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単語を覚えるとはどういうことか?(1)

4月
2008
30
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わたしの世代の人間が大学受験の時に使った単語集は「試験に出る英単語」(森一郎著 青春出版社)でした。まわりの受験生には「出る単」と呼ばれていましたが,大学に入ってから出会った関西出身者は「しけ単」と呼んでいて,ちょっとびっくりでした。マクドナルドが東京で「マック」,大阪で「マクド」と呼ばれているのと同じ,文化の地域差です。

われわれよりも前の世代が使っていた「赤尾の豆単」という愛称の「英語基本単語熟語集」(赤尾好夫著 旺文社)が,単語を網羅的にかつアルファベット順に並べていたのに対し,「出る単」はやさしい単語は一切省いて,しかも試験によく出る順に並べたことで,「豆単」を時代遅れのものにし,受験生のバイブルになりました。「試験によく出る順」といっても,パソコンなどが存在しない時代ですから,著者である森一郎氏の独自調査(とおそらくは,経験的なカン)によるものでしょう。確か,最初は intellect (知性)で,その後には hypocrisy (偽善)やら patriot (愛国者)だのやたらと難しい単語で始まっている(うろ覚え)のがかえって新鮮で受けたわけです。

その後,単語集は「ターゲット1900」(旺文社)やら「Duo」やら「速読英単語」やらが現れ,かつてのように「受験英語」の世界で他を圧倒して君臨する単語集はないものの,依然として単語集は売れ続け,使われ続けています。そして単語集を一冊完璧に仕上げれば英語の勉強にはかなり展望が開けるとされていて,実際,英語学習に注ぐエネルギーと時間のうちのかなりの部分が単語の暗記に費やされているという事実は今も昔もほとんど変わっていません。

単語を覚えることの重要性は,受験目的であれ,それ以外の目的であれ否定しようもありませんし,ある程度のレベルまでは単語集を使って無理やり覚えることも必要だとわたしは思っています。こういう意見は別に特殊ではなく,たとえば千野栄一氏(元東京外語大教授)は「外国語上達法」(岩波新書)の中で,どんな言語を学ぶのであれ,「まず何はともあれ,やみくもに千の単語を覚えることが必要」だと言っています。しかも,

この千語を覚えるのに,辞書を引いて覚えるのはむだである。辞書を使うのはもっと後のことで,この段階ではすでに訳のついている単語を覚えればいい。

と,基礎レベルでは覚える単語には辞書不要とまで言っています。外国語学習を軌道に乗せるためには,単語をどうしても無理やり,強引に,「やみくもに」,暴力的に(?)覚えるべき段階(始原的蓄積段階)が必要だということです。わたしも千野氏ほどではありませんが,何カ国語かにチャレンジしましたが,この点では同意見です。

そもそも単語数の数え方は微妙な問題ですから,1000語というのは一つの目安にすぎません。現行の「学習指導要領」では中学で履修すべき単語数は900語程度となっています(近々の改定では1200語)。したがって千野氏の「やみくもに覚える」のは,中学レベルの単語ということになります。

といって,その後はすべて辞書を引き引き覚えるというわけにもいかないでしょう。徐々に「訳のついている単語」(単語集)から自立して,辞書を使って文脈の中で覚えるように切り替えていくということになると思います。単語集は必要,でも単語集は辞書代りではない,ということを銘記すべきです。

 

シリーズ [単語を覚えるとは] のもくじ

  1. 単語を覚えるとはどういうことか?(1)
  2. 単語を覚えるとはどういうことか?(2)
  3. 単語を覚えるとはどういうことか?(3)

 

 

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by rickie | Posted in 高校生向け | No Comments »

When I looked at those photographs, something broke. Some limit had been reached, and not only that of horror; I felt irrevocably grieved, wounded, but a part of my feelings started to tighten; something went dead; something is still crying. (Susan Sontag)

4月
2008
29
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「それらの写真を見たとき,わたしの中の何かが壊れてしまった。何かの限界にまでつきあたったのだが,恐怖の限界というだけではなかった。取り返しのつかない悲しみと傷を受け,しかし逆に私の感情の一部はこわばり始めた。何かが死んでしまった。そして何かが今でも泣いている。」(スーザン・ソンタグ)

スーザン・ソンタグ「写真論」(On photography)の一節。

ソンタグは名前から察せられるように,ユダヤ系アメリカ人で,評論家・小説家。ベトナム戦争に反対してハノイにも行ったが,Jane Fonda のように舞い上がっていたわけではなく,9.11に際してはその発言で,多分にヒステリックになっていた世論から叩かれたが,終始冷静さを保ち,2004年,静かに亡くなりました。わたしたちの世代の人間には忘れることのできないひとりです。

引用は,彼女が12歳の時に本屋で見かけたベルゲン・ベルゼンとダッハウ(ユダヤ人虐殺のための強制収容所)の写真についてのことばです。

One’s first encounter with the photographic inventory of ultimate horror is a kind of revelation, the prototypically modern revelation; a negative epiphany.

「一連の究極の恐怖の写真との最初の出会いは一種の啓示,現代における啓示の原型をなすものであり,逆の意味でのエピファニーである」

Nothing I have seen — in photographs or in real life — ever cut me as sharply, deeply, instantaneously. Indeed, it seems plausible to me to divide my life into two parts, before I saw those photographs (I was twelve) and after, though it was several years before I understood fully what they were about.

「写真の中であれ,実生活においてであれ,私がこれまで見たもののうちで,これほどまでに鋭く,深く,瞬間的にわたしを切り裂いたものは何もない。わたしの人生は,その写真を見る前(当時12歳だった)と見た後の2つに分けられるといっても間違いだとは思えない。その写真が何のことなのか本当にわかったのは数年してからであったが。」

偶然ですが,わたしの同様の経験もちょうど12歳の時ではなかったかと思います。中学受験のための塾が日曜ごとに大学の教室を借りて開かれていて,その教室の壁に張り出されていた小さな写真です。写真には,地面に横たわるベトナム人の女性の裸の胸にナイフを突き立てているアメリカ兵の姿が撮られていました。写真のわきには,「アメリカはやがてベトコンになる子どもを育てさせないために」残虐行為を行っているのだという告発文がつけられていました。その大学の共産党系自治会が貼り出した写真のようでした。

今から考えれば,かなり不自然な写真です。写真は米兵の背後の肩口から撮られていましたが,そのような写真が存在すること自体,ちょっとありえないのではないかと思います。

しかし,たとえそれが北ベトナム側が宣伝用に自作自演したデマ写真であったとしても,その時受けた傷は取り返しのつかない(irrevocable)ものでした。偽りであるかどうか,事実そういう出来事があったのかどうかは,もはや問題ではありません。ただ,形のない恐怖のようなものに襲われ,たじろぎおびえていた,その事実の方がわたしにとっては決定的でした。その時わたしが知ったのは,この世には何かわけのわからない悪意のようなものが存在しているということなのではないかと,今は思います。その悪意に対する怯えは,今でも消えることがありません。

おそらく,いまでも子どもたちはどこかで,人知れずこのような恐怖と出会っているのでしょう。おとなたちはそれに気づくはずもありません。この傷は大人になるために誰でもいつかは受けなければならない傷なのでしょうか。その出会いが,偽りの映像やゲームやネットでの出会いになるとしたら,それはそれで「現代における啓示の原型」なのかもしれませんが。

 

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by rickie | Posted in 引用 | No Comments »

単語は単語集で覚えるべきか?

4月
2008
24
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別にアンケートを取ったわけではないが,大学の英語教育学専門の学者で,いわゆる「単語集」のたぐいで英単語を覚えることに賛成する人はほとんどいないだろうと思う。

別にアンケートを取ったわけではないが,でもこちらは経験的に知っていることだが,いわゆる「単語集」のたぐいを使わないで英単語を覚えた受験生はほとんどいないだろうと思う。

大学の先生たちが高校生の現状を知らなすぎる,などと言いたいわけではない。先生たちもそんなことは承知していて,賛成はしないが強いて異を唱えることもなく,必要悪として黙認しているのだと思う。

中学一年から高校三年まで,建前上はずっと英語を勉強してきたはずだ。そしてその普通の勉強の中で(学校の授業と予習復習によって)身につけた単語量で,大学受験に対応できるというのが理想といえば理想である。でもそういう理想的な形で必要なレベルまで到達できた生徒はまれであろう。高三になって,あわてて無理やり単語を増やさなければならなくなるのがむしろ普通の姿だといっても言い過ぎではないと思う。「普通に・自然に」英語を学ぶ方が少数派なのだ。まあ,これはこれまでもそうだったのだし,これからも変わることはないだろう。そこで「単語集」の出番である。

現場の高校・塾・予備校の教師たちはどうかと言えば,塾・予備校といった受験産業にいる人はもちろん,高校の先生も「単語集」を積極的に勧めているように思える。毎週単語集の X ページから Y ページまでをテストする,という学校もけっこうある。むしろ有名進学校の方にそういう先生が多いような気がする。

「単語集」に賛成しない意見は,次のようなものだ。

  • 単語は文脈の中に置かれてはじめて意味を持つのであり,文脈から切り離した形で単語を覚えるのでは不自然で意味がない。
  • 単語だけをまとめて覚えようとするのは,言語学習として不自然である。

大昔の単語集(そして今でも多いが)は,単語と意味と発音と,あとは反意語・派生語などの追加情報が載っているだけで,上の批判の標的とされたタイプである。「単語集」を作っている側もこういう批判に対処して,最近では(けっこう前からだが)文章つきの単語集を売り出している。これにも2種類あって,

  1. まず単語集を設計し,それに合わせた英文を載せる場合
  2. まず英文ありきで,そこから単語を選んで単語集を作る

1 のタイプはどうしても英文がとってつけたような無理やりの英文になりがちであり,2 のタイプでは英文がやたらに難しかったり,そもそも必要な単語を網羅するのが難しく,語数が少なめになり,結果,従来型の単語集が補足としてついていたりする。それでも,英文がないよりは両タイプともましになっていると言える。

「ふだんの文法や長文のテキストに出てきた単語も覚えるべきですか」という質問は,教師がよく受ける質問なのだが,少し答えにくいですね。それが語学学習の普通の姿なのだから,「覚えるな」とはまさか言えないが,といって効率面やそれでカバーできる量の面から考えると,それ一本でいいとも言いにくい。僕のいつもの答え方は,「テキストの単語を抜き出して単語帳を作って覚えるなんてことまではしなくていいけど,テキストの文脈の中で『確かこんなような意味だったかな』というくらいにまではした方がいい」という答え方だ。つまり,軸足のメインは単語集に置いていい,というもので,あんまり歯切れはよくない。

単語集で初めて出会った単語を,意味もつづりも,発音も何もかも全部,しかも次から次へと何百も覚えるのは難しいし,苦痛でもある。だから,長文の中で「はっきり覚えていないが顔見知り」の単語を増やしていったらいいんじゃないの,顔見知りなら単語集で出会っても少しは覚えやすいでしょ,そういう単語が単語集の中にポツリポツリとあれば,覚える苦痛はずいぶんと減るんじゃない?というのがぼくの言いたいことなのだけれど。

それから,最近は,CDつきの単語集もあるので,発音はしっかり覚えた方がいい。発音記号を読めるだけでも違う。発音できない単語は覚えられない,これは鉄則だ。俺は発音できない単語でも覚えているという人がいるかもしれないが,そういう人は自己流発音で覚えているというにすぎない。

 

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by rickie | Posted in 高校生向け | No Comments »

Here’s looking at you, kid. (Humphrey Bogart)

4月
2008
22
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「君の瞳に乾杯」

今週の Quotation コーナーはネタ切れ。で,こんな誰でも知ってるやつで,場をしのぐことにします。

ご存知,映画 Casablanca の中で,Humphrey Bogart 演じる主人公 Rick が,Ingrid Bergman 演じるヒロイン Ilsa に向かって言うセリフです。”kid” というのは,かつて Rick が Ilsa につけていた愛称。

乾杯の文句としては, Here’s to ~!  「~に乾杯」が,どんな辞書にも出ています。

Here’s to your future!

Here’s to your new job!

Here’s to the bride and bridegroom!

同じ意味で, to なしでも使えるらしいのですが,この「カサブランカ」のセリフ以外では辞書にはto のない用法は出ていません。どなたかご存知ですか?

いずれにせよ,「君を見ることに乾杯」というのが直訳のようですね。「君の瞳に乾杯」は名訳だと思いますが,直訳からすると,「君を見ている僕の瞳に乾杯」という感じになるかな。

「カサブランカ」は1942年のアメリカ映画。舞台は現在のモロッコの都市カサブランカで,当時フランス領でしたが,第二次世界大戦下,フランスはドイツに敗れてヴィシー政権(ドイツの傀儡かいらい政権)が統治しますから,カサブランカにもドイツ軍が駐留し,カサブランカで酒場を経営する Rick の店にもドイツ兵が我が物顔でたむろしているというのが映画の冒頭の舞台設定です。そこにナチに追われている反ナチ・レジスタンスの男とその恋人(そして Rick のモトカノ)のIlsa が現われて....というストーリーでしたね。

この映画は,アメリカ人を対独戦争に動員するための反ナチプロパガンダ・国策映画である,という説が現在では有力なようです。映画の中で,酒場でドイツ兵を尻目に,老いも若きも,さっきまでドイツ兵に媚を売っていたおねえちゃんも目に涙を浮かべて La Marseillaise を合唱するシーンはなかなか感動的でした。

Allons enfants de la Patrie,
Le jour de gloire est arrivé!

行け,祖国の子らよ,栄光の日は来たり!

第二次大戦が終わって9年後の1954年には,モロッコの隣国アルジェリアでフランスからの独立戦争(アルジェリア戦争)が始まります。ほんの10年で,少なくとも北アフリカ(マグレブ)では「ラ・マルセイエーズ」の持つ意味が,解放の歌から抑圧者の歌へと変わってしまいます。

 

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by rickie | Posted in 引用 | No Comments »

黄金のウ?コ

4月
2008
17
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New York Times からメールで送られてくる記事案内を眺めていると,どこかで見た記憶のある写真が載っていました。浅草あたりで首都高速から見える,アサヒピールのあのウ×コ型のオブジェのある建物の画像です。

Allison Arieff: Starck Raving

記事は,あの建物を設計した,フィリップ・スタルク(Philippe Starck)についての論評です。アサヒビールに限らず,ちょっと変わった設計をする人のようですね。ニューヨークのハドソンホテルもその一つです。

Several years ago, despite my repeated warnings to the contrary, my mother checked into the Hudson Hotel while attending a conference in New York City. Within minutes of entering her room, she called down to the front desk to ask, “Where’s the bedroom?” A question to which the clerk replied tersely, “Ma’am, you’re in it.”

何年か前,私が何度もやめろと言ったのに,母はニューヨークでの会議に出席する際,ハドソンホテルにチェックインした。部屋に入って何分もたたないうちに,フロントに電話して尋ねた。「寝室はどこなの?」係の人はサラッと答えた。「お客様が今いらっしゃるところです。」

  ・ warnings to the contrary    ~ to the contrary は「それとは逆の~」。ここでは「それとは逆の警告」。

  ・ tersely  簡潔に

そして,アサヒピールのはなし。

But much of Starck’s playful ribbing was at the expense of the user. One could never find the door to the bathrooms in the Royalton lobby, for example, and the “flaming ornament” atop the roof of Japan’s Asahi Brewery building meant to symbolize the brewery’s dynamic heart but is far better known as the “golden turd.”

しかし,スタルクの遊び心あふれるおふざけは,ユーザーの犠牲のもとになりたっている。たとえばロイヤルトンのロビーにあるバスルーム(トイレ)にはドアが見当たらないし,日本のアサヒピール社屋の屋根の上の「燦然と輝く装飾」は,そのビール会社のダイナミックな精神を象徴する意図を持ってはいるが,「黄金のウンコ」としていっそう有名である。

  ・ ribbing  おふざけ,からかい

  ・ at the expense of ~ ~を犠牲にして

  ・ atop ~   = on top of ~

いや,よくわかっていらっしゃる。

 

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by rickie | Posted in 英語の落としもの | No Comments »

It doesn’t matter if a cat is black or white, as long as it catches mice. (Deng Xiaoping)

4月
2008
15
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英語からの直訳は,「ネズミを捕まえてくれる限り,黒猫か白猫かはどうでもいい」

  ・ as long as S + V   「・・・する限り」

  ・ matter (v.) 「重要である」

このタイプの表現は英語ではよく使われます。 It matters little who will discover the cure for cancer, as long as it can be discovered. のような形です。

日本では,というか世界では鄧小平(邓小平)の言葉として有名ですが,もともと中国(または彼の故郷の四川省)の古諺のようです。私の持っている「東方中国語辞典」では,

   不管白猫黑猫,捉到老鼠就是好猫。

という文が「猫(mao)」の項にあり,「白ネコであれ,黒ネコであれ,ネズミを捕るのはよいネコだ:手段より目標達成が大切であるたとえ。」と訳・解説がついています。鄧小平は文化大革命中にこの発言をして,毛沢東から批判されたようですが,「改革・開放」の時代になって広く取り上げられるようになりました。

経済発展できるのなら,共産主義者の手であれ,市場原理によるものであれ構わない,という意味で読まれました。したがって,原理・原則を,あるいは主義・イデオロギーを最重要視する人々には批判されるのも当然と言えますが,功利主義 ( utilitarianism ) の立場に立てば,ごくあたりまえのことを言っているにすぎません。

若い頃はともかく,今の私はこの言葉は嫌いではありません。少なくとも,白ネコか黒ネコかが問題になるのはネズミを捕まえた後である,と考えています。いつのまにか私はプラグマティストになっています。原理・原則の無原則的適用は,有害なものしか残さなかったと思います。

でも一方で,以前ケインズの言葉を取り上げた時に述べたように,原理・原則・主義・イデオロギーから簡単に自由になれるわけでもないでしょう。プラグマティズムもユーティリテアリアニズムも,イズムにずぎません。鄧小平の場合でいえば,「経済発展のためなら」という前提がすでにイデオロギーとなっています。ゴリゴリの共産主義が経済発展をもたらさないことは当時も自明でしたから,鄧小平は「何色の猫でもいい」といいながら,明らかに市場経済に肩入れしていたことになります。(と,少なくとも解釈はされました。)

というわけで,ここでいつもながらの自己矛盾に逢着します。そして,この自己矛盾を解決しないままほったらかす,というのが今の私のとりあえずの主義なのですね,これが。

 

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by rickie | Posted in 引用 | No Comments »

コメントスパムについて

4月
2008
12
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ブログを長くやっている人,詳しい人は先刻ご承知であろうが,わたしのようなブログ開設からさほど日数のたたない初心者は,コメントスパムというやつに出くわすとちょっとびっくりする。さいわい,WordPress には Akismet というスパムをブロックしてくれる機能がついているので,それに引っかかってくれれば何の問題もない。今回もうまく引っかかってくれたのだが,そもそもそれが本当にスパムなのかどうかは,最終的には自分の目で判定するしかない。間違ってスパムと判定されることだってあるのだ。今回やって来たのはこんな文面だ。

No freaking way. I’m absolutely disagreeing. Next time when you post something think about reaction of readers.

「このタコ野郎が。まったく賛成できない。こんど投稿する時には,読んでる人のことを考えろよな」

最初見たときには,なにか批判したいのかなとも思った。それならスパム判定を解除しようかとも思う。が,何が賛成できないのかが全く不明で,第一,このコメントが来た記事は,日本語中心の記事だし,それほど強い主張をしているわけでもなく,どうもやっぱりスパムっぽいなと考えるしかなかった。

ためしに,Google でこの文面を丸ごと検索してみると,同文のコメントが約29万出てきた。完璧なスパムである。どうも WordPress, Movable Type, Nucleus のようなブログソフトのサイトを狙っているようだ。ついでにあちこちのコメントをのぞいてみると,このような批判的コメントだけではなく,賞賛の言葉が並んでいるスパムもある。共通点は,本文のどの箇所がダメなのか,素晴らしいのかが書かれていないことだ。

でも何でこんなスパムを送りつけるんだろう,としばらく考えてみたが,答えは簡単だった。コメント投稿者欄には,その人物(それぞれ名前を変えて送りつけているが)のサイトのURLがついていて,それをクリックするとアダルト系か何かのサイトに行きつくという仕掛けである。

以前のスパムは,コメント本文にその手のURLが羅列されていたが,それだと簡単にスパム判定されてしまうので,コメントらしい文面をつけてから,自分のサイトに誘導しようというわけだ。あ~,ぱかぱかしい。

ちなみに,文面にあった, No way!  は「ダメ」「バカな」。freaking は,f××king と同意。ここまではOK。disagree を進行形にするのは,この文脈ではちょっと不自然。next time は接続詞なので,when は不要です。

by rickie | Posted in サイト運営ログ | No Comments »

英和辞典を比較する (12)

4月
2008
9
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「ジーニアス」「ルミナス」「ウィズダム」「ロングマン」の4英和辞典の比較のシリーズ第12弾!そして,最終回!

最終回は,まずランダムに英語に関する疑問を先に用意して,辞書がそれに答えてくれるかを比較してみることにしました。今回は項目が多数になりましたので,各辞書の引用ではなく,ポイントを要約して比べてみます。

単語の意味の説明ではないですから,本来の辞書に期待すべきものではないかもしれません。英米のネイティブ向け大辞典には載っていないようなことです。日本の辞典でもかつてはこんなものは載っていないことが多かったのです。でも,最近の英和辞典は載ってるのですね。世界に誇りたいのですが,ありがたみがわかるのが日本人だけですから,どうしようもありません。

 

1 同格の that をとれる名詞にはどのようなものがあるか

the fact that he is still alive 「彼がまだ生きているという事実」などで使われている同格のthat節を導ける名詞は限られた名詞だけです。fact, news などは可能ですが,information, remark, letter はどうでしょうか?(この中ではletter がダメです) それが一覧できる項目を辞書に探してみます。

  • ジーニアス —  68 個 の名詞が囲みの中にリスト
  • ルミナス     —  17 個 の名詞が囲みの中にリスト
  • ウィズダム —  51 個 の名詞が囲みの中にリスト
  • ロングマン —  リストなし。 fact のみ例。

 

2 do the Ving という表現で,Ving にはどのような動詞が使えるか

「Vする」という意味の熟語表現です。the の代わりに,some, much , one’s などが使えます。

He did some reading this afternoon. 午後にちょっと読書をした。

  • ジーニアス  —  リストなし。語意欄の例文として,reading, washing, ironing, shopping。
  • ルミナス  —  リストなし。「語法」欄に例文として,shopping, cooking, washing, writing
  • ウィズダム  —  16 個の Ving が囲み記事の中にリスト(「表現」欄)
  • ロングマン  —  リストなし。語意欄の例文として,ironing。

 

3 There is + 複数 となるのはどのような場合か

There + be 動詞 では,後ろが複数なら,There are になるはずですが, There is A, B, and C. のように,複数個の主語であっても is になる場合があります。

  • ジーニアス  —  「語法」欄囲み内で「《略式》では複数の語がきてもしばしば単数で受ける。通例 There’s となる」という記述。「単数名詞の列挙の場合に多い」とも。
  • ルミナス —   特に記載されていないようだが,熟語欄に There is [are] … and … ・・・にもいろいろある という表現が載っており, is が可能であることを明示的にではないが認めている
  • ウィズダム —    「語法」囲み内に,2つの場合の記述があり,「(a) (…) 主語が and で結ばれた複合主語になる時は,[動]の数が主語の最初の部分と一致することがある」として, There is a boy and two girls in the room. ≒ There are two girls and a boy in the room. という興味深い例文を載せています。「文法的に正しいとされる There are a boy and two girls in the room. は今では《不自然》に響くことも多い」ともあります。「(b) 《非標準・くだけて》では主語が複数でも短縮形の there’s が用いられることがある。  ▶ There’s some people upstairs. (ただし × There is some people … としない)」 とも。
  • ロングマン —   記述なし。

 

4 moreover のはたらき

しばしば文頭で「その上,さらに」の意味で使われる moreover ですが...

  • ジーニアス —   語意欄に「《文修飾》」「前述の内容を支持する情報をつけくわえるため」とある
  • ルミナス —   besides の項に「類義語」として,「もともとは besides より協調の意味が強く,前文よりもっと重要なことの追加に用いたが,現在では比較の意味は薄れ,単に前に述べたことを補強したりそれに付け加えるべき事柄や意見を述べるときに用いることも多い。格式ばった語で,会話で用いることはあまりない。」という記事。
  • ウィズダム —    addition の項に「読解のポイント」欄「列挙・追加の表現」があり,その中で in addition などと並んでmoreover を挙げている。ただし,他の語句との違いについては特に言及はない。
  • ロングマン —   特になし。「コミュニケーションガイド」には furthermore についての記述はある

 

5 wear に当たる日本語

服を「着ている」,靴下を「はいている」,メガネを「かけている」は全部 wear で表現できます。ほかにどんな訳が可能でしょうか。

  • ジーニアス —   「語法」欄囲み内に「着ている」「はいている』」など6個の訳と「訳に出てこない」場合を指摘。He wears false teeth. 彼は入れ歯です
  • ルミナス —   「日英語義比較」の表に8個の訳
  • ウィズダム —    「表現」欄囲みの中で,4種類7個の訳と14の例
  • ロングマン —   特別な記述はない

 

6 head と face

「バスの窓から顔を出す」は put his head out of the window of the bus となります。ここでは face ではなく, head と言わなければなりません。

  • ジーニアス —   head 「比較」欄囲みの中で,「head は日本語の『首』『顔』に当たることが多い」として,例を6個挙げている
  • ルミナス —   head 「日英比較」欄囲みの中で,「 head は首(neck)から上の部分をさす;(…) 従って次のような文では head に当たることばが日本語では『顔』や『首』になることが多い」として,3つの例文を挙げている
  • ウィズダム —    head 「表現」欄囲みの中で,とくに言葉での説明はないが例として, turn one’s head away 「顔をそむける」など,「顔」「首」が head になる表現を7個挙げている。
  • ロングマン —  特別な記述はないが,head を使った例文の中で,「顔」「首」などと訳し分けている。

 

7 goat (ヤギ) の文化的・象徴的意味

「羊のようにおとなしい」とか「狐のように狡猾な」とか,動物などは文化によって異なる象徴的な意味合いを持つ場合があります。

  • ジーニアス —   語意欄に「早熟で,好色・淫乱の象徴。また悪魔が goat の姿をとるといわれる」とある。
  • ルミナス —   象徴性についての記述はないが,goat の意味の一つとして「好色漢」を挙げている(この意味は他の辞書にも記載)
  • ウィズダム —    「事情」欄囲みの中で,「ヤギは早熟で繁殖力が強いので『好色』のイメージがある。古代ユダヤ人の儀式では人間の罪を背負って野に放たれたことや,ヤギの持つ破壊的性質などから,キリスト教では悪魔と関連付けられ,ヒツジと対比される。」と記述
  • ロングマン —   特になし

 

8 アメリカやイギリスの休日はどんなものがあるか

雑学のたぐいですが,小説や新聞・雑誌の中には出てくるものですから,まとめておいてくれると便利です。

  • ジーニアス —   holiday の「関連」欄囲みの中で,アメリカ,イギリス,オーストラリアの祝日,および日本の祝日の英語名を記載
  • ルミナス —   囲みの中で,米英の法定祝日を囲みに記載
  • ウィズダム —    holiday の「事情」欄囲みの中で米英の法定祝日を囲みに記載
  • ロングマン  —  特になし。「文化」欄に有給休暇の制度の説明がある

 

9 アメリカ人に多い名字はどんな名字か

これも雑学。これはなくても困らない豆知識です。

  • ジーニアス —   発見できず
  • ルミナス —   name の項に「米国で最も多い姓10」の囲み。ちなみに, Smith, Johnson, Williams, Brown, Jones, Miller, Davis, Wilson, Anderson, Taylor の順。
  • ウィズダム —    発見できず。「事情」欄には,ミドルネームやニックネームの説明。
  • ロングマン —   発見できず

 

10 完了不定詞とは何か

純然たる文法プロパーの説明があるか,という問題です。

  • ジーニアス —   発見できず
  • ルミナス —   to の項の「文法」囲みで詳しく記載されている
  • ウィズダム —  発見できず
  • ロングマン —   発見できず

 

11 副詞節の if 節で未来のことに will を用いるのはどのような場合か

時や条件の副詞節の中では,未来のことでも will が使えず,現在形を用いなければなりません。しかし will が全く使えないというわけでもありません。

  • ジーニアス —  a) 「動作主の主語の意志・習慣または相手に対する丁寧な依頼を表す場合」 b) 「if 節が主節の動作の結果を表す場合」 I will come if it will be of any use to you.  c) 「『前もって』『あらかじめ』の意が含まれる場合」 If I will be late, I’ll call you.  の3つを挙げている
  • ルミナス —   語法欄囲みの中にはないが,語意9として,「[if ... will[would] — の形で主語の意志を表して] 《格式》 — してくださるなら,— するつもりなら」を載せ,3個の例文をつけている (ジーニアスの a に対応)
  • ウィズダム —   (b)  「if 節の内容が主節に対する結果を表すときには, will が用いられる」 I’ll do it, if it will save Lisa. (ジーニアスの b に対応)と (c) 「主語の意志を表す will や丁寧表現に用いられる will [《より丁寧に》 would ]は可」(ジーニアスの a に対応)という二つの場合を挙げている
  • ロングマン —  発見できず

 

ちょっと冗談っぽく勝者を決めれば,

  1. ジーニアス
  2. ウィズダム
  3. ウィズダム
  4. ルミナス
  5. ロングマン以外同点
  6. ジーニアス,ルミナスが同点。ウィズダムも僅差
  7. ウィズダム
  8. ジーニアス
  9. ルミナス
  10. ルミナス
  11. ジーニアス(説明の仕方はウィズダムの方がわかりやすい)

というところでしょうか。こういう項目は蓄積がものを言うので,後発のロングマンは不利でした。ロングマンは日本語訳の訳語選定や日本で行われている伝統文法とは違う切り口の書き方をしているなど,筋のいい新入り(上から目線ですみません)なので,今後に期待したいところです。

 

12回にわたって比較を行ってきました。個々の項目に点数をつけて,最終的なおすすめの辞書を選ぶことも不可能ではありません。稿を改めてまとめ的なことを書いてみようと思っています。

ただ,各辞書の総合点は,今のあなたの実力や,どういうポイントを重視するかで「重み」が変わってくるのでいちがいに「これがオススメ」とは言いにくいことは確かです。

間違いなく言えるのは,英語を専門にしている人なら辞書は複数持つべきだということでしょう。

 

 

英和辞典比較シリーズ   総評

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by rickie | Posted in その他(高校生向け), 英語の周辺, 辞書のはなし | No Comments »

April is the cruellest month (T. S. Eliot)

4月
2008
8
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「四月は最も残酷な季節」

T. S. Eliot の超難解な詩(といっても20ページを超える長詩)の第一行目の有名な文句です。あまりに難解なので注釈書もいくつも出ています。聖書,シェイクスピア,ボードレール,ダンテ,オウィディウス,その他サンスクリットにいたるまでのさまざまな引用とイメージのちりばめられた詩です。1948年ノーベル文学賞受賞。

私は大学時代にこの詩を途中まで読んで投げ出した,とばかり思っていましたが,本棚の奥から Eliot の “Collected Poems” を引っ張り出してみると,最後まで書き込みがしてあって,また大修館から出ていた注釈書(福田陸太郎,森山泰夫)にも最後までアンダーラインがしてあります。それなのに投げ出したと思っていたわけですから,結局読むには読みきったが,内容的にはお手上げだったということなのでしょう。

冒頭の部分はこうなっています。

April is the cruellest month, breeding
Lilacs out of the dead land, mixing
Memory and desire, stirring
Dull roots with spring rain.

四月はこの上なく残酷な月,
死の大地からライラックを育て上げ,
追憶と欲望をかき混ぜ,春の雨で
生気のない根を奮い立たせる。

       福田陸太郎,森山泰夫訳

福田・森山の注釈書によれば,「万物に生気のよみがえる春の訪れをかえって『残酷』に感ずるというのは,草木(すなわち人間)が生命の旺溢した生活を志すどころか,かえって死も同然な無気力な生活に安住することを欲しているからにほかならない」とあります。タナトスってやつですか。事実この直後は次のようになっています。

Winter kept us warm, covering
Earth in forgetful snow, feeding
A little life with dried tubers.

冬はわれわれを暖かく包み,
忘却の雪で大地を蔽い,乾からびた球根
で小さないのちを養ってくれた。

ひからびた忘却の冬が暖かく,雨で奮い立つ追憶の春は残酷,と意識されていることになります。

あるいは,冬は死ではなく,未生段階,生まれる前なのかもしれません( tuber = little life –> root)(warm, womb)。その場合,残酷さとは,この世に生まれ出でることのの残酷さということになります。

あれっ,歳取ると勝手な解釈をするようになるもんだな。

 

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英和辞典を比較する (11)

4月
2008
4
この記事の印刷用バージョン

「ジーニアス」「ルミナス」「ウィズダム」「ロングマン」の4英和辞典の比較のシリーズ第11弾!

軽い気持ちで始めたこのシリーズも,10回を超える企画になってしまいました。そろそろ締めなければ。

というわけで,今回は各辞書のウリにもなっている囲み記事を取り上げてみます。辞書の中あちこちにポイントを特集して,枠で囲って目立たせている部分です。すでに,「語法」や「類語」情報については取り上げたので,それ以外のフィーチャーを扱ってみましょう。辞書によって切り取る角度や視点が違っていますから,特定の項目の比較があまり成り立ちません。単につまみ食いして,感覚的につかむだけにします。それにしても,どれもなかなかつまみ食いしがいのある興味深いものが多いですよ。

 

ジーニアス

「語法」の充実に比べるとその他の追加情報は抑えめ。「語法」以外では「関連」が多い。次は「事情」か。その他は少ない。

 

● 文化 — 英米文化の豆知識

例)  party

(1) 英米の家庭での party では飲食より会話が中心で,夫婦を1単位として招くのがふつう。招かれた時は何か小さなもの(wine, pie など)を持参するのがエチケット。 (2) 学生の「コンパ」も party に相当する。

 

● 事情 — 政治・社会関係の雑学

例)  taxi

【米英の taxi】 (1) New York などのタクシーは通例黄色なので yellow cab ともいう。 London では通例黒塗りの箱型オースティン車(Austin)。 (2) 料金の 10 – 15 % 程度の tip が必要。大きな荷物には割増料金が必要。 (3) 自動ドア・冷房などはふつうない。 (4) 「空車」表示は 《米》 Vacant, 《主に英》 For Hire 。

 

● 関連 — 「見出し語」に言葉の面で関連した情報

例)  wedding

【結婚記念日】 paper ~ 1周年 / straw ~ 2周年 / candy ~ 3周年 / leather ~ 4周年 / wooden ~ 5周年 / floral  ~ 7周年 / tin ~ 10周年 / linen ~ 12周年 / crystal ~ 15周年 / china ~ 20周年 / silver ~ 25周年 / pearl ~ 30周年 / coral ~ 35周年 / emerald ~ 40周年 / ruby ~ 45周年 / golden ~ 50周年 / diamond ~ 60[75]周年

どれも豆知識的な情報で,どの辞書も似たようなコーナーを持っています。辞書によって取り上げるものの差はありますが,といって優劣はあまりないような気がします。

 

● 表現 — 「見出し語」を使う状況におけるコミュニケーション上の表現例

例)  invite

【招待(状)の一例】 (1) 書状では You are cordially ~d to our 2007 summer session. (2007年の夏の会議にご招待いたします)などとする。終りに r.s.v.p. (ご返事ください)か Regrets only. (欠席の場合のみお知らせください)を書く。 (2) 口頭では I would like to ~ you to have dinner at my house, Friday at six. 金曜日6時に私の家での夕食にお招きしたい。

 

ルミナスの「会話」,ウィズダムの「コミュニケーション」にあたるものですが,それらとはちがっていわゆる「日常会話」の典型例を取り上げている部分は少なめです。冒頭でも述べたように,英和辞書で会話の典型例がどこまで扱えるかは疑問ですが。

 

● 文法 — 見出し語に関連する文法事項

例)  find

[目的語繰り上げ構文]

1. 目的語繰り上げ構文

 (1) I found that John was boring.

 (2) I found John to be boring.

(1) の John は従節である that 節の主語である。しかし同じような意味の (2) では John は主節の目的語に繰り上がっている。(2) のような構文を「目的語繰り上げ構文」(object-raising construction) と呼ぶ。

このあとには,かなり高級な議論がつづきます。「ジーニアス」は難しすぎるという意見もあるようなのですが,この部分(個々の引用部分のつづき。長いのでカットしました)は確かに初学者には難解すぎます。ただし,扱っているポイント自体は特殊なものではなく,従来から取り上げられてきたポイントです。「目的語繰り上げ構文」というネーミングも,他に初学者向けの便利な名前をでっちあげるわけにもいかず,いたしかたないところだと思います。内容は面白いんですけどね。

 

ルミナス

他にはあまり見られないのが,「リスニング」と「文法」です。

● リスニング — 見出し語に関する音声学的知識

例)  can’t

《米》では can は文中では普通弱く /kən/ と発音され,逆にその否定形 can’t は比較的強く /kænt/ と発音されるが,この語末の /t/ はしばしば聞こえないことがある。そのため耳で聞く際には I can /kən/ help you. 「アイカヌウピュー」, I can’t /kænt/ help you. 「アイキャウピュー」のように can の母音がよわい /ə/ か強い /æ/ かが肯定か否定かを判断する決め手となることが多い。

こういう大事なことが,従来の辞書では軽んじられていましたから,この項目はいいと思います。「リスニング」欄全体は少し重複が多いのですが,でも歓迎したいと思います。今までなかったのが不思議。

 

● 文法 — 基礎文法事項の説明,というより,文法用語の説明か。

例)  文の要素

文を組み立てている基本的な要素で,主語・述語動詞・目的語・補語・修飾語句をいう。文の要素のうち,修飾語句以外のものは文の骨組みになり,文の主要素と呼ばれることがある。文の主要素の構成のしかたによって文を分類すると5つの型に分けられる。

ルミナスの「文法」欄は,全部集めれば一応体系的な文法用語集になっているのが特徴です。ジーニアスの「文法」は見出し語に関する文法項目ですから,体系性を志向してはいません。初版では巻末にあったものを,見出し語の中にちりばめた形になっています。巻末でよかったのでは,という気もしますが。

辞書の中では,文法用語を使って説明する以上,こういう欄があってもいいと思います。ただ,全体としては説明が硬すぎるきらいはあります。これだけ読んで,英語が苦手な高校生にわかるかなあ。

 

● 単語の記憶 — 語源からの単語の関連付け

例)  cure

«CUR» (注意)

cure   (世話をする) –> 治療する

curious (注意を向ける) –> 好奇心の強い

accurate (注意が払われた) –> 正確な

manicure (手の世話) –> つめの手入れ

procure  (…の世話をする) –> 手に入れる

secure  (心配のない) –> 安全な

これも他の辞書には見当たりません。最近の辞書はどれも語源的説明を重視しない傾向があります。そういう情報は大辞典や英米のネイティブ向け辞書には載っているわけで,必要ならそちらに当たればいいし,語源が威力を発揮する場合は限られているので,その方針は十分理解できます。そしてその限られた場合をこの欄が受け持っているということなのでしょう。

 

● 日英語義比較 — 誤解されやすい語義のズレ

例)  ashamed

ashamed (よくない事をして恥じている) 恥ずかしい
embarrassed (きまりが悪い)
shy (引っ込み思案ではにかんだ)

「恥ずかしい」は 「悪いことをしました,恥じています」という ashamed より,embarrassed の方ががぴったりすることが多いのですが,そういう微妙なずれを図表化して取り上げている欄です。説明が少ないのでちょっとわかりにくくなっているところもあります。それにこの場合であれば,「恥ずかしい」を左列に,英語を右列に配置した方がいいと思うのですが。

 

● 日英比較

sauce

普通はトマト・肉汁・はっかの葉などのいずれか,またはその混合物をクリーム状にしたもので肉・魚料理などにかけて食べる。日本でいう液状の「ソース」は普通は Worcestershire sauce のこと。

こちらはニュアンスの違いというよりも,外来語と元の英語の中身の違いですね。

 

● コロケーション — コロケーションとは,その語と他の語の結びつきやすさ,セットで使うことの多い表現です

例) egg

beat [whisk] an egg   卵をかきまぜる[泡立てる]

boil an egg (hard [soft])   卵を(固く[半熟に])ゆでる

break [crack] an egg   卵を割る

sit on [hatch] an egg   (動物が)卵を抱く[かえす]

ウィズダムではこれをコーパスからそのまま出していますが,こちらの方が整理されている印象があります。もちろん本格的なコロケーション情報は「英和活用大辞典」などに頼るしかないのですが,中辞典にあって悪いわけはないですね。

 

● (自)(他) の転換 — 自動詞・他動詞両方で用いる動詞

例)   open

(他) 1 あける  (to make (something) open)

(自) 1 開く  (to become open)

この欄の意義がわたしにはイマイチよくわからないのですが。

 

● ~のいろいろ

例)  television

television のいろいろ cable television ケーブルテレビ / high-definition television ハイビジョン / pay television 有料テレビ / satellite television 衛星テレビ

● コーパスキーワード

例) go doing (1) のいろいろ

go boating ボートこぎに行く / go climbing 登山に行く / go hiking ハイキングに行く / go hunting 狩猟に行く / go jogging ジョギングに行く / go sailing ヨット乗りに行く / go shopping 買い物に行く / go skiing スキーに行く

● 関連表現

例) money

be broke   《略式》一文無しである

be hard up   《略式》金がなくて困っている

break a ten-thousand-yen bill [《英》 note]    一万円札をくずす

change Japanese yen into US dollars   日本円をドルに替える

deposit money in a bank   金を銀行に預ける

have no money with [on] one   金の持ち合わせがない

Money talks.   金が物を言う

open a bank account   銀行口座を設ける

このへんは,他の辞書にもありますね。

 

● 構文

例)  動詞+人+ from doing をとる動詞

[例] Business prevented me form attending the meeting. 用事で私はその会に出られなかった。

ban 禁止する / deter やめさせる / discourage 思いとどまらせる / inhibit 禁じる / keep させない / prohibit 禁じる / stop やせさせる

もっと載せていいと思うのですが,あんがい少ないです。

 

● 会話

例)  Excuse me?

“Would you like some coffee?”  “E~ me?”  “I said, ‘Would you like some coffee?’”  “Oh, thank you. Yes, please.” 「コーヒーはいかがですか」「すみません,何とおっしゃったのですか」「『コーヒーはいかがですか』と申したのです」「どうも。はい,いただきます」

ルミナスにはこれ以外にも,特に名前のついていない欄が数多くあります。図表も充実しています。crossword puzzle の項目には,ほんとにパズルが載っています(解答も)。

 

 

ウィズダム

切り取る視点はそれほどユニークなものはありませんが,ひとつひとつの記事は面白いと思います。コーパスが他よりも強調されている感じです。

● コーパス頻度ランク — つながりやすい語句をコーパスから引っ張ってきたもの

例)  that

同格の that 節をとる[名]

  1. fact
  2. idea
  3. hope
  4. evidence
  5. sense

コーパスには大量のデータがあったでしょうに,これだとなんかちょっとさびしい気がしますが,スペース的にはこれでイッパイイッパイなんでしょうね。

 

● コーパスの窓

例)  ever

過去の経験を問う疑問文

ever を伴って過去の経験・事例を問う場合,7割は完了形を用いる形が占めるが,《米》や《英・くだけて》では Did you ever …? のような過去形も用いられる。また Did you ever play sports when you were a kid? (子供の時スポーツをしたことがありますか)のように過去を示す表現が伴う時は過去形を用いる。また,過去形の場合,反語的な意味で用いられることもある。▶ Did I ever steal your money? 君のお金を盗んだことなんて,今まであったかい(!「なかった」ということを含意)

「7割」というデータの正確さはともかく,コーパスもこれくらいまとめてくれないと,生のデータだけではあまり使えませんね,われわれには。こういうのを増やしてもらいたいもんです。

 

● 表現

例)    taste

(1) ・・・な味がする ▶ ~ hot 辛い / ~ bitter 苦い / ~ sweet 甘い / ~ sour すっぱい / ~ salty しょっぱい / ~ good うまい / ~ terrible まずい

(2) 味が・・・ ▶ How does it ~? ≒ What does it ~ like? どんな味がしますか(! 前者は辛い・甘いなど,後者は肉・魚など具体的なものの味を聞く表現)

● 関連

例)  number

数学上の数

▶ a cardinal [ordinal] ~ 基[序]数 / a counting [natural] ~ 自然数 / a half ~ 0.5を伴った整数《0.5, 1.5, 2.5 など》 / an integral [a whole] ~ 整数 / an inverse ~ 逆数 / a prime ~ 素数 / an even [odd] 偶(奇)数 / a rational [an irrational] ~ 有理[無理]数 / a real [an imaginary] ~ 実[虚]数 / a round ~ 概数,丸めた数字

● 事情

例)  rainbow

7色は外から順に red, orange, yellow, green, blue, indigo, violet で, indigo を除いて6色とすることもある。頭文字をとって Richard of York gained battles in vain. のように覚えることがある。

● 語源

例)  September

September, October, November, December はラテン語の数詞にちなんで名づけられ,旧ローマ暦(ロムルス暦)では7 ~ 10月を表した。当時の暦では,1年は10か月のみで,冬期には月名が与えられていなかった。ヌマ暦で,空白の11月に January, 12月に February が付け加えられ,その後両月が1月,2月へそれぞれ移動し,各月が2か月後ろへずれることになり,September は9月になった。

このあたりは,他の辞書と似ています。「語源」も語源的雑学情報といったかんじ。

 

● 読解のポイント

例)  therefore

結果・結論の表現

「原因⇒結果」「前提⇒結論」の後半部分の導入に用いられる。文章全体の結論が述べられる場合もあるし,例や説明の中での結論や結果が述べられるにすぎない場合もある。同様の機能を持つ表現には,then, as a result, consequently, as a consequence, this is why, thus, so, so that … などがある ▶ Every integer is either even or odd. Therefore, what is not odd is even. すべての整数は偶数か奇数である。よって,奇数でないものは偶数である。(! 第1文が前提,Therefore 以下でその結論が述べられている) 以下例文 略

therefore や but といったつなぎことば(discourse markers) に付随している欄です。重要ではありますが,もう少し工夫が欲しいところ。数も少ないです。

 

● 作文のポイント

例)  convenient

都合のいい時に電話をください

×  Please call me when you are convenient.

Please call me when it is convenient for you.

 convenient は人を主語にしない

これは,語法欄と区別しにくいですね。語法欄に組み込んでもいいかもしれません。

 

● コミュニケーション

例)  ready

A: Are you ready to order?

  ご注文はお決まりですか。

B: Just a minute. We’re almost [(just) about] ready.

もうちょっと待って。もうだいたいは決まったから。

会話表現。どうせならもっと増やした方がいいかも。

 

 

ロングマン

●  — 日本人が間違えやすいポイント

例)  nor

「両方とも・・・ない」の意味で not とともに nor を用いることは不可。 not … or または neither … nor を用いる。後者はよりフォーマル。

× I can’t dance nor sing.

○ I can’t dance or sing.

× I can neither dance nor sing.

びっくりマークは,他の辞書の「語法」欄に相当するようです。他の3辞書と比較すると語法面はロングマンの弱点でしょう。今後ここをどれだけ充実させるのか,それとも他の辞書と一線を画するインパクトのある企画が打ち出せるのか。まあそれは次バージョンのはなしですが。

● 文化

例)   cat

猫は危険な状況でも無傷で逃れ,生き延びそうに見えるところから, A cat has nine lives. (猫に九生あり)と言われることがある。米国では黒猫が前を横切ると不吉だと信じられているが,英国では逆に幸運だと思う人もいる。

● 語源

例)  economy

economy はギリシャ語の oikonomia (「家事をこなすこと」の意)が語源とされる。15世紀より用いられるようになった。

これらは他の辞書と同様の項目です。

●  — 英訳・和訳しにくいもの,注意点

例)   movie

(1) 「映画を見る」という意味では通例 watch を用いるが,「・・・という映画を見たことがある」という経験を表す場合は see を用いる: I like watching (× seeing) movies. 映画を見るのが好きだ | It’s the best movie I’ve ever seen. 今まで見た中で最高の映画だ。

(2) 「ビデオで映画を見る」は watch a video を用いる: I would rather watch videos (× video movies) at home than go to the movies. 映画はわざわざ映画館へ行くよりも自宅でビデオを見る方が好きだ。

ジーニアスでは, テレビやビデオを movie を見る場合は watch,映画館で見るのは see となっています(ウィズダムも同様)。ロングマンは,LDOCE を出発点としているだけに,他の辞書とは少し切り口が違う時があっておもしろいですね。

 

● コロケーション・グリッド

例) rich

  RICH wealthy be well-off/comfortably off well-to-do affluent prosperous
person 裕福な人 裕福な人 金に不自由していない人 富裕階級の人    
family 裕福な家族 裕福な家族 金に不自由していない家族 富裕階級の家族 経済的に豊かな家族 経済的に成功している家族
area 裕福な地域 裕福な地域   富裕階級が暮らす地域 豊かな地域 繁栄している地域
country 裕福な国 裕福な国     豊かな国 繁栄している国

この表からは,たとえば rich と wealthy は意味も用法もたいして変わらない, well-off は国や地域に,well-to-do は国に,affluent と prosperous は人には使われることはまれ,ということがわかります。これもロングマン独自のもの。イギリスの本にはこの種の表を見かけることがあります。でも,ロングマンに載っているこのグリッドはそれほど多くありませんが。

 

● コミュニケーションガイド

辞書の中央にある,付録みたいなものです。「Oral Communication」(24ページ),「エッセイ・ボキャブラリー」(20ページ),「接続語句」(6ページ)の3本立てです。

「Oral」は冒頭で書いたシチュエーション別の会話表現集,「エッセイ・ボキャ」はテーマ別の語彙,「接続語句」はつなぎ言葉(discourse markers)です。狙いはいいと思いますが,網羅的にやろうとすればこれだけで別の1冊の辞書になってしまいます。あわせて50ページだとちょっと食い足りない気がしますが。

 

 

なんか今回は注文が多くなってしまいました。あしからず。

 

 

 

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