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大学入試の英文の出典 ― どこから採られているか? <4>

6月
2009
18
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2007年度と2008年度の大学入試英文のうち,その出典が英語書籍からのものをピックアップしてみます。

まず,この2年で,2大学(2学部)以上で出題されている作家を挙げてみましょう。人名の後の数字がこの2年間の出題数。出題数2 というのが多いから,もっとデータを増やせば大きく変わってくるはずだが,出典を明示していない大学は今でも多いし,数年前だとさらに少ないので今後に期待するしかない。

 

アル・ゴア (Al Gore)   [4]  ご存知,合衆国前副大統領。ノーベル平和賞受賞者(2007年)。

"An Inconvenient Truth" 「不都合な真実」 からの出題が,北九州市立大,大阪府立大,長崎大の国公立3大学。別のゴアの文章からの出題が関東学院。わたしも持っているが,読んでない!

 

アンソニー・ギデンズ (Anthony Giddens) [4]  イギリスの社会学者。ブレア政権のブレーンでもあった。出題はすべて,"Sociology" から。翻訳もされている,代表的な社会学の「教科書」。慶應・商,お茶の水,新潟国際情報,東京農工(慶應,農工は第5版,お茶大は第4版,新潟国際は第2版)。新潟国際情報で出題しているのと同じ箇所を,わたしは20年くらい前に模試の問題として新作した記憶があって,ちょっとなつかしい。

 

デール・カーネギー Dale Carnegie [3] 大富豪のカーネギーとは別人(だよね?)。出題は "How to Stop Worrying and Start Living" (邦題:「道は開ける」)が2題(岐阜,福井),"How to Enjoy Your Life and Your Job"(「人生論」)が1題(帝京)。

このカーネギーもそうだが,ここに挙げたものの中には,Self-Help ものが多いような気がします。大学入試の英文の傾向とまでは言えないのですが,英語自体がかんたんで読みやすく,内容に専門知識がいらず,たいして知的関心がない若者にも取っつきやすいということが理由なのかどうなのか,安っぽい(失礼!)人生論や処世訓話のたぐいに出くわすことがあります。もちろん昔の入試にだってそのテのものはありましたが,昔のは,イギリス人のひねくれた人生観をこねくり回した文章で綴る式の,今風に言えばヘタレインテリ向け人生論でした(ラッセルとかモームとかリンドとか)。それがアメリカの一般大衆向け処世術に変わったということでしょうか。

 

デイビッド・クリスタル David Crystal [5] イギリスの大御所言語学者。一般向けの著作も多く,英語学を中心に言語に関わる様々な問題について発言している(インターネットの言語とか言語の死滅とか方言とか)。5題中3題は"How Language Works" からの出題(お茶の水,福島県立医科大,山形)。このうち,お茶の水と福島県医は同じ箇所からの出題。その他は滋賀と上智。これは読んだ。

 

デボラ・タネン Deborah Tannen [7] アメリカの社会言語学者。言語における性差に関する問題を扱うことが多い。エッセイ風で読みやすく,人気作家といってもいいかも。"You Just Can’t Understand" (「すれ違う女と男」)が2題,"That’s Not What I Meant!" が3題。持ってるけど読んでないな。

 

ハル・アーバン Hal Urban [2] 元教師のエッセイストらしい。"Life’s Greatest Lessons"(「心の癖」を変える20の法則)から,山口大と鹿児島大で出題。これも Self-Help もの。2006年には鳥取でも出題。

 

ジャック・キャンフィールド Jack Canfield [2] アメリカに "Chicken Soup"シリーズという一連の本があって,これはいろんな人から集めた「ちょっといい話」(実話)を本にしたものです。"Chicken Soup for the Soul" から始まって,10代むけやら教師向けやら何やらかんやら,シリーズはすでに100冊以上出ています。一冊も読んでませんが。日本版も「こころのチキンスープ―愛の奇跡の物語」以降数十冊翻訳されているようです。Jack Canfield はこのシリーズの編者。一編一編が短く,入試向けに使いやすいのでしょう。数もある(1冊100話くらい×100)からネタ切れしにくいし。Jack Canfield 編を明示した問題が2題(上智,奈良教育)で,それ以外にこのシリーズをネタ元の文章が慶應,佐賀,相愛などで使われています。

 

ジェシカ・ウィリアムズ Jessica Williams [2] 音楽をやっているジェシカ・ウィリアムズとは別人(だと思う)。"50 Facts That Should Change the World"(「世界を見る目が変わる50の事実」)という本の著者で,出題もここから(神戸,名古屋市立)。現代という時代の問題点を50の事実を通して切開しようという啓蒙書。「日本女性の平均寿命は84歳,ボツワナ人の平均寿命は39歳」とか,「タイガー・ウッズが帽子をかぶって得るスポンサー料は,1日あたり5万5000ドル。その帽子を作る工場労働者の年収の38年分」とか。うーん。ウッズがもらいすぎというべきか,ウッズすげえと讃えるべきか。

 

ケイト・フォックス Kate Fox [2] 人類学者。出題は "Watching the English: The Hidden Rules of English" (「イギリス人ウォッチング―その行動に潜むコードを読み解く」)から。イギリス人の国民性についての議論。一橋と東京外国語の2007年度の問題。

 

ケイ・ヘザリ Kay Hetherly [3] 日本に在住し大学で教えている先生。NHKラジオの「英会話」のテキストに連載した英文をまとめた本が"Kitchen Table Talk", "American Pie", "Tokyo Wonderland" などで,"Kitchen Table Talk"が滋賀で,"Tokyo Wonderland"が奈良県立と山形で出題。

 

レオナード・サックス Leonard Sax [2] アメリカの医師・心理学者。出題は"Why Gender Matters" (「男の子の脳、女の子の脳―こんなにちがう見え方、聞こえ方、学び方」)から。子どもの性差と教育のあり方がテーマ。明治学院と熊本県立で出題。

 

ルイス・コープランド Lewis Copeland [2] 高校レベルの全教科を教科書的に記述した"High School Subjects Self Taught"という本の編者。この本は翻訳もなく,ハードカバーで全4巻。これは持っていますが,ぶ厚いし,ぶこつな装丁。まあ教科書的教科書です。新刊としては見当たらない。アメリカのアマゾンで入手可。

 

リサ・ベルキン Lisa Belkin [2] この人は"Tales from the TIMES"という本の編者。New York Times が一般の人から集めた実話をまとめたもの。副題が "Real-life Stories to Make You Think, Wonder, and Smile, from the Pages of the New York Times"とある。「ちょっといい話」系のようです。翻訳はなさそう。杏林,福岡教育。

 

マルコム・グラッドウェル Malcolm Gladwell [2] アメリカ在住のライター。"Blink ― The Power of Thinking Without Thinking" (「第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい」)から横浜国立とノートルダム清心で出題。これまたセルフヘルプ系の本のようですね。

マイケル・ルモニック Michael Lemonick [2] Time誌の科学ライター。科学ネタということになりますが,書籍名は不明。信州と富山で出題。

 

ポール・オースター Paul Auster [5] いわずとしれたアメリカの小説家ですが,実は出題されている5題中4題はオースターの小説ではなく,オースターが編集した本から。"I Thought My Father Was God"という題名の本と"True Tales of American Life" という題名の本がありますが,同じ本のようです。NPRというラジオ局が集めた実話集。上の"Tales from the TIMES"や"Chicken Soup"シリーズと同工異曲ということになります。"Chicken Soup"は量で,"Tales from the TIMES"はNew York Timesの権威で,そしてこれはPaul Austerの名前で勝負しています。日本の入試ではオースターの勝ち。出版界でもそうかな。新潮文庫になっています(もちろん柴田元幸訳)し,英語対訳朗読CD付きバージョンもあります。ただし,日本版は5巻に分冊し,タイトルは「ナショナル・ストーリー・プロジェクト」です。これはNPRのラジオ番組の時の企画名。いくつか読みましたが,ホントかよって話が多いような気が。

 

レイチェル・カーソン Rachel Carson [2] 誰も環境問題なんか気にしていなかった頃に,はじめてテーマとして取り上げ普及させた人として有名ですね。入試でも何度も取り上げられましたが,いまだに出ています。だいぶ減りましたが。"Silent Spring"(「沈黙の春」)が名城,"The Sense of Wonder"(「センス・オブ・ワンダー」)が宇都宮。

 

リチャード・カールソン Richard Carlson [2] 心理学者らしい。"Don’t Sweat the Small Stuff"シリーズ(「小さいことにくよくよするな!」シリーズ)。大妻と島根。ったく,セルフ・ヘルプもの好きですね。ちょっと宗教っぽくないですか?

 

サイモン・シン Simon Singh [2] 科学ライターとしてはいま一番人気かも。"The Code Book"(「暗号解読」)から防衛大と別のが神戸大で出題。

 

鈴木孝夫 Takao Suzuki [2] 日本の言語学者。ベストセラーでもあり,現代文入試でも出題されたことがある岩波新書の「ことばと文化」を英訳した"Words in Context"からの出題。慶應・看護と九州女子。日本語の英訳からの出題は多くはないが,他に養老孟司「バカの壁」や小熊英二なんてのもあります。

 

その他で気になるのは,Oxford UP から出ている Very Short Introduction シリーズからの出題。日本の新書(昔の学術志向の)やク・セ・ジュ新書みたいな感じのシリーズで,岩波から翻訳中です。出題は,"Journalism" (東京学芸),"History"(明治学院),"Globalisation"(上智),"Global Warming"(奈良県立),"Philosophy of Science"(慶應・医 以前には早稲田・政経も)なんてところです。

 

 

 

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by rickie | Posted in その他(高校生向け), 教育 | No Comments »

大学入試の英文の出典 ― どこから採られているか? <3>

6月
2009
16
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前回は英語の新聞・雑誌からの出題を扱いましたが,3回目の今回は,英語の書籍から大学入試問題に使われているものを取り上げます。

そもそも書籍に限らず,大学入試に使える英文はほんとうはかなり限られています。大学側が問題に出したい「ポイント」を含んでいなければなりませんが,といって専門的すぎる内容のものは使えません。また,受験生の語彙はどんな優秀な生徒でも現実の英語で使われる語彙に比べればごくわずかでしかなく,注をつけるにしても何十もの中で問題用紙を埋め尽くすわけにもいきません。そして量的にも他の問題や解答時間との兼ね合いで全文が掲載できないのがふつうです。ポイント,内容,量,語彙の難度などを勘案した上で出題文を選択するわけですが,そんなおあつらえ向きなものがごろごろころがっているはずものなく,したがっていきおい,

  1. 原文を大幅に改変(あちこちカットする,語彙を入れ替えるなど)して出題する
  2. 他大学で過去に出題された英文とバッティングしてしまう(いわゆる頻出長文)
  3. 他大学で過去に出題された英文を意図的に使う(いわゆる過去問再利用)

2 の頻出長文は,10年以上前に頻出長文を集めた問題集などがあちこちで出版され流行しました。そのせいか,当時取り上げられた頻出長文が今出題されることはかなり減りました。

3 の過去問再利用は,全体としては増えているようなのですが,英語に限ってはそれほど多くないのかもしれません(「入試過去問題活用宣言」のページを参照)。

というわけで,現在の主流は 1 の原文改変です。どのように改変されるのかについては,そのうち取り上げてみたいと思っています。

 

新たに入試に使える英文を探して,それに多少手を入れて出題するとしても,出題者が目を通せる英文の量も限られていて,出題に偏りが出たり,出題者に人気の英文なんてものが自然に見えてくることもあります。

 

あまり専門的なものは使えない,と先ほど言いましたが,これには例外があって,医学部・薬学部では比較的医学,薬学的な内容の英文が使われる傾向があります。一般には,たとえば文学部で自然科学,理工学部で文学論を出題することだってあるわけなのですが,医学部・薬学部では,さすがにあまりに専門に深入りしたものは出せないにしても,その学問に関係した内容(生物学の話題,医療倫理,病気や患者についての一般的話題など)を出すことにためらいはないようです。それにつづくのは,教育学部,看護学部と言ったところでしょうか。

 

「中堅大学」という呼び方が受験界には存在していて,何のことはない,偏差値から見た難易度がMARCH(ないしMARCH相当の大学)よりも下の大学のことです。なんだかなあ,という呼び名ですが,まあそれを使っておくと,「中堅大学」では大学生や一般向けのリーディング用のテキストから出題している場合がままあります。2008年では,桜美林,国士舘,関東学院,中部大学などに見られます。

別にいけないこと,非難されるようなことではありません。上で述べた入試問題に使える条件の厳しさを考えれば,ノン・ネイティブの読解力養成用に書かれた(つまり,もともとその条件を考慮した上で書かれた)英文を集めたテキストは,ある意味でうってつけなわけですが,「中堅大学」より上のレベルの大学ではあまり使われない傾向があります(2008年では広島大学くらいか?)。

  • Timed Readings (Glencoe/McGraw-Hill)
  • The Speed Reading Book (BBC)
  • Weaving it Together (Heinle & Heinle)
  • Reading Advantage (Heinle)
  • Reading Power (Longman)

などのシリーズが使われています。シリーズもの以外の単発ものや,大学教養の語学の授業で使われる南雲堂,成美堂などのテキストも見当たります。

 

次回は,どんな作家が使われているかを見てみます。

 

 

 

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by rickie | Posted in その他(高校生向け), 教育 | No Comments »

大学入試の英文の出典 ― どこから採られているか? <2>

6月
2009
9
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大学入試で使われる英文の出典が明記されていても,筆者名やタイトルだけという場合もあって,その先を特定するのは面倒です。特に最近は,新聞・雑誌はネット上にも同じものがあったりするので分類しにくいのですが,一応以下のようになります。(以下のデータはすべて2008年度入試)

本 (推定) 234
新聞 65
雑誌 70
その他のメディア 18

 

2008年度(昨年度)の入試英文のうち,長文で出典が表示されているのが408題(26.7%)ですが,重複分を除いた実数では397題で,書籍を元にしていると思われるのが全体の60%,ネットなどのメディアが5%,残りが新聞・雑誌で,この二つはほぼ同じくらいの比率になります。

 

やはり書籍が多いのですが,本については次回に回すことにして,今回は新聞・雑誌を見てみます。

 おもな新聞 (数字は,出題数)

International Herald Tribune 4
The Daily Yomiuri (Web版を含む) 16
The Guardian (Weeklyを含む) 3
The Japan Times 10
The Japan Times Weekly 4
The New York Times 6
The Times (Sunday版・Web版を含む) 5
USA Today 2
週刊ST (Web版を含む) 7

新聞でいちばん多いのが, The Daily Yomiuri (16) ,それにつづくのが The Japan Times (Weeklyを含めると14),次いで 週刊ST で,やはり日本の英字新聞が上位に来ています。大学入試の長文では原文を一部書き換えることが当たり前のように行われています。英米メディアの記事を出題する場合,原文と照らし合わせてみるとズタズタになっていることも少なくありません。日本で発行された,日本について日本人が書いた英字新聞ならば,書き換え箇所が少なくてすむのかもしれません。

 

出題された記事の発行月を見てみると,いちばん遅くても10月です。大学入試は11月前にはだいたいできあがっている,と推測できます。使われているのは,前年の3月~8月の記事が中心,ということになるでしょう。このグラフに載せてないのは,月日まで公開していないデータです。2006年の記事とだけ書いてあるものが2題,2007年が4題あります。

 

 

おもな雑誌 (数字は,出題数)

Newsweek (Web版を含む) 10
Reader’s Digest 3
Scientific American: Mind (Web版を含む) 3
The Economist 4
The New Yorker 2
Time (Web版を含む) 14

雑誌は Time と Newsweek が飛び抜けています。まあ,誰もが予想することですから,意外性はありません。出題されている雑誌も,左にあげたもの以外多岐にわたっていて,新聞よりもばらつきが大きくなっていますが,これも当然と言えるでしょう。

 

発行月も新聞よりばらついています。新聞と同様,前年の3月の数ヶ月がピーク(雑誌の実際の発行日は,たとえば10月号は9月に出るといったように早くなる)ですが,それ以前のものもけっこう多いようです。出題者がふつうに雑誌を読んでいて,「あっ,これ使えるな」と思ってストックしておいたものでしょう。それに対し,前年3月以降の記事は出題委員になってから問題に使える記事を探したものなのかもしれません。

 

 

その他 (数字は,出題数)

BBC News 4
VOA (Special Englishを含む) 4

「その他」のものとしてはネットが多いのが特徴で,左のBBC とVOAはいずれも英米の放送局ですが,どちらも英語学習者用の,単語の難易度を比較的押さえたニュース記事を配信するページも持っています。

ネット記事からの出題は今後も増えていくでしょう。すでに英語版Wikipediaからの出題もあります。

 

 

 

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by rickie | Posted in その他(高校生向け), 教育 | No Comments »

大学入試の英文の出典 ― どこから採られているか? <1>

6月
2009
4
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ここ数年,大学入試で使われる英文に出典が明記されているケースが増えています。

 

すべての大学・学部のすべての問題を集められるわけではないし,どんな問題を長文問題とみなすかとか,そもそもデータを集計しにくいのですが,大ざっぱなデータだけでも趨勢はわかります。たとえば2008年の全国主要大学の英語入試のうち,長文問題は1529題で,そのうち408題(≒26.2%)に何らかの形で出典が示されています。[1]

5年前の2003年では,英文総数約1350題に対し,出典の明示は約80題(≒6%)。2005年から2008年までのデータは以下のようになります。[2]

 

年度 英文数 出典明示数 割合
2005 1345 57 4.2%
2006 1318 178 13.5%
2007 1508 244 16.2%
2008 1529 408 26.7%

 

比率から言えば,まだまだ明示している問題は少ないと言っていいでしょうが,目に見えて増えているのは間違いのないところです。おそらくこの傾向はしばらく続くと思われます。

英文総数のうち75%が私立ですが,出典明示数は私立―国公立で大差ありません。ということは国公立の明示比率が高いことになります。といっても,センターや東大のように過去一度も出典を明示したことがないところもあれば,上智のようにほぼすべての長文に出典が記載されている大学もあります。

表示の仕方もさまざまです。タイトルや筆者はもちろんページまで記載している大学もあれば,タイトルのみ,筆者のみ(立命館のように)というところもあります。タイトルが問題のヒントになってしまう場合や,タイトルを答えさせる問題もあるわけですから,こまかく記載すればよいというものでもありません。

 

こうした傾向は,むろん近年の著作権・知的財産権重視の風潮を背景にしたものでしょう。入試問題にも著作権保護がなされるべきだという考えは,現代文・現代国語では当たり前になっています。著作権料を払っていない予備校が訴訟の対象となる事例もあります。問題集や予備校の場合は,いわゆる「二次利用」なので,大学が出題する問題文の著作権とは扱いがやや異なるようですし,まして英文の場合,どのような扱いがされているのかよくわかりません。二次利用である「入試問題正解」(通称『電話帳』)などでは,著作権料の支払いが行われる場合もあるらしいですし,著作権に対する配慮から問題文を掲載しなかったり,というケースもあります。特に国内に版権がある「英字新聞」からの出題に多く見られます。

 

このシリーズで採り上げたいのは,著作権の問題ではなく,入試はどこから採られているのかということです。以下で,より具体的に考えてみたいと思います。

 

 

 


  1. データはEXAM 2000~2008(JC教育研究所)にもとづく分析。以下同じ。最新の2009年のデータは未集計。 [▲ 戻る]
  2. 集計方法は,各年度の<長文読解力>問題の問題文中に「出典」「Adapted from」が含まれているか,で調査した。したがって完全ではない。 [▲ 戻る]

 

 

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by rickie | Posted in その他(高校生向け), 教育 | No Comments »

「同じくらい~」(ONE POINT at a time : Apr. 05)

4月
2009
5
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= いろいろな as (おまけ) 基本レベル = important

as ~ as … 「・・・と同じくらい~」。

誰でも知っている。以前にも取り上げたことがあるような気がする。でも,最近かなり英語のできる生徒の質問を受けて,「あっ,そういう誤解をしていたんだ」と思い知らされることがあったので,繰り返しになるかもしれないけれど,取り上げることにする。

 

as ~ as …  というのは中学校で習うレベルのポイント。誰でも知っているのに,でも案外まちがえる。なぜか。

おそらくas ~ as … 全体をワンセットの公式として覚えているが,全体で覚えているためにかえって前後とのつながりを見失ってしまうのだと思う。同じワンセットの公式でも so ~ that はあまり間違えない。so はこれ以外にもよく出てくる副詞だし,that も接続詞としてはポピュラーなのでそれぞれの働きが見えやすい。

生徒の疑問が出たのは,こんな感じの文だ。

 

Those who only care about the speed of reading have as little idea of what reading is all about as participants in a speed-eating contest can tell what the food tastes like.

「読書スピードしか気にしない人が読書の何たるかがわかっていないのは,早食い競争の参加者がその食べ物の味がどんなものなのかがわからないのと同様である。」

 

結論から先に言うと,as ~ as … において重要なのは,2つの as そのものではなく, 2つの as にはさまれた部分がどのような働きをしているのかだ。

上の文では,Those who … have little idea of ~ 「・・・の人々は~がほとんどわかっていない」が中心部で,「どのくらいわかっていないかというと・・・・・と同じくらいだ」と言いたいわけだ。二つの as にはさまれた little idea が have の目的語になっている。それを as ~ as … で囲うことによって,「・・・と同じくらい」と表現している。as ~ as … に気を取られて,中心が little idea が目的語であることを見失ってはいけない。

何度か触れたことだが,as ~ as … の1つめの as は「同じくらい」という意味の副詞,2つめの as は「・・・と」に当たる接続詞(時に関係代名詞)だ。「・・・と」の部分が不要なら(例:「彼も同じくらいの年齢だ」),2つめの as 以下を省略して,He is as tall. と言える。

中心部から逆に組み上げていくと,

He is tall. 「彼は背が高い」 → He is as tall. 「彼は同じくらい背が高い」 → He is as tall as she. 「彼は彼女と同じくらい背が高い」

となる。

 

as ~ as … 構文となんとなく似ていると思ってしまうかもしれない構文に,As ….. , so ~ 「・・・と同じように,~」という構文があるが,ぜんぜん違うものだ。この as は接続詞なので,後ろには S + V の完全文が来る。「同じくらい」という副詞の as は直後に必ず 形容詞・副詞(相当語句)が来る。

 

誤解は,文中の働きを考えずに,ただなんとなく日本語訳だけを覚えていることから生じる。「と同じように」と「同じくらい」は,日本語でもぜんぜん違うのだけれど,「同じ」に気を取られるとなんか似てるのかな,と思ってしまう。品詞に気をつける習慣をつけたい。

 

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by rickie | Posted in 英語ワンポイント | No Comments »

意味がたくさんありすぎる! その2 (ONE POINT at a time : Mar. 24)

3月
2009
24
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= いろいろな as (その2)=

前回につづいて,as のはなし。前回は総論と接続詞のasで終わりました。

ということは,関係代名詞,前置詞,副詞 が残っています。

 

関係代名詞の as

関係代名詞の as は大きく分けて2つに別れますが,2つめはあまり品詞を気にしなくてもいいもの,1つめはそこそこだいじなものです。繰り返しますが,関係代名詞かどうかの識別は,《関係代名詞+不完全文》になっているかどうかです。つまり,as の後ろに動詞があって as節を作っているのに SかOかCかのどれかが欠けていれば,そのasは関係代名詞[1] だということです。

 

1. 「・・・ことだが」 (主節に対するコメント付加)important

as is often the case with ~ 「~にはよくあることだが」 という表現はよく入試問題で使われる熟語です。これをすでに知っていれば話はかんたん。この as が関係代名詞です。as is well known 「よく知られていることだが」, as was expected 「予想されていたことだが」などのように, as + 不完全文(上の3つではすべて主語が欠けている。つまり as が主語の働きをしている。)になっています。訳は「・・・ことだが」という形で問題に出てくることが多いですが,「・・・ように」と訳したって何の問題もありません。

As was expected, he has turned out to be a skillful surgeon. 予想されていたことだが(予想どおり),彼は有能な外科医になった。

この例文のように,関係代名詞は主節(ここでは he has 以下)の中に含まれず,主節の前や後ろに置かれ,多くの場合カンマで区切られています。

関係代名詞はふつう先行詞があるとされていますが,この場合の先行詞は何でしょうか?ふつう,「この種の関係代名詞の as の先行詞は,主節の意味内容である」ということになっています。つまりこの as はwas expected の主語の働きなのですが,じゃあ「何が予想されていたのか」というと,「彼が有能な外科医になること」が予想されていたわけですから,その「彼が有能な外科医になること」=主節の内容ということになります。わかりにくいですか?当然です。たいして重要なことではありません(こういうのを出題する大学もあるのですが,それは問題が悪い!)。理解してほしいのは,この as 節は主節にコメントを付け加えるためのものだ,ということだけです。「彼は有能な外科医になったよね,まあそれって予想はされていたことだけどさ。」

 

2. 「・・・と」「・・・ような」 (the same ~ as, such ~ as, as ~ as )

the same A as …. 「….と同じA」  such A as …. 「….のようなA」

as ~ as ….  「….と同じくらい~」 の as を関係代名詞と呼ぶことがあります。as の後ろが不完全文の場合です。以上,終わり。((これらの as はもともとは接続詞(as ~ as や the same ~ as の場合)だったり,前置詞だったりします。後ろに動詞があるのに不完全文だと,関係代名詞としか呼びようがないのでそう呼んでいるということです。でもそれは,品詞分類するとどうなるか,という問題であって,意味を理解しておけばいいだけです。))

 

前置詞の as

後ろに動詞がなく, as + 名詞 になっている時は前置詞の as で,ほとんどの場合 「~として」と訳します。他の as との識別さえつけば,いちばん簡単です。

 

副詞の as

as + 形容詞 or 副詞 がセットになっていれば,副詞の as です。意味は「同じくらい~」。 as ~ as … 構文のひとつめの as がこれです。ふたつ目の as 以下は場合によっては省略可能です。

You know he is 185 cm, but she is as tall. 「彼女も同じくらいの身長だよ。」

 

 

問題 1

次の文の as と同じ用法のものをイ~ホから一つ選べ。(獨協大)
Do in Rome as the Romans do.
イ. I found the same watch as he had often shown me.
ロ. As is often the case with him, he is absent today.
ハ. She told us stories, as we walked along.
ニ. The girl’s father allowed her to do as she liked.
ホ. This is the English language as it is spoken in London.

← 【 答 1 】

 

問題 2

下線部(7)と同じ用法の’as’を次の(イ)~(ニ)の中から1つ選び,その記号を解答欄にマークしなさい。(学習院)

Although Rodin’s works were criticized when he first began working, (7)as time went on French people began to like his statues very much.
(イ)  As she had been up since 3 am, she was very tired.
(ロ)  As the sun rose, the fog gradually disappeared.
(ハ)  I am returning your letter as requested.
(ニ)  We were sitting, as I remember, in an Italian restaurant.

← 【 答 2 】

 

問題 3

下線部(ア)と(イ)のそれぞれの"as"と同じ用法の"as"を含む文を1~5の中から1つずつ選びなさい。 (慶應大・理工 改題)

The term "speculation" has acquired a *pejorative meaning among some scientists. Describing someone’s ideas (ア)as "mere speculation" is often considered insulting.

*pejorative:軽蔑的な

———————————————————

The most basic questions about the human mind ― How do we recognize faces? Why do we cry? Why do we laugh? Why do we dream? Why do we enjoy music and art? ― remain unanswered, (イ)as does the really big question: What is consciousness?

 

  1. She is looking for a man who accepts her as she is.
  2. We had completely misjudged the situation, as we later discovered.
  3. Try as she would, she could never bring back to mind a word of what he had said.
  4. We regard him as the best doctor here.
  5. I can speak English as well.

← 【 答 3 】

 


  1. 「関係代名詞」ということばについて: 「関係代名詞」を定義すると代名詞でありながら,「関係」させる働きも持つもの,ということです。「代名詞」は,文中で必ず主語か目的語(前置詞の目的語も含む)か補語になるという性質を持ちます。また「関係させる」というのはその部分だけで独立した文にはなっておらず,前や後ろとつながっている,ということです。かんたんな 例を挙げて見ましょう。 
    The book that I read yesterday is "Kokoro." 「私が昨日読んだ本は『こころ』です。 」
    The people who didn’t go there yesterday missed a fantastic experience.  「昨日あそこにいかなかった人は,すばらしい経験をのがしてしまったことになる。」
    という文において考えると,that I read yesterday やwho didn’t go there yesterday だけでは文になっていません。前のthe bookと関係づけられています。しかも,that 自体はその節の動詞readの目的語にもなっています。そして,that 自体がreadの目的語なのだから,thatの後ろでは目的語が欠けている,つまり不完全文になっているわけです。
    目的語などになる(つまり名詞・代名詞の働きを持つ)+前後と関係させる働きを持つ=関係代名詞 なわけです。 [▲ 戻る]

 

 

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by rickie | Posted in 英語ワンポイント | No Comments »

意味がたくさんありすぎる! (ONE POINT at a time : Mar. 19)

3月
2009
19
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= いろいろな as (その1)=

今回は,標準的高校生レベルです。つまり,あんまりむずかしくない(ハズ)。

いろんなところで見かける as ですが,いちばん基本レベルとしては,その as の品詞は何かを見分けられるようにしてください。主なものは,1. 従位接続詞 2. 前置詞 3. 関係代名詞 4. 副詞 の4つです。1 と 3 は,その中でさらにいくつかに分類できますが,その前にこの4つのどれなのかを指摘できるようにすることが先決です。意味から考えるのではなく,どのように前後とつながっているかで品詞を判断します。

  1. 従位接続詞の as ― 後ろには, S + V の完全な文が来ます。
  2. 関係代名詞の as ― 後ろには不完全な文が来ます。
  3. 前置詞の as ― 後ろには,名詞が来ます。
  4. 副詞の as ― 後ろには,形容詞か副詞が来ます。

そして,それぞれの意味は,

A. 従位接続詞のばあい

  1. 「・・・ので」 (理由)
  2. 「・・・時,・・・すると,・・・しながら」 (時・同時性)
  3. 「・・・ように,・・・と同じように」 (様態)
  4. 「・・・するにつれて」 (比例)
  5. 「・・・と」 (as ~ as の後ろのas)
  6. 「・・・けれども」 (譲歩)
  7. 「・・・限りでの」(名詞の限定)

B. 関係代名詞のばあい

  1. 「・・・ことだが」 (主節に対するコメント追加)
  2. 「・・・と」(the same ~ as) 「・・・ような」 (such ~ as)

C. 前置詞のばあい

  • 「・・・として」

D. 副詞のばあい

  • 「同じくらい・・・」

 

接続詞の as か関係代名詞の as か

1 従位接続詞(後ろは完全文)と 2 関係代名詞(後ろは不完全文)が区別しにくいかもしれません。

完全文とは,SとかVとかOとかCとか,必要なものは全部そろっている文,不完全文とはSかOかCのどれかが欠けている文です。たとえば,as he knows everything about it ならば,as のうしろはS(=he), V(=knows), O(=everything) がすべてそろっていて完全文,as is known ならば,as の後ろは V(=is known) だけしかないので,Sが欠けている不完全文ということになります。

また,完全文なのか不完全文なのか判別しにくい場合があって,それは as の後ろには S + V はあるのだけれど,O (つまり,「~を」の部分)が欠けているのかいないのかわかりにくい時です。Oが必要な動詞を他動詞,不要な動詞を自動詞と呼ぶことは知っていると思いますが,他動詞なのにOがなければ「欠けている」と判断することになります。つまり,その動詞が自動詞か他動詞か知らないと判別できないわけです。たとえば,as you know という場合はyou knowは完全文でしょうか,不完全文でしょうか。じつはこれはちょっと微妙で,まあどっちでもいいでしょう。意味も「あなたも知っているように」と「あなたもご存知のことだが」とではたいして違いません。

 

接続詞の as の意味の識別

as + 完全文 ならば,as は従位接続詞(whenとかifとかbecauseとかと同じタイプの接続詞)です。でも,意味がいっぱいあるんですよね。慣れないうちは,読みながら片っ端から意味を当てはめて,どれがいちばんスッキリ読めるかを考えてください。なかなか苦労するはずですが,慣れてくるとイッパツで決められるようになります。そのセンスを養うのがだいじです。

逆に書く時には,as をあまり使わない方が安全かもしれません。いろんな意味があるので,誤解されやすいからです。

1. 「・・・ので」(理由を表す)

理由を表す点では,同じく従位接続詞である because や since と似ています。ただし,

  • やや固い表現になり,その点で他の2つとは異なる
  • 理由は理由でも,聞き手・読み手も知っている理由を表し,その点で because とは異なる

の2点が注意です。「聞き手・読み手も知っている」(旧情報といいます)理由というのは,たとえば As it rained yesterday, と言うと「昨日は雨だったので」という意味ですが,気持ち的には「ほら,きのう雨だったでしょ,だから・・・」を少し固くした感じになるということです。「エジプトの砂漠では昨日5年ぶりに雨が降ったために」のような,知らない人に教えてあげる感じの重たい理由だと because が必要です。

英語では,旧情報は文の前の方,新情報は文の後ろの方に置く傾向があります。理由の as は旧情報なので,As … が文頭に来ることが多くなります。でも,後ろに来ることもあるのですが。

2. 「・・・時,・・・すると,・・・しながら」 (時・同時性を表す)

when や while に近いのですが,

  • けっこう幅広くばくぜんとした時を表せる
  • 主節と同時に行われたことを示す時に使われがちなので「・・・と」「・・・ながら」という訳がピッタリすることがある

というあたりが特徴です。主節と同時のことを表すので,「~してから,・・・した」というように時間にズレがある時には使いません(when なら使える場合もある)。

また,この as の後ろに 主語+be動詞が来る時,その主語が主節の主語と同じなら,主語+be動詞を省略することがあります。 as he was a child 「子どもの頃」は,as a child となります。

3. 「・・・ように,・・・と同じように」 (様態を表す)

主節の内容と as 節の内容の間には,何か類似関係,並行関係,比喩関係が存在していることを示します。主節とas節の内容が似ていたり,たとえになっていたりしたら,この意味ではないかと疑います。

Teachers sometimes make mistakes as students often do . 「学生がよく間違えをするのと同じように,教師だって時々間違えるのだ」

この場合,「教師が時々間違える」と「学生はしばしば間違える」が似ている関係になります。これをもっとはっきり述べるのが,

Just as ….. ,  so ~. 「・・・とちょうど同じように,~」(・・・と~はどちらもS+Vの完全文。この場合のsoは「そのように」という意味だが,訳さなくていい)

という公式です。

「まるで~のように」 as if ~ という表現の中の as も,もともとこの意味から来ています。

4. 「・・・するにつれて」 (比例関係を表す)

as の後ろが x, 主節が y とすると,y = f(x) つまり,x が変化するにつれてy も変化していくことを示します。当然 x の部分には,変化の表現,移行の表現,比較級を用いた表現などが来ます。

As he grew older, he became more and more obstinate. 「彼は年をとるにつれ,だんだん頑固になっていった」

grew も became も変化だし,比較級も使われていて,この as の典型的用法です。比較的見破りやすい as です。

5. as ~ as … 構文「・・・と同じくらい~」の後ろの as

前の as はあとで出てくる副詞の as です。 後ろの方は,「・・・と同じくらい」の中の「・・・と」の部分に当たります。as ~ as … ですから,これも見破りやすいでしょう。

この as も接続詞なのですが,後ろの文では省略が起きやすいので,その点では他の接続詞のasとは違っています。She is as tall as he. というのは,長く書くと She is as tall as he is. と言ってもいいわけです(*She is as tall as he is tall. とは言いません)。

6. 「・・・けれども」 (譲歩を表す)

多くの場合,S+V+C の文で使うのですが,語順に特徴があって,

     C as S + V   「S+V+C なのだけれど」

という形に必ずなります。

Kind as he was, there was something strange with him. 「彼は優しいことは優しいのだが,どこか変なところがある人だ」

Kind as he was  =  Though he was kind ということになります。

C のところに名詞が来る時は,無冠詞名詞(a や the がつかない名詞)にします。

King as he was = Though he was a king  というわけです。

S + V + C 以外で使う場合もあります。

Much as S + V  =  Though S + V

Try as S may(will)  「(どんなに)努力しても」

などは,熟語と考えてしまっていいでしょう。

また,文頭にもうひとつ as を置いて,As kind as he was のようにすることもあります。意味は同じです。

7. 「・・・限りでの+(名詞)」「・・・ような+(名詞)」「・・・+(名詞)」(名詞を限定する)

たとえば, the earth as we know it 「わたしたちの知る限りでの地球」「わたしたちの知っている地球」というような使い方で,直前の名詞にかかるという点で他とはかなり違っています。名詞にかかるので,まるで関係代名詞のような働きです。事実,「わたしたちの知っている地球」というのは the earth that we know とほとんど同じことです。でも関係代名詞なら後ろは不完全文,接続詞なら完全文のはずで,ここは we know it はitがあるので完全文です。

(つづく)

 

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『外国語学習の科学 ― 第二言語習得論とは何か』

3月
2009
17
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著者:白井恭弘 |出版社:岩波書店(岩波新書)|2008年|700円|高校生・英語教師・一般向け|独断的おすすめ度 ★★★☆

外国語はどう学ばれるか,どう学ぶのがいいのかを研究する学問が「第二言語習得論」です。通常,言語学の中の応用言語学という学問の一分野と位置づけられています。

「外国語をどう学ぶか」を考える上では,この学問で明らかにされたこと,されていないことを踏まえないと有益な議論はできないはずですが,専門書以外の一般向けの本はあまり見当たらないのが現状のようです。このサイトで取り上げた本としては,

は,一般の外国語学習者にも役に立つ本だと思います。ここで取り上げる『外国語学習の科学 ― 第二言語習得論とは何か』は,上の『外国語学習に成功する人,しない人』と同じ白井氏の本です。後書きにもあるとおり,この本は『成功する人,しない人』を岩波新書用に書き換えたもので,「続編」とはいえ,内容的にはほとんど重複していますから,どちらかを読めばいいでしょう。こちらの岩波新書の方が全体的には読みやすいかもしれません(それに手に入りやすいですし)。この学問の全体像を手際よくまとめてあり,前著と同様かそれ以上にすばらしい入門書になっています。内容的には,『外国語学習に成功する人,しない人』についての記事をお読みください。

でも,この学問で得られた知見を,ではどうやって具体的に実践したらいいのかは,かんたんに処方箋が出せる問題ではありません。この本でも(前著でも),筆者の観点からの「学習法」の一端が示されていますが,決定版になっているわけではないようです。「教室」でどのような学習が行われるべきかということと,「個人」がどのように学ぶべきなのか(独学)ということは,必ずしも一致しません。さらに高校レベルで何をすべきかとか,それをどう評価すべきか(結局は,大学入試をどうすべきか)とかいう問題が絡み合っています。

ちょっと,教師や生徒や親が個々人のレベルでは手に負えない問題なのですが,まずは議論の共通の土台が必要でしょうし,その意味でもこの分野の学問にはがんばって欲しいところです。

 

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ガンへの道をスパスパと (ONE POINT at a time : Mar. 12)

3月
2009
12
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= 動詞 + one’s way =

今回のポイントは単純で,「熟語です」のひとことで片づけてもいいのだけれど,「生産性がある」熟語,つまり話し手・筆者が自分でそのパターンを使って新しい熟語を作り出すこともできるような熟語です。

動詞 + one’s way + 方向を表す副詞句 「Vして,・・・へと進む,向かう」

これだけ。

このタイプでいちばん無色に近いのが,

make one’s way to[toward] ~ 「~へ進む」

という熟語です。

I managed to make my way to the counter. 「なんとかカウンターのところまで進んだ。」

さらに,この熟語の make のところを他の動詞に変えると「Vして[しながら]進む」というように,「進む」という意味を保ちつつ,ニュアンスが少し変わる熟語を作り出せます。たとえば,push one’s way だと「(人を)押し分けながら進む」, grope (手探りする)を使えば, grope one’s way 「手探りで進む」となります。

COBUILD 英英辞典での説明は,こんなかんじです。

You use way in expressions such as push your way, work your way, or eat your way, followed by a prepositional phrase or adverb, in order to indicate movement, progress, or force as well as the action described by the verb.

「push your way, work your way, eat your way のような表現と,それにつづいて前置詞句や副詞を置けば,その動詞で表される行動とともに,運動,進行,無理やりの前進などを示すために使うことができる」

自分で造語することも可能なほどいろいろな動詞と組み合わせることができます。「進む」を出世・成功などの比喩的な意味で使うことも多いようです。「ジーニアス大英和辞典」に載っている例では,

  • elbow [shoulder, thread, wheel] one’s way 「ひじで押して[肩で押して,縫うように,車で]進む
  • struggle [force, push, thrust] one’s way  「もがくように[押して]進む」
  • pick [work, labor] one’s way   「用心して[骨折って]進む」
  • steal one’s way 「こっそりと進む」
  • muscle one’s way   「強引に押し進む,強引に割り込む」
  • feel [grope] one’s way in the dark   「暗がりの中を手探りして進む」
  • laugh one’s way through life 「笑って暮らす」
  • study one’s way to academic fame 「研究で学問上の名声を博する」

どれも way には必ず所有格が前につくことに注意してください。たとえば, make one’s way は「進む」ですが, make way (for ~) だと,「(~に)道を譲る」の意味です。他人に道を作ってあげる,ということになります。

【 問題 】

1. かっこ内に入れるのに適切なものを選びなさい。

They (      ) the crowd and onto the train. (湘南工科大)
  1.pushed their way through     2.pushed through their way

  3.pushed their through way     4.pushed way through their

 

2. 日本語の意味になるように,かっこ内に1語入れなさい。(学習院)
彼は人ごみの中を押し分けて進んだ。
He elbowed his (               ) through the crowd.

 

3. 下のうちから適切なものを選び,語形を変化させてかっこ内に入れなさい。
He (               ) his way up the political ladder to the highest position in the land. (立教大)
   close      escape     finish   give     live     make

 

← 【 答 】

 

むかし, Smokers are puffing their way to cancerous death. という表現に出会ったことがあります。「喫煙者は,スパスパと癌で死に至る道を歩んでいる」 ( puff は「(息や煙を)出す,吹く,プカプカやる」)

うまい表現だなぁー。そうつぶやきながら,感心していつものように手元のタバコに火をつけました。

 

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un のつく話   (ONE POINT at a time : Mar. 09)

3月
2009
4
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= 接頭辞 un  =

ジョージ・オーウェル(George Orwell) の小説 Nineteen Eighty-Four (1984) は,ユートピア(Utopia)の反対に,すべてが悪夢のような社会であるディストピア(dystopia)を描いた作品です。Big Brother と呼ばれる,いるのかいないのかよくわからない独裁者に支配され,国民の行動はすべてモニターされ,もちろん言論・思想は完全に統制されている社会なのですが,言語(舞台はイギリスなので英語)も人工的に「改良」されていて,この新言語はEnglishではなく, Newspeak と呼ばれています。ことばからすべての曖昧性を廃し,むだをなくし,そもそもこの言語を使って考えると Big Brother にさからうような思考ができないような言語をめざしています。ニュアンスなどというものが入り込む余地のない言語で,語彙も制限・「改良」されていて,たとえば great という単語が廃止され代わりに plusgood (good+ ってこと), excellent は doubleplusgood (good++ ってこと)になり,逆に bad は ungood ということばになります。

 

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さて,きょうの話はこの un という接頭辞です。

接頭辞とは,もとの単語(語基とか語根とよばれます)の前にくっつけて新しい単語(複合語)を作るための要素です。日本語でも「可能」(語基)の前に「不」(接頭辞)をつけて,「不可能」という単語が作れます。ちなみに,おしりにくっつくのは接尾辞と呼ばれます。「可能性」の「性」のようなやつ。

un- という接頭辞は「打ち消し」を表す,というのはけっこう有名でしょう。日本語の「不」(「不可能」),「非」(「非常識」),「無」(「無意識」)などと似ています。ただし,un- には異なる二つの un- があるので要注意です。

  1. un + 形容詞・分詞 「~でない」という否定の意味をあらわす [出来上がった単語も形容詞]
    例) unable, unkind, uncertain, unprecedented(前例のない) (ungood ということばはオーウェルの造語)
  2. un + 動詞 もとの動詞と逆方向の動作をあらわす。「~したものを~しない状態に戻す」 [出来上がった単語も動詞]

un1 はわかりやすいと思います。

ただし,否定したければどんな形容詞でも un をつければいいというわけではありません。in(im,il,ir)を使うもの(incapable, impossible, illegal, irregular)やdisを使うもの(dishonest)もあります。もとの形容詞が -ful で終わっていれば,un- ではなく接尾辞 -less を使います。でも in や dis はラテン語系・フランス語系の単語につくので,使い道はunよりも狭く,新しく生まれる単語を否定する時はunが使われることが多くなります。

un2 について解説しておきましょう。

たとえば,fold という動詞は「折りたたむ」という意味ですが,これに un- をつけて unfold にすると「折りたたまない」という意味にな...らなくて,「(折りたたんであるものを)広げる・開く」という意味になります。learn 「学ぶ」に対して,unlearn は「(学んだことを意図的に)忘れる」という意味です(forget とは違って,「わざとがんばって忘れる」こと)。

つまり, V + O 「OをVする」に対して un2 つきV + O は「OをVされる前の状態に戻す」ということです。

  • fold  開いた状態のものを折りたたんだ状態にする 「折りたたむ」
  • unfold 折りたたんだ状態のものを開いた状態にする 「広げる」

 

  • wrap ラッピングしてない状態をラッピングした状態にする 「包む」
  • unwrap ラッピングした状態のものを,ラッピングしていない状態にする 「包みをひらく,ほどく」

 

  • do + O   O(たとえば何かの作業)をしてない状態から,された状態にする 「する」
  • undo + O   Oがなされた状態のものを,なされてない状態にする 「元に戻す」

その他,undress 「服を脱がす」,  unlock 「解錠する」, untie 「結んである(tie)ものをほどく」などいろいろありますが,いちいち覚えようとしなくても,理屈がわかれば推測できるでしょう。

《un2 つき動詞》はこういう意味を持つことから,使える動詞が限られています。まず,他動詞であること,そしてその動作をする前とした後で状態がはっきり異なっていること,です。たとえば *unsee という動詞はありません。何かを見たからといって,目的語に変化は起きないからです。変化が起きなければ「元に戻す」こともできません。

 

さて,以上の2つの un- はun1 は形容詞・分詞につき,un2 は動詞につくわけですから,まったく違うものなのですが,紛らわしくなる場合があります。どんな場合でしょうか?

そうです,《un2 つき動詞》が過去分詞になった時です。たとえば,

unlocked は,《un1 つき分詞》と考えれば「鍵がかかっていない」状態を表し,《un2 つき動詞の過去分詞》と考えれば,have unlocked 「解錠してしまった」のようになります。

  • He left his homework undone. 「彼は宿題をまだやってない」(宿題をなされていないままにする)《un1 つき過去分詞》
  • What’s done cannot be undone. 「後悔先に立たず」(されてしまったことは元に戻せない)《un2 つき動詞の過去分詞》

結局,前後関係で区別するしかなさそうです。

 

この un は生産性が高く(つまり,単語を新造する時にも使える),だからこそオーウェルの小説でも ungood というありもしない単語を使っても理解はできるわけです。

単語は新たに作って,それが広まっていくということはありますが,言語を特定の意図を持って作ったからといって,それがもとの意図通りに使われ広まることはまずありません。「1984」の世界が単語からあいまいさと非効率性を排除することに成功したとしても,それらが使われているうちに1つ1つの単語に新しいあいまいさがまとわりついていき,「非効率的」になっていくでしょう。あいまいで非効率的であることで,ことばの自由,ことばという自由が生まれるのだと思います。

 

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by rickie | Posted in 英語ワンポイント | No Comments »

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