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大学入試と英語学習のバックアップ・サイト

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『外国語学習の科学 ― 第二言語習得論とは何か』

3月
2009
17
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著者:白井恭弘 |出版社:岩波書店(岩波新書)|2008年|700円|高校生・英語教師・一般向け|独断的おすすめ度 ★★★☆

外国語はどう学ばれるか,どう学ぶのがいいのかを研究する学問が「第二言語習得論」です。通常,言語学の中の応用言語学という学問の一分野と位置づけられています。

「外国語をどう学ぶか」を考える上では,この学問で明らかにされたこと,されていないことを踏まえないと有益な議論はできないはずですが,専門書以外の一般向けの本はあまり見当たらないのが現状のようです。このサイトで取り上げた本としては,

は,一般の外国語学習者にも役に立つ本だと思います。ここで取り上げる『外国語学習の科学 ― 第二言語習得論とは何か』は,上の『外国語学習に成功する人,しない人』と同じ白井氏の本です。後書きにもあるとおり,この本は『成功する人,しない人』を岩波新書用に書き換えたもので,「続編」とはいえ,内容的にはほとんど重複していますから,どちらかを読めばいいでしょう。こちらの岩波新書の方が全体的には読みやすいかもしれません(それに手に入りやすいですし)。この学問の全体像を手際よくまとめてあり,前著と同様かそれ以上にすばらしい入門書になっています。内容的には,『外国語学習に成功する人,しない人』についての記事をお読みください。

でも,この学問で得られた知見を,ではどうやって具体的に実践したらいいのかは,かんたんに処方箋が出せる問題ではありません。この本でも(前著でも),筆者の観点からの「学習法」の一端が示されていますが,決定版になっているわけではないようです。「教室」でどのような学習が行われるべきかということと,「個人」がどのように学ぶべきなのか(独学)ということは,必ずしも一致しません。さらに高校レベルで何をすべきかとか,それをどう評価すべきか(結局は,大学入試をどうすべきか)とかいう問題が絡み合っています。

ちょっと,教師や生徒や親が個々人のレベルでは手に負えない問題なのですが,まずは議論の共通の土台が必要でしょうし,その意味でもこの分野の学問にはがんばって欲しいところです。

 

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by rickie | Posted in いろんな本, 一般の語学学習, 勉強法の勉強 | No Comments »

死ぬまでに読まなくていい10冊の本

9月
2008
20
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Times (London) に載っている。

→   10 Books Not To Read Before You Die

 

10: Ulysses – James Joyce

9: Lord of the Rings – J R R Tolkien

8: For Whom the Bell Tolls – Ernest Hemingway

7: À la Recherche du Temps Perdu – Marcel Proust

6: The Dice Man – Luke Reinhart

5: Fear and Loathing in Las Vegas – Hunter S Thompson

4: The Beauty Myth – Naomi Wolff

3: War and Peace – Leo Tolstoy

2: The Iliad — Homer

1: Pride and Prejudice – Jane Austen

 

基本的には,長さに比してストーリーに起伏の少ないものが選ばれてるような気がする。5, 6  あたりは日本ではほとんど無名に近い。

今考えたが,起伏/長さ 比 というのは何かの尺度になるかしら。

UD/L ratio ( ups and downs / length ratio )。だめか。

 

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by rickie | Posted in いろんな本 | No Comments »

It (Stephen King) — paperback review

9月
2008
6
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語彙レベル★★★★|ストーリー★★★☆|知的興奮度★★☆☆|前提知識★★☆☆|対象レベル 英検準1級以上|ジャンル ホラー小説|1090p.|英語

スティーブン・キングはいうまでもなくホラー小説の大家なのだが,ホラー小説などいい歳したおとなが読むものではないと思われているらしい。大家・名人と呼ばれるキングでも,そのホラーの対象は,吸血鬼であったり,意志を持つ自動車だったり,超能力が絡んでいたりと,荒唐無稽のひと言で片付けられるものだ。でも,きっと誰もが気づくとおり,読んでいてそれほど白けてこない。その恐怖を経験する人々がそれに出会う以前に過ごしている日常の細部のリアリティー,人間関係や人間的感情のアクチュアリティーが丹念に積み上げられているからだ。感傷的と言えば言えなくもない。それは荒唐無稽なホラーに現実味を与えるための装置なのだが,時にはそれが逆転して,ホラーが人間関係を駆動するための装置にすぎなくなることもある。この It もそういう気味のある小説だろう。

場所は,メイン州デリー(Derry, Maine)。It はこの(架空の)町に取り憑き,26 ~ 27 年周期で目覚めては,町民,とくに子どもたちを次々に虐殺する。しかし,町民は誰も It の存在に気づかない。1958年,これに気づいた 7 人の子どもが立ち上がり,It に立ち向かう。そして長い苦闘の末にこれを倒したが,とどめを刺せなかったのでは,という思いが残る。そして,もし再び It が現れたなら,全員がもういちど集まって It と戦うという誓いを立てる。

彼らはその後,ひとりを除いてみんな町を離れ,そのひとりを除くとなぜか6人全員が社会的に成功し,なぜか全員に子どもができない。そして,27年後の1985年,町に残ったひとりから6人に電話が入る。ふたたび It が現れた...。誓いのしるしとしてた手のひらにつけた傷は,27年間で消えていたが,電話が入ったその時から,鮮やかによみがえる。そして7人のうちのひとりは,その電話の晩に浴室で血だらけになって息絶える...

7人の少年のグルーブは The Losers’ Club と名乗っている「負け犬」の集まりだ。吃音者,肥満児,虐待を受けている少女,喘息持ち,ユダヤ系,黒人,メガネ(アメリカだし)。この小説は結局この少年たちの青春ドラマであり,27年後からみれば,失われた少年時代を一時的にであれ取り戻せるのかという reunion drama (今作ったことばだけど)である。

僕は文学的評価は別にして,この種のストーリーには弱い。この小説には破綻やあらずもがなの部分がいろいろなくはないのだが,少年グループが何かの困難に立ち向かい...という教養小説的な結構と,数十年後の再会(回顧・喪失・回復)という筋立ては,僕の大好きなパターンの一つかもしれない。

But I’m going, because all I’ve ever gotten and all I have now is somehow due to what we did then, and you pay for what you get in this world. Maybe that’s why God made us kids first and built us close to the ground, because He knows you got to fall down a lot and bleed a lot before you learn that one simple lesson. You pay for what you get, you own what you pay for … and sooner or later whatever you own comes back home to you.

この箇所はそうでもないのだけれど,全体としては読みにくい英語の部類に入るかもしれません。なにせ,キングは語彙の多い小説家だし,スラング満載だし,辞書に出ていないような単語がごろごろ転がっている。50年代の子ども時代のできごとと80年代の大人の時代とを並行的に叙述していくので,当時の音楽やテレビ番組なども出てきて,知らないと面白くないところもある。そして何よりくそ長い。1000ページを越えている。(よく100万語多読とか言われていますが,この小説1冊で概算では36万語程度あります。私見ですが,100万語では英語力の飛躍には,圧倒的に足りないでしょうね。)

というわけで,ふつうの英語学習者には強くオススメはできない本ですが,でも好きだな,これ。

 

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by rickie | Posted in いろんな本, 英語を読む | No Comments »

『英語学習 7つの誤解』

9月
2008
5
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著者:大津由紀雄 |出版社:NHK出版(生活人新書)|2007年|700円|高校生~一般向け|220p.|独断的おすすめ度 ★★★☆

著者の大津由紀雄さんは,慶應大学教授。生成文法系の代表的言語学者であるだけでなく,認知科学,語学教育などの分野で幅広く活動されている方です。MIT大学院で学んだ Chomsky 門下のひとりということになります。

タイトルの「英語学習 7つの誤解」とは,

  • 誤解1 英語学習に英文法は不要である
  • 誤解2 英語学習は早く始めるほどよい
  • 誤解3 留学すれば英語は確実に身につく
  • 誤解4 英語学習は母語を身につけるのと同じ手順で進めるのが効果的である
  • 誤解5 英語はネイティブから習うのが効果的である
  • 誤解6 英語は外国語の中でもとくに習得しやすい言語である
  • 誤解7 英語学習には理想的な,万人に通用する科学的方法がある

言うまでもないことですが,これらは「誤解」であり,すべて「誤り」であるというのが筆者の見解です。そして筆者の見解は言語学や英語教育に関わる人たちの間では,必ずしも特殊な意見ではなく,むしろ多数意見に属すると思われますし,わたしも基本的に同意できることばかりです。ところが,「言語学や英語教育に関わる人たち」の周辺にいる人たち,具体的には父兄,産業界,行政,英語教育業界では,その常識と非常識がまったく入れ替わってしまっているのが実情です。

筆者の立論の基礎になっているのは,母語第二言語外国語では習得プロセスが違う,という事実であり,「誤解」はこれらを混同することから生じていると考えられます。

上の誤解の多くは,「わたし(日本人)は子どもの時から日本語を自然に身につけた。ゆえに,英語も同じようにして自然に身につけることが可能なはずだ」という暗黙の前提にもとづいています。母語習得と外国語習得は同じだという前提がなければ,少なくとも上の 1 ~ 5 までは成り立ちません。そして筆者はこの母語習得プロセス=外国語習得プロセス という考え方をしりぞけます。

母語(たとえば,日本で,日本語を使いながら生まれ育った人にとっての日本語)と外国語(たとえば,日本で,日本語を使いながら生まれ育った人にとっての英語)は理解しやすいと思いますが,第二言語とは,たとえば日本人の親から生まれて日本語を習得したが,幼少期にアメリカなどの英語環境で何年も暮らした人にとっての英語を言います。一般には,第二言語と外国語を同一と見なすことが多いのですが(逆に言えば,母語獲得 vs 第二言語・外国語獲得 という構図),筆者はむしろ第二言語獲得と母語獲得の以下のような共通点に注目しています。

  • その言語に日常的に触れている(母語環境での獲得)
  • その言語を運用できないと生活の維持が困難になる

ここでは,母語・第二言語獲得 vs. 外国語獲得 という図式が重視されています。学習プロセスにおいては,ことばに対して意識的な取り組みが必要かどうかが分岐点になります。

 

 

外国語は「自然に」身につけることはできず,「意識的に」学習しなければならない,というのが筆者の考えであり,わたしにはたいへん説得力のある議論に思えます。

もちろん,筆者の論理を敷衍すれば,自然に身につけたいという人にも道はあるはずです。それは,外国語としてではなく,第二言語として習得する道です。そのためには,「その言語に日常的に触れる」,つまり英・米・豪・加などのネイティブ環境で,「英語を使えないと生活の維持が困難」になる場に自分を追い込む必要があります。それには日本で築いた関係・地位などを犠牲にしなければならないかもしれず,しかも最低でも数年はかかるでしょうが。

 

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『高校生のための東大授業ライブ』

8月
2008
29
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東京大学教養学部編 |出版社:東大出版会|2007年|1800円|高校生・一般向け|249p.|独断的おすすめ度 ★★☆☆

 

すでに紹介した『16歳からの東大冒険講座』全3巻と同じく,東大が行う「高校生のための金曜特別講座」からピックアップした授業の書籍化。通算4巻目だが,出版社も変わり,ベネッセの援助も受け,本はオール・カラーになって,紙質も,ついでに定価も上がった,というわけですね。書店ではこれがいちばん新しく,いちばん手に入りやすいでしょう。

各講義のレベルはさまざまで,予備知識なしで読めるものもあれば,高校レベルの教科をきちんと頭に入れている人でも難しいものもあります。「学力低下」というレッテルが貼られることの多いいまどきの高校生の目線にまで何とか降りようとしている先生がこの本では多いのですが,高校生のレベルを無視した,または高校生に何がわかっているかがわかっていない先生も中にはいます。でも,わかる・わからないが問題なのではなく,興味が持てるかどうかが問題だと考えて読むのがいいと思います。全体的には,少しでも高校生の興味を引こうと考えた授業がいっぱいあります。わたし的には今回は文系的な話の方が面白かったかな。前は理系の方が面白かったんだけど。生物学関係がちょっと専門的すぎる気がしました。わたしには,ということですが。

ところで,第1講には,余談っぽく次のような話が載っています。

「大学で専攻する分野を大学入学前に決めるのが日本の主流です。ちょうど,皆さんは専攻分野の決定で悩んでいるのではないでしょうか?」

「しかし,全ての若者が高校生時代に自分の興味や適性を活かす分野を見つけることが本当にできるのか,わたしは疑問に思っています。」

「高校生時代では早すぎてデータ不足,根拠に乏しく,結局,本人の適性に即した選択ができていないのではないかと危惧します。大学に入る前に大学での専攻を決めるのではなく,大学でじっくり時間をかけていろいろな分野の学問に触れ,自分の適性にあった分野を探すことが必要だと思います。そのような,大学で広くじっくりと学ぶ時間を許すのが『リベラル・アーツ教育』です。」

これはわたしも賛成ですし,そのように考えている高校生・父兄・高校教師・大学教師はかなりたくさんいると思うのですが,なかなか,というか全く事態は変わりません。このへんのことは,またあらためて考えてみたいと思います。

 

《 目次 》

PART 1 : リベラル・アーツの世界へようこそ

第1講 スーパーマンを救え ― 再生医学の最前線 松田良一

第2講 あみだくじの数理 ― 「自由」な数学の魅力 桂利行

第3講 民主主義は今も魅力があるのか ― 問い直す意味 森政稔

第4講 「今ここにいる自分」の謎を解く ― 哲学への招待

 

PART 2 : 学問と実践 地球大の広がり

第5講 地球は「やさしい惑星」か ― 生命の絶滅と進化 磯﨑行雄

第6講 人生をファンタジー化しよう ― 中国・黄土高原から 安富歩

第7講 アフリカの飢餓・貧困と闘う ― 日系人科学者として Gordon H. Sato

 

PART 3 : 知る・学ぶことの意味,その喜び

第8講 榎本武揚から見た明治維新の世界 ― 領土国家の形成 臼井隆一郎

第9講 イングリッシュ・ガーデン誕生の裏側 ― その美学と政治学 安西信一

第10講 ふるまいと記述 ― 文化人類学の異文化理解 森山工

第11講 朝永振一郎と湯川秀樹 ― 高校時代からの軌跡 岡本拓司

 

PART 4 : 人間と社会を支える科学の力

第12講 先天的な運命は変えられるか ― 生命科学の発展 安田賢二

第13講 生物が持つ分子機械 ― 形と働きを解明する 栗栖源嗣

第14講 エネルギー源としての乳酸 ― 運動と疲労の関係 八田秀雄

第15講 快適生活を支える物性物理 ― 身近な世界への応用 前田京剛

 

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『より良い外国語学習法を求めて』『「達人」の英語学習法』

7月
2008
22
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著者:竹内理 |出版社:松柏社|2003年|2500円|英語教師・研究者・一般向け|独断的おすすめ度 ★★☆☆

著者:竹内理 |出版社:草思社|2007年|1500円|高校生・一般向け|独断的おすすめ度 ★★★☆

 

同じ著者による同じテーマの2冊の本。実は,この2冊は読者対象が違うだけで,中身はほぼ同じといってもいい。

「より良い」が,データをもとにした研究発表の形式であり,「達人」はその研究成果を一般向けにかいつまんで述べたものです。従って,調査方法やデータを含めて知りたいのであれば「より良い」を,結果だけ知りたければ「達人」を読めばいいわけです。

調査目的は,「英語ができるようになった人に共通する学習法はあるのか」ということ。調査対象は3種類で,第二言語習得論の先行研究を踏まえて,

  • 英語ができる大学生とできない大学生
  • おそらく筆者周辺の,英語の達人たち
  • 世間に出回っている「私はいかにして英語の達人となりし乎」といった類の本

を扱っています。「より良い」の第9章で,これらのデータと既存の理論を踏まえた結論を述べていますが,この部分を敷衍ふえんして,英語学習者へのアドバイスの形で1冊の本に独立させたのが「達人」です。

調査方法も,そこから導き出されている「学習法」のアドバイスも,ハッタリのない信頼できるものです。たとえば,「学習法」の議論はそもそも万人共通の学習法が存在するのかどうかから出発すべきなのですが,筆者はその前提を踏まえた上で,調査対象から共通項が引き出せるという順当な手順を踏んで議論を組み立てています。その上で,学習者全般だけでなく,初級段階(中~高レベル)に必要なことと,中上級で必要なことを分けていたりと,あたりまえなんだけど実際には雑に扱われることが多い手順をしっかり押さえて考察を引きだしています。

リスニングは初級レベルでは正確さを重視すべきだが,上級では形式的正確さよりも内容重視に移行する傾向が英語の達人には多いパターンであるという記述があります。細かいことをいえば,「達人にはこのパターンが多い」というデータから「学習者はみなこの方法を採用すべき」という結論を引き出すには少し飛躍があるわけですし,私の経験的(データに基づかない)問題意識から言えば,中上級者も正確さ重視の方法を適宜組み込まないと進歩が止まるという感想を持っています。しかし,日本人の学習成功者対象のデータにもとづいたこの種の議論は今までありそうで,案外なかったような気がします。

英語学習法本には,自分の経験だけが最良の学習法であるかのような語り口の本がよく見られますし,そこに売らんがための宣伝文句が加わるとほとんどウソに近いものも存在しますが,この本は安心して全レベルの学習者にお勧めできるでしょう。もちろんその分,「楽にペラペラになれる」「いつのまにかあなたも達人に」といった魔法のような学習法を探している人にはがっかりするようなことしか出ていません。逆にしっかり腰を据えて勉強しようと思っている人,特に英語初心者にはぜひ読んで欲しい本だと言えます。

 

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『STUDY HACKS! ― スタディ ハック』

7月
2008
12
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著者:小山龍介 |出版社:東洋経済新報社|2008年|1500円|一般向け|独断的おすすめ度 ★☆☆☆

副題には「楽しみながら成果が上がるスキルアップのコツ」とあります。ビジネスマン向けのようですが,受験生にも何か使えるネタはあるかなと読んでみた。

使えるところが全くないというわけではないが,なんだかなあ,という本ですね。奥付の筆者の経歴によれば筆者は1975年生まれ,京大→広告代理店→MBA→現・松竹・松竹芸能ほか,ということで若い多才な(そしてリッチでスマートな)エリートビジネスマンという人物像が浮かんでくるのですが,本書から受ける印象もそのイメージから1ミリもはみ出しません。紹介しているツールのたぐいはどれもお金のかかるものばかりだし,特に検証されずにシータ波やクオリア,フォトリーディング(!)などが方法論やその理論的背景として導入されているし,英語ができることは前提になっているし...

  • ノイズキャンセリング機能付きヘッドフォンを紹介していて,おもしろそうなので実際買っちゃいました。筆者は4万いくらのやつを薦めていたのですが,手が出るはずもなく1万のものでガマン。ま,こんなところかな。
  • 六本木ヒルズ(!)などの有料自習室を紹介していたので調べてみたが,高いの高くないの。
  • ハーブティー,アロマ,お経,腹式呼吸...好きですよね,こういう人ってこういうものが。
  • 「夜の散歩でリスニング暗記」...昔からやっとります。
  • 「長時間眠る」...生まれたときからやっとります。
  • 「まず机のそうじから始める」...すみません。やってませんでした。さっそくやります。

まあ,このサイトはできる限り人の悪口を言わない方針なのでフォローしておくと,役に立つところもけっこうあります。「勉強」というものとある程度以上つきあってきた人なら誰でも知っていることが多いですが,でもこれからやろうという人にはいいかもしれません。ただそういう人にとって難しいかな,と思うのは,ここのアドバイスをどう使い,どう使わないかです。アドバイス自体が正しくても,学習対象(科目),学習段階,個性などによって使えるときと使えないときがあるということは,どんな勉強法でも言えることです。「試験ハック」の章に出ている「問題集は答から読む」とか「正解した問題は二度とやらない」「教科書を逆さまに読む」とかは使えない場合も多いので注意です。「問題集は答から読む」というのは,知識系の科目(地歴公民)などで,かつある程度予備知識を持っていて新たに覚えることはそれほど多くないという場合などはたいへん有効でしょうが,それ以外の場合はどうかなあ。

学習法というものは「人が言うことを鵜呑みにしない」というのがいちばんだいじなことで,それがわかっている人にはこの本も大いに使えるでしょう。

 

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『16歳からの東大冒険講座 [3] 文学/脳と心/数理』

7月
2008
9
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東京大学教養学部編 |出版社:培風館|2005年|1300円|高校生・一般向け|214p.|独断的おすすめ度 ★★☆☆

東京大学が高校生向けに行っている講座を書籍化したシリーズの第3弾。全三巻完結。

第2弾について書いたのはずいぶん前のような気がする。

第1冊め 「記号と文化/生命」はこちら

第2冊め 「情報/歴史と未来」はこちら

 

学問紹介や高校生のための大学教授による授業は最近ではだいぶ増えてきましたが,あまりうまくいっていないケースもあるようです。このシリーズは今でも続いていて,成功している方でしょう。

 

1部 文学

● 常識を破る ― ハムレットが太っていた  河合祥一郎

専門はイギリス演劇。

「ハムレット」にはハムレットに関して,He’s fat. という記述がある。だけどこのfatについては「汗かき」の意味だと解釈されてきた。「悩めるハムレット」という先入観がハムレット= fat というあたりまえの解釈を阻んできた。

そういうところから,文学や文化がいかに先入観から自由でないか,という方向へ話は進みます。

 

 21世紀に読み直す宮沢賢治 小森陽一

専門は近代日本文学。

宮沢賢治の『狼森と笊森,盗森』という童話を解読していきます。人間と自然との関わり,制度と権力の発生という視点での解釈です。文学の解釈としてはよくあるパターンの1つですが,高校生には強引に見えたり新鮮に感じるかもしれません。

 

 翻訳の不思議,文学のたくらみ エリス俊子

専門は日本近代の詩。

芭蕉の「古池やかはづ飛び込む水の音」の英訳18種類や,俳句に触発されたイマジズム運動,川端康成,村上春樹の英訳を紹介しながら,翻訳について語ります。翻訳家志望の高校生は時々いるのですが,これは翻訳の技術的なはなしではありません。文化の衝突としての翻訳論です。

 

 イタリア!イタリア!イタリア! 村松真理子

専門はイタリア文学,地域研究。

イタリアのあれこれを語っていて,ちょっとまとまりがないのですが,こういう語り口の方が高校生には興味が持てるかな。

 

2部 脳と心

 大学で心理学を学ぶ ― 心理学との出会い,心理学のおもしろさ ― 丹野義彦

専門は臨床心理。

心理学はいま高校生には人気が高い学問なのですが,心理学についての誤解も多く,ちょっと心配ではあります。心理学はおおざっぱに言うと,科学であることを強く志向する「認知心理学」系と,より文系的というか(こちらだって「科学」と自称するでしょうが)われわれがふつう「こころ」ということばで理解しているものを扱おうとしている「臨床心理」系の2つに分けられます(ホントはさらにこまかく分かれます)。前者は「悲しみ」とか「悩み」とか「不安」といったとらえどころのない「こころ」ではなく,人間の情処理機構としての「こころ」を扱います。そして学問的にはこっちの方が今の心理学のメジャーとなっています。大学選びの際はよくよくその辺の情報を集めておいてください。

この筆者は「臨床心理」系なのでとっつきやすいかもしれません。

 

 言語と脳から見た健康と病 酒井邦嘉

専門は言語脳科学。

こちらは認知科学系というか,脳科学のはなし。言語能力生得説(ヒトは言語を使う能力を遺伝的に持っているという説)は,今や言語学(生成文法派)のセントラル・ドグマになっていて,それを脳科学的に解明したいらしいです。わたしは,この説には???ですので,ふーんという感じですけど。

 

3部 数理

 21世紀の物理学 ― 超弦理論とはどんなものか ― 米谷民明

専門は理論物理学(素粒子論)。

「物理学って何」というすごく大きなはなしから,超弦理論というすごく高級(というかわけわかんない)理論まで,おおざっぱに語っています。物理の知識不要。

 

 知覚の複雑系理論 池上高志

専門は複雑系科学。

理系よりの認知科学。難しいですが,なんかすごいことを言っているな,おもしろそうだな,という気にはなれます。「自分がくすぐってもくすぐったくないのに,他人にくすぐられるとくすぐったいのはなぜか」なんていう問題意識はすごいと思いませんか。

 

 微積分の力 薩摩順吉

専門は応用数理。

差分から微積を考える,というはなしかな。数式は出てきますけど,それほど難しくはありません。話題のでかさから考えると,ちょっと物足りない感はありますが,時間がないんでしょうね。

 

 

このシリーズは幅広い興味がないと通読しにくいでしょう。図書館で見つけて,ぱらぱらめくって,おもしろそうなところを読む,というのがいいでしょう。

 

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by rickie | Posted in いろんな本, 学問を知る | No Comments »

『目にあまる英語バカ』

6月
2008
17
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著者:勢古浩爾|出版社: 三五館|2007年|定価 1200円(+ 消費税)|一般向け|独断的おすすめ度 ★★★☆

痛快な書です。

筆者の定義する英語バカとは,「なんの必要もないのに,英語を話せたら『かっこいい』と思い,英語を話す人間を見て『かっこいい』と思い,どうだおれは英語が話せるぞ『かっこいいだろ』と思い,なにが英語ができるだ調子に乗りやがって『ばかやろう』が,と無理矢理蔑む人間はすべて英語バカである。」というものです。わたしなら,これに「本人はペラペラのつもりだけど,中身は低級な英語で無内容な話しかしてない人間」というのを付け加えたいところです。

英語バカを筆者が次から次に執拗なまでに罵倒しなぎ倒していく姿には爽快感さえ覚えます。時々ミソも☓☓もいっしょくた,という感じがしないわけではありませんが,なぎ倒すからにはこうでなくちゃいけません。この筆者の本はこれまでに何冊か読んで,けっこう気に入ってました。本屋でタイトルを見たときには,これまでの筆者の本の系列とちょっと外れている気がして異和感があったのですが,ここまで英語バカにこだわっているからには,筆者自身相当の英語バカでいらっしゃるのかもしれません。そしてあなたも私もたぶん同類でしょう。ってことは,この本は大宅壮一以降(もっと前からか)の伝統を受け継いだ「日本人総英語バカ」論と言えるかもしれません。

おそらく英語教師でこの本の主張,というか罵倒に共感しない人は少ないのではないでしょうか(最近の若い人は知りませんが)。

だが,あなたね,そもそも「中高大と10年も習った」のに,というのが真っ赤なウソなのだ。というより,あまりに人口に膾炙しすぎた錯覚なのである。ちょっと胸に手を当てて,考えてみて。あなた,本当に「10年間」ちゃんと英語を勉強しましたか。毎日一時間でも二時間でもいい,10年やったですか。一年でもいい。やったですか。どこの人間だ,おれは。いやわずか半年でもいい。やっちゃおらんでしょうが。

うむ,わたしもそれが言いたかったです。

でも,日本人の英語レベルの低さについて,なにか教師には責任がないと言っていただいているみたいっていうのが,共感の理由って訳ではありません。「英語バカ」とは結局言葉というものをなめきった存在であり,それにイライラさせられるんですね。

第二言語習得論では,人は「母語習得にほぼ例外なく成功するが,ネイティブ並みという基準で言えば,第二言語習得にはほぼ例外なく失敗する」というのが定説のようです。特筆大書していただきたい。あなたは英語をマスターすることなど確実にできないのです。「マスター」って,何様ですか。かなり早い時期にその言語環境に置かれれば話は別でしょうが,もちろん小学校でお遊戯程度の英語をやったところで何の意味もないでしょう。

ただし,だから英語の勉強はすべきでない,とは言いません。だって好きでやってるんだから。

この本の筆者は,おおかたの日本人にはホントの意味で英語は必要ない,というのを英語バカ批判の,そして英語が苦手な理由の要点としているようです。それ以外にも理由はありそうですが,基本的にそのとおりだと私も思います。そして必要ないけどおもしろいからやる,というのが私が語学学習を勧める理由の要点です。学生時代から「何かの役に立つことなんか勉強してたまるか」と思ってましたからね。ま,あまり世に受け入れられることはないと思いますが。

 

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『タイムマシンは宇宙の扉を開く』 爆笑問題のニッポンの教養

6月
2008
12
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著者: 佐藤勝彦・爆笑問題(太田光・田中裕二)|出版社:講談社|2007年|760円|高校生・一般向け|独断的おすすめ度 ★★☆☆

むかし,もっと限定すると中学二年頃まで,ぼくは理系の少年でした。

● 小学校4年 解剖に目覚める

近所に小川が流れ,その向こう一帯は田んぼだったので,カエルには事欠かず,捕まえてくると家の玄関前のコンクリートに叩きつけて失神させ(麻酔の代わり),親に買ってもらった顕微鏡+解剖セット(メスとピンセットだけだけど)で解剖というか解体するのであった。何度もやっていると飽きるもので,開腹した時点でそのまま御遺体を放置したこともある。今であれば,こういう少年は危険人物として警察か児童相談所に通報されるのかも。

● 同じく小4 理科の実験に目覚める

塩酸と水酸化ナトリウムを薬屋で親に買ってきてもらい(劇薬だから子供は買えない),その二つを中和させて喜んでいた。何ができるかお分かりですよね。塩化ナトリウム,ふつう食塩と呼んでいる物質です。

● 小学校5年 天体観測に目覚める

「展望台」と近所で呼ばれていた,アパート群のかたわらの児童公園にある高さ2メートルくらいの楼の上に屈折式天体望遠鏡を持ち込んで,友人2人といっしょに明け方まで観測をした。何を観測したかは覚えていない。覚えているのは初めての徹夜に興奮して夜明けに3人でジェンカを踊ったことである。「れっつ・きす・ほほ寄せて...」

● 小学校6年 東京に戻ったので自然と断絶した

● 中学校1年 相対性理論に目覚める

講談社ブルーバックスの相対論関係の数式が出てこない本を読み漁った。わかっていたのがどうかは,定かではない。なにせ,発表当時だって,わかった学者は世界に10人しかおらず,そのうち9人は誤解していたとか何とか言われる理論ですから(数字には異説あり)。男の子はこのテの話にロマンを感じたりするというだけです。

さて,爆笑問題太田くんもこういう男子の一人だったようで,この本でも解説しようとする宇宙物理学者・佐藤勝彦氏を押さえて田中くんにウンチクをたれています。「すみません,田中はバカですから,先生を前にしてアレですが,私に説明させてください。アインシュタインは,・・・。それをハイゼンベルクっていう人が,・・・」ってなかんじ。

佐藤氏の関心の一端は,冒頭の次の部分で語られています。

田中 できるんですか,タイムマシンって。

佐藤: ええ。タイムマシンは「理論物理の範囲では,できるように見える」んですよ。だから困っているんですけどね。

太田 困っているねえ。

(中略)

佐藤 そうなんですよ。相対論という,今の物理学の基本になっている法則が,タイムマシンができていいようになっているんですよね。だから,考えるんです。でも一所懸命,何とかタイムマシンをできなくしたいのが本音なんですけどね。

相対論はタイムマシンの可能性を排除しない→でも,タイムマシンが可能ならさまざまな論理的パラドクスが生じる→よってタイムマシンの不可能性を証明したい→その糸口は量子論にあるのでは? というのが佐藤氏のテーマのようです。

後半はいつものことながら,太田くんが文系にありがちな神秘主義・不可知論の方向へ暴走し始め,対するに佐藤氏がナイーブな(失礼)科学主義・決定論の線で対抗します。方程式に宇宙のはじまりの時点の初期値を代入すれば,宇宙の歴史すべてが算出できるというやつです。

もちろんこのシリーズはうわっつらをなめるだけですから,あまり議論は進展しません。中1の時のぼくでも「そんなの知ってるよ」といいたくなるレベルですから,むしろあまりこういうことに関心がなかった人にお勧めなのかもしれません。

 

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by rickie | Posted in 学問を知る | No Comments »

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