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高校生向け新書 4 《河出書房新社 14歳の世渡り術》

8月
2009
27
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河出書房新社発行のシリーズ「14歳の世渡り術」です。

ふれこみは,「中学生以上,大人まで」。

作りも,テーマの選び方も理論社 YA新書 「よりみちパン!セ」 とよく似ています。どちらも硬い大人なら「そんなの中高生に読ませていいのか」と目を剥いて怒りそうなものも含まれていますが,知ったこっちゃありません。

 

 

2009年8月27日 現在

タイトル

著者

発行日

ねだん

内容

神さまってなに? 森 達也 著 2009.06.12 1,260円 神さまお願い! 誰もが一度は思ったことがあるはずだ。でも、神さまって本当にいるの? 世界の宗教の歴史や現状を踏まえ、その謎に迫る。宗教とは、信じるとは何かを考えてみよう。
さよなら紛争
武装解除人が見た世界の現実
伊勢崎 賢治 著 2009.04.21 1,260円 こうしている今も世界のどこかで紛争が起きている。アフリカ等の貧困国で武装解除を指揮してきた著者が、知られざる紛争の現状を伝える。日本人が平和のためにできるユニークな方法も提案。
受験国語が君を救う! 石原 千秋 著 2009.03.19 1,260円 世の中は受験国語のようにできている! 入試問題作成の表も裏も知り尽くした著者が、単に点をとる技術だけでなく、これからの人生に役立つ、受験国語の解き方・考え方を伝授する。
勝てる読書 豊崎 由美 著 2009.01.26 1,260円 親に、先生に、友達に、そして何より自分に勝つためには……? ユニークなテーマ別に選ばれた、今読むべき本が満載の、かつて類を見ないピリ辛ブックガイド。「文藝」人気連載を単行本化。
あした選挙へ行くまえに 池上 彰 著 2008.11.05 1,260円 選挙に行っても政治は変わらない、なんて時代は終わった。その1票を投じる前に、選挙の仕組みを知っておこう。税金を無駄遣いせず上手に使ってくれる政治家を、賢く選ぶための本。
ちょい大人力検定
子ども以上大人未満の人間関係講座
石原 壮一郎 著 2008.07.14 1,260円 友だち、大人との付き合い方から恋愛相談まで、何かと悩みや迷いが多い“ちょい大人”に、大人力の入門版である“ちょい大人力”を伝授。検定方式で学べる目からウロコのサバイバル処世術。
復讐プランナー あさのあつこ 著 2008.06.12 1,260円 雄哉はクラスメイトの久利谷たちから執拗ないじめを受けることに。そんな時「じゃあ、復讐計画を立ててみれば」と物騒なことを呟く不思議な先輩が現れ――。
みえない未来相談室。
すきなコトを仕事にする方法
k.m.p. 著 なかがわみどり 著 ムラマツエリコ 著 2008.04.14 1,260円 「大人になるって?」「仕事をするって?」という疑問に答えるコミック&エッセイ。悩みながらも手探りで自分たちのスタイルを確立してきた著者が、10代の頃を振り返りながら答えを探る。
女子の国はいつも内戦 辛酸 なめ子 著 2008.03.12 1,260円 永遠に、女子の敵は女子。敵だらけのジャングルの中でどうすれば生きられる? 大人になっても気の抜けない女子の殺伐とした実態とサバイバル実践方法をなめ子お姉様がお教えします。
不肖・宮嶋 メディアのウソ、教えたる! 宮嶋 茂樹 著 2007.08.22 1,260円 今日見たニュースは、100%真実か? 戦場など数々の危険な現場をわたり歩いてきた報道カメラマン不肖・宮嶋が、情報を賢く受けとめ、惑わされずに生きる術を伝授。
どうして君は友だちがいないのか 橋下 徹 著 2007.07.24 1,260円 友だちは面倒。上っ面ばかりで本当の親友がいない! そんな人のための橋下弁護士のまるきり新しい友情交渉術。世界一面倒な友だち問題を乗り越えれば真のつきあいスキルが身につきます。
右翼と左翼はどうちがう? 雨宮 処凛 著 2007.05.22 1,260円 求めているのはどちらも平和な社会なのに、仲良くできないのはなぜ? 両方の活動を経験した著者が、右翼・左翼のテロ、革命の歴史や現状をかみ砕く! 現役活動家への取材も収録。
「占い脳」でかしこく生きる 鏡 リュウジ 著 2007.05.22 1,260円 「占いはアテにならない」って納得してない? でも、占いを使える脳=「占い脳」こそ自分の頭で考える力を得る鍵! 「今日も最下位……」と落ち込むあなた。不安な毎日はもう終わり!
民族の壁どついたる!
在日コリアンとのつき合い方
井筒 和幸 著 2007.05.22 1,260円 同じ人間なのに、なぜ憎しみ合った殺し合ったりするの? 試験には出ない韓国、北朝鮮との問題から、世界中の人たちと仲良くする方法を考える。にがい歴史も全部知ろう!
お金を味方にして人生楽にする!(仮) 山崎 元 著 未刊 1,260円  
差別をしよう! ホーキング青山 著 2009.09.17 1,260円 友達に嫌われないための平等なんておかしい。だったら、差別して差別されて、そこから個性を探せばイイ。身体障害者芸人が、自ら浴びてきた視線を跳ね返す差別のススメ。ビートたけし推薦!
なぜヤクザはいなくならないのか 萱野 稔人 著 未刊 1,260円  

 

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by rickie | Posted in その他(高校生向け), 学問を知る, 文献リスト | No Comments »

A Scandal in Bohemia 「ボヘミアの醜聞」 — 15

8月
2009
26
この記事の印刷用バージョン

ホームズとワトソンは,ボヘミア王から依頼された写真奪回作戦の最終段階へ移ります。今回その手はずが明かされます。ホームズの意図は実行段階まで不明ですが,ワトソンのやるべきことへの指示が与えられます。

 

 

<― 朗読

"And what then?"

"You must leave that to me. I have already arranged what is to occur. There is only one point on which I must insist. You must not interfere, come what may. You understand?"

"I am to be neutral?"

"To do nothing whatever. There will probably be some small unpleasantness. Do not join in it. It will end in my being conveyed into the house. Four or five minutes afterwards the sitting-room window will open. You are to station yourself close to that open window."

"Yes."

"You are to watch me, for I will be visible to you."

"Yes."

"And when I raise my hand — so — you will throw into the room what I give you to throw, and will, at the same time, raise the cry of fire. You quite follow me?"

"Entirely."

"It is nothing very formidable," he said, taking a long cigar-shaped roll from his pocket. "It is an ordinary plumber’s smoke-rocket, fitted with a cap at either end to make it self-lighting. Your task is confined to that. When you raise your cry of fire, it will be taken up by quite a number of people. You may then walk to the end of the street, and I will rejoin you in ten minutes. I hope that I have made myself clear?"

"I am to remain neutral, to get near the window, to watch you, and at the signal to throw in this object, then to raise the cry of fire, and to wait you at the corner of the street."

"Precisely."

"Then you may entirely rely on me."

"That is excellent. I think, perhaps, it is almost time that I prepare for the new role I have to play."

He disappeared into his bedroom and returned in a few minutes in the character of an amiable and simple-minded Nonconformist clergyman. His broad black hat, his baggy trousers, his white tie, his sympathetic smile, and general look of peering and benevolent curiosity were such as Mr. John Hare alone could have equalled. It was not merely that Holmes changed his costume. His expression, his manner, his very soul seemed to vary with every fresh part that he assumed. The stage lost a fine actor, even as science lost an acute reasoner, when he became a specialist in crime.

 

「で,それからは?」

「僕にまかせてくれ。後のことはもう手配ずみなんだ。どうしても守ってもらわなくちゃならないことがひとつだけある。何があろうと,君は関わらないでくれ。いいかい?」

「傍観してろってことかい?」

「絶対何もしないでくれ。たぶんちょっとした不愉快なことが起きることになるだろうが,君は入ってきちゃダメだ。それで僕は家に運び込まれるはずだ。4,5分もしたら今の窓が開くだろう。君にはその開いた窓のそばにいてほしい。」

「よし。」

「僕から目を離さないでくれ。君に見えるところにいるから。」

「よし。」

「僕が手をあげるから,こんな感じで,そしたら君はこれから渡すものを部屋に投げ込むんだ。そして同時に『火事だ!』と叫んでくれ。ここまではいいかい?」

「大丈夫だ。」

「こいつは別に恐ろしいもんじゃない。」そう言って彼は,ポケットから長い葉巻型の筒を取り出した。「鉛管工が使うどこにでもある発煙筒だ。両端に雷管が付いていて自動点火する仕組みになっている。君の仕事はこれを投げ込むだけだ。『火事だ』と叫んだら,おおぜいの人が騒ぎ出すだろう。そしたら君は道の端まで歩いて行けばいい。10分もすれば僕も合流できる。わかってもらえたかな?」

「傍観者になって,窓際に近づき,君から目を離さず,合図があったらこいつを投げ込み,それから『火事だ』と叫んで,通りのかどで君を待つ,だな。」

「そのとおり。」

「では,まかせてくれて大丈夫。」

「そうこなくっちゃ。じゃあ,僕はそろそろ新しい役回りの準備をしなくちゃならない時間だ。」

彼は寝室へ消え,数分して戻ってきた時には,お人好しで頭のとろそうな非国教会の牧師の扮装で現れた。幅広の黒い帽子にだぶだぶのズボン,白のネクタイ,人当たりのいい微笑,それに目を凝らして人を見る心優しいおせっかいといった全体的印象はなかなかなもので,これに匹敵できるのは俳優ジョン・ヘアくらいなものだった。単に衣装を変えただけなのではない。彼の表情,物腰,そして心までもが,新たに演じる役柄に応じて様々変わっていくようであった。彼が犯罪のスペシャリストになったということは,科学界が鋭敏な知性をひとり,演劇界は名優をひとり獲得しそこなったということである。

 

【解説】

  • You must leave that to me.leave A to B 「AをBにまかせる,ゆだねる」。
  • what is to occur ― 「これから起きるであろうこと」。 be to V は予定,義務,命令などさまざまな意味を表すが,その基本は「まだVしていないが,きっとこれからVする,Vするはず,Vするであろう」ということ。
  • There is only one point on which I must insist.insist on ~ 「~を主張する,言い張る,強く要求する」。
  • You must not interfere, come what may.come what may 「何が起きようと」(= whatever may happen)。 interfere 「(with ~)をじゃまする,(into ~)に干渉する」。
  • To do nothing whatever. ― = (You are) to do nothing whatever. これもbe to V(命令)。 no + 名詞 + whatever[whatsoever] 「まったく何の~もない」。 whatever は直前の no + 名詞 (any + 名詞)を強調する働き。
  • It will end in my being conveyed into the house.end in Ving 「最後にはVする,結局Vすることになる」。 being conveyed が受け身の動名詞(運ばれること)。動名詞の意味上の主語は所有格(または目的格)を動名詞の前に置くことで示されるから, my being conveyed は「僕が運ばれること」。
  • You are to station yourself close to that open window. ― これも命令の be to V。 station oneself 「部署・配置につく」(軍隊や警察で用いることが多い)。
  • And when I raise my hand — so — you will throw into the room what I give you to throw, ― so 「このように」は,ホームズが実際に手をあげて見せたのだろう。what I give … はthrow の目的語。
  • You quite follow me? ― follow = understand。
  • It is nothing very formidable, ― it は今ホームズがワトソンに手渡している物を指している。 formidable 「おそろしい」。
smoke rocket (グーグル・ブックスの"Domestic Sanitary Engineering And Plumbing"より)
  • taking a long cigar-shaped roll from his pocket. ― ~-shaped 「~型の」。 roll 「巻物(の形をした物)」。
  • It is an ordinary plumber’s smoke-rocket, ― plumber /plʌmɚ/ (bは発音されない) 「配管工,鉛管工」。日本ではそんなよくある仕事でもないと思うのだが,英語の文章にはよく出てくる。 smoke rocket はその配管工が配管の水漏れ箇所を調べるために使う発煙筒の一種。右の図は smoke rocket の図だが,もちろんホームズが渡したのがこれと同形かどうかはわからない。
  • fitted with a cap at either end to make it self-lighting. ― fitted はsmoke rocket にかかる過去分詞。 fit A with B 「AにBをはめ込む」。 cap 「雷管」(点火装置)。 either + 単数 「どちらの~も」。light 「点火する」。it はsmoke rocket。「発煙筒を自動発火させるために」。
  • Your task is confined to that. ― be confined to ~ 「~に限られる」(<—confine A to B 「AをBに限る」)。
  • When you raise your cry of fire, it will be taken up by quite a number of people. ― it は your cry of fire を指す。take up 「<歌・コーラス・歓声など>に加わる,唱和する,<声などを>いっしょにあげる: The whole crowd took up the shout. 群衆全員が歓声を上げた」(研究社-ロングマン句動詞英和辞典) 。
お人好しで頭のとろそうな非国教会の牧師の扮装で

お人好しで頭のとろそうな非国教会の牧師の扮装で

  • I hope that I have made myself clear? ― Have I made myself clear? 「今言ったことはおわかりですか?」(意図が伝わっているかの確認として使う。いらだちのニュアンスを持つことも)。
  • I am to remain neutral ― ここから,to get …, to watch …, to throw …, to raise  …, and to wait … までが,全部 be to V。自分がやるべきことを確認している。
  • and to wait you at the corner of the street. ― 他動詞の wait はそれほど多くはない。
  • it is almost time that I prepare for the new role I have to play. ― It is time (that) … 「・・・すべき時間だ」では,通常…部分の動詞は過去形にする(仮定法過去)。たまに should + V(原形)や原形(仮定法現在)になることもある。ここは仮定法現在。 play a role 「役を演じる」。
  • in the character of an amiable and simple-minded Nonconformist clergyman.in the character of ~ 「~の資格で,~に扮して」。amiable 「愛想のいい」。Nonconformist 「英国国教会以外のプロテスタント」。
  • his baggy trousers ― baggy 「だぶだぶの」。
  • general look of peering and benevolent curiosity ― peering と benevolent curiosity は,ともにlook of につながると解釈する。 look 「見かけ,外見」。peer 「見つめる」。 benevolent 「慈悲深い,やさしい」。
John Hare

John Hare

  • were such as Mr. John Hare alone could have equalled. ― 主語は His broad black hat 以下全部。such as … 「・・・ようなもの・人」(この such は代名詞, as は関係代名詞)。 名詞 + alone 「~だけ」。 equal 「~に匹敵する」。 could have equalled は仮定法過去完了(「もし比べるとしたら…」という仮定が隠れている)。 John Hare(1844-1921) は実在したイギリスの俳優。
  • It was not merely that Holmes changed his costume. ― 強調構文。 not merely = not only。
  • with every fresh part that he assumed ― fresh = new。 assume 「(役目を)引き受ける」。直訳すると,「彼が引き受けた新しいすべての役ごとに」。
  • The stage lost a fine actor, even as science lost an acute reasoner ― the stage 「演劇界」(メトニミー(換喩)を示すthe)。even as … 「・・・と同時に」。 acute 「鋭い,鋭敏な」。

 

 

 

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by rickie | Posted in 英語の作品を読もう | No Comments »

In Italy for thirty years under the Borgias they had warfare, terror, murder, bloodshed – they produced Michelangelo, Leonardo da Vinci and the Renaissance. In Switzerland they had brotherly love, five hundred years of democracy and peace and what did that produce…? The cuckoo clock. (Orson Welles)

8月
2009
25
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「ボルジア家統治下の30年間,イタリアで起きたのは戦争,テロ,殺人,流血だったが,同時にミケランジェロとレオナルド・ダ・ヴィンチとルネッサンスを生んだ。スイスには友愛精神と500年に及ぶ平和と民主主義があったが,生み出したものといえば...ハト時計だけだ。」(オーソン・ウェルズ)


「第三の男」 右がオーソン・ウェルズ

「第三の男」 右がオーソン・ウェルズ

映画ファンならずとも知っている有名なセリフ。キャロル・リード(Carol Reed)監督による映画「第三の男」(The Third Man) の観覧車のシーンでオーソン・ウェルズが言うことばだ。

脚本はグレアム・グリーン(Graham Greene)で,後に同名の小説を出版(いわゆるノベライゼーション)。ただし,上のセリフはグリーンのオリジナルではなく,撮影中にオーソン・ウェルズの発案で追加したものだといわれる。

the Borgias 「ボルジア家」(the + 人名s は「~家の人々」「~夫妻」)は15~16世紀のイタリア貴族で政界のみならずローマ教会をも牛耳った。チェザーレ・ボルジアやルクレチア・ボルジアが有名。チェザーレは権謀術数ということばを絵に描いたような人物だから批判も多いが,逆から見れば天才的政治家でもあった。マキャベリの「君主論」は彼から着想を得たといわれる。


平和も民主主義も日常生活も退屈きわまりない。退屈きわまりないことが平和と民主主義と日常の不可分の属性でもある。できることなら,あしたすべてが変わってほしい。それを与えてくれるのは,天変地異や革命や白馬に乗った王子様や戦闘的美少女や,どれでもいいのだが,混乱と激動,疾風と怒濤こそが自分を根底から変えてくれるのではないか,そういう願望を若い一時期に誰もが感じるだろう。

もちろん,そんなものは都合よく現れるはずもないし,そういう願望はカルト集団におけるハルマゲドン待望とたいして変わりはしない。だが,現れるはずもないとわかってはいても,それを願望する側はそれなりに切実である。

 

それにしても,社会の混乱がすぐれた芸術やら進歩を生み出すというのはほんとうだろうか?実例もいっぱいあるが,反例もいっぱいあげられるような気がする。

戦国時代は日本の歴史の中でももっとも混乱した時代と言えるだろうが,その中から絢爛たる桃山文化が生まれた。しかし,それに続く徳川265年の泰平の世だって,歌舞伎と浮世絵,芭蕉と近松と西鶴,国学・蘭学などの藝術・学藝を生んだではないか。

戦争や軍事が科学技術を発展させるという考え方も,少なくとも80年代の日本の技術がアメリカやソ連という軍事大国の技術を凌駕しえたという事実だけをもってしても,神話とみなすことができるだろう。

 

だが,江戸時代はそれほど平和で退屈な時代だったのか,平和を謳歌する戦後の日本は冷戦という戦争をうまく利用できる立場にはなかったのだろうか?平和な大地の一層下で混乱したマグマが渦巻いてはいなかったのか?

 

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by rickie | Posted in 引用 | No Comments »

A Scandal in Bohemia 「ボヘミアの醜聞」 — 14

8月
2009
24
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馬丁に変装したホームズが,ターゲットの女性アイリーン・アドラーを尾行していくと,着いた先は教会で,アイリーンとゴドフリー・ノートン,それに牧師が教会の中でもめています。ノートンは教会に迷い込んだ馬丁(ホームズ)を見かけると,走り寄ってきて「ちょっと来てくれ」といわれます。どうも結婚式のようなのですが...

 

<― 朗読

"I was half-dragged up to the altar, and before I knew where I was I found myself mumbling responses which were whispered in my ear, and vouching for things of which I knew nothing, and generally assisting in the secure tying up of Irene Adler, spinster, to Godfrey Norton, bachelor. It was all done in an instant, and there was the gentleman thanking me on the one side and the lady on the other, while the clergyman beamed on me in front. It was the most preposterous position in which I ever found myself in my life, and it was the thought of it that started me laughing just now. It seems that there had been some informality about their license, that the clergyman absolutely refused to marry them without a witness of some sort, and that my lucky appearance saved the bridegroom from having to sally out into the streets in search of a best man. The bride gave me a sovereign, and I mean to wear it on my watch-chain in memory of the occasion."

"This is a very unexpected turn of affairs," said I; "and what then?"

"Well, I found my plans very seriously menaced. It looked as if the pair might take an immediate departure, and so necessitate very prompt and energetic measures on my part. At the church door, however, they separated, he driving back to the Temple, and she to her own house. ‘I shall drive out in the park at five as usual,’ she said as she left him. I heard no more. They drove away in different directions, and I went off to make my own arrangements."

"Which are?"

"Some cold beef and a glass of beer," he answered, ringing the bell. "I have been too busy to think of food, and I am likely to be busier still this evening. By the way, Doctor, I shall want your cooperation."

"I shall be delighted."

"You don’t mind breaking the law?"

"Not in the least."

"Nor running a chance of arrest?"

"Not in a good cause."

"Oh, the cause is excellent!"

"Then I am your man."

"I was sure that I might rely on you."

"But what is it you wish?"

"When Mrs. Turner has brought in the tray I will make it clear to you. Now," he said as he turned hungrily on the simple fare that our landlady had provided, "I must discuss it while I eat, for I have not much time. It is nearly five now. In two hours we must be on the scene of action. Miss Irene, or Madame, rather, returns from her drive at seven. We must be at Briony Lodge to meet her."

「僕はなかば引きずられるようにして祭壇の前まで連れていかれ,自分がどこにいるのかもわからないうちに,気づいてみたら,耳元でささやかれるとおりに返事をつぶやいて,自分でも知りもしないことの保証人になって,要するに新婦アイリーン・アドラー嬢と新郎ゴドフリー・ノートン君の法にのっとった婚姻を手助けしていたわけだ。すべてはあっという間に終わって,僕は左右はお礼の言葉を言う花嫁と花婿に,正面はにこにこ微笑む牧師に囲まれることになった。今までの人生でこれほどわけの分からない立場に立たされたことはないよ。今思い返しただけでも,吹き出してしまうくらいだ。どうも結婚許可証に不備があって,牧師は誰かの証人がいないと,どうしても結婚させるわけにはいかないと言い張っていたらしい。そこへ幸運にも僕が現れたものだから,花婿が付添人を探しに街へ飛び出すはめにならずにすんだってことのようだね。花嫁は1ソブリン金貨をくれたよ。この事件の記念に時計の鎖につけておこうかな。」

「ずいぶんと予想もしない成り行きになったもんだね。」と僕は言った。「で,それからどうなったんだい?」

「いや,計画はかなりやばいことになってきた。新郎新婦はすぐにでも旅立ちそうだから,こちらとしても迅速で強力な対抗策が必要だ。でも,教会の玄関で二人は別れて,彼の方はテンプル法学院へ,彼女は自宅へ戻って行った。別れ際に彼女が,『いつもどおり,5時に公園へ行くから』と言っていたが,それ以上は聞き取れなかった。二人は別々の方向へ消えてから,僕は準備のために帰ってきたわけだ。」

「準備?」

「コールドビーフにビールを一杯,ってことさ。」彼はベルを鳴らしながら言った。「忙しすぎて食事のことなんか忘れていたからね。それに今晩はもっと忙しくなりそうだ。ところでドクター,君の協力が必要なんだが。」

「喜んでやらせてもらおう。」

「法律を破るのはいやかい?」

「ぜんぜん。」

「逮捕される可能性があっても?」

「ちゃんとした大義名分があればね。」

「それは完璧にある。」

「では,まかせてくれ。」

「そう言ってくれると思ってたよ。」

「でも,何をやれっていうんだい?」

「ターナー夫人が料理を持って来てから話すさ。」そう言うと,彼は下宿のおかみさんが出してくれた簡単な食事をがつがつとやっつけにかかった。「食べながら話させてもらうよ。あまり時間がないからね。もう5時近い。2時間後には現場にいなくちゃいけない。アイリーン嬢,というか夫人か,彼女は7時には馬車で戻ってくる。二人でブライオニー荘で待ち構えるんだ。」

 

 

【解説】

僕はなかば引きずられるようにして祭壇の前まで連れていかれ

僕はなかば引きずられるようにして祭壇の前まで連れていかれ

  • half-dragged ― half-形容詞・分詞 は「半分~な状態で」 (ex.) half-baked 「生焼けの」 drag 「引きずる」は「マウスをドラッグする」の drag。
  • I found myself mumbling responsesfind oneself Ving 「(気がついてみると)Vingしている」(V+O+C)。 mumble 「ぶつぶつつぶやく」。宗派によってちがうかもしれないが,一般に欧米では結婚式には証人が必要とされる。馬丁=ホームズはその証人役にされているのである。ここでは,牧師が証人としてのセリフを教え,それをmumbleしている。
  • vouching for things of which I knew nothingvouch for ~ 「~を保証する,~の保証人になる」
  • assisting in the secure tying up of Irene Adler, spinster, to Godfrey Norton, bachelor.assist (+O) in Ving 「(Oが)Vするのを手伝う」。 tie up には「結婚させる」という意味がある。tying up of A to B という形は辞書には見当たらないが, the marriage of A to B なら「AとBとの結婚」となるので,ここはそう解釈できる。spinster 「独身女性」,bachelor 「独身男性」はそれぞれ Irene Adler と Godfrey Norton と同格。なお,spinster は法律用語では「独身女性」だが,日常語では「オールドミス」「いかず後家」(古いか?)的な響きがあって,PC的には避けるべきとされている。
  • It was all done ― done = finished, completed 「終わった」。
  • there was the gentleman thanking me on the one side and the lady on the other ― on the one side, … on the other 「一方には・・・,また一方には」。 There is A and B 主語はA and B だから複数なのだが,しばしばThere is が使われる。
  • beamed on mebeam on[at] ~ 「~に微笑む」。
  • preposterous position ― preposterous 「不合理な,ばかげた」(=completely unreasonable, especially in a way that is shocking or annoying (OALD) 「まったく理屈に合わない,特に衝撃的で不快感を与えるほどに」)
  • it was the thought of it that started me laughing just now. ― 強調構文。start + O + Ving 「OにVし始めさせる」。ここは無生物主語構文。
  • 18世紀イギリスの marriage license の例

    18世紀イギリスの marriage license の例

  • It seems that there had been some informality about their license ― informality はふつうは「形式張らないこと」だが,ここではformalityの反対語で「正規の手続きに反していること」。 license 「結婚許可証」。これも欧米では必要になることがある。 It seems that の that節がthat there had been と that the clergyman absolutely refused とthat my lucky appearance の3つある。
  • refused to marry them without a witness ― witness 「証人」。下の【おまけ】参照。
  • that my lucky appearance saved the bridegroom from having to sally out into the streets in search of a best man.save O from Ving 「OがVすることを不要にする」。この save は「救う」ではなく,「省く,節約になる」。無生物主語構文。「出現は,花婿が・・・するのを不要にした」→「現れたおかげで,・・・せずにすんだ」。sally out 「とびだす,出かける」 in search of ~ 「~を探しに」。 best man 「花婿の付添人」。「花嫁の付添人」は bridesmaid。この二人と新郎新婦を合わせた4人が wedding party 「結婚当事者」と呼ばれる(「披露宴」は wedding reception)。
  • a sovereign ― 「ソブリン金貨」。前回説明済み。
  • mean to wear it ― mean to V 「Vするつもりだ」。
  • in memory of the occasionin memory of ~ 「~を記念して,~を偲んで」。
  • turn of affairs ― turn 「変化,推移」。 affairs 「事柄,事態」。
  • and what then? ― What then?  「それで?」 話のつづきを聞きたい時に使う。
  • I found my plans very seriously menaced ― find + O + C 「OはCだと思う」。menace 「脅威を与える」。
  • It looked as if the pair might take an immediate departure ― It looks as if … ≒ It seems that … 「・・・」の部分には直説法が使える。
  • necessitate very prompt and energetic measures on my part ― necessitate 「~を必要とする」(= make something necessary)。 名詞+ on one’s part 「~の側の名詞」はただの所有格を用いた one’s + 名詞 を強調する働き。
  • he driving back to the Temple, and she to her own house. ― she の後ろにはdriving が省略されていて,2つのdrivingが分詞構文,he と she がその意味上の主語。
  • in different directionsin ~ direction 「~の方向へ」。 direction は「方向」で,to ではなく,inを使う。
  • make my own arrangements ― make arrangements 「手配する,準備する」。
  • "Which are?" ― この which は関係代名詞で,先行詞は直前のセリフの中の arrangements。「その準備っていうのは...?」ということ。
  • he answered, ringing the bell ― このベルは下宿のおかみさんを呼び出すベルでしょう。
  • busier still ― 比較級 + still は「いっそう~」。 still + 比較級 という順も多い。
  • I shall be delighted. ― be delighted 「喜ぶ,うれしい」。後ろには, to cooperate with you が省略されている。また,Delighted だけでも「喜んで」になる。
  • You don’t mind breaking the law? ― mind + Ving 「Vするのをいやがる」。
  • Not in the leastnot … in the least 「少しも・・・でない」。
  • Nor running a chance of arrest? ― 完全に書くと Nor do you mind running …? run a chance = run a risk 「危険を冒す」。
  • Not in a good cause. ― cause は「原因」以外に「大義,主義主張」の意味がある。 be in a good cause = worth doing, because it is helping other people 「人助けになるのでやる価値がある」。 この Not は前文の否定文の代わりをするnot。この場合は,Not = I don’t mind running a chance of arrest で,「大義名分があれば,逮捕の危険もいとわない」ということ。
  • I am your man. ― one’s man 「もってこいの男」 (ex.) If you want a good cook, he’s your man. 「いい料理人が欲しいのなら,あいつこそうってつけだ。」(ジーニアス大英和辞典)
  • I was sure that I might rely on you. ― rely on = depend on。 このへんのやりとりは,ホームズとワトソンの友情がにじみ出ています。
  • When Mrs. Turner has brought in the tray ― tray は食事ののったお盆。「ターナー夫人」とは先ほどホームズが呼んだ下宿のおかみさん。ところでこの「ボヘミアの醜聞」では,お上さんの名がターナー夫人になっているのだが,他の作品ではハドソン夫人になっている。われわれふつうの読者はそれを筆者コナン・ドイルのミスと考えるわけだが,シャーロキアンと呼ばれる人たちにとってはホームズ・シリーズは一字一句誤りのない聖典なので,ここにもいろいろ理屈をつけている。ハドソン夫人が料理を作って,出したのはターナー夫人だとか,ハドソン夫人はこの時期だけターナー氏と結婚していたとか(筑摩「詳注版シャーロックホームズ全集3」による)。
  • he turned hungrily on the simple fare that our landlady had provided ― turn on ~ 「~に向かう」。 fare 「食事」は既出。
  • In two hours ― in + 時間 「~したら,~後に」 これも既出(だっけ?)
  • Miss Irene, or Madame, rather, returns ― Miss と言ってから,Madame と言い変えたもの。Madame は Mrs と同じだが,イギリスでは外国人に使われることが多い。

 

【おまけ】

今回は結婚に関する法律上の手続きの話が出てきますが,筑摩「詳注版シャーロックホームズ全集3」によると,この記述は実際とはかなり異なっているようです。現実には,証人は2人必要,証人が式中で何かを「つぶやか」されることはない,書類に不備があれば式は(証人がいようと)行われない,そもそも式はこんなに短時間ではない,などです。上の「ターナー夫人」のところで書いたのと同じように,シャーロキアンはここでもつじつまを合わせるために想像をたくましくしています。たとえば,ノートンと牧師はグルになったペテン師だというものもあります。こっちの方がおもしろかったりして。

 

 

 

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夏の終わり

8月
2009
23
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一年でいちばん好きな季節は,と聞かれればやはり夏と答えるだろう。暑いのが苦手という人は多いが,ぼくは嫌いではない。寒いとひたすらちぢこまって,あげくには何ごとにもやる気を失ってしまうことも多い。その点,強烈な日射しの中で,全身に汗をふきだすのを感じながら歩いていると,確かにこれも頭がボーッとしてはくるのだが,内側から何か沸騰し始めるものがある。その生々しさ,躍動のようなものが好きなのだと思う。

 

といっても仕事がら,夏には夏期講習というやつでたいていは時間を取られる。昨今の少子化やらなんたらで,授業の数は減っているが,それでも週単位で予習―授業がやって来るレギュラーの学期とは違い,一日一日授業が変わるというペースはそれなりに苦労する。

今年の夏は,やたらと出来る生徒に出会った。東大理Ⅰ志望だという。

かりに明日が入試の日だとしても受かるだろうな,と思わせるだけの力がある。知識も,あちこち抜けがあるとはいえ,ふつうの出来る生徒をはるかにしのいでいるし,なにより理解力がずば抜けている。何が重要なのかを見抜く力もある。

時々,説明の中にちょっとしたコツのようなものを何気なく混ぜ込むことがある。板書するほどでもないし,そのコツがなぜだいじなのかを語り始めると長くなって,本題の説明を阻害してしまうから軽く触れるだけである。ふつうの生徒はただ聞いているだけなのだが,彼はちゃんとメモを取っている。板書されたもの=「だいじなこと」と考えている学生が多い中で,こういう学生は案外少ないのである。「話を聴く」と「ノートを取る」のあいだのバランスとタイミングはなかなかむずかしいから,そこがうまい生徒はそれだけで「頭の良し悪し」が透けて見えてしまう。

 

この生徒の話に限らないが,「出来る生徒」が「結果」が出せないこともある。原因は学力的なことよりもむしろ,家族,恋愛,将来への不安やら疑念やら煩悶であることが多い。漠然とした実存的不安かもしれない。18歳の若者の一年なのだから,当然といえば当然で,どこかの時点で誰もが通った道である。誰もが通る以上,「すべてを捨てて勉強に」という説教はあまり意味がないだろう。そうした「悩み」が原因で生じる失敗は,失敗とは呼べないとぼくは思う。本人がそれを失敗と感じてしまうなら,そう感じるに至ったことが人生としての失敗ではないのか。

 

かくして仕事としての夏は終わった。残りの夏がぼくの夏だ。どこに行くというわけでもないけどね。

 

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A Scandal in Bohemia 「ボヘミアの醜聞」 — 13

8月
2009
14
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ホームズが捜査報告をワトソンに聞かせる場面のつづきです。

ゴドフリー・ノートンなる男が,アイリーン・アドラー嬢の家に入っていきます。

この男は何者か。国王に依頼された事件の解決に不利な要因となるのか。

ホームズはアドラーの家の外から様子をうかがっています。

 

<― 朗読

"He was in the house about half an hour, and I could catch glimpses of him in the windows of the sitting-room, pacing up and down, talking excitedly, and waving his arms. Of her I could see nothing. Presently he emerged, looking even more flurried than before. As he stepped up to the cab, he pulled a gold watch from his pocket and looked at it earnestly, ‘Drive like the devil,’ he shouted, ‘first to Gross & Hankey’s in Regent Street, and then to the Church of St. Monica in the Edgeware Road. Half a guinea if you do it in twenty minutes!’

"Away they went, and I was just wondering whether I should not do well to follow them when up the lane came a neat little landau, the coachman with his coat only half-buttoned, and his tie under his ear, while all the tags of his harness were sticking out of the buckles. It hadn’t pulled up before she shot out of the hall door and into it. I only caught a glimpse of her at the moment, but she was a lovely woman, with a face that a man might die for.

" ‘The Church of St. Monica, John,’ she cried, ‘and half a sovereign if you reach it in twenty minutes.’

"This was quite too good to lose, Watson. I was just balancing whether I should run for it, or whether I should perch behind her landau when a cab came through the street. The driver looked twice at such a shabby fare, but I jumped in before he could object. ‘The Church of St. Monica,’ said I, ‘and half a sovereign if you reach it in twenty minutes.’ It was twenty-five minutes to twelve, and of course it was clear enough what was in the wind.

"My cabby drove fast. I don’t think I ever drove faster, but the others were there before us. The cab and the landau with their steaming horses were in front of the door when I arrived. I paid the man and hurried into the church. There was not a soul there save the two whom I had followed and a surpliced clergyman, who seemed to be expostulating with them. They were all three standing in a knot in front of the altar. I lounged up the side aisle like any other idler who has dropped into a church. Suddenly, to my surprise, the three at the altar faced round to me, and Godfrey Norton came running as hard as he could towards me.

" ‘Thank God," he cried. "You’ll do. Come! Come!’

" ‘What then?’ I asked.

" ‘Come, man, come, only three minutes, or it won’t be legal.’

「その男が家にいたのは30分くらい。今の窓越しにチラッと見た限りでは,ゆっくり部屋を歩き回ったり,興奮気味に話していたり,手を振ったりしていた。彼女はぜんぜん見えなかった。やがて彼が出て来た時には,入る前よりいっそう慌てふためいている様子だった。馬車に乗り込むや,ポケットから金時計を取り出してじっと見つめてから,『思いっきり飛ばしてくれ』と叫んだ。『最初にリージェント街のグロス・アンド・ハンキーズ商会,それからエッジウェア通りの聖モニカ教会だ。20分で着いたら半ギニーやる。』

「彼らが行ってしまうと,後をつけた方がいいのかどうか迷っていた。が,その時,小路からこぎれいなランドー型馬車が現れた。御者はまだボタンを上まで留めきっておらず,ネクタイは横にねじれているし,馬具の金具は留め金にはまっていない有り様だった。家に横付けするのと同時に,彼女がホールのドアから飛び出てきて馬車に乗り込んだ。僕はその一瞬チラッと見ただけだが,美しい女性で,男がそのためなら死んでもいいと思わせるような顔立ちだ。

「『ジョン,聖モニカ教会までやって。』と彼女は叫んだ。『20分で着いたら半ソブリンあげるわ。』

「ワトソン,こいつは逃す手はないじゃないか。後を追って走るか,それともそのランドー馬車の後ろに飛びつくか,どちらにしようか迷っていると,辻馬車がうまい具合にやった来たんだ。御者はあまりにみすぼらしい客にしげしげ見入っていたが,そいつがよけいなことを言う前に跳び乗ってしまったよ。『聖モニカ教会まで。20分で着いたら半ソブリン』と僕は言った。それが2時25分前のことだから,もちろんこれで,これから何が起きるのかもはや疑う余地はない。」

「御者は飛ばしてくれた。今まで乗った馬車と比べても速かったと思うが,でも彼と彼女は先に着いていたよ。僕が着いた時には辻馬車とランドー馬車が玄関前にいて,盛んに湯気を立てている。僕は御者に金を払って,急いで教会へもぐり込んだ。尾行してきたふたりと,白の法衣を着た牧師以外には誰もいなくて,牧師がふたりを何か説得しようとしているらしかった。三人はかたまって祭壇の前にいたんだが,僕はたまたま教会に立ち寄った,どこにでもいるひま人の風情でわきの通路をぶらぶらと近寄っていった。と突然,驚いたことに祭壇にいた三人がこちらを振り返るや,ゴドフリー・ノートンが全速力で僕に向かって走り寄ってきたんだ。

「『ありがたい!』と彼は叫んだ。『君でいい。こっちへ来てくれ!』

「『何ですか,いったい?』と僕は尋ねた。

「『来てくれって。3分でいいんだ。さもないと法律上ダメなんだ。』

 

【解説】

  • I could catch glimpses of him in the windowscatch[get, have] a glimpse of ~ 「~をちらっと見る」
  • pacing up and down ― pace 「ゆっくり歩く,歩き回る」(既出)
  • Of her I could see nothing. ― see nothing of ~ 「~とまったく会わない,~をぜんぜん見ない」
  • Presently he emerged, looking even more flurried than before. ― presently 「やがて,まもなく」 emerge 「現れる」 looking は分詞構文。 even more flurried はlookの補語。 even + 比較級 「いっそう~」。 flurried 「混乱した,あわてた」 < flurry 「あわてさせる」
  • As he stepped up to the cab, ― この as は時・同時性を表す接続詞。 cab 「辻馬車」(今のタクシー)。ゴドフリーはこの辻馬車をアイリーン・アドラー邸にいる間も玄関先に待たせていた。
  • Drive like the devil ― like the devil 《古・略式》「激しく,猛烈に」。
  • Regent_Street_engraved_by_J.Woods_after_J.Salmon_publ_1837_edited
  • Gross & Hankey’s in Regent Street ― リージェント街(リージェント・ストリート)は現在も存在するロンドンの通りで,世界的に有名。今は,アップルストアやベネトンやゴディバやユニクロが軒を連ねている。 Gross & Hankey’s という店は架空のものらしい。その後の話の流れから見て,宝石店のようだ。
  • to the Church of St. Monica in the Edgeware Road. ― 「エッジウェア通り」も「聖モニカ教会」もそれぞれ実在はするが,「エッジウェア通りの聖モニカ教会」は実在しない。
  • 半ギニー

    半ギニー

  • Half a guinea ― 「ギニー」は現在はすでに廃止されているイギリスの貨幣。ギニア産の金から作られた金貨だったのでこの名がついた。1ギニー=21シリングで,20シリング=1ポンド≒現在の24000円。20分の距離で1万以上出す,という感覚でしょう。
  • Away they went ― = they went away
  • I was just wondering … when … ― 過去進行形…  + when + 過去形~ 「・・・しているとその時,~した」はすでに何度も出た形。
  • whether I should not do well to follow them ― do well to V  「Vした方がいい」。
  • ランドー馬車

    ランドー馬車

  • up the lane came a neat little landau, ― 倒置形。 A neat little landau came up the lane. 語順を変えることで,新情報(a neat little landau)を後ろに持ってくるという英語的語順にしている。 landau 「ランドー馬車」(写真 →)
  • the coachman with his coat only half-buttoned, and his tie under his ear, while all the tags of his harness were sticking out of the buckles. ― with は付帯状況。 with + 名詞 + 分詞・形容詞・副詞・前置詞+名詞 「名詞が~な状態で」。ここでは,「彼のコートが半分だけボタンが留まっている状態で,かつ,ネクタイが耳の下にある状態で」。 tag 「金具」。 harness 「馬具」。 stick out 「突き出す」。 buckle 「留め金」。 これらはみな,御者がアイリーン・アドラーに呼ばれて大慌てで馬車を用意したことを暗示している。
  • It hadn’t pulled up before she shot out of the hall door and into it. ― not を hardly にした had hardly p.p. … before S + V(過去形)~ 「・・・するとすぐ~した」という公式とおなじこと。 pull up 「車を止める,横付けする」。shoot 「勢いよく飛び出す」。
  • a face that a man might die for. ― 「男が,そのためになら死んでもよいと思うような顔立ち」
  • 半ソブリン貨(20C)

    半ソブリン貨(20C)

  • half a sovereign ― 1ソブリン = 1 ポンド(=20 シリング)だが,「ボンド」は貨幣単位。「ソブリン」は硬貨の名称。ゴドフリーは10.5シリング,アイリーンは10シリング払う,と言っていることになる。
  • This was quite too good to lose ― too ~ to V 構文。直訳すると,「これはあまりにもよすぎて失うわけにはいかない」。 This is too good a chance to miss. というわけである。
  • I was just balancing … when a cab came ― またまた 過去進行形…  + when + 過去形~ 「・・・しているとその時,~した」のかたち。 balance 「はかりにかけ(て考え)る」も既出。
  • perch behind her landau ― 「止まり木」のことを perch と言うが,ここは動詞で 「場所にひょいと止まる」こと。
  • looked twice at such a shabby fare ― shabby 「みすぼらしい」。 fare は「乗り物料金,運賃」の意味がふつうだが,ここでは「(料金を払って乗る)乗客」。 look twice だから「二度見する」わけです。
  • before he could object ― object 「反対する,不服を唱える」。ここは,あんたみたいにみすぼらしい格好をした客を乗せるのは...と御者が文句を言う前に,ということ。
  • It was twenty-five minutes to twelve, and of course it was clear enough what was in the wind. ― 25 minutes to 12 = 12時25分前。 in the wind 「起こりつつあって,計画されて」= about to happen soon, although you do not know exactly how or when(まもなく起こりそうだが,いつどのように起きるのかはわからない場合 OALD)。
    今11時35分で,2人とも20分以内に教会に着きたがっている。つまり,なんとか午前中に教会に行きたがっているわけだ。次回でこれが明確に語られるが,先にネタバレさせてしまうと,当時は結婚式は午前中に挙げなければいけないという法律があったので,とにかく今日中に結婚式を挙げたいということなのである(もっとも,この法律は「ボヘミアの醜聞」発表の2年前に改訂され,3時までOKになったはずなのだが...というようなことが筑摩「詳注版シャーロック・ホームズ全集3」の注に書かれている)。
  • I don’t think I ever drove faster ― than this か何かが省略されている。「これ以上速く走る馬車に乗ったことがあるとは思わない」というのが直訳。
  • The cab and the landau with their steaming horses ― cab はゴドフリー, landauはアイリーンの乗ってきた馬車。 steam 「湯気を立てる」。2人が別々にやって来たのは,アイリーンは着替えなどの準備が必要だっただろうし,ゴドフリーは宝石店に寄りたかったからであろう。
  • There was not a soul there save …not a soul 「人っ子ひとり...いない」。 save は前置詞 「~を除いて」。
  • 白い法衣(surplice)

    白い法衣(surplice)

  • a surpliced clergyman ― clergyman 「聖職者・牧師」 surpliced 「白い法衣を着た」 < surplice 「白い法衣」はカトリックおよび英国国教会の聖職者や聖歌隊が着る。(写真 →)
  • who seemed to be expostulating with them ― expostulate 「忠告する,いさめる」 何をいさめていたのかは,次回に語られる。
  • standing in a knot in front of the altar. ― knot 「結び目,人の群れ」 ここでは in a knot で「3人がひとかたまりになって」ということ。 altar 「祭壇」。
  • I lounged up the side aisle ― lounge 「ぶらつく」。 aisle [ail](発音注意)「通路」。
  • like any other idler who has dropped into a church. ― idler 「怠け者,ぶらぶらしている人」。 drop into ~ = drop in at + 場所 「~に立ち寄る」。
  • to my surpriseto one’s + 感情名詞 「~したことに」。
  • Thank GodThank God 「ありがたい,助かった」。
  • You’ll do ― S will do. 「Sでよい,Sでかまわない」。( to be suitable or be enough 適切だ,じゅうぶんだ)
  • or it won’t be legal. ― 12時3分前,というわけ。

 

 

 

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A Scandal in Bohemia 「ボヘミアの醜聞」 — 12

8月
2009
12
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第2部の2回め。

ホームズの午前中からの調査活動をワトソンに語る場面が続きます。

アイリーン・アドラー邸を外から観察したホームズは,周辺の聞き込みを開始します。

 

<― 朗読

"I then lounged down the street and found, as I expected, that there was a mews in a lane which runs down by one wall of the garden. I lent the ostlers a hand in rubbing down their horses, and received in exchange twopence, a glass of half and half, two fills of shag tobacco, and as much information as I could desire about Miss Adler, to say nothing of half a dozen other people in the neighborhood in whom I was not in the least interested, but whose biographies I was compelled to listen to."

"And what of Irene Adler?" I asked.

"Oh, she has turned all the men’s heads down in that part. She is the daintiest thing under a bonnet on this planet. So say the Serpentine-mews, to a man. She lives quietly, sings at concerts, drives out at five every day, and returns at seven sharp for dinner. Seldom goes out at other times, except when she sings. Has only one male visitor, but a good deal of him. He is dark, handsome, and dashing, never calls less than once a day, and often twice. He is a Mr. Godfrey Norton, of the Inner Temple. See the advantages of a cabman as a confidant. They had driven him home a dozen times from Serpentine-mews, and knew all about him. When I had listened to all they had to tell, I began to walk up and down near Briony Lodge once more, and to think over my plan of campaign.

"This Godfrey Norton was evidently an important factor in the matter. He was a lawyer. That sounded ominous. What was the relation between them, and what the object of his repeated visits? Was she his client, his friend, or his mistress? If the former, she had probably transferred the photograph to his keeping. If the latter, it was less likely. On the issue of this question depended whether I should continue my work at Briony Lodge, or turn my attention to the gentleman’s chambers in the Temple. It was a delicate point, and it widened the field of my inquiry. I fear that I bore you with these details, but I have to let you see my little difficulties, if you are to understand the situation."

"I am following you closely," I answered.

"I was still balancing the matter in my mind when a hansom cab drove up to Briony Lodge, and a gentleman sprang out. He was a remarkably handsome man, dark, aquiline, and moustached — evidently the man of whom I had heard. He appeared to be in a great hurry, shouted to the cabman to wait, and brushed past the maid who opened the door with the air of a man who was thoroughly at home.

 

「それから通りをぶらついていると,屋敷の裏庭の壁のわきに延びている小道に,予想どおり貸し馬屋の小屋があった。そこの馬丁の手伝いで馬の体を拭いてやって,お礼に2ペンスとハーフ・アンド・ハーフ・ビール1杯に刻みタバコ2服分,それにアドラー嬢についての望みうる限りの情報を手に入れたというわけだ。むろんそのためには,何人ものこちらには興味のない近所の人のうわさ話も聞かざるをえなかったがね。」

「で,アイリーン・アドラーについては,どうだったんだ?」と僕は尋ねた。

 

「うん,あの界隈の男たちはみんな彼女にのぼせ上がってるね。この世でいちばん色っぽい女だって,サーペンタインの馬車屋の連中は言ってるよ。ひとり残らず。あの女性は静かに暮らし,コンサートで歌い,毎日5時には馬車で出かけ,7時ちょうどに夕食に戻ってくる。それ以外に外出することはめったにない。歌手の仕事の時は別だけどね。訪問してくる男は一人しかいないが,そいつにはよく会ってるようだ。浅黒くて,顔立ちがいいしゃれ男だ。一日にいちどは必ず訪問するらしいし,二回のことも多い。ゴドフリー・ノートンとかいう名で,イナーテンプル法曹学院に在籍中。馬丁を友だちにするのがどれほど都合がいいことか。連中はサーペンタインから何度も彼を乗せたことがあるそうだ。だからその男については何でも知っている。聞くべきことは聞いてしまうと,僕はもう一度ブライオニー荘あたりを歩いて作戦計画を練ることにした。

「このゴドフリー・ノートンが,この件で重要な役を果たしているのはまちがいない。彼は弁護士だ。だとすると,ちょっとやっかいなことになる。彼らの関係は何なのか,何度も訪問する目的は何か?彼女は彼の依頼人なのか,友人か,それとも愛人か?依頼人だとすると,写真はもう彼の手に移ったとみていい。友人や愛人だとすると,それはあるまい。この疑問にけりをつけないと,ブライオニー荘で仕事をつづけるか,それともテンプル法曹院の男の部屋に標的を移すかが決まらない。微妙なところだ。捜査範囲が拡がってしまう。こんなこまかい点ばかり話していると,君は退屈するかもしれないが,状況を理解するためには,僕の抱えた難題をわかってもらわなくてはいけないのでね。」

「飽きてなんかいないよ。」と僕は答えた。

 

「まだ,今言った点を決めかねていると,ちょうどハンサム型辻馬車が一台,ブライオニー荘にやって来て,そこから紳士が飛び出てきた。じつに美形の男で,浅黒く,鷲のような鼻すじ,口髭を生やしている。話に聞いた例の男にまちがいない。何かとても急いでいる様子で,御者に待つように怒鳴って,ドアを開けたメイドに振り向きもせず,勝手のわかっている男といったふうに家へ入っていったんだ。」

 

【解説】

  • lounged down the street ― lounge 「ぶらつく」。 down the street は「道を下って」の意味にもなるが,単に「通りを」と訳した方がいい場合がある。down は「自分(その場)から遠ざかる方向へ」の意味で使われ,その逆が up で「自分の方へ」になる。 (ex.) Come up to me. 「こっちへ来い」
  • 733px-Dunworth.mews.london.arp
  • and found, as I expected, that there was a mews in a lane which runs down by one wall of the garden. ― as I expected は挿入節。 found の目的語がthat以下。 mews は英和では「うまや,小路」とあるが,たとえばDictionary.comでは, mew 4. mews, (usually used with a singular verb) Chiefly British. a. (formerly) an area of stables built around a small street. b. a street having small apartments converted from such stables. (mews (ふつう単数扱い) 主にイギリス英語 a. (古) 小さな通りに建てられた馬小屋が並ぶ一画 b. そうした馬小屋を改造した小さなアパートが並ぶ通り)とある。ここはa.の意味。この部分は foundの目的語だから there was の部分では時制の一致が見られるが,runs down は時制が一致していない。もちろん ran down と書いてもいいわけだが,壁沿いに道(lane)が走っているのは恒久的なものととらえているのであろう。
  • I lent the ostlers a hand in rubbing down their horseslend (give) ~ a hand 「手を貸す」。 ostler = hostler 「宿屋の馬丁」。 rub down 「(人・動物の)体を拭いて水分をとる」。
  • received in exchange twopence, a glass of half and half, two fills of shag tobacco, and as much information as I could desire about Miss Adler, ― in exchange 「お返しに,交換に」。twopence  「2ペンス」(当時は1ポンド=240ペンスで,1ポンド≒現在の24000円 とすると,200円の手間賃というところ)。 half and half 「混合ビール」(主にエールと黒ビールだが他のものも)。 a fill of ~ 「1服(杯,盛り)の~」。 shag tobacco 「安い刻みタバコ」。 as ~ as S can V 「SがVできる限りの~」。
  • to say nothing of half a dozen other people in the neighborhood in whom I was not in the least interested, but whose biographies I was compelled to listen to. to say nothing of ~ 「~は言うまでもなく」。 in whom … と whose biographies … の関係節はいずれも other people にかかる。not … in the least 「少しも・・・でない」。 be compelled to V 「Vせざるをえない」。
  • "And what of Irene Adler?"What of ~? 「~はどうなのか,どうなったのか」 = What is the news concerning ~?
  • she has turned all the men’s heads down ― 辞書にあるのは turn one’s head 「頭を変にさせる,のぼせ上がらせる」。 down は...よくわかりません。
  • bonnet の1つ

    bonnet の1つ

  • She is the daintiest thing under a bonnet on this planet. ― dainty 「優美な」。形容詞 + thing 「~なヤツ,人,子」(愛情・軽蔑などの意味をこめる)。 bonnet 「昔の女性用帽子」(右の図のタイプ以外にもたくさんの種類がある)。地上でボンネットをかぶる女性たちの中でいちばん...ということでしょう。
  • So say the Serpentine-mews, to a man. ― 倒置。The Serpentine-mews say so. ということ。この種の表現ではよく語順が変わる。 (ex.) So they say. 「彼らはそう言っている。」 名詞が主語になると V-S になる。 to a man = to the last man 「一人残らず」(最後の一人に至るまで,ということ)。
  • at seven sharp時刻 + sharp  「~時きっかり」。現代でもふつうに使われる。
  • Seldom goes out at other times ― 前文の主語 She が省略されている,というか,生きている。
  • Has only one male visitor, but a good deal of him. ― ここも主語は She。 後半は, see a lot of ~ 「~とよく会う」と同じことだろう。
  • dashing ― dashing 「元気のいい」。
  • never calls less than once a day ― 直訳すると,「一日一度の訪問を下回ることは決してない」→「必ずといっていいほど一日一回は訪問する」。
  • 19世紀のイナー・テンプル法曹学院

    19世紀のイナー・テンプル法曹学院

  • He is a Mr. Godfrey Norton, of the Inner Temple. ―  a + 人名 「~とかいう人」。 of は所属や出身を表す。 the Inner Temple はロンドンにある,法廷弁護士任命権を持つ法曹学院の一つ。 the Inner Temple 以外に the Middle Temple, Lincoln’s Inn, Gray’s Inn の計4つがある。個々に所属しているということは,当然エリートということになる。
  • See the advantages of a cabman as a confidant. ― 命令文。直訳すると,「友としての御者の有利さを見よ」。 cabman 「御者」。 confidant 「友人,相談相手」。前回に出てきた,馬丁と知り合えばいろんなことが聞き出せる,というのと同じことを言っている。
  • They had driven him home a dozen times ― they はSerpentine-mews のホームズに語ってくれた cabman たち。him はGodfrey Norton。 過去完了なので,それ以前に乗せたことがある,ということ。
  • When I had listened to all they had to tell ― all they had to tell は直訳すると,「彼らが言うために持っていたすべて」。 (cf.) what he has to say 「彼の言いたいこと,言い分,意見」。 ふつう「彼の言わなければならないこと」の意味にはならない
  • walk up and down near Briony Lodgeup and down 「行ったり来たり」。
  • think over my plan of campaign. think over 「熟考する」。campaign 「運動,作戦行動」。
  • That sounded ominous. ― S + sound + C. 「SはCに聞こえる,聞いた感じCである」。 ominous 「不吉な」。
  • If the former ― 「もし前者なら」。 the former 「前者」<—> the latter 「後者」。前の文で,依頼人,友人,愛人という3つの可能性をあげているので,友人を前者・後者のどちらに含めるかは微妙。友人なら預けるかもしれないし,友人でも秘密にしておきたいかもしれない。ここでは公的・私的関係と考え,「前者」とは依頼人としておく。
  • she had probably transferred the photograph to his keeping. ― transfer A to B 「AをBに移す」。 keeping 「保管,管理」。
  • If the latter, it was less likely. ― it は写真の管理を移すこと。less likely 「可能性がより低い」。
  • On the issue of this question depended whether … ― 倒置。主語はwhether 節。「・・・かどうかはthe issue にかかっている」。 issue 「問題点,結果」。
  • turn my attention to ― turn attention to ~ 「~に注意を向ける」= direct attention to。
  • if you are to understand the situation. ― if 節中の be to V は「もしVするつもりなら」「Vするためなら」。
  • I was still balancing the matter in my mind when … ― 全体は, 過去進行形… when 過去形~ の形 「・・・していると,その時~した」。balance 「はかりにかける,比較して考える」。
  • ハンサム型辻馬車

    ハンサム型辻馬車

  • a hansom cab ― 「ハンサム型辻馬車」(→)
  • sprang out ― spring out 「とびだす」。
  • aquiline, and moustached ― aquiline 「ワシのような」よく鼻の形について使われる。(ex.) an aquiline nose 「鷲鼻」。 moustached = mustached = mustachioed 「口髭をたくわえた」。
  • evidently the man of whom I had heard. ― evidently 「明らかに」。 of whom の of はhear of ~ 「~について(のうわさを)聞く」のof。過去完了形だから,「さっきからうわさ話を聞いてきたその男」。
  • brushed past the maid who opened the door ― brush 「かすめる,かすめて(急いで)通る」。 past は前置詞で,「~を通りすぎて」。
  • with the air of a man who was thoroughly at home. ― air 「様子」。thoroughly [ɵɚːroʊli, ɵəːrəli] 「まったく,徹底的に」。 at home 「よく知っている,なじみ深い」。

 

【補遺】

今回の第一パラグラフの最初と最後にはコーテーションマーク(")があるが,その次のホームズの発言のパラグラフには最後のコーテーションがなく,閉じていないのに次のパラグラフの最初にコーテーションが来て,それもホームズの発言である。

このコーテーションの付け方は,ひとりの人の発言が長く,その中に複数のパラグラフを含む場合に使われる。閉じるのは,発言者が変わる時や地の文が入る時で,それまではコーテーションを閉じなくていい。

現代の小説では,ひとりの人物がこれほど長いセリフを一気に言うことがあまりないので,見慣れないかもしれない。19世紀の小説にはよくあった。

 

 

 

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A Scandal in Bohemia 「ボヘミアの醜聞」 — 11

8月
2009
11
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ここからが第2部の始まります。

第1部で事件の概要が説明されました。ホームズとワトソンはボヘミア国王の依頼で,国王のかつての愛人アイリーン・アドラーから,国王と彼女が写った写真を取り戻さなければなりません。アイリーンは周到で用心深く,国王の写真奪回の試みからことごとく逃れ,写真はいまだにどこにあるのかもわからない状態です。ホームズの探索が始まります。

語り手ワトソンは,「明日の3時に来てくれ」というホームズの指示どおり,ベーカー街のホームズの部屋へやって来るところから。

 

<― 朗読

2

At three o’clock precisely I was at Baker Street, but Holmes had not yet returned. The landlady informed me that he had left the house shortly after eight o’clock in the morning. I sat down beside the fire, however, with the intention of awaiting him, however long he might be. I was already deeply interested in his inquiry, for, though it was surrounded by none of the grim and strange features which were associated with the two crimes which I have already recorded, still, the nature of the case and the exalted station of his client gave it a character of its own. Indeed, apart from the nature of the investigation which my friend had on hand, there was something in his masterly grasp of a situation, and his keen, incisive reasoning, which made it a pleasure to me to study his system of work, and to follow the quick, subtle methods by which he disentangled the most inextricable mysteries. So accustomed was I to his invariable success that the very possibility of his failing had ceased to enter into my head.

It was close upon four before the door opened, and a drunken-looking groom, ill-kempt and side-whiskered, with an inflamed face and disreputable clothes, walked into the room. Accustomed as I was to my friend’s amazing powers in the use of disguises, I had to look three times before I was certain that it was indeed he. With a nod he vanished into the bedroom, whence he emerged in five minutes tweed-suited and respectable, as of old. Putting his hands into his pockets, he stretched out his legs in front of the fire and laughed heartily for some minutes.

"Well, really!" he cried, and then he choked and laughed again until he was obliged to lie back, limp and helpless, in the chair.

"What is it?"

"It’s quite too funny. I am sure you could never guess how I employed my morning, or what I ended by doing."

"I can’t imagine. I suppose that you have been watching the habits, and perhaps the house, of Miss Irene Adler."

"Quite so; but the sequel was rather unusual. I will tell you, however. I left the house a little after eight o’clock this morning in the character of a groom out of work. There is a wonderful sympathy and freemasonry among horsy men. Be one of them, and you will know all that there is to know. I soon found Briony Lodge. It is a bijou villa, with a garden at the back, but built out in front right up to the road, two stories. Chubb lock to the door. Large sitting-room on the right side, well furnished, with long windows almost to the floor, and those preposterous English window fasteners which a child could open. Behind there was nothing remarkable, save that the passage window could be reached from the top of the coach-house. I walked round it and examined it closely from every point of view, but without noting anything else of interest.

3時ちょうどに僕はベーカー街にやってきた。だが,ホームズはまだ戻っていなかった。下宿のおかみさんの話では,彼は午前8時を少しまわった頃に出かけたとのことだった。それでも僕は暖炉の脇に腰をかけ,何時になろうと彼が帰るのを待つつもりだった。僕はもうこの捜査に,とりこになっていた。僕が記録に残した2つの犯罪にまつわる薄気味悪さ,奇怪さといったものは,ここにはまったくなかったのだが,それでも事件の性質,依頼人の高貴な身分を考えると,この事件独自の特色があったからだ。我が友人が今かかえている調査がどんな種類であれ,状況を見抜く上での彼の名人芸や切れ味の鋭い彼の推理の中には,彼の仕事ぶりを研究して,もっとも不可解な謎を解きほぐす迅速精妙な方法のあとをよろこんでたどってみたいと感じさせる何かがあったのだ。彼がいつでも成功することに僕は慣れっこになっていて,失敗の可能性などはなから思いつきもしなかった。

ドアが開いたのは4時近くなっていた時のことだった。部屋に入ってきたのは,だいぶ酒の回っていそうな馬丁(ばてい)で,髪はぼさぼさ,(ほお)のひげは伸び放題(ほうだい)で,顔を真っ赤にして,みすぼらしい服の男だった。変装にかけては我が友は見事な能力を発揮することには慣れていたのだが,3回ほど見つめないと,それがほんとうに彼なのか確信が持てなかった。一つうなずいてから彼は寝室に消え,5分して現れた時には,以前のようなきちんとしたツイードの服に着替えていた。手をポケットに突っ込んだまま,暖炉の前で足を伸ばし,しばらく腹の底から笑っていた。

「いやはや,まったく。」そう大声を出すと,喉を詰まらせ,もう一度吹き出して,いすの上でのけぞって,力なくぐったりとしてしまった。

「どうしたんだ。」

「あまりにも,おかしくてね。午前中,僕が何をしていたか,そのあげくどうなったか,まあ想像もできまい。」

「できないさ。アイリーン・アドラー嬢の習慣やら,それに家かな,そんなものを見張ってたんじゃないか。」

「そのとおり。だが,その顛末(てんまつ)たるや尋常(じんじょう)じゃない。だがまあ,聞いてもらおう。今朝,家を出たのが8時を少しまわった頃だ。失業中の馬丁のいでたちでね。馬丁たちってのは,お互い情けも仲間意識もすばらしく強いものなんだ。仲間になれば,知りたいことは何でもわかる。ブライオニー荘はすぐにわかったよ。こじゃれた二階建てのお屋敷で,裏には庭もついているが,道路すれすれに建っている。鍵はチャブ式の錠前(じょうまえ)。右手にあるのが大きな居間。きれいに家具が整えられていて,床まであろうかという大きな窓があるが,ついている鍵は子どもでもあけられそうなばかばかしいくらいのイギリス式のロックだ。裏手は特に目立ったものはないんだが,ただ廊下の窓は馬車置き場の屋根に上がれば手が届きそうだってことくらい。家のまわりを歩いて,あらゆる観点でじっくり調べてみたが,ほかにはべつだん興味をそそるようなものはなかったな。」

 

= 解説 =

  • The landlady ― イギリス英語の landlady は,「下宿屋・パブ・旅館の女主人」。あとで,「ターナー夫人」という名でもう一度登場する。
  • informed me that he had left the house inform O of ~, inform O that S + V の形で使い,「Oに~を知らせる」。
  • shortly after ― この shortly 「すぐに」は,前(left)にかかっているのではなく,後ろの after にかかり,「~の直後に」という意味。soon after も同じ。
  • with the intention of awaiting him ― with the intention of Ving 「Vする意図を持って,Vするつもりで」。
  • however long he might be ― 直訳は,「彼がどんなに長くかかっても」。 however + 形・副 + S (may) + V  「どんなに~ようとも」。 このmight は,~ever の譲歩節で使われるが,あまり意味を持っていない。なくてもよい。
  • for, though it was …. recorded, still, the nature of the case … gave it a character of its own. ― for は「というのは...だから」の等位接続詞。though ~ recorded までは挿入。still (それでも)の後ろの the nature と the exalted station が主語で gave が動詞。
  • the grim and strange features which were associated with the two crimes which I have already recorded ― grim 「恐ろしい,気味が悪い」。feature 「特徴」。be associated with ~ 「~と関係している,~が連想される」。「私がすでに記録した2つの事件」とは,「緋色の研究」(A Study in Scarlet)と「4つの署名」(The Sign of Four)のこと。発表順で言えば,「ボヘミアの醜聞」はこの2つに続く3作め。
  • the nature of the case ― nature 「性質・本質,種類」
  • and the exalted station ― exalted 「身分の高い,誇大な,有頂天の」。 station 「場所,地位」。
  • apart from the nature of the investigation apart from (= aside from) ~ 「~を別にすると」。
  • which my friend had on hand ― ふつうは have ~ on one’s handsで「~を抱え込んでいる,担当している」。
  • there was something in his masterly grasp of a situation, and his keen, incisive reasoning, which … ― つながりは, there was something in A which ~ 「Aの中には~な何かがあった」。つまり,which節はsomethingにかかる。in ~ reasoning は挿入。
  • his masterly grasp of a situation, and his keen, incisive reasoning, which … ― masterly 「達人の,みごとな」。 grasp 「把握,理解」。 incisive 「切れの良い」 < incise 「切開する,切る」。
  • which made it a pleasure to me to study …, and to follow ― which 以下は something にかかり, make it + C + to V の形式目的語構文「VすることをCにする」。ここでは不定詞が2つあり,「study することと,followすることを私にとっての歓びにさせてしまうような何か」ということになる。
部屋に入ってきたのは,だいぶ酒の回っていそうな馬丁で...

部屋に入ってきたのは,だいぶ酒の回っていそうな馬丁で...

  • the quick, subtle methods by which he disentangled the most inextricable mysteries. ― disentangle 「(もつれたものを)解きほぐす」 ↔ entangle 「もつれさせる」。 inextricable 「解決できない,ほどけない」 < extricate 「解放する,逃れさせる」。
  • So accustomed was I to his invariable success that the very possibility of his failing had ceased to enter into my head. ― 全体は so ~ that 構文で,かつ倒置形(動詞がbeでso ~ thatの時,時々倒置が起こる)。普通の語順に並び替えると, I was so accustomed to his invariable success that … となる。be accustomed to ~ 「~に慣れている」。 invariable 「不変の」 < vary 「変わる」。cease to V 「Vしなくなる」。
  • It was close upon four before the door opened close on[upon] ~ 「(時間,年齢,数値が)ほとんど~」(≒ almost)。この close は形容詞。発音は[kloʊs]。
  • a drunken-looking groom, ill-kempt and side-whiskered, with an inflamed face and disreputable clothes, walked into the room. ― 主語が groom,動詞が walked,間は groom を説明する同格的な挿入句。 groom 「馬丁,馬の飼育係」。 ill-kempt = unkempt 「(髪が)とかしていない,ぼさぼさの」 < kempt 「(髪が)きちんと,とかしつけられた」。 side-whiskered 「ほおひげのはえた」。 inflamed 「赤くはれた,興奮した(怒った)」 < flame 「炎」。disreputable 「いかがわしい,みすぼらしい」 < reputable 「りっぱな」。
    ひげは場所によって呼び名が異なる
  • Accustomed as I was to my friend’s amazing powers in the use of disguises C + as + S + V  「・・・だけれども」(= though S+V+C)。SVC以外でも用いることがある。 disguise 「変装,仮装」
  • With a nod he vanished ― nod 「うなずき」。 vanish 「消える」。
  • whence he emerged in five minutes tweed-suited and respectable, as of old. ― whence 「そこから」。ここは関係副詞の非制限用法。 emerge 「現れる」。 in + 時間 「~したら,~後に」。 as of old 「昔みたいに」。
  • Putting his hands into his pockets, ― 分詞構文。
  • he stretched out his legs ― stretch out 「いっぱいに伸ばす」。
  • laughed again until he was obliged to lie back, limp and helpless, in the chair. ― limp and helpless は挿入。 be obliged to V 「Vせざるをえない」。 limp 「だらんとした」(lacking strength or energy)。
  • I am sure you could never guess how I employed my morning, or what I ended by doing. ― could not は「~はずがない」。 employ 「利用する,費やす」。 end by Ving は「Vすることによって終わる」→ 「最後にVする」。ここは,doing の目的語が what。
  • Quite so ― 「そのとおり」。既出。
  • but the sequel was rather unusual. ― sequel 「結果」。
  • in the character of a groom out of work. ― in the character of ~ 「からの身分・地位・肩書きで」。 out of work 「失業した」(= unemployed) で,groom にかかる。
  • There is a wonderful sympathy and freemasonry among horsy men. ― sympathy 「共感・同情」。 freemasonry 「友愛感情」。もちろん,よく秘密結社として扱われるフリーメイソン。freemason が個々の加盟員, freemasonry がその団体のことだが,個々では比喩的に sympathy と似たような意味での身内意識,連帯感のことを言っている。 horsy men は「馬を扱う職業に従事するものたち」くらいの意味。
  • Be one of them, and you will know all that there is to know. ― 命令文, and … = if you ~, … だから,ここは If you are one of them, you will know … となる。 all that there is to know の that は関係代名詞で,直訳すると「知るべきすべての存在するもの」ということ。
  • It is a bijou villa, with a garden at the back, but built out in front right up to the road, two stories. ― bijou [bíːʒuː] はもともとフランス語で「宝石」。英語ではその意味から「宝石のように小さくてきれいな」の意味の形容詞としても使われる。 villa 「別荘,邸宅,お屋敷」。 build out 「増築する,外に張り出して建てる」。 two stories のstorey は「階」(アメリカ英語の綴りでは story)。
  • 現在のチャブ・ブランドの鍵のひとつ

    現在のチャブ・ブランドの鍵のひとつ

  • Chubb lock ― Chubb(チャブ)は,実在するイギリスの鍵メーカーのブランド名。現在もある。 Chubb lock は辞書によると,「こじあけようとするとボルトを動かないように固定する装置がついている錠」(リーダーズ)とある。写真は,現在のChubbブランドの一例。
  • sitting-room ― living room 「居間」は,イギリス英語では sitting room とも言える。
  • well furnished ― furnish 「(家具などを)備え付ける」。ここは過去分詞で sitting-room にかかる。
  • those preposterous English window fasteners which a child could open. ― preposterous 「ばかばかしい,不合理な」( completely unreasonable, especially in a way that is shocking or annoying [OALD])。 fastener 「留め具」。 could は仮定法で,子どもでもやろうと思えば開けられる,ということ。
  • Behind there was nothing remarkable ― 倒置。 Nothing remarkable was behind there. 「その背後には注目すべきものはなかった」。
  • save that the passage window could be reached from the top of the coach-house ― save は前置詞で「~を除いて」(= except)。 except, but, save はどれも同じで,他の前置詞とはちがい that 節を目的語にできる。 reach 「手を伸ばす,~に手が届く」。 coach house 「馬車置き場」。
  • from every point of view, from ~ point of view 「~の視点では」。
  • but without noting anything else of interest. ― without 句は,文修飾的。「~に気づくことなく調べた」→「調べたが,気づかなかった」。 of interest = interesting が anything else にかかっている。

 

 

 

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A Scandal in Bohemia 「ボヘミアの醜聞」 — 10

8月
2009
1
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第1部の最終回です。

事件は,ボヘミア国王が以前,愛人アイリーン・アドラーといっしょに撮った写真を取り戻す,ということ。国王は別の女性と結婚することになり,おこったアイリーンがかつての情事を暴露すると脅している,らしい。

 

  <― 朗読

"To Clotilde Lothman von Saxe-Meningen, second daughter of the King of Scandinavia. You may know the strict principles of her family. She is herself the very soul of delicacy. A shadow of a doubt as to my conduct would bring the matter to an end."

"And Irene Adler?"

"Threatens to send them the photograph. And she will do it. I know that she will do it. You do not know her, but she has a soul of steel. She has the face of the most beautiful of women, and the mind of the most resolute of men. Rather than I should marry another woman, there are no lengths to which she would not go — none."

"You are sure that she has not sent it yet?"

"I am sure."

"And why?"

"Because she has said that she would send it on the day when the betrothal was publicly proclaimed. That will be next Monday."

"Oh, then we have three days yet," said Holmes with a yawn. "That is very fortunate, as I have one or two matters of importance to look into just at present. Your Majesty will, of course, stay in London for the present?"

"Certainly. You will find me at the Langham under the name of the Count Von Kramm."

"Then I shall drop you a line to let you know how we progress."

"Pray do so. I shall be all anxiety."

"Then, as to money?"

"You have carte blanche."

"Absolutely?"

"I tell you that I would give one of the provinces of my kingdom to have that photograph."

"And for present expenses?"

The King took a heavy chamois leather bag from under his cloak and laid it on the table.

"There are three hundred pounds in gold and seven hundred in notes," he said.

Holmes scribbled a receipt upon a sheet of his note-book and handed it to him.

"And Mademoiselle’s address?" he asked.

"Is Briony Lodge, Serpentine Avenue, St. John’s Wood."

Holmes took a note of it. "One other question," said he. "Was the photograph a cabinet?"

"It was."

"Then, good-night, your Majesty, and I trust that we shall soon have some good news for you. And good-night, Watson," he added, as the wheels of the royal brougham rolled down the street. "If you will be good enough to call to-morrow afternoon at three o’clock I should like to chat this little matter over with you."

「相手は,スカンジナビア国王の第二王女,クロティルド・ロトマン・フォン・ザクセ=イメニミゲン姫だ。ご存知かもしれないが,あの家にはきわめて厳格な規律があるのだ。彼女もそれは繊細さを絵に描いたような人で,私の品行に一点でも疑念が生じれば,すべてはご破算になる。」

「で,アイリーン・アドラーは何と?」

「相手の王家に写真を送りつけると脅している。あの女ならやりかねない。そういうことをする女なのだ。君たちは知らないだろうが,あの女は(はがね)の心を持っている。顔立ちは女の中でも飛び抜けて美しいのに,男も歯が立たないような堅い意志を持っている。私がほかの女と結婚しようものなら,どんな手段に出てもおかしくない。どんな手段でもだ。」

「手紙はまだ送られていないのは間違いないのでしょうか?」

「間違いない。」

「どうしてです?」

「婚約が公式に発表になる日に送りつけると,あの女が言ったからだ。発表は今度の月曜ということになっている。」

「では,まだ3日ほどありますね。」と,あくびとともにホームズは言った。「たいへん幸運です。こちらも今すぐ調べておかなくてはいけないだいじな件が一つ二つありますから。陛下はもちろんしばらくロンドンにご滞在ですね。」

「むろん。ランガムホテルに,フォン・クラム伯爵の名で連絡が取れるはずだ。」

「では,進行状況については,お手紙でご連絡いたします。」

「頼む,そうしてくれ。気が気でないのだ。」

「で,費用に関しては?」

「白紙委任ということにしよう。」

「完全な白紙ですか?」

「写真を取り戻すためなら,公国領をいくつかあげてもいいくらいだよ。」

「当座の費用は?」

国王はマントの下から,重そうなシャモア皮の財布を取り出して,それごとテープルの上に置いた。

「金貨で300ポンド,紙幣で700。」

ホームズは領収書を自分の手帳に走り書きして手渡した。

「それから,問題の令嬢の住所は?」と尋ねた。

「セント・ジョンズ・ウッド区サーペンティン通りブライオニー荘だ。」

ホームズはメモを取った。「もうひとつだけ。」と彼は言った。「写真はキャビネ判でしょうか?」

「そのはずだ。」

 

「では陛下,このへんにいたしましょう。近々吉報をお持ちできると思います。ワトソン君も,今日はこのくらいで。」そして,王のブルーム馬車の車輪が通りを遠ざかっていくのを聞きながら付け加えた。「明日の午後3時にここへ来てくれると助かるよ。この件で君とも話し合っておきたいから。」

 

 

  • To Clotilde Lothman von Saxe-Meningen ― 前回の国王の最後のことば,"I am about to be married." からにつながります。 だからこの to は,be married to ~ 「からと結婚する」のtoです。
  • She is herself the very soul of delicacy. ― herself は主語 she と同格。 the very + 名詞 「まさしく~,~そのもの」。 the soul of + 抽象名詞 「~の典型,権化」。
  • A shadow of a doubt as to my conduct would bring the matter to an end. ― a shadow of ~ 「ごくわずかな~」。 shadow of doubt または shadow of a doubt は決まり文句で,しばしば beyon shadow of (a) doubt 「疑いもなく,一点の疑問の余地なく」の意味で使われます。
  • Threatens ― 主語は,Holmes のセリフの Irene Adler。
  • the face of the most beautiful of women, and the mind of the most resolute of men. ― 「女性の中でももっとも美しい女性の顔,男の中でももっとも決断力のある男性の顔」。 of は「~のうちで」, beautiful の後ろにwoman, resolute の後ろにman が省略。
  • Rather than I should marry another woman, there are no lengths to which she would not go — none. ― there are no lengths to which she would not goの部分の go to lengths は「手段をとる」。熟語 go to any lengths to V 「Vするためにはどんなことでもする」で使われる。ここは,「彼女がとらない手段はない」ということになる。Rather than I should のshould は, if や lest 節で使われる法的な価値を持つもの,もしくは,驚き・怒りなどの感情をこめるshould ともとれる。
  • she has said that she would send it on the day when the betrothal was publicly proclaimed. ― would は過去から見た未来を表す。 betrothal 「婚約」, proclaim 「宣言する,公布する」。
  • then we have three days yet ― 肯定文で用いられる yet 。 yet = from now until the period of time mentioned has passed (OALD)「現在から,話題となっている時期が過ぎるまで」 (ex.) I hope to continue for some time yet. 「あとしばらくは続けたい。」
  • as I have one or two matters of importance to look into just at present. ― as は理由のas 「・・・ので」。 matters of importance = important matters。 to look into はmatters にかかる不定詞の形容詞的用法「調査すべき問題」。 at present 「現在,今」。
  • for the present ― for the present 「今のところ,さしあたって」。
  • The_Langham
  • You will find me at the Langham under the name of the Count Von Kramm ― under the name of ~ 「~の名で」。 the Langham は実在する「ランガム・ホテル」。当時世界最大級のホテル。
  • I shall drop you a line drop ~ a line 「~に一筆便りを送る」 line は「短信,短い手紙(=note)」。
  • I shall be all anxietybe all + 抽象名詞 = be very + 形容詞。 be all anxiety = be very anxious。
  • carte blanche ― 「白紙委任状」 英語化しているが,もともとフランス語( carte = card, blanc(he) = white, blank)。
  • I would give one of the provinces of my kingdom to have that photograph. ― 仮定法の文。if 節の意味は to have that photograph に含まれる。「もし・・・のためだったら」。 province 「地方」。
  • シャモア皮

    シャモア皮

  • a heavy chamois leather bag ― chamois leather 「シャモア皮,セーム皮」(シャモアは山羊に似た動物)。
  • for present expenses ― ここでは「当座の費用のために」。謝礼,報酬ではなく,当座の調査,行動に必要な資金のこと。
  • There are three hundred pounds in gold and seven hundred in notes ― note 「紙幣」(= banknote)。これはイギリス英語。アメリカではふつう,bill。ホームズは当座の資金として,1000ポンド手にしてたことになる。『ミステリー・ハンドブック シャーロック・ホームズ』(ディック・ライリー/パム・マカリスター編 日暮雅通監訳 原書房 2000)によると,当時の1ポンドは現在の円に換算すると24000円だということである(訳者が付け加えたものだと思われる)。すると手付け金は2400万円となるのだが...!
  • scribbled ― scribble 「走り書きする,なぐり書きする」。
  • handed it to him ― hand 「手渡す」。
  • Is Briony Lodge, Serpentine Avenue, St. John’s Wood. ― St. John’s Wood はロンドンの中の実在の地域。何でも,「愛人宅を作るにはうってつけの閑静な地区」だそうな。
  • Holmes took a note of ittake note of ~ 「~をメモする」。
  • Was the photograph a cabinet? ― cabinet 「(写真のプリントの)キャビネ判」。この言葉は写真の世界ではよく聞く言葉だが,《小池訳》の原注には,3⅞×5½インチとあり,辞書には6×4インチ(15×10cm)または6½×4½(16.5×10.5cm)とあって,よくわからない。ホームズが写真の大きさにこだわっているのは,あとでタネあかしされるが夫人がふだん持ち歩けるかどうか,ということに関わっている。
  • as the wheels of the royal brougham rolled down the street ― 《時・同時性》を表す as。 brougham 「4輪馬車」(既出)。 roll 「(車などが)進む」。 down は「向こうへ遠ざかっていく」ことを表す副詞。
  • If you will be good enough to call to-morrow afternoon at three o’clock I should like to chat this little matter over with you.― good = kind。call 「訪問する」。 chat over 「おしゃべりする」(自動詞が多いがここは他動詞)。if 節中では,未来を表す時に will を使えない,というルールがあるが,ここの will は未来ではなく,意志を表している(「もしそのつもりがあれば」)。この will をつけることで,「もしよろしかったら」という感じの少していねいな表現になる。

 

 

 

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高校生向け新書 3 《理論社 YA新書 「よりみちパン!セ」》

7月
2009
30
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「よりみちパンセ」シリーズは,ちょっと独特です。

執筆陣も,学者(白川静,養老孟司,小熊英二,小倉千加子など)あり,作家(重松清,田口ランディ,伊藤比呂美)あり,社会的実践者(徳永進,村瀬孝生,湯浅誠)あり,その他,芸人(玉袋筋太郎),右翼活動家(鈴木邦男),エッチ系クリエーター,正体不明(叶恭子)など,ちょっと他では見られないくらいバラエティに富んでいます。

テーマも,学問的なはなしよりも,若い世代の人(中高生が主な対象)の悩み・苦しみに正面からぶつかる内容が多く,恋愛・性・世の中・酒・ドラッグにいたるまで,昔の大人が見たら目をむいちゃいそうな内容を含んでいます。

もちろん,それがあなたになにか大切なものを与えてくれるかは,その筆者とあなた次第でしょう。まとはずれかもしれないし,人生を変えてくれるかもしれません。

 

なお,このシリーズは「新書」と名前がついていますが,ちょっと大きめです。

 

アマゾン: →    理論社YA新書「よりみちパン!セ」

 

1 みんなのなやみ 重松 清 10代の悩みや疑問という「生の声」に、直木賞作家の重松清さんが、「正解」以上にバリエーション豊かな考え方で答えてくれる、心強い相談室。
2 神さまがくれた漢字たち 白川 静 監修 山本史也 著 その昔、人間がいまほど自分中心じゃなかった時代、人間と自然、そして神さまとの豊かな関係から、漢字というものは生まれたのです。漢字を見る目が180度変わる、刺激的な物語。
3 いのちの食べかた 森 達也 魚は切り身で泳いじゃいないって、TVで見て知ってるよ。じゃあ、毎日食べてる大好きな「お肉」は、どんなふうに食卓に届くの? 誰も教えてくれない、食べものといのちの、たいせつな関係。
4 さびしさの授業 伏見憲明 どうしたら自分が「生きられる場所」をみつけていくことができるのか。「世界」と「君」の間に生じる亀裂に対して、君自身のかけがえのないプライドを保ちつづけながら、ひとり向き合っていく方法を提案する。
5 正しい保健体育 みうらじゅん 「どうしてセックスしてはいけないの?」「包茎は手術したほうがいいの?」──若者に伝えるべき本当の「セックス」とは何か? 性教育の旗手みらうじゅんが放つ、童貞時代を生き抜くスタンダード!
6 14歳からの仕事道(しごとみち) 玄田有史 やりたいことがわからなくても大丈夫。まだイメージの定まらない自分の将来にひそむ、「仕事」や「働くこと」そのものへの不安に向き合うための真摯なヒント。
7 不登校、選んだわけじゃないんだぜ! 貴戸理恵+常野雄次郎 「不登校は病気じゃない、自分で選んだんだ。」そう言った瞬間にこぼれ落ちていく本当の気持ちと現実、背負わされていく責任。もと小学校不登校者である若き研究者と、もと明るい不登校エリートがリアルなことばをさぐる。
8 こどものためのドラッグ大全 深見 填 なぜ人間はドラッグに関心を持ってしまうのか。ドラッグと人間の関係の長い歴史、効果の裏の危険性、中毒者たちの自助グループの様子や連絡先などのSOSラインまでを網羅する。
9 ハッピーになれる算数 新井紀子 「数学」と聞いただけで、つい視線が宙に泳ぐキミはおもいきって「算数」までもどろう。そもそものしくみを考えるのって、算数や数学にかぎってだけ必要なことじゃない。キミがハッピーになれるための、秘訣でもあるんだから。
10 ひかりのメリーゴーラウンド 田口ランディ どうして私は「私」なんだろう。私たちはいったいどこから来て、どこへ還ってゆくのだろう。少女が向き合いつづけた、光と影に彩られたある初夏からの一年間──。若い世代へ贈る、著者初めての純愛小説。
11 バカなおとなにならない脳 養老孟司 「最近のワカモノどもの考えてることは理解できん!」……そんなこと、それこそいまどきのバカなおとなたちに言われたくないよ! でも、どうしたらいいんですか、脳ミソの専門家、養老先生。中学生から高校生たちの、迷問、奇問、素朴な疑問に答えます。
12 みんなのなやみ 2 重松 清 子どもたちを主人公とするたくさんの物語を描いてきた作家が、10代の「悩み」をとおして、子どもたちに贈る言葉。第一弾につづく、勇気あふれる相談室。
13 オヤジ国憲法でいこう! しりあがり寿+祖父江慎 わが子よ。そして、いまどきの若者よ。オヤジ呼ばわりされ、家では洗濯物だって別に洗われてしまうワタクシだが、キミたちに伝えたい熱い思いがある。「オジサン」が語る、おかしく、かつ、アナーキーな人生のルール。
14 日本という国 小熊英二 ぼくたちがいま暮らしているのは、「日本」という国。じゃあ、「日本」って、いったいいつ、だれによって作り出されたのか、きみは知っている? みずから 「学ぶ」ことの意味とそのための技法に触れながら、いまにつながる「歴史」を知り、未来を探るために描かれる、刺激的な近代史。
15 気分はもう、裁判長 北尾トロ 「裁判なんて、カンケーないよ」と思っているキミ。でも、いちど気軽に「法廷」をのぞいてみよう。法律をルールにした真剣勝負のやりとりに、世間とはいかに広く、深いものであるかということを、キミは身をもって知るはずだ。
16 いま生きているという冒険 石川直樹 降りかかってきたすべてのことを、自分の五感すべてで引き受けて、堂々と世界と向き合っていけばいい──。最年少で世界七大陸最高峰登頂を達成し、自然だ けをたよりに進む航海術を学び続けるなど、世界を素手で旅する若き<冒険者>による、ことばを超えた出会いへの、やさしいいざない。未発表カラー写真多 数。
17 だれか、ふつうを教えてくれ! 倉本智明 両手が使えなければ口をお皿に近づけて食べる。行儀が悪い! と「ふつう」の人なら思うけど、その「ふつう」とは一体、誰にとっての「ふつう」なんだろう。子どもむけの障害学の一冊。
18 演劇は道具だ 宮沢章夫 「演劇」と聞いただけでなんだかこそばゆい。そう感じるからだを大事にしよう。自分のからだと他人のからだを出会わせて、わくわくするなにかを「いま、ここ」に生み出そう。刺激的な演劇入門。
19 死ぬのは、こわい? 徳永 進 鳥取のホスピス「野の花診療所」を開業する書き手による、いちばんやさしいデス・エデュケーション。こどもの、そして大人にとっても永遠の謎である「死」について考える。
20 男子のための恋愛検定 伏見憲明 たった一人を好きになる、不可思議な心のメカニズムから、セックスにひそむリスクを回避するためのノウハウまで、「恋」がもつ可能性とかけがえのなさを説いた男子のための「恋愛論」。
21 世界を信じるためのメソッド ぼくらの時代のメディア・リテラシー 森 達也 メディアと情報の洪水のなかで、ぼくらはなにを疑い、なにをどう信じ、考えていったらいいんだろう? いまもっとも子どもたちに、若い人たちに、そしてわれわれおとなにとって切実に必要で、もっともビビッドなメディア・リテラシー。
22 コドモであり続けるためのスキル 貴戸理恵 コドモはみんな「一人前のおとな」にならなきゃいけない。……そういわれればなにも言えない私たち。でもちょっと待て! そんなおとなが作り出している世 の中、ホントにそんなにいいもんか? おとなが隠してる、この世の中の仕組みの「公然の秘密」を探りながら、コドモのまま生きるためのスキルを伝授!
23 生き抜くための数学入門 新井紀子 とりあえず公式覚えて数学をやりすごしてるあなた、はっきり言ってやばいです。数学は、わけわかんないこの世界を生きぬくための、ナイフみたいに基本的な 道具。「そもそも、それってなに?」から始めて、リアルな答えを探そう。「数学」というナイフの研ぎ方、使い方を、愛をもって伝授します。
24 男子のための人生のルール 玉袋筋太郎(浅草キッド) ひとは、男に生まれるのではない。男に「なる」のだ──自らのからだやコンプレックスへの向き合い方、人との関係のいちばん基本の姿勢、世間という大海原 へ漕ぎ出していく方法など、自分だけの矜持をもつ本物の「漢(おとこ)」になりたいすべての少年へ満を持しておくる、最強の「人生のルール」。
25 おばあちゃんが、ぼけた。 村瀬孝生 谷川俊太郎氏大推薦の老人通所施設「宅老所よりあい」の若き所長による、笑わずにはいられない、泣かずにはいられない仰天レポートの数々。「ぼけた」お年寄りたちに日々振り回されることで見えてくる、人間の最大限の不思議とどうしようもない魅力。
26 「美しい」ってなんだろう? 美術のすすめ 森村泰昌 美しさ、ってなんだろう? 一見きれいじゃないものも、大したように見えないものも、いつもの見方をちょっと変えれば、すごく美しく見えてくるものがある。新たな美しさの発見と人生の豊かさの関係を、トップアーティストが、身近な形式で特別講義。
27 オンナらしさ入門(笑) 小倉千加子 「女の子って、何でできてる?」お砂糖とスパイスと、素敵なものいろいろでできている。でも、誰がそう決めたの? 私は誰にとっての「甘い」ものなの? 家や学校、世間で経験することになる女の子の困惑と生きがたさをのびやかに笑い飛ばせるよう、フェミニズムがとっておきの勇気ある知恵を伝える。
28 ひとりひとりの味 平松洋子 人間はいろいろだ。もちろんおうちの姿だって、それぞれいろいろ。だから、じつは、全ての人に共通する「おいしい味」なんていうものはないんです。フード・ジャーナリストとして、また稀代のエッセイの名手として絶大な人気を誇る著者がおくる、ひとりひとりの「味覚道」。
29 ひとはみな、ハダカになる。 バクシーシ山下 子どもがセックスを知ることに、眉をひそめる大人がいる。でも、戦争や飢餓や病気とかかわりなく生きることは可能かもしれないけれど、「セックス」とかか わりなく生きていくなんて、不可能なんじゃない? アダルトビデオをめぐる事柄や物語から、ひとがハダカになることをセキララに、かつ、まっすぐに考え る。AV界の鬼才と呼ばれる監督が伝える、世界でいちばん「ふつう」な特殊講義。興味本位で、問題なし!
30 ついていったら、だまされる 多田文明 しつこいセールスや勧誘、はたまた、ポストに入っている身に覚えのない請求書まで、世の中には身近なところにキミをだまそうとする人がいっぱい。「自分だ けは絶対にだいじょうぶ」なんて頭から思い込む前に、どんな危険があるのか、冷静になって知ることがたいせつ。「自ら、あえてだまされにいく」という仰天 の方法でキャッチセールス評論家の名をほしいままにする書き手が、街にあふれるサギやワナのテクニックから自分の身を守る方法を大公開します。
31 あのころ、先生がいた。 伊藤比呂美 初めて会う人、初めて行く場所──そんな「初めて」の印象深さとともに、日々のくりかえしのなかでじんわり、ゆっくり、何かを伝えてくれたり、さよならを して何年もたってからふと大切なことに気づかせてくれるような「出会い」がある。子どものころ、親の次に身近な存在だった「先生」たちの数々の思い出か ら、等身大のおとなの姿と「出会い」のかたちを豊かに描き出す一冊。
32 家を出る日のために 辰巳 渚 「暮らし」とは、生きることそのもの。代々さまざまなかたちで受け継がれてきた「暮らしの技術」を失いつつある私たちが、「いい加減」に、背筋を伸ばして生きていくためのやさしくて新しい技法を、「家事塾」を主宰する著者がおくる。
33 「悪いこと」したら、どうなるの? 藤井誠二+武富健治(マンガ) 悪いことをしたらどうなるの? 身近なことなのに、私たちは「その後」のことをちゃんと知らない。「加害者」「被害者」、それを受け止める「わたし」。少 年犯罪を長年取材するノンフィクション作家・藤井誠二と、教育問題を異色の手法であぶり出したマンガ鈴木先生の作者・武富健治が、全国の少年院や少年 刑務所をまわって拾い上げた現実を描く。子ども自身が「少年犯罪」を考えるために絶対に欲しかった一冊。
34 失敗の愛国心 鈴木邦男 巷でなにかと話題の「愛国心」。あるものへの「心」を数値で計る意味はなんだ? 歴史と書き手みずからの失敗を軸に、ぼくたちの過去/現在/未来について根本的に問いかける一冊。
35 カレーになりたい! 水野仁輔(東京カリ~番長) 寝ても覚めてもカレーカレー! 各メディアで大活躍、カレーに脳みそと全身を侵略された著者による、前代未聞のカレー本。カレーはみんなの気持ちを、そし て人生をハッピーにする最高のスパイスだ! 巻頭と巻末に、びっくり仰天のフルカラーおまけを付し、楽しさ満載でお届けします。
36 続・神さまがくれた漢字たち 古代の音 山本史也 既刊に 続いて、故・白川静の愛弟子による、学校でも家庭でも教えてもらえない、本当の漢字の物語、第2弾! 自然あるいはかたちないもののおとずれから、人間が 謙虚に学んだものとしての「漢字」レッスンに、「おもいッきりイイ!!テレビ」で、みのもんたもゲストの面々も、思わず驚嘆!
37 叶恭子の知のジュエリー12ヵ月 叶 恭子 ゴーイング・マイウェイと自分勝手は、似て非なる最たるもの。みずからの経験を実学とする、人生の硬派としての著者による珠玉の名言の数々が、あなただけ のかけがえのない人生を導き出す。親や学校の先生からは聞くことのできない、徹底したフェアネスと心からのいつくしみの言葉に満ちた、世界一美しい日めく りカレンダー万年版。
38 恋と股間 杉作J太郎 いかなるピンチのときにでも、力強くマイルドな笑みを浮かべよう。「成功とは、人生における異常事態である」と熱く説く杉作氏が、世間に蔓延するま ちがいだらけの情報をなで切りにしつつ、真に男子の血肉となる、ハードボイルドに超絶な「恋愛術」を指南する。これを読めば、キミにも彼女ができる! た ぶん!!
39 建築バカボンド 岡村泰之 「家」づくりは自分を知り、家族を知り、他人を知るための、心楽しいプロジェクトでもあり、壮絶なバトルでもある。つまり家づくりとは、人生そのものなの だ! 当代の人気建築家がさまざまな角度から丁寧に、そしてときに野蛮に指南する、小学生からの「おれんち」「あたしんち」づくり入門。
40 この世でいちばん大事な「カネ」の話 西原理恵子 なぜわれわれは、子どもに「金」の教育ができないのだろう!? カネがなければ一家離散、カネがなければ一家心中。カネがなければ人生、貧しい。これは真 実だ、ああそれなのに。経済学者やカネの地獄を見ないものにはけっして語れない、そんな、カネと労働のリアルをみつめ、人生の根本を哲学する書。
41 だれでも一度は、処女だった。 千木良悠子+辛酸なめ子 それはもうまさにそれぞれ、正解がないのが正解です。とはいえ消せない不安と好奇心……先輩諸氏がつれづれなるままにあなたに語ってくれる、「そのとき」 のおそるべきバリエーションの数々を、2名の女子ががっつりとご案内。「処女」に関する豆知識と、悩めるあなたへのアドバイスも満載!
42 こどものためのお酒入門 山同敦子 お酒は「飲む」「酔う」ためだけのものじゃない。その以前にこそ、知っておきたいお酒の魅力とその偉大さがある。自然と人間とが生み出すそんな「たからも の」の魅力を、あらゆるお酒に精通することで知られる著者が、心を込めてスケッチする、画期的な「未成年向けお酒入門」。
43 童貞の教室 松江哲明+古泉智浩(マンガ) 映画童貞。をプロデユースにて一世を風靡した映画監督が、今度は活字で自身の童貞時代をドキュメンタリーする!? 男子の絶望と希望を描いて右に出る もののない古泉智浩の巻頭マンガとともに、リアル童貞の「疾風怒濤」が持つ意味を、軽やかに、かつ、深く優しく徹底解剖する。
44 阿修羅(あしゅら)のジュエリー 鶴岡真弓 国宝「阿修羅像」は、キラキラでエキゾティックなジュエリーをまとった、天平のファッションリーダーだった! そしてあまりにも有名なこの少年顔の鬼神の装飾には、現代のアクセサリーや携帯ストラップの持つ秘密が隠されていたのです。
45 きみが選んだ死刑のスイッチ 森 達也 ホームルーム/裁判員制度/死刑。この3つに共通する、最大の注意点はなんでしょう?その答えは、この本のなかにあります。手遅れになる前に、ぜひいま、読んでおいてください。マンガ「小学生にもわからない裁判員制度のイロハ」入り。
46 どんとこい,貧困 湯浅誠 日本社会を覆う「貧困」の問題を、困った「だれか」、さぼった「だれか」の自己責任論ですますのはこれで終わりにしようじゃないか。そして、生きて幸福な社会を、いま、みんなの手で確かに作りだそう!派遣村村長が、静かな情熱をもって初めて子どもたちに語る、希望の書。
47 前略、離婚を決めました 綾屋紗月 前略、離婚を決めました。お母さんがどうしてそう決めたのかを、いとしいあなたたち、お父さん、おじいちゃん、おばあちゃん、親戚や職場の人たち、そして私の知らない人たちにきちんと説明したいと思って、これを書き始めました――。「自立」ではなく「ともに生きる」ことの困難さとかけがえのなさを、画期的な書発達障害当事者研究の書き手がおくる。

 

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by rickie | Posted in その他(高校生向け), 学問を知る, 文献リスト | No Comments »

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