン上で見たり書いたりするために発音記号用のフォントが必要になる場合があります。現在のパソコンの多くはUnicodeを使っているので,あまり意識しなくても発音記号を表記できるかもしれません(環境と設定しだい)。

  • ワープロで使うなら,フォントは"Century"や"Arial"(Windowsのばあい)ではなく,"Arial Unicode MS"などのUnicodeフォントを使う。ATOKなどの「文字パレット」でフォントを指定してから,「IPA拡張」のドロップダウンを選択して文字を探す。
  • IPA用(かな・漢字・ハングル以外のおもに西洋文字)にはさらに,"Doulos SIL goup" "Chrysanthi Unicode goup"などのフォントをダウンロードする(無料)という手もある
  • ホームページを作るなら,CSSでフォント指定をする。ちなみにWikipediaでは,"IPA"というクラスのCSSは,
    /* Support for Template:IPA, Template:Unicode and Template:Polytonic. The inherit declaration resets the font for all browsers except MSIE6. The empty comment must remain. */.IPA { font-family: 'Chrysanthi Unicode', 'Doulos SIL', 'Gentium', 'GentiumAlt', 'Code2000', 'TITUS Cyberbit Basic', 'DejaVu Sans', 'Bitstream Vera Sans', 'Bitstream Cyberbit', 'Arial Unicode MS', 'Lucida Sans Unicode', 'Hiragino Kaku Gothic Pro', 'Matrix Unicode', sans-serif; } .Unicode { font-family: 'TITUS Cyberbit Basic', 'Code2000', 'Doulos SIL', 'Chrysanthi Unicode', 'Bitstream Cyberbit', 'Bitstream CyberBase', 'Bitstream Vera', 'Thryomanes', 'Gentium', 'GentiumAlt', 'Visual Geez Unicode', 'Lucida Grande', 'Arial Unicode MS', 'Microsoft Sans Serif', 'Lucida Sans Unicode', sans-serif; }

    となっている。

 

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by rickie | Posted in 一般の語学学習, 英語の周辺, 英語学習情報(初~中) | No Comments »

『英語学習 7つの誤解』

9月
2008
5
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著者:大津由紀雄 |出版社:NHK出版(生活人新書)|2007年|700円|高校生~一般向け|220p.|独断的おすすめ度 ★★★☆

著者の大津由紀雄さんは,慶應大学教授。生成文法系の代表的言語学者であるだけでなく,認知科学,語学教育などの分野で幅広く活動されている方です。MIT大学院で学んだ Chomsky 門下のひとりということになります。

タイトルの「英語学習 7つの誤解」とは,

  • 誤解1 英語学習に英文法は不要である
  • 誤解2 英語学習は早く始めるほどよい
  • 誤解3 留学すれば英語は確実に身につく
  • 誤解4 英語学習は母語を身につけるのと同じ手順で進めるのが効果的である
  • 誤解5 英語はネイティブから習うのが効果的である
  • 誤解6 英語は外国語の中でもとくに習得しやすい言語である
  • 誤解7 英語学習には理想的な,万人に通用する科学的方法がある

言うまでもないことですが,これらは「誤解」であり,すべて「誤り」であるというのが筆者の見解です。そして筆者の見解は言語学や英語教育に関わる人たちの間では,必ずしも特殊な意見ではなく,むしろ多数意見に属すると思われますし,わたしも基本的に同意できることばかりです。ところが,「言語学や英語教育に関わる人たち」の周辺にいる人たち,具体的には父兄,産業界,行政,英語教育業界では,その常識と非常識がまったく入れ替わってしまっているのが実情です。

筆者の立論の基礎になっているのは,母語第二言語外国語では習得プロセスが違う,という事実であり,「誤解」はこれらを混同することから生じていると考えられます。

上の誤解の多くは,「わたし(日本人)は子どもの時から日本語を自然に身につけた。ゆえに,英語も同じようにして自然に身につけることが可能なはずだ」という暗黙の前提にもとづいています。母語習得と外国語習得は同じだという前提がなければ,少なくとも上の 1 ~ 5 までは成り立ちません。そして筆者はこの母語習得プロセス=外国語習得プロセス という考え方をしりぞけます。

母語(たとえば,日本で,日本語を使いながら生まれ育った人にとっての日本語)と外国語(たとえば,日本で,日本語を使いながら生まれ育った人にとっての英語)は理解しやすいと思いますが,第二言語とは,たとえば日本人の親から生まれて日本語を習得したが,幼少期にアメリカなどの英語環境で何年も暮らした人にとっての英語を言います。一般には,第二言語と外国語を同一と見なすことが多いのですが(逆に言えば,母語獲得 vs 第二言語・外国語獲得 という構図),筆者はむしろ第二言語獲得と母語獲得の以下のような共通点に注目しています。

  • その言語に日常的に触れている(母語環境での獲得)
  • その言語を運用できないと生活の維持が困難になる

ここでは,母語・第二言語獲得 vs. 外国語獲得 という図式が重視されています。学習プロセスにおいては,ことばに対して意識的な取り組みが必要かどうかが分岐点になります。

 

 

外国語は「自然に」身につけることはできず,「意識的に」学習しなければならない,というのが筆者の考えであり,わたしにはたいへん説得力のある議論に思えます。

もちろん,筆者の論理を敷衍すれば,自然に身につけたいという人にも道はあるはずです。それは,外国語としてではなく,第二言語として習得する道です。そのためには,「その言語に日常的に触れる」,つまり英・米・豪・加などのネイティブ環境で,「英語を使えないと生活の維持が困難」になる場に自分を追い込む必要があります。それには日本で築いた関係・地位などを犠牲にしなければならないかもしれず,しかも最低でも数年はかかるでしょうが。

 

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by rickie | Posted in いろんな本, 一般の語学学習, 英語の周辺 | No Comments »

『より良い外国語学習法を求めて』『「達人」の英語学習法』

7月
2008
22
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著者:竹内理 |出版社:松柏社|2003年|2500円|英語教師・研究者・一般向け|独断的おすすめ度 ★★☆☆

著者:竹内理 |出版社:草思社|2007年|1500円|高校生・一般向け|独断的おすすめ度 ★★★☆

 

同じ著者による同じテーマの2冊の本。実は,この2冊は読者対象が違うだけで,中身はほぼ同じといってもいい。

「より良い」が,データをもとにした研究発表の形式であり,「達人」はその研究成果を一般向けにかいつまんで述べたものです。従って,調査方法やデータを含めて知りたいのであれば「より良い」を,結果だけ知りたければ「達人」を読めばいいわけです。

調査目的は,「英語ができるようになった人に共通する学習法はあるのか」ということ。調査対象は3種類で,第二言語習得論の先行研究を踏まえて,

  • 英語ができる大学生とできない大学生
  • おそらく筆者周辺の,英語の達人たち
  • 世間に出回っている「私はいかにして英語の達人となりし乎」といった類の本

を扱っています。「より良い」の第9章で,これらのデータと既存の理論を踏まえた結論を述べていますが,この部分を敷衍ふえんして,英語学習者へのアドバイスの形で1冊の本に独立させたのが「達人」です。

調査方法も,そこから導き出されている「学習法」のアドバイスも,ハッタリのない信頼できるものです。たとえば,「学習法」の議論はそもそも万人共通の学習法が存在するのかどうかから出発すべきなのですが,筆者はその前提を踏まえた上で,調査対象から共通項が引き出せるという順当な手順を踏んで議論を組み立てています。その上で,学習者全般だけでなく,初級段階(中~高レベル)に必要なことと,中上級で必要なことを分けていたりと,あたりまえなんだけど実際には雑に扱われることが多い手順をしっかり押さえて考察を引きだしています。

リスニングは初級レベルでは正確さを重視すべきだが,上級では形式的正確さよりも内容重視に移行する傾向が英語の達人には多いパターンであるという記述があります。細かいことをいえば,「達人にはこのパターンが多い」というデータから「学習者はみなこの方法を採用すべき」という結論を引き出すには少し飛躍があるわけですし,私の経験的(データに基づかない)問題意識から言えば,中上級者も正確さ重視の方法を適宜組み込まないと進歩が止まるという感想を持っています。しかし,日本人の学習成功者対象のデータにもとづいたこの種の議論は今までありそうで,案外なかったような気がします。

英語学習法本には,自分の経験だけが最良の学習法であるかのような語り口の本がよく見られますし,そこに売らんがための宣伝文句が加わるとほとんどウソに近いものも存在しますが,この本は安心して全レベルの学習者にお勧めできるでしょう。もちろんその分,「楽にペラペラになれる」「いつのまにかあなたも達人に」といった魔法のような学習法を探している人にはがっかりするようなことしか出ていません。逆にしっかり腰を据えて勉強しようと思っている人,特に英語初心者にはぜひ読んで欲しい本だと言えます。

 

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by rickie | Posted in 一般の語学学習, 勉強法の勉強, 英語の周辺 | No Comments »

『目にあまる英語バカ』

6月
2008
17
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著者:勢古浩爾|出版社: 三五館|2007年|定価 1200円(+ 消費税)|一般向け|独断的おすすめ度 ★★★☆

痛快な書です。

筆者の定義する英語バカとは,「なんの必要もないのに,英語を話せたら『かっこいい』と思い,英語を話す人間を見て『かっこいい』と思い,どうだおれは英語が話せるぞ『かっこいいだろ』と思い,なにが英語ができるだ調子に乗りやがって『ばかやろう』が,と無理矢理蔑む人間はすべて英語バカである。」というものです。わたしなら,これに「本人はペラペラのつもりだけど,中身は低級な英語で無内容な話しかしてない人間」というのを付け加えたいところです。

英語バカを筆者が次から次に執拗なまでに罵倒しなぎ倒していく姿には爽快感さえ覚えます。時々ミソも☓☓もいっしょくた,という感じがしないわけではありませんが,なぎ倒すからにはこうでなくちゃいけません。この筆者の本はこれまでに何冊か読んで,けっこう気に入ってました。本屋でタイトルを見たときには,これまでの筆者の本の系列とちょっと外れている気がして異和感があったのですが,ここまで英語バカにこだわっているからには,筆者自身相当の英語バカでいらっしゃるのかもしれません。そしてあなたも私もたぶん同類でしょう。ってことは,この本は大宅壮一以降(もっと前からか)の伝統を受け継いだ「日本人総英語バカ」論と言えるかもしれません。

おそらく英語教師でこの本の主張,というか罵倒に共感しない人は少ないのではないでしょうか(最近の若い人は知りませんが)。

だが,あなたね,そもそも「中高大と10年も習った」のに,というのが真っ赤なウソなのだ。というより,あまりに人口に膾炙しすぎた錯覚なのである。ちょっと胸に手を当てて,考えてみて。あなた,本当に「10年間」ちゃんと英語を勉強しましたか。毎日一時間でも二時間でもいい,10年やったですか。一年でもいい。やったですか。どこの人間だ,おれは。いやわずか半年でもいい。やっちゃおらんでしょうが。

うむ,わたしもそれが言いたかったです。

でも,日本人の英語レベルの低さについて,なにか教師には責任がないと言っていただいているみたいっていうのが,共感の理由って訳ではありません。「英語バカ」とは結局言葉というものをなめきった存在であり,それにイライラさせられるんですね。

第二言語習得論では,人は「母語習得にほぼ例外なく成功するが,ネイティブ並みという基準で言えば,第二言語習得にはほぼ例外なく失敗する」というのが定説のようです。特筆大書していただきたい。あなたは英語をマスターすることなど確実にできないのです。「マスター」って,何様ですか。かなり早い時期にその言語環境に置かれれば話は別でしょうが,もちろん小学校でお遊戯程度の英語をやったところで何の意味もないでしょう。

ただし,だから英語の勉強はすべきでない,とは言いません。だって好きでやってるんだから。

この本の筆者は,おおかたの日本人にはホントの意味で英語は必要ない,というのを英語バカ批判の,そして英語が苦手な理由の要点としているようです。それ以外にも理由はありそうですが,基本的にそのとおりだと私も思います。そして必要ないけどおもしろいからやる,というのが私が語学学習を勧める理由の要点です。学生時代から「何かの役に立つことなんか勉強してたまるか」と思ってましたからね。ま,あまり世に受け入れられることはないと思いますが。

 

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by rickie | Posted in いろんな本, 一般の語学学習, 英語の周辺 | No Comments »

『英語力とは何か』

6月
2008
4
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著者:山田雄一郎 |出版社:大修館書店|2006年|1600円|英語教師・一般向け|独断的おすすめ度 ★★★☆

英語の教師をやっていればだれでも気づくことのひとつは,日本語の読解能力が高い生徒は,英文読解の能力が高い,少なくともその能力を伸ばしやすい,ということです。文章を読んでいてこういう流れになったなら,次にこういうことを言うはずだ,とか,この言葉は本心ではなく皮肉でいってるんだろうなという推測は,日本語と英語とであらわれ方は違っていても似たようなものだと言えるでしょう。そうしたものを読み取ることを「行間を読める」と呼んだり,「読解力がある」と言っているわけです。日本語の読解力がない日本語を母語とする生徒が,英語を読むときだけ突如としてそういう能力を発揮するなんてことはありえません。

『英語力とは何か』は,英語教育や英語教育政策について精力的に発言している山田雄一郎氏の本で,大書店の英語教育・英語学関連の棚には平積みになっている本です。

共通基底能力

大修館「英語力とは何か」より

この本の中で山田氏は,上で述べたような教師や生徒の直感を,「共通基底能力」仮説ということばで説明しています(そして,この本の大前提になっているのがこの仮説です)。これは日本語であれ英語であれ語学能力全般の共通基盤が存在するという仮説で,左の図で言うと,色の濃い三角形に相当します。

山田氏の定義によれば,英語力とは,

英語力=共通基底能力+変換能力(図のb)+英語形式の運用能力(図の表層部分)

であり,この定義にもとづいた英語力の訓練は次の4点に集約されるべきだと考えています。

  1. 基底能力(知識や経験)の強化(日本語・英語を問わない)
  2. 英語の出入力チャンネル(直通経路)の形成・強化
  3. 言語形式に関する知識(文法・語彙)の習得と活性化
  4. 言語形式を運用する技能の訓練(4技能を中心とする技術的訓練)

これまでの英語の訓練は図のc の部分,つまり伝統的な訳読授業のような英語と日本語を直接対応させる訓練だったが,本当は b の訓練が必要なのだ,というのが山田氏の議論の中心になっていて,ここから具体的な訓練方法をさまざま提示しています。

 

共通基底能力2

さて,共通基底能力があるとして,しかし疑問点も残らないわけではありません。たとえば,4技能すべてにおいてこの図式が有効なのかどうか。読解力においてはこの図式はかなり通用すると思いますが,それ以外の話す・聞くといったスキルにおいては,日本語の基底能力とのつながりは見えにくいだろうと思います。おそらく氏はBICS(日常的なやりとりに代表される技能)とCALP(認知的学習のための言語能力)を区別し,読解以外でもCALPの育成を中心に考えているのだと思われます。でもBICSの育成だってなかなか大変なのでは,という気がしないでもありません。

また,わたしの考えでは,基底能力との接続自体がこころもとない状態であり,したがって運用にはほど遠いというのが多くの場合だと思います(イメージとしては左のような)。

でも,英語力をどのように考えて,どのように伸ばしていけばいいのかという方向性について,わたしは基本的に共感できます。語学に関しては世の中にはウソと思いこみがはびこっていますが,この本で提起されていることはきわめて現実的な指針となりえます。もちろんそれを(つまり図式の b の方向性を)どう具体化していくかはまだまだ見えてきません。現場もいろいろ試行錯誤しているのでしょうが,解答らしい解答は見つかっていません。英語だけでなく,日本の教育の在り方全体の問題もあります。そもそも教育に何ができるかという問題もあります。それを言っちゃおしまい,かもしれませんが。

 

 

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by rickie | Posted in いろんな本, 一般の語学学習, 英語の周辺 | No Comments »

『英語習得の「常識」「非常識」– 第二言語習得研究からの検証』

5月
2008
27
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著者:白畑知彦・若林茂則・須田孝司 |出版社:大修館書店|2004年|1700円|英語教師・一般向け|独断的おすすめ度 ★★★☆

以前紹介した『外国語学習に成功する人,しない人 – 第二言語習得論への招待』(白井恭弘著 岩波書店)と並んで,第二言語習得論の入門書としていちばん取り上げられることの多い本の一つです。

外国語学習,特に英語学習については世間ではウソとデマがまかり通っています。いくらか学習経験のある人ならすぐにウソだとわかるウソから,いかにもホントらしいウソまで数限りなくあります。ウソがまかりとおっている点ではダイエット法に関するウソとよく似ているのですが,ダイエット法については時々,「あるある納豆事件」のようにウソが指弾される場合もあるのに,外国語学習法については野放し状態です。広告はその表示のしかたにさまざまな規制を受けるはずなのですが,外国語学習産業の広告には,まったくといっていいほど規制も,自己規制もかかっていません。良心的なところも少しはありますが,「楽に身につく」と称しているものは100%ウソと言って間違いないでしょう。

 

ウソがはびこる理由はいくつか考えられますが,

  • ダイエット法とちがって,検証可能な客観的データがとりにくい
  • 誰でも英語を学んだ経験があるので,自分なりの学習観を持つ人が多くて乱立しやすい
  • 特に英語学習は市場規模が大きく,新しいニッチを狙った「新規参入」組が,新しい流行商品を作るのにやっきになっている
  • 同時に外国語(英語)コンプレックスを持つ人も多く,とにかく派手な宣伝文句にとびつきやすい
  • 語学が「できる」「できない」,「マスターする」「していない」の基準がばらばらである
  • 言語能力とは「読む」「書く」「話す」「聞く」や「語彙」「文法」などの技能の複雑に組み合わさった能力であり,さらに「常識」「論理的構成力」,多分野に関する知識などが要求されるが,その一面だけを伸ばすことで語学をマスターしたと誤解しやすい
  • 結局,誰もが努力などしたくないし,楽な方法を求めている

というあたりがその理由だと思われます。

「英語ペラペラ」というのは誰でもあこがれますが,ペラペラに見えてもかなり間違いだらけのペラペラもありますし,間違いはないけど中身もないペラペラもあります。言葉の能力はそんなに簡単に測れるものではありません。

どんなやり方でも,それなりの効果を上げる人はいるものです。ダイエットと同じで,がんばればどんなやり方でも,いくらかなりとも力はつきます。そういう人が「このやり方はすばらしい」と思い込んでしまいます。ほんとうは,「やり方」のせいではなく本人の「がんばり」のおかげなので,別のやり方ならもっと効果を上げていたかもしれないのですが,信者になってしまった人は宣伝する側にまわって,布教活動をはじめてしまうから困ったものです。

さて,この本は世間に出回っている外国語学習についての「常識」を,第二言語習得論の観点から可能な限り学問的に検証することをめざしています。この学問分野自体,歴史は数十年と浅く,まだまだ実証的に検証できていないことが多いのですが,現在の到達点はある程度見渡せるでしょう。

取り上げられている「常識」は次のとおりです。

  1. 「母語は模倣によって習得する」のか?
  2. 「母語習得で誤りの訂正は役に立つ」のか?
  3. 「生まれつき備わっている言語習得能力がある」のか?
  4. 「教科書で習った順番に覚えていく」のか?
  5. 「繰り返し練習すると外国語は身につく」のか?
  6. 「外国語学習は音声から導入されるべき」か?
  7. 「聞くだけで英語はできるようになる」のか?
  8. 「多読で英語は伸びる」のか?
  9. 「教師が誤りを直すと効果がある」のか?
  10. 「日本人学習者もgoedやcomedと発話する」のか?
  11. 「やる気があれば上級学習者になれる」のか?
  12. 「頭のいい人が外国語学習で有利」なのか?
  13. 「物おじしない性格の人は第二言語習得に向いている」のか?
  14. 「第二言語学習者と外国語学習者では習得のしかたが違う」のか?
  15. 「学習者の言語適性はテストで測定できる」のか?
  16. 「言語学習においては女性の方が男性よりも優れている」のか?
  17. 「第二言語学習は幼少期から始めないと遅すぎる」のか?
  18. 「大人になってはじめてはネイティブ並みにマスターできる領域はない」のか?
  19. 「幼いうちなら日本人でも /r/ と /l/ を聞き分けられる」のか?
  20. 「運動機能の衰えが言語習得の到達度に影響する」のか?
  21. 本当に「言語習得の臨界期はある」のか?
  22. 「『英語耳』や『日本語耳』という区別はある」のか?
  23. 「英語は『右脳』で学習する」のか?

たとえば,7 では,「聞くだけで母語話者と同じような英語能力が身につくことはない」,8 では,「辞書を引くことなく,書物をいくらたくさん読んでも読むスピードは向上するだろうが,語彙力が増加したり,文法能力が高まったり,発音能力がよくなったりはしない」,23 では,「英語は右脳のみでは学習できない」と今までの研究成果を踏まえて断定しています。

17 では,「第二言語習得環境で,母語話者と変わらないレベルの言語(文法)能力を全員が身につけるためには,7歳ぐらいまでに言語習得を開始する必要がある」とか「どのような内容の英語教育を実施するかにもよるが,歌ったりゲームをしたりする活動が中心の小学校での200時間程度の『英語学習』は,文法習得の発達に影響を及ぼさない。」と述べていて,現在文科省が進めている方向性へ疑問を呈する形になっています。

もちろん,「じゃあ,それらの研究成果を踏まえて,これからどうしたらいいの?」という疑問に対して明快な答えは出てきません。学問というものはそういうものでしょうし,言語学習という複雑怪奇な設問に対して出てくる明快な答には,眉に唾して聞く必要があります。少なくとも,ある程度明快な答えを出すためには,その時点での学習対象と目的(大学受験・海外旅行・ニュースの聞き取りなど)を限定すること,どのレベルまでを目指すかを明確にすること,などが必要になるのでしょう。

 

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by rickie | Posted in いろんな本, 一般の語学学習, 英語の周辺 | No Comments »

『外国語学習に成功する人,しない人 – 第二言語習得論への招待』

5月
2008
22
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著者:白井恭弘 |出版社:岩波書店(岩波科学ライブラリー)|2004年|1100円|英語教師・一般向け|独断的おすすめ度 ★★★☆

英語やその他の外国語の学習法についての本は,本屋へ行けば山ほどありますし,ネット上なら数え切れないほど存在します(このサイトもそのひとつか)。どの本やサイトもいろいろのアドバイスをしてくれますが,ある意味で情報が溢れすぎていて,これから勉強しようという人たちにとってはどの情報を信じていいのか迷ってしまうかもしれません。言っていることがまちまちで相矛盾していたり,それからブームのようなものもあって時代によってころころと変化していきます。最近は「脳」ということばがタイトルにつけば,科学的という印象を与えるのか,売れ線になっています。(わたしは,「脳なんたら」のつく本は基本的に敬遠していますが)

学習法本にはいくつかのタイプがあって,執筆者で分類すると,

  1. 一応その言語を習得した人(カリスマ・達人)が,後輩に向けて,自分の経験にもとづいて学習法を語る
  2. 語学の教師(学校・塾・予備校等)が,生徒に向けて,教育経験にもとづいて語る
  3. 学者が自分の専門分野に関する知見にもとづいて語る

2のタイプは,受験とかテストといった狭い目標に限定して語られることが多いので,その範囲では大いに参考になると思いますが,広い意味での語学学習については別の観点が必要になります。いちばん多い,そしていちばんあやしげなのも多い(全部あやしいわけではない)のがタイプ1でしょう。1のタイプにはしばしば,自分が習得したやり方がいちばんいい方法だと独断的に信じている傾向が見られます。そういう書き方をしている本も何かのヒントを与えてくれることはよくあるのですが,少なくともうのみにしない方が賢明だと思います。その人にとっていい方法が誰にとっても優れた方法であるという保証はありませんし,語学のプロであっても語学学習・言語習得法のプロではないので,さまざまな方法を客観的に比較検討するという視点では書かれていないから,いきおい主観的・独断的になってしまっているものがあります。

タイプ3に入る学者の専門領域は,「学習とはどういうことなのか」を研究する心理学(認知心理学),「語学を教える」という観点の教育学,「言語を身につけるとはどういうことなのか」を研究する言語学の中の一分野(「第二言語習得論」と呼びます)に分かれます。このタイプは前二者と比べて,より客観的だといえるでしょう。ただし,研究者であって語学の教育者ではないこともあり,「研究の結果はわかったけど,それを踏まえて,じゃあどうしたらいいの」という具体的アドバイスを求めても得られないことがあります。

さて,ここで取り上げている『外国語学習に成功する人,しない人 – 第二言語習得論への招待』という本は,副題にあるとおり第二言語習得論入門という色合いの本です。現在出版されている同系統の本の中ではいちばんポピュラーな本なのではないでしょうか。ひたすら理論を語るのではなく,「日本人はなぜ英語が苦手か」「どういう人が語学学習に成功し,どういう人が成功しないか」「外国語が身につくとはどういうことか」「どんな学習法に効果があるのか」という具体的な発問に対して,理論を紹介しながら考えていくという記述になっていますから,読みやすくまとまっています。

紹介されている理論的な概念には次のようなものがあります。

  • 統合的動機づけ(文化に参加したいという目的の学習)と道具的動機付け(実利目的のための学習)
  • 言語的転移(母語の干渉)
  • 臨界期仮説(n才を過ぎるとネイティブ並みにはなれない)
  • 言語学習適性(母語と第二言語に共通する適性)
  • 日常言語能力(日常会話力)と認知学習言語能力(言語による学習能力)
  • インプット仮説(聞くだけで習得可能)・モニター仮説(習得は無意識に起こり,意識的学習はチェック・モニターの役割のみ)と自動化モデル(意識的学習が自動化・無意識化すれば習得可能)
  • オーディオリンガル教授法(パターンプラクティスによる反復練習)とコミュニカティブ・アプローチ(形式より意味・メッセージ伝達に重点)
  • 中間言語分析(学習者が作り上げている母語と第二言語の中間の言語「体系」)

筆者も述べていますが,「第二言語習得論」は生れて四・五十年の若い学問であり,まだまだ研究成果が上がっていない分野がたくさんあります。言語学の中でもいちばん実用性の高い分野と言えるのに,仮説だらけなのは残念ですが今後に期待できる分野とも言えるでしょう。

 

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英和辞典を比較する (12)

4月
2008
9
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「ジーニアス」「ルミナス」「ウィズダム」「ロングマン」の4英和辞典の比較のシリーズ第12弾!そして,最終回!

最終回は,まずランダムに英語に関する疑問を先に用意して,辞書がそれに答えてくれるかを比較してみることにしました。今回は項目が多数になりましたので,各辞書の引用ではなく,ポイントを要約して比べてみます。

単語の意味の説明ではないですから,本来の辞書に期待すべきものではないかもしれません。英米のネイティブ向け大辞典には載っていないようなことです。日本の辞典でもかつてはこんなものは載っていないことが多かったのです。でも,最近の英和辞典は載ってるのですね。世界に誇りたいのですが,ありがたみがわかるのが日本人だけですから,どうしようもありません。

 

1 同格の that をとれる名詞にはどのようなものがあるか

the fact that he is still alive 「彼がまだ生きているという事実」などで使われている同格のthat節を導ける名詞は限られた名詞だけです。fact, news などは可能ですが,information, remark, letter はどうでしょうか?(この中ではletter がダメです) それが一覧できる項目を辞書に探してみます。

  • ジーニアス —  68 個 の名詞が囲みの中にリスト
  • ルミナス     —  17 個 の名詞が囲みの中にリスト
  • ウィズダム —  51 個 の名詞が囲みの中にリスト
  • ロングマン —  リストなし。 fact のみ例。

 

2 do the Ving という表現で,Ving にはどのような動詞が使えるか

「Vする」という意味の熟語表現です。the の代わりに,some, much , one’s などが使えます。

He did some reading this afternoon. 午後にちょっと読書をした。

  • ジーニアス  —  リストなし。語意欄の例文として,reading, washing, ironing, shopping。
  • ルミナス  —  リストなし。「語法」欄に例文として,shopping, cooking, washing, writing
  • ウィズダム  —  16 個の Ving が囲み記事の中にリスト(「表現」欄)
  • ロングマン  —  リストなし。語意欄の例文として,ironing。

 

3 There is + 複数 となるのはどのような場合か

There + be 動詞 では,後ろが複数なら,There are になるはずですが, There is A, B, and C. のように,複数個の主語であっても is になる場合があります。

  • ジーニアス  —  「語法」欄囲み内で「《略式》では複数の語がきてもしばしば単数で受ける。通例 There’s となる」という記述。「単数名詞の列挙の場合に多い」とも。
  • ルミナス —   特に記載されていないようだが,熟語欄に There is [are] … and … ・・・にもいろいろある という表現が載っており, is が可能であることを明示的にではないが認めている
  • ウィズダム —    「語法」囲み内に,2つの場合の記述があり,「(a) (…) 主語が and で結ばれた複合主語になる時は,[動]の数が主語の最初の部分と一致することがある」として, There is a boy and two girls in the room. ≒ There are two girls and a boy in the room. という興味深い例文を載せています。「文法的に正しいとされる There are a boy and two girls in the room. は今では《不自然》に響くことも多い」ともあります。「(b) 《非標準・くだけて》では主語が複数でも短縮形の there’s が用いられることがある。  ▶ There’s some people upstairs. (ただし × There is some people … としない)」 とも。
  • ロングマン —   記述なし。

 

4 moreover のはたらき

しばしば文頭で「その上,さらに」の意味で使われる moreover ですが...

  • ジーニアス —   語意欄に「《文修飾》」「前述の内容を支持する情報をつけくわえるため」とある
  • ルミナス —   besides の項に「類義語」として,「もともとは besides より協調の意味が強く,前文よりもっと重要なことの追加に用いたが,現在では比較の意味は薄れ,単に前に述べたことを補強したりそれに付け加えるべき事柄や意見を述べるときに用いることも多い。格式ばった語で,会話で用いることはあまりない。」という記事。
  • ウィズダム —    addition の項に「読解のポイント」欄「列挙・追加の表現」があり,その中で in addition などと並んでmoreover を挙げている。ただし,他の語句との違いについては特に言及はない。
  • ロングマン —   特になし。「コミュニケーションガイド」には furthermore についての記述はある

 

5 wear に当たる日本語

服を「着ている」,靴下を「はいている」,メガネを「かけている」は全部 wear で表現できます。ほかにどんな訳が可能でしょうか。

  • ジーニアス —   「語法」欄囲み内に「着ている」「はいている』」など6個の訳と「訳に出てこない」場合を指摘。He wears false teeth. 彼は入れ歯です
  • ルミナス —   「日英語義比較」の表に8個の訳
  • ウィズダム —    「表現」欄囲みの中で,4種類7個の訳と14の例
  • ロングマン —   特別な記述はない

 

6 head と face

「バスの窓から顔を出す」は put his head out of the window of the bus となります。ここでは face ではなく, head と言わなければなりません。

  • ジーニアス —   head 「比較」欄囲みの中で,「head は日本語の『首』『顔』に当たることが多い」として,例を6個挙げている
  • ルミナス —   head 「日英比較」欄囲みの中で,「 head は首(neck)から上の部分をさす;(…) 従って次のような文では head に当たることばが日本語では『顔』や『首』になることが多い」として,3つの例文を挙げている
  • ウィズダム —    head 「表現」欄囲みの中で,とくに言葉での説明はないが例として, turn one’s head away 「顔をそむける」など,「顔」「首」が head になる表現を7個挙げている。
  • ロングマン —  特別な記述はないが,head を使った例文の中で,「顔」「首」などと訳し分けている。

 

7 goat (ヤギ) の文化的・象徴的意味

「羊のようにおとなしい」とか「狐のように狡猾な」とか,動物などは文化によって異なる象徴的な意味合いを持つ場合があります。

  • ジーニアス —   語意欄に「早熟で,好色・淫乱の象徴。また悪魔が goat の姿をとるといわれる」とある。
  • ルミナス —   象徴性についての記述はないが,goat の意味の一つとして「好色漢」を挙げている(この意味は他の辞書にも記載)
  • ウィズダム —    「事情」欄囲みの中で,「ヤギは早熟で繁殖力が強いので『好色』のイメージがある。古代ユダヤ人の儀式では人間の罪を背負って野に放たれたことや,ヤギの持つ破壊的性質などから,キリスト教では悪魔と関連付けられ,ヒツジと対比される。」と記述
  • ロングマン —   特になし

 

8 アメリカやイギリスの休日はどんなものがあるか

雑学のたぐいですが,小説や新聞・雑誌の中には出てくるものですから,まとめておいてくれると便利です。

  • ジーニアス —   holiday の「関連」欄囲みの中で,アメリカ,イギリス,オーストラリアの祝日,および日本の祝日の英語名を記載
  • ルミナス —   囲みの中で,米英の法定祝日を囲みに記載
  • ウィズダム —    holiday の「事情」欄囲みの中で米英の法定祝日を囲みに記載
  • ロングマン  —  特になし。「文化」欄に有給休暇の制度の説明がある

 

9 アメリカ人に多い名字はどんな名字か

これも雑学。これはなくても困らない豆知識です。

  • ジーニアス —   発見できず
  • ルミナス —   name の項に「米国で最も多い姓10」の囲み。ちなみに, Smith, Johnson, Williams, Brown, Jones, Miller, Davis, Wilson, Anderson, Taylor の順。
  • ウィズダム —    発見できず。「事情」欄には,ミドルネームやニックネームの説明。
  • ロングマン —   発見できず

 

10 完了不定詞とは何か

純然たる文法プロパーの説明があるか,という問題です。

  • ジーニアス —   発見できず
  • ルミナス —   to の項の「文法」囲みで詳しく記載されている
  • ウィズダム —  発見できず
  • ロングマン —   発見できず

 

11 副詞節の if 節で未来のことに will を用いるのはどのような場合か

時や条件の副詞節の中では,未来のことでも will が使えず,現在形を用いなければなりません。しかし will が全く使えないというわけでもありません。

  • ジーニアス —  a) 「動作主の主語の意志・習慣または相手に対する丁寧な依頼を表す場合」 b) 「if 節が主節の動作の結果を表す場合」 I will come if it will be of any use to you.  c) 「『前もって』『あらかじめ』の意が含まれる場合」 If I will be late, I’ll call you.  の3つを挙げている
  • ルミナス —   語法欄囲みの中にはないが,語意9として,「[if ... will[would] — の形で主語の意志を表して] 《格式》 — してくださるなら,— するつもりなら」を載せ,3個の例文をつけている (ジーニアスの a に対応)
  • ウィズダム —   (b)  「if 節の内容が主節に対する結果を表すときには, will が用いられる」 I’ll do it, if it will save Lisa. (ジーニアスの b に対応)と (c) 「主語の意志を表す will や丁寧表現に用いられる will [《より丁寧に》 would ]は可」(ジーニアスの a に対応)という二つの場合を挙げている
  • ロングマン —  発見できず

 

ちょっと冗談っぽく勝者を決めれば,

  1. ジーニアス
  2. ウィズダム
  3. ウィズダム
  4. ルミナス
  5. ロングマン以外同点
  6. ジーニアス,ルミナスが同点。ウィズダムも僅差
  7. ウィズダム
  8. ジーニアス
  9. ルミナス
  10. ルミナス
  11. ジーニアス(説明の仕方はウィズダムの方がわかりやすい)

というところでしょうか。こういう項目は蓄積がものを言うので,後発のロングマンは不利でした。ロングマンは日本語訳の訳語選定や日本で行われている伝統文法とは違う切り口の書き方をしているなど,筋のいい新入り(上から目線ですみません)なので,今後に期待したいところです。

 

12回にわたって比較を行ってきました。個々の項目に点数をつけて,最終的なおすすめの辞書を選ぶことも不可能ではありません。稿を改めてまとめ的なことを書いてみようと思っています。

ただ,各辞書の総合点は,今のあなたの実力や,どういうポイントを重視するかで「重み」が変わってくるのでいちがいに「これがオススメ」とは言いにくいことは確かです。

間違いなく言えるのは,英語を専門にしている人なら辞書は複数持つべきだということでしょう。

 

 

英和辞典比較シリーズ   総評

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by rickie | Posted in その他(高校生向け), 英語の周辺, 辞書のはなし | No Comments »

英和辞典を比較する (11)

4月
2008
4
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「ジーニアス」「ルミナス」「ウィズダム」「ロングマン」の4英和辞典の比較のシリーズ第11弾!

軽い気持ちで始めたこのシリーズも,10回を超える企画になってしまいました。そろそろ締めなければ。

というわけで,今回は各辞書のウリにもなっている囲み記事を取り上げてみます。辞書の中あちこちにポイントを特集して,枠で囲って目立たせている部分です。すでに,「語法」や「類語」情報については取り上げたので,それ以外のフィーチャーを扱ってみましょう。辞書によって切り取る角度や視点が違っていますから,特定の項目の比較があまり成り立ちません。単につまみ食いして,感覚的につかむだけにします。それにしても,どれもなかなかつまみ食いしがいのある興味深いものが多いですよ。

 

ジーニアス

「語法」の充実に比べるとその他の追加情報は抑えめ。「語法」以外では「関連」が多い。次は「事情」か。その他は少ない。

 

● 文化 — 英米文化の豆知識

例)  party

(1) 英米の家庭での party では飲食より会話が中心で,夫婦を1単位として招くのがふつう。招かれた時は何か小さなもの(wine, pie など)を持参するのがエチケット。 (2) 学生の「コンパ」も party に相当する。

 

● 事情 — 政治・社会関係の雑学

例)  taxi

【米英の taxi】 (1) New York などのタクシーは通例黄色なので yellow cab ともいう。 London では通例黒塗りの箱型オースティン車(Austin)。 (2) 料金の 10 – 15 % 程度の tip が必要。大きな荷物には割増料金が必要。 (3) 自動ドア・冷房などはふつうない。 (4) 「空車」表示は 《米》 Vacant, 《主に英》 For Hire 。

 

● 関連 — 「見出し語」に言葉の面で関連した情報

例)  wedding

【結婚記念日】 paper ~ 1周年 / straw ~ 2周年 / candy ~ 3周年 / leather ~ 4周年 / wooden ~ 5周年 / floral  ~ 7周年 / tin ~ 10周年 / linen ~ 12周年 / crystal ~ 15周年 / china ~ 20周年 / silver ~ 25周年 / pearl ~ 30周年 / coral ~ 35周年 / emerald ~ 40周年 / ruby ~ 45周年 / golden ~ 50周年 / diamond ~ 60[75]周年

どれも豆知識的な情報で,どの辞書も似たようなコーナーを持っています。辞書によって取り上げるものの差はありますが,といって優劣はあまりないような気がします。

 

● 表現 — 「見出し語」を使う状況におけるコミュニケーション上の表現例

例)  invite

【招待(状)の一例】 (1) 書状では You are cordially ~d to our 2007 summer session. (2007年の夏の会議にご招待いたします)などとする。終りに r.s.v.p. (ご返事ください)か Regrets only. (欠席の場合のみお知らせください)を書く。 (2) 口頭では I would like to ~ you to have dinner at my house, Friday at six. 金曜日6時に私の家での夕食にお招きしたい。

 

ルミナスの「会話」,ウィズダムの「コミュニケーション」にあたるものですが,それらとはちがっていわゆる「日常会話」の典型例を取り上げている部分は少なめです。冒頭でも述べたように,英和辞書で会話の典型例がどこまで扱えるかは疑問ですが。

 

● 文法 — 見出し語に関連する文法事項

例)  find

[目的語繰り上げ構文]

1. 目的語繰り上げ構文

 (1) I found that John was boring.

 (2) I found John to be boring.

(1) の John は従節である that 節の主語である。しかし同じような意味の (2) では John は主節の目的語に繰り上がっている。(2) のような構文を「目的語繰り上げ構文」(object-raising construction) と呼ぶ。

このあとには,かなり高級な議論がつづきます。「ジーニアス」は難しすぎるという意見もあるようなのですが,この部分(個々の引用部分のつづき。長いのでカットしました)は確かに初学者には難解すぎます。ただし,扱っているポイント自体は特殊なものではなく,従来から取り上げられてきたポイントです。「目的語繰り上げ構文」というネーミングも,他に初学者向けの便利な名前をでっちあげるわけにもいかず,いたしかたないところだと思います。内容は面白いんですけどね。

 

ルミナス

他にはあまり見られないのが,「リスニング」と「文法」です。

● リスニング — 見出し語に関する音声学的知識

例)  can’t

《米》では can は文中では普通弱く /kən/ と発音され,逆にその否定形 can’t は比較的強く /kænt/ と発音されるが,この語末の /t/ はしばしば聞こえないことがある。そのため耳で聞く際には I can /kən/ help you. 「アイカヌウピュー」, I can’t /kænt/ help you. 「アイキャウピュー」のように can の母音がよわい /ə/ か強い /æ/ かが肯定か否定かを判断する決め手となることが多い。

こういう大事なことが,従来の辞書では軽んじられていましたから,この項目はいいと思います。「リスニング」欄全体は少し重複が多いのですが,でも歓迎したいと思います。今までなかったのが不思議。

 

● 文法 — 基礎文法事項の説明,というより,文法用語の説明か。

例)  文の要素

文を組み立てている基本的な要素で,主語・述語動詞・目的語・補語・修飾語句をいう。文の要素のうち,修飾語句以外のものは文の骨組みになり,文の主要素と呼ばれることがある。文の主要素の構成のしかたによって文を分類すると5つの型に分けられる。

ルミナスの「文法」欄は,全部集めれば一応体系的な文法用語集になっているのが特徴です。ジーニアスの「文法」は見出し語に関する文法項目ですから,体系性を志向してはいません。初版では巻末にあったものを,見出し語の中にちりばめた形になっています。巻末でよかったのでは,という気もしますが。

辞書の中では,文法用語を使って説明する以上,こういう欄があってもいいと思います。ただ,全体としては説明が硬すぎるきらいはあります。これだけ読んで,英語が苦手な高校生にわかるかなあ。

 

● 単語の記憶 — 語源からの単語の関連付け

例)  cure

«CUR» (注意)

cure   (世話をする) –> 治療する

curious (注意を向ける) –> 好奇心の強い

accurate (注意が払われた) –> 正確な

manicure (手の世話) –> つめの手入れ

procure  (…の世話をする) –> 手に入れる

secure  (心配のない) –> 安全な

これも他の辞書には見当たりません。最近の辞書はどれも語源的説明を重視しない傾向があります。そういう情報は大辞典や英米のネイティブ向け辞書には載っているわけで,必要ならそちらに当たればいいし,語源が威力を発揮する場合は限られているので,その方針は十分理解できます。そしてその限られた場合をこの欄が受け持っているということなのでしょう。

 

● 日英語義比較 — 誤解されやすい語義のズレ

例)  ashamed

ashamed (よくない事をして恥じている) 恥ずかしい
embarrassed (きまりが悪い)
shy (引っ込み思案ではにかんだ)

「恥ずかしい」は 「悪いことをしました,恥じています」という ashamed より,embarrassed の方ががぴったりすることが多いのですが,そういう微妙なずれを図表化して取り上げている欄です。説明が少ないのでちょっとわかりにくくなっているところもあります。それにこの場合であれば,「恥ずかしい」を左列に,英語を右列に配置した方がいいと思うのですが。

 

● 日英比較

sauce

普通はトマト・肉汁・はっかの葉などのいずれか,またはその混合物をクリーム状にしたもので肉・魚料理などにかけて食べる。日本でいう液状の「ソース」は普通は Worcestershire sauce のこと。

こちらはニュアンスの違いというよりも,外来語と元の英語の中身の違いですね。

 

● コロケーション — コロケーションとは,その語と他の語の結びつきやすさ,セットで使うことの多い表現です

例) egg

beat [whisk] an egg   卵をかきまぜる[泡立てる]

boil an egg (hard [soft])   卵を(固く[半熟に])ゆでる

break [crack] an egg   卵を割る

sit on [hatch] an egg   (動物が)卵を抱く[かえす]

ウィズダムではこれをコーパスからそのまま出していますが,こちらの方が整理されている印象があります。もちろん本格的なコロケーション情報は「英和活用大辞典」などに頼るしかないのですが,中辞典にあって悪いわけはないですね。

 

● (自)(他) の転換 — 自動詞・他動詞両方で用いる動詞

例)   open

(他) 1 あける  (to make (something) open)

(自) 1 開く  (to become open)

この欄の意義がわたしにはイマイチよくわからないのですが。

 

● ~のいろいろ

例)  television

television のいろいろ cable television ケーブルテレビ / high-definition television ハイビジョン / pay television 有料テレビ / satellite television 衛星テレビ

● コーパスキーワード

例) go doing (1) のいろいろ

go boating ボートこぎに行く / go climbing 登山に行く / go hiking ハイキングに行く / go hunting 狩猟に行く / go jogging ジョギングに行く / go sailing ヨット乗りに行く / go shopping 買い物に行く / go skiing スキーに行く

● 関連表現

例) money

be broke   《略式》一文無しである

be hard up   《略式》金がなくて困っている

break a ten-thousand-yen bill [《英》 note]    一万円札をくずす

change Japanese yen into US dollars   日本円をドルに替える

deposit money in a bank   金を銀行に預ける

have no money with [on] one   金の持ち合わせがない

Money talks.   金が物を言う

open a bank account   銀行口座を設ける

このへんは,他の辞書にもありますね。

 

● 構文

例)  動詞+人+ from doing をとる動詞

[例] Business prevented me form attending the meeting. 用事で私はその会に出られなかった。

ban 禁止する / deter やめさせる / discourage 思いとどまらせる / inhibit 禁じる / keep させない / prohibit 禁じる / stop やせさせる

もっと載せていいと思うのですが,あんがい少ないです。

 

● 会話

例)  Excuse me?

“Would you like some coffee?”  “E~ me?”  “I said, ‘Would you like some coffee?’”  “Oh, thank you. Yes, please.” 「コーヒーはいかがですか」「すみません,何とおっしゃったのですか」「『コーヒーはいかがですか』と申したのです」「どうも。はい,いただきます」

ルミナスにはこれ以外にも,特に名前のついていない欄が数多くあります。図表も充実しています。crossword puzzle の項目には,ほんとにパズルが載っています(解答も)。

 

 

ウィズダム

切り取る視点はそれほどユニークなものはありませんが,ひとつひとつの記事は面白いと思います。コーパスが他よりも強調されている感じです。

● コーパス頻度ランク — つながりやすい語句をコーパスから引っ張ってきたもの

例)  that

同格の that 節をとる[名]

  1. fact
  2. idea
  3. hope
  4. evidence
  5. sense

コーパスには大量のデータがあったでしょうに,これだとなんかちょっとさびしい気がしますが,スペース的にはこれでイッパイイッパイなんでしょうね。

 

● コーパスの窓

例)  ever

過去の経験を問う疑問文

ever を伴って過去の経験・事例を問う場合,7割は完了形を用いる形が占めるが,《米》や《英・くだけて》では Did you ever …? のような過去形も用いられる。また Did you ever play sports when you were a kid? (子供の時スポーツをしたことがありますか)のように過去を示す表現が伴う時は過去形を用いる。また,過去形の場合,反語的な意味で用いられることもある。▶ Did I ever steal your money? 君のお金を盗んだことなんて,今まであったかい(!「なかった」ということを含意)

「7割」というデータの正確さはともかく,コーパスもこれくらいまとめてくれないと,生のデータだけではあまり使えませんね,われわれには。こういうのを増やしてもらいたいもんです。

 

● 表現

例)    taste

(1) ・・・な味がする ▶ ~ hot 辛い / ~ bitter 苦い / ~ sweet 甘い / ~ sour すっぱい / ~ salty しょっぱい / ~ good うまい / ~ terrible まずい

(2) 味が・・・ ▶ How does it ~? ≒ What does it ~ like? どんな味がしますか(! 前者は辛い・甘いなど,後者は肉・魚など具体的なものの味を聞く表現)

● 関連

例)  number

数学上の数

▶ a cardinal [ordinal] ~ 基[序]数 / a counting [natural] ~ 自然数 / a half ~ 0.5を伴った整数《0.5, 1.5, 2.5 など》 / an integral [a whole] ~ 整数 / an inverse ~ 逆数 / a prime ~ 素数 / an even [odd] 偶(奇)数 / a rational [an irrational] ~ 有理[無理]数 / a real [an imaginary] ~ 実[虚]数 / a round ~ 概数,丸めた数字

● 事情

例)  rainbow

7色は外から順に red, orange, yellow, green, blue, indigo, violet で, indigo を除いて6色とすることもある。頭文字をとって Richard of York gained battles in vain. のように覚えることがある。

● 語源

例)  September

September, October, November, December はラテン語の数詞にちなんで名づけられ,旧ローマ暦(ロムルス暦)では7 ~ 10月を表した。当時の暦では,1年は10か月のみで,冬期には月名が与えられていなかった。ヌマ暦で,空白の11月に January, 12月に February が付け加えられ,その後両月が1月,2月へそれぞれ移動し,各月が2か月後ろへずれることになり,September は9月になった。

このあたりは,他の辞書と似ています。「語源」も語源的雑学情報といったかんじ。

 

● 読解のポイント

例)  therefore

結果・結論の表現

「原因⇒結果」「前提⇒結論」の後半部分の導入に用いられる。文章全体の結論が述べられる場合もあるし,例や説明の中での結論や結果が述べられるにすぎない場合もある。同様の機能を持つ表現には,then, as a result, consequently, as a consequence, this is why, thus, so, so that … などがある ▶ Every integer is either even or odd. Therefore, what is not odd is even. すべての整数は偶数か奇数である。よって,奇数でないものは偶数である。(! 第1文が前提,Therefore 以下でその結論が述べられている) 以下例文 略

therefore や but といったつなぎことば(discourse markers) に付随している欄です。重要ではありますが,もう少し工夫が欲しいところ。数も少ないです。

 

● 作文のポイント

例)  convenient

都合のいい時に電話をください

×  Please call me when you are convenient.

Please call me when it is convenient for you.

 convenient は人を主語にしない

これは,語法欄と区別しにくいですね。語法欄に組み込んでもいいかもしれません。

 

● コミュニケーション

例)  ready

A: Are you ready to order?

  ご注文はお決まりですか。

B: Just a minute. We’re almost [(just) about] ready.

もうちょっと待って。もうだいたいは決まったから。

会話表現。どうせならもっと増やした方がいいかも。

 

 

ロングマン

●  — 日本人が間違えやすいポイント

例)  nor

「両方とも・・・ない」の意味で not とともに nor を用いることは不可。 not … or または neither … nor を用いる。後者はよりフォーマル。

× I can’t dance nor sing.

○ I can’t dance or sing.

× I can neither dance nor sing.

びっくりマークは,他の辞書の「語法」欄に相当するようです。他の3辞書と比較すると語法面はロングマンの弱点でしょう。今後ここをどれだけ充実させるのか,それとも他の辞書と一線を画するインパクトのある企画が打ち出せるのか。まあそれは次バージョンのはなしですが。

● 文化

例)   cat

猫は危険な状況でも無傷で逃れ,生き延びそうに見えるところから, A cat has nine lives. (猫に九生あり)と言われることがある。米国では黒猫が前を横切ると不吉だと信じられているが,英国では逆に幸運だと思う人もいる。

● 語源

例)  economy

economy はギリシャ語の oikonomia (「家事をこなすこと」の意)が語源とされる。15世紀より用いられるようになった。

これらは他の辞書と同様の項目です。

●  — 英訳・和訳しにくいもの,注意点

例)   movie

(1) 「映画を見る」という意味では通例 watch を用いるが,「・・・という映画を見たことがある」という経験を表す場合は see を用いる: I like watching (× seeing) movies. 映画を見るのが好きだ | It’s the best movie I’ve ever seen. 今まで見た中で最高の映画だ。

(2) 「ビデオで映画を見る」は watch a video を用いる: I would rather watch videos (× video movies) at home than go to the movies. 映画はわざわざ映画館へ行くよりも自宅でビデオを見る方が好きだ。

ジーニアスでは, テレビやビデオを movie を見る場合は watch,映画館で見るのは see となっています(ウィズダムも同様)。ロングマンは,LDOCE を出発点としているだけに,他の辞書とは少し切り口が違う時があっておもしろいですね。

 

● コロケーション・グリッド

例) rich

  RICH wealthy be well-off/comfortably off well-to-do affluent prosperous
person 裕福な人 裕福な人 金に不自由していない人 富裕階級の人    
family 裕福な家族 裕福な家族 金に不自由していない家族 富裕階級の家族 経済的に豊かな家族 経済的に成功している家族
area 裕福な地域 裕福な地域   富裕階級が暮らす地域 豊かな地域 繁栄している地域
country 裕福な国 裕福な国     豊かな国 繁栄している国

この表からは,たとえば rich と wealthy は意味も用法もたいして変わらない, well-off は国や地域に,well-to-do は国に,affluent と prosperous は人には使われることはまれ,ということがわかります。これもロングマン独自のもの。イギリスの本にはこの種の表を見かけることがあります。でも,ロングマンに載っているこのグリッドはそれほど多くありませんが。

 

● コミュニケーションガイド

辞書の中央にある,付録みたいなものです。「Oral Communication」(24ページ),「エッセイ・ボキャブラリー」(20ページ),「接続語句」(6ページ)の3本立てです。

「Oral」は冒頭で書いたシチュエーション別の会話表現集,「エッセイ・ボキャ」はテーマ別の語彙,「接続語句」はつなぎ言葉(discourse markers)です。狙いはいいと思いますが,網羅的にやろうとすればこれだけで別の1冊の辞書になってしまいます。あわせて50ページだとちょっと食い足りない気がしますが。

 

 

なんか今回は注文が多くなってしまいました。あしからず。

 

 

 

英和辞典比較シリーズ   総評

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英和辞典を比較する (10)

4月
2008
2
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「ジーニアス」「ルミナス」「ウィズダム」「ロングマン」の4英和辞典の比較のシリーズ第10弾は,会話表現・口語の記述です。今回は受信型,つまり「こういうシチュエーションではどう言うか」ではなく,「こう言われたらそれはどういう意味か」ということを調べる場合を想定しています。発信型情報については,各辞書が「コミュニケーション」「会話」などの囲み記事として載せていますが,英和辞書は本来シチュエーション別ではなく,単語別の記述になっているため,この点では限界を感じざるをえません。それはむしろ和英辞典の仕事でしょう。受信型情報の記述なら,英和辞書の本領が発揮されるはずですが,さてどうでしょう。

 

☆ Nice to meet you. ⇔ Nice meeting you. ⇔ Nice to see you.

どなたもご存知の Nice to meet you. ですが, Nice meeting you. や Nice to see you. との使い分け・ちがいをどのように載せているかの比較です。

私の理解は,

  • Nice to meet you. は初対面の際
  • Nice to see you. は2回目以降の再開の際
  • Nice meeting you. は初対面の別れ際

で使われるというものです。かなり以前, native(American) に, Nice to meet you. と Nice meeting you. は interchangeable かと尋ねたことがありますが,答えは No. でした。「gerund はやっぱり過去的な意味になるんだろうね」というのが彼の意見でした。

この点を囲み記事を使っていちばん詳しく載せていたのは,「ウィズダム」でした。

ウィズダム

meet

コーパスの窓 meet を使った初対面のあいさつ

(1) 初対面の場面では紹介の後に (It’s) nice to meet [《比較的まれ》meeting] you. を用い,言われた方は通例それを繰り返すが,《くだけて》ではしばしば略式表現も用いられる ▶ “(It’s) nice to meet you, Susan.” “Nice to meet you, too. [《くだけて》 And you. You too], Ally.”「お会いできてうれしいです,スーザン」「こちらこそ,アリー」( 相手の名前を添えて呼びかける方が親しみが出る)

(It’s) nice の代わりに (It’s) good や (I’m) glad, 《かたく》では(It’s) a pleasure, I’m (very) happy, I’m (very) glad, How (very) nice を用いることがある。▶ “It’s a pleasure to meet you.” “Same here.” 「お会いできてうれしいです」「こちらこそ」

(2) 別れ際は It was [It's been] nice to meet you / (It’s) nice [《かたく》 I'm glad] to have met you. などのほか,《主に米》 では(《かたく》 It was ) nice meeting you. が好まれる。▶ “(It was) nice meeting you.” “(It was) nice meeting you, too.” 「お会いできて楽しかったです」「こちらこそ」

pleasure を使った “(It’s been [It was] a) pleasure to meet [meeting] you.” “The pleasure is mine.” は《かたく》で用いられる。 (I am very) pleased to meet you. や Good to meet you. は通例初対面の時に用いるが,時に別れ際に用いられることもある。

(3) 2回目以降会ったときには Nice to see you again. のように meet ではなく通例 see を用いる。

 

ジーニアス

ジーニアスでは,この件の関連事項は特に囲みなどのない meet の語意欄に載っています。

meet (他)(2)

It’s really nice to ~ you. = I’m really glad to ~ you. 初めまして,よろしく。 《♦ meet は初対面で通例紹介されてあった場合 (–> see): 《英》では How do you do? の方がふつう》 / It was nice ~ing you. お会いできてよかったです。《♦ 初対面の折の別れのあいさつ。もっと改まったあいさつは I’m very pleased to ~ you. / I’m delighted to ~ you. など》 / Come to the party and ~ my wife. パーティにお越しください。妻を紹介します / I’d like you to ~ my friend Roy Smith. 友人のロイスミスを紹介します。

基本は「ウィズダム」と同じです。特別項目立てをしていないので目立たないきらいはありますが,いちおう合格点でしょう。

 

ルミナス

ルミナスでも囲みなどはありません。

meet (他) 3

(紹介されて)<人>と知り合いになる: I have often seen Brown at parties but I have never met him. 私はブラウンをパーティーでしばしば見かけましたが,まだ紹介されたことはありません。 / How did you (first) ~ your wife? 奥さんとは(最初)どのようにして知り合いましたか / Mr. Jones, I’d like you to ~ Mr. Smith. ジョーンズさん,スミスさんをご紹介します。 《Jones の方がSmith よりも年長[目上]のときの言い方》 Nice ~ing you. Ⓢ《米》 = Nice [Pleased, Glad] to ~ you. Ⓢ はじめまして,よろしく 《初対面のあいさつ: 2度目からは see を用いる》 Glad [Nice] to have met you. お会いして楽しかったです。《別れのあいさつ》

Ⓢ はルミナスでは Spoken ,つまり 「話しことば」であることを示す記号です。

Nice to see you. の扱いは他の3辞書と同じですが,Nice meeting you.はアメリカではNice to see you. と同じとしているのは,他の辞典とは違っています。少なくとも,コーパスデータを参照して扱っている「ウィズダム」の《比較的まれ》という注記が正しいと思われます。

 

ロングマン

ロングマンでの関連事項は meet の熟語欄に載っています。

meet

Nice / Pleased / Good to meet you. 《話》 はじめまして (紹介などの際,初対面の人に対する丁寧なあいさつ): “This is my friend Betty.” “Hi. Nice to meet you.” 「こちらは友達のベティです」「こんにちは,はじめまして」 すでに面識のある人に再会したときには meet でなく see を用いる :Nice to see (× meet) you again. またお会いできてうれしいです。

(It was) nice meeting you. 《話》お会いできてよかったです。(初対面の人と別れる際の丁寧な表現): Nice meeting you, Ann. アン,お会いできてよかったです。

必要なことが簡潔にまとめられています。詳しさではウィズダムに負けるけれど,いちばんわかりやすいかもしれません。

 

 

☆ You never know.

You never know. は,「うーん,それはどうかな。案外どうだかわかんないよ~。」という感じの会話の決まり文句ですが,なかなか説明しにくい表現です。

ジーニアス

You never know. 《略式》 先のことはわからない(けどね),さあなんとも言えない(ね); ひょっとしたら(ね),そうかもね 《♦ 何があっても不思議でないという気持ち》 || I doubt we’ll arrive on time, but you never know. 我々は時間どおりにつけないと思うが,なんとも言えないね。

ルミナス

You never know.  Ⓢ 先のことはわからない。さあどうだか; ひょっとしたらそういうこともある。

ウィズダム

You never know. 《話》 どうなるかわからないけどね( 「そうなるといい」という含みがある): ひょっとすると(そういうことになるかも) ▶ You never know — you might win the lottery. 先のことはわからないよ。もしかしたら宝くじに当たるかもしれないしね。

ロングマン

You never know. 《話》 (ありえなさそうだが)ひょっとすると,もしかしたら

 

この種の表現は例文がなければ,理解不能です。できたら少し長めの例文が複数欲しいところです(無理な注文ですが)。その点で,ルミナス,ロングマンはちょっと不満が残ります。

基本的に,前文でいったこと,または相手の発言に対し,その可能性を限定し,「ただし確かなことはわからない」「あなたの言っていることが正しいかどうかホントのところはわからない」というようなニュアンスを持ち,次の例でもそうですが,you never know のあとで,こういう可能性もありうる,という内容を付け加えることが多いと思われます。この,別の可能性を付け加えるときに,「ひょっとすると」という訳語が生きてきます。

BNC コーパスの例文

  • It probably won’t get us very far, but you never know, one of them might come up with something.
  • Asked whether he thought the Jockey Club was ready to change the rules, the South African champion was guardedly optimistic: ‘You never know, It’s difficult.’
  • The odds are that you will not need it, but you never know.

 

☆ Just like that.

just like that は,直訳すると「ちょうどそのように」となりますが,会話上の決まり文句としては,「そんなに簡単に(かよ)」くらいの訳になるでしょうか。これも例文がないとなかなか意味をつかみにくく,まして自分で使おうと思ったら,多くの例に触れて,語感を肌で知るしかありません。

ジーニアス

just like that (1) びっくりするほど簡単に,無造作に。 (2) 突然,何の説明[予告]もなしに

ルミナス

just like that [副] 《略式》 あっさりと,さっさと,(そんなに)簡単に; 突然

ウィズダム

なし

ロングマン

just like that 《特に話》 いきなり,何の説明もなく : You can’t give up your job just like that. そんなに急に仕事を辞められるわけないでしょう。

 

例文があるのはロングマンだけ。各辞書ともコーパス準拠をうたっているのだから,例の一つや二つくらいは見つかるでしょうに。次の例も BNC (British National Corpus) で引いたもののピックアップです。

BNC コーパスより

  • Did she imagine she could run away from Alice, just like that?
  • ‘I couldn’t look at you and kill you’ — he clapped his hands — ‘just like that.’
  • Quietly, unhesitatingly — just like that — he faces up to the moral consequences of his realization.
  • What was unacceptable and intolerable suddenly — just like that — became acceptable and tolerable, as the Conservative party line turned, with a discipline which I found quite remarkable and which was reminiscent of societies that Conservative Members often dismiss contemptuously.

私は,この熟語に今から20年くらい前のNHKのラジオ講座で出会いました。だから,けっこう昔からある表現ですね。

 

 

英和辞典比較シリーズ   総評

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by rickie | Posted in その他(高校生向け), 英語の周辺, 辞書のはなし | No Comments »

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