ダイエットと英語学習の奇妙な関係

ご多分にもれず,私もまた中年太りであった。もともとチビのくせにデブが加わっては,もはや人生真っ暗,世をはばかって小さくなって生きるか,逆にチビデブで何が悪いと,加齢臭と煙草のヤニの臭いとオヤジギャグをまき散らしながら露悪的中年男を演じきるか,どちらにしてもあまりにみじめな後半生になりそうなので,一念発起してダイエットをはじめたのが4,5年前のことだったか。

ダイエットは2年がかりだった。1年目は9月から12月までで約10kgくらい落とし,翌年の9月までに3kgのリバウンド,9月からまた12月までで8kg減らして,計15kgのダイエットとなった。みごとふつうのチビ復活である。それから今日まで多少の増減を繰り返してはいるがあまり変わっていない。

やってみるとこれが意外なくらいかんたんなことで,今では「自分の体重は自由にコントロールできる」(ホントか?)という自信のようなものさえあるくらいだ。激ヤセすれば,みんな「どうやって痩せたの?」「何ダイエット?」と聞いてくるが,どうやってもこうやってもありゃしない。「入力より出力を増やす」ということだけだ。「エネルギー摂取量を消費量よりも減らす」か,「エネルギー消費量を摂取量よりも増やす」かどちらか(または両方)しかない。ダイエットは足し算と引き算の問題である。ばかばかしいほど当たり前のことだ。いくつかポイントを挙げれば,

  • まず,強固な動機付け(motivation)。「~のためにやせる」という目的がなければ絶対続かないといってよい。恋をするというのがいちばんいい(片思いがベスト)と思うが,これについてはこれ以上書きません!
  • 食事は摂取カロリーを意識すること。簡単なカロリー計算ができるようにしておきたい。
  • 運動には,筋力をつける isometrics 型と,有酸素運動(aerobics) があるが,直接ダイエットに有効なのはもちろんaerobicsで,体力のある人ならジョギング,水泳,私のようなぐうたら人間はウォーキングくらいしかない。aerobicsは20分以上やらないと,蓄積された脂肪を燃焼しないという説が有力だが,そうでもないという説もある。でも歩いているとだんだん歩くのが楽しくなってきて,私の場合1時間半くらいのウォーキングを週に2~3回やっていた。[これでわかると思いますが,食生活が子供中心の家族持ちの人,ウォーキングの時間もとれないクソ忙しい人,アルコールで栄養を補う趣味のある人はダイエットしにくい環境にいます。幸か不幸か(不幸なんでしょうね,きっと),私はどれにも該当しません。]
  • isometricsは,ダイエットに効くわけではないのだが,筋肉をつけるとそれだけで基礎代謝量がかなり増えるので,痩せやすい・太りにくい体になる。ビリーさんがやっていたのはこれですね。女性でも,もともとアスリートの人以外はそんなムキムキにはならないらしいです。
  • 食事を減らすと当然,脂肪・炭水化物といったデブの素だけでなく,筋肉を作る蛋白やビタミン・ミネラルまで不足し,体調を崩してダイエット中止,という羽目になりかねない。これらは意図的に補わなければダメ。
  • ダイエット中には,どんなに頑張ってもピタッと体重が変化しなくなる時期が来る。このメカニズムについては,まだ解明されていないらしい。私は勝手に,ダイエットに体が慣れて,守りに入って基礎代謝を低下させたため,と考えている(科学的データに基づく発言ではありませんよ)。こういうときは基礎代謝を増やすために,蛋白中心に栄養を取って筋力をつけることを考えました。痩せるために太る。もっともらしいでしょ。
  • テレビでやっているようなダイエット法は有効なものもあるのだろうが,信用しないほうが無難である。画面に出てくるモニターは成功例であって,失敗例がどのくらいあったかはあまり触れられない。第一,モニターになった人はそれだけで強いmotivationができるわけだし(成功すれば画面に出る,出れば出演料が入る?),モニター期間中はテレビに出るというだけで,生活習慣も変化しているはずだ。つまり,痩せやすい環境にいることになる。痩せたければモニターになる,というテもあり。
  • 本屋に並んでいる有名人・無名人の「わたしはこれでやせました」的本は一切無視すべきだ。一品ダイエットは科学的根拠に乏しいし,本人はほんとに痩せたとしても本のどこかにちらっと「×× 法をメインに,さらにカロリーを減らし,運動もしました」なんて書いてあったりする。痩せたのはそっちのせいにきまってます。

なんてところだ。

ところが,世の中に広まっているのは,いかに楽をして痩せるかという話ばかりである。「あるある納豆事件」以来,多少下火にはなっているが,今でも本屋には「たったこれだけで2週間で激ヤセ」的な本が並んでいる。なぜか?もちろん,誰も苦労したくないからである。苦労しないで痩せるなんてありえない,とわかっているのに,そう主張する人が出てくると,つい「ひょっとして」と思ってしまうのが人の常である。本を出す方もみんな疑っていることが分かっているから,タイトルに全力投球する。みんなみごとなタイトルばかりだ。

 

さて,やっと英語学習の話なのだが,もうどういう話になるのかミエミエですよね。ミエミエなのであまり長々述べるのはやめにします。

 

英語学習とダイエットが似ているというのは,オリジナルな意見でも何でもない。ダイエット本と英語学習本は,何から何までそっくりである。中身なんか関係ない,タイトルがすべて,という作りもまったく同じ。ダイエット本があやしげな栄養科学を引き合いに出すのに対し,英語本は脳科学(らしきもの)を持ち出して,いかに楽して効果が上がるかを力説している。

いわく,「聞くだけで,どうとかこうとか」「英語脳を,なんたらかんたら」。あげくは,「英語は絶対勉強するな」なんて本が,勉強するなと言ってるわりに何冊ものシリーズで出てい・・・・たような気がする。出てましたよね,いませんでしたっけ?わかんない。

みんな楽に外国語が身に付くわけがないというのは知っているはずです。新しい英語学習本が次から次に出版されるのは,以前の本に効果がなかった証拠だということも知っているはず。知っているのに手を出してしまう。なぜなんでしょう?

それは結局,英語(外国語)ができる,ということについて明確なイメージや概念をみんなが持っていない,少なくとも一般の人々に共有されていないということが根本的な原因だと思います。英語ができるということはどういうことなのか,どういうことではないのか,このへんをはっきりさせれば誤解や妄信は少なくなるのではないかと思うのですが,つづきはまた今度,ということで・・・

 

書きながら,英語学習本と「株の儲け方」本もよく似ていることに気づいた。次はこれを書こうかな?でも,論旨はおんなじになっちゃいそうですね。

All the book titles cited in this article are fictitious. Any resemblance to real books is purely coincidental.

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