『目にあまる英語バカ』

著者:勢古浩爾|出版社: 三五館|2007年|定価 1200円(+ 消費税)|一般向け|独断的おすすめ度 ★★★☆

痛快な書です。

筆者の定義する英語バカとは,「なんの必要もないのに,英語を話せたら『かっこいい』と思い,英語を話す人間を見て『かっこいい』と思い,どうだおれは英語が話せるぞ『かっこいいだろ』と思い,なにが英語ができるだ調子に乗りやがって『ばかやろう』が,と無理矢理蔑む人間はすべて英語バカである。」というものです。わたしなら,これに「本人はペラペラのつもりだけど,中身は低級な英語で無内容な話しかしてない人間」というのを付け加えたいところです。

英語バカを筆者が次から次に執拗なまでに罵倒しなぎ倒していく姿には爽快感さえ覚えます。時々ミソも☓☓もいっしょくた,という感じがしないわけではありませんが,なぎ倒すからにはこうでなくちゃいけません。この筆者の本はこれまでに何冊か読んで,けっこう気に入ってました。本屋でタイトルを見たときには,これまでの筆者の本の系列とちょっと外れている気がして異和感があったのですが,ここまで英語バカにこだわっているからには,筆者自身相当の英語バカでいらっしゃるのかもしれません。そしてあなたも私もたぶん同類でしょう。ってことは,この本は大宅壮一以降(もっと前からか)の伝統を受け継いだ「日本人総英語バカ」論と言えるかもしれません。

おそらく英語教師でこの本の主張,というか罵倒に共感しない人は少ないのではないでしょうか(最近の若い人は知りませんが)。

だが,あなたね,そもそも「中高大と10年も習った」のに,というのが真っ赤なウソなのだ。というより,あまりに人口に膾炙しすぎた錯覚なのである。ちょっと胸に手を当てて,考えてみて。あなた,本当に「10年間」ちゃんと英語を勉強しましたか。毎日一時間でも二時間でもいい,10年やったですか。一年でもいい。やったですか。どこの人間だ,おれは。いやわずか半年でもいい。やっちゃおらんでしょうが。

うむ,わたしもそれが言いたかったです。

でも,日本人の英語レベルの低さについて,なにか教師には責任がないと言っていただいているみたいっていうのが,共感の理由って訳ではありません。「英語バカ」とは結局言葉というものをなめきった存在であり,それにイライラさせられるんですね。

第二言語習得論では,人は「母語習得にほぼ例外なく成功するが,ネイティブ並みという基準で言えば,第二言語習得にはほぼ例外なく失敗する」というのが定説のようです。特筆大書していただきたい。あなたは英語をマスターすることなど確実にできないのです。「マスター」って,何様ですか。かなり早い時期にその言語環境に置かれれば話は別でしょうが,もちろん小学校でお遊戯程度の英語をやったところで何の意味もないでしょう。

ただし,だから英語の勉強はすべきでない,とは言いません。だって好きでやってるんだから。

この本の筆者は,おおかたの日本人にはホントの意味で英語は必要ない,というのを英語バカ批判の,そして英語が苦手な理由の要点としているようです。それ以外にも理由はありそうですが,基本的にそのとおりだと私も思います。そして必要ないけどおもしろいからやる,というのが私が語学学習を勧める理由の要点です。学生時代から「何かの役に立つことなんか勉強してたまるか」と思ってましたからね。ま,あまり世に受け入れられることはないと思いますが。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。