Where are we going?

大学入試と英語学習のバックアップ・サイト

2012年5月
« 9月    
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  

ブログ・カテゴリー

すべて開く | すべて閉じる

ブログ・アーカイブ

Others

英和辞典を比較する (2)

3月
2008
6
この記事の印刷用バージョン

単語の引き比べ –  訳語・語義はどのように選定されているか

それでは実際に単語を引き比べてみます。ここで調べたいのは,訳語がどうなっているかです。したがって,例文や解説,語法説明,囲み記事などがあってもカットすることにします。

日本語にしにくい単語,今までの辞書でイマイチだった経験のある単語を選びたいのですが,今ここでパッと思いつくのがあんまりありませんでした。思い出したら,またやってみたいと思います。この単語はどう?というご注文・ご提案がありましたらどうぞ。

形容詞 classic

ジーニアス

(1) <文学・芸術などが>最高級の,第一級の,見事な (2) 典型的な(typical),模範的な,標準的な (3) 古典の,古典的な(classical) (⇔ romantic) (4)(文学上・歴史上)由緒ある,伝統的な,有名な (5) <衣服・スタイルなどが> (流行に左右されずに)伝統的な,簡素で上品な

ルミナス

1 (スタイルなどが)伝統的な,はやりすたりのない 2 一流の(first-rate),優れた 3 典型[代表]的な 4 古典の,古典的な《古代ギリシャ・ローマ時代の芸術・文化を指す》

ウィズダム

1 典型的な標準的な<事例など> 2 (古代ギリシャ・ローマの)古典の,古典に関する 3 一流の,最高級の,見事な<芸術・文学など>; 模範的な定評のある<研究など> 4 (時代に流されずシンプルで)伝統的スタイルの,定番の<衣服・デザインなど> 5 (文学的・歴史的に)名高い,由緒ある

ロングマン

1 (作品などが)愛され続ける,傑作の,最高水準の 2 (芸術・服装などが)流行に流されない,オーソドックスな,正統派の 3 典型的な,代表的な 4 すばらしい,見事な

「ジーニアス」はまあ標準的というか,伝統的というか,ふつうの定義で,それこそ classic な説明になっています。classic と classical の違いは有名ですよね。「ルミナス」はかなり「ジーニアス」を意識しているらしく,ここだけではないのですが,「ジーニアス」に似た説明が多くなっている気がします。「ウィズダム」の「定番の」,「ロングマン」の「正統派の」なんていう訳語はなかなかいいかんじです。

各社とも独自のコーパスを使っていることを売り物の一つにしています。しかし,コーパスは「この語の後ろには不定詞が来る」といった「形」として現れる語法などを扱うのは得意ですが,「意味」についてはあまり使えません。最近はなにかと,コーパスという言葉が magic word となっていて,謳い文句に何億語のコーパスを使ってどうのこうのと言っていますが,大量のコーパスを使えば使うほど意味の処理は機械的にはいかず,難しくなるはずです。今のところコンピューターは意味を全く扱えないと考えた方がいいと思います。

これらの辞書はみな,コーパスを使って語義を頻度順に配列するとしていますが,たとえば「はやりすたりのない」という語義は,「ジーニアス」で5,「ルミナス」で1,「ウィズダム」で4,「ロングマン」で2と,見事にばらばらです。意味というものは,もともとそんなにきれいに分類されるものではない(つまり,1の意味と3の意味を両方含むなんてことがありうる)わけですから,べつに不思議ではないのですが)。

辞典作成者は意味を選定するにあたって,各種英英辞典・先行英和辞典を参考にしつつ,若干のコーパスを使って語義とその配列を決定しているはずです。最終的には個々の項目の著者の経験とセンスが物を言うので,コンピューターでできることは限られています。

 

名詞 agenda

ジーニアス

(1) 協議事項,議事(日程(表)),議題 (2) (業務の)予定表,備忘録,覚書,予定,するべきこと;(行動の)指針

ルミナス

1  (政治上の)検討課題;予定,行動計画 2 協議事項,議題;議事(日程)

ウィズダム

1 (しばしば政治における)重要課題 2 (会議などの)協議事項;予定(表),覚え書き

ロングマン

1 行動指針,政策 2 課題,問題点 3 議題,協議事項,アジェンダ

agenda は,もともとは「議題」の意味だったが,今では「課題,行動方針」の意味の方が優勢である,というのが私の個人的な考えです。「ジーニアス」以外はそうなっています。

概して言うと,「ジーニアス」の説明は長く・詳しい,「ロングマン」は短く・あっさりという感じですね。詳しい説明が不可避になることはよくありますし,とくに上級者は単に語義を文脈にあてはめるのではなく,与えられたたくさんの語義を手がかりに,その語の中核的イメージを作り上げることが可能です。載っている意味の一つを選び出すというよりも,載っている日本語から英単語の意味を多分に感覚的にとらえるわけです。その点では長く詳しい説明はたくさんのヒントとなっていいのですが,逆に初級者にはどれを選んでいいのかわからなくなって,かえって足かせになるかもしれません。詳しければいい,というものではないわけです。「ロングマン」の見切り方も一つの方針としてはありうると思います。

 

名詞 identity

ジーニアス

(1) 本人であること,同一物であること;自己同一性,帰属意識,(自己の)存在証明,生きた[ている]証し;独自性,自己認識;身元,正体;《略式》 = ~ card[certificate] (2) 個性;独自性,固有性,主体性;(作家・芸術家などの)作風;芸風 (3) […と]同一である[類似している]こと,一体性,[…との]同一性 [with]; 一致点 (⇔ difference)  (4) 《豪略式》(ある地域で)よく知られている人,名士 (5) 《数》恒等式; 単位元

ルミナス

1 身元,正体; 同一人[同一物]であること,本人であること《略 ID》 2 独自性主体性;個性,アイデンティティ 3 《格式》同一であること,一致(sameness);一体(感); 《数》等値

ウィズダム

1 身元正体当人[当の物]であること (《略》 ID) 2 アイデンティティ自己同一性独自性個性 3 《かたく》《・・・と》同一であること;《・・・との》酷似一体感 «with» 4 《数》恒等式単位元

ロングマン

1 身元,素性 2 個性,独自性,アイデンティティー 3  《フォーマル》同一性,一致

これなんかは「ジーニアス」の長所と欠点が如実に表れている項目ですね。「下手な鉄砲」とまでは言いませんが,いくらなんでも列挙しすぎの感があります。「帰属意識」「存在証明」ねえ... 

「ルミナス」の「同一人[同一物]であること」というのも,昔から辞書にはそう載っているわけですが,ちょっと misleading ですね。これだと「AとBが同一であること」のようにも読めますが,identity は「AがAであること」です。「ウィズダム」の「当人であること」の方がいいと思います。どっちにせよ,舌足らずですが。COBUILD では,Your identity is who you are. です。お見事,というか,この単語はもともと英英で引くしかない単語なのでしょう。

ここでも,「ロングマン」は何か悟っているかのように,あるいは諦めてでもいるかのように簡潔です。いさぎよささえ感じさせます。

 

形容詞 available

ジーニアス

(1) 入手できる,購入できる,利用できる (⇔ unavailable) (2) [補語として]<人が>(手があいて)会う[来る]ことができる,忙しくない(free);[遠まわしに]結婚相手になりうる,未婚の

ルミナス

 1 手に入れられる,入手できる 2 (物や場所などが)利用[使用]できる,役に立つ 3 (人が)手が空いている,忙しくない,(面会などに)応じられる;(会などに)出席できる;(妻・異性の友人がいないので)結婚[交際など]の相手になれる

ウィズダム

1 《・・・に/・・・するのに》利用可能な役立つ «for, to/ to do»;《・・・の種類で/場所で》(容易に)入手可能な求める[得る]ことができる «in/in, at» (⇔ unavailable)  2 [be ~]<人が>(手がすいて)話す[会う]ことができる体があいて(free) 3 《くだけて》<人が>交際相手のいない恋人募集中の口説きやすい

ロングマン

1 <物が>入手できる,利用できる,購入できる [ + for ] 2 《名の前不可》<人が>時間がある,手が空いている [+for]  3 《名の前不可》<人が>都合がつく 4 <人が>(配偶者・恋人がいなくて)フリーの

「入手」「購入」「利用」「交際」などをひっくるめてスパッとひとまとめで言える日本語があればいいのですが,そうもいかないのでどの辞書も苦労しています。「ロングマン」の「都合がつく」なんてのはいいとおもいますが,日本語の「都合」という語も漠然としていますね。ちなみに,

OALD は 1 (of things) that you can get, buy or find   2 (of a person) free to see or talk to

LDOCE は 1 something that is available is able to be used or can easily be bought or found   2 someone who is available is not busy and has enough time to talk to you  3 someone who is available does not have a wife, boyfriend etc, and therefore may want to start a new romantic relationship with someone else

COBUILD は If something you want or need is available, you can find it or obtain it.

です。英和よりもすっきりはしていますが,みんな or を使っていて「スパッ」とまではいきません。

 

動詞 appreciate (他動詞のみを掲載)

ジーニアス

(1) <人が>O<物・事>を[・・・であることを,・・・かを]正しく理解する,正しく認識する;・・・を察する(understand);・・・を鑑賞する,・・・のよさを味わう (2) (正しい判断・分析などによって)<人が><人・物・事>の価値を認める,・・・を正しく評価する (3) <人が>O<物・事>をありがたく思う,<人が>・・・することを感謝する (4) 《やや古》・・・の価格[相場]を上げる

ルミナス

1 <…>を認識する,理解する,識別する,感知する 2 <…>の真価を認める,(正しく・高く)評価する 3 <芸術[文学]作品など>を鑑賞する,<…>のよさを味わう 4 <好意など>をありがたく思う,<…>に感謝する 

ウィズダム

1 <人が><状況・問題など>を正しく理解[認識]する 2 <事・物>に感謝する,…をありがたく思う; 3 a <人が><人・物・事>のよさ[素晴らしさ]を認める評価する b <芸術など>を鑑賞する;<食べ物>を味わう,楽しむ 4 ・・・の価値を下げる

ロングマン

1 ・・・に感謝する,をありがたいと思う 2 ・・・の良さがわかる,<ワインなど>を楽しむ,<音楽・芸術など>を鑑賞する 3 ・・・を認識する,理解する

これもあんまり大差ないようですね。

そういえば,村上春樹がどこかで,彼の高校時代のある英語教師は,そんなにいい先生ではなかったが,appreciate の説明を聞いて英語がわかった気がした,という趣旨のことを言っていた記憶があります。その先生はどういう説明をしたのでしょうか。

私は,単語の語源からの説明や,接頭辞や語幹の説明から入る「語形成」的な説明は,何か牽強付会と言うか,すでにその単語を知っている人には面白いかもしれないが,知らない人には参考にならない気がして,あまり授業で使うことはないのですが,appreciate は,「これはねぇ,あるものの price (ここでは価値)を知ったり,あることを『precious だなぁ』 ,と思うことです。」ってな説明をすることがあります。これだってappreciate の全貌をとらえているわけではないですが。

 

どうも「ジーニアス」と「ロングマン」が対極を行っているようです。「できるだけ詳しく」という方針で得られるものと失うものがありますから,「ロングマン」にはこの路線をさらに進めて,「訳語」革命を期待したいですね。日本の辞書は常に昔の訳語を踏まえて作られているようですから,この辺であたらしいスタンダード訳語が欲しいところです。

 

英和辞典比較シリーズ  総評

タグ:

 

 

 

関連する投稿

by rickie | Posted in その他(高校生向け), 英語の周辺, 辞書のはなし | No Comments »

英和辞典を比較する (1)

3月
2008
5
この記事の印刷用バージョン

2008年春の時点で,辞書をちょっと比較してみよう,というのがこの企画です。

日本の英語辞典,つまり英和辞典は世界に類をみないほど進歩を遂げています。辞書が単に語義を説明するものにすぎないと考えれば,ネイティヴの辞書でかまわないわけですが,英語を外国語・第二言語として学ぶという観点に立てば,日本の学習用英和辞典は世界に誇れるものです。特に,語法や後の使い分けなどの情報の詳しさ,説明の懇切丁寧さとここ十数年での進歩は目を見張るものがあります。(これほどの辞書を持ちながら,日本人の英語力はちっとも進歩しないということは別途論じる必要がありそうですが。)

辞書を比較すると言うと,あれよりこれが優れているとか,こっちを買うべきだとか,を論じたがる人も多いのですが,ここではそういう切り口で語ろうとは思いません。間違いを探してあれこれ言う趣味もありません。それぞれに個性がありますから,それを楽しもうという趣旨です。たいていの場合,ある点では辞書Aが,別の点では辞書Bが優れているということが起こります。間違いも見つかれば結構楽しめるものです。

もっとも,紙の辞書としては依然として「ジーニアス」優勢であり,電子辞書にいたっては「ジーニアス」独り勝ち状態ですから,こういう取り上げ方をすれば「ジーニアス」以外の辞書へのエールになるかもしれません。

 

dic3.jpg

ここで取り上げるのは,大学受験(高校上級)~一般向けの学習用英和辞典です。ランクとしては大英和辞典の次に位置するレベルの辞書で,各社の主力商品になります。

の4つに絞りました。研究社には上記「ルミナス」以外にも「ライトハウス英和辞典」があり,学研「アンカー・コズミカ」,小学館「プログレッシブ」,旺文社「レクシス」,東京書籍「アドバンスト・フェイバリット」など個性あふれる面々が控えているのですが,全部フォローするわけにもいかず,とりあえずこの4冊に限ることにします。ごめんなさい。

 

基礎データ

  編者 発行日 収録語数 ページ数 税込価格 ホームページ
ジーニアス英和辞典 第4版 主幹 小西友七・南出康世 2006/12/20 9万6000 2249 ¥3,465 大修館
ルミナス英和辞典 第2版 竹林滋・小島義郎・東信行・赤須薫 2005/10/1 10万 2152 ¥3,360 研究社
ウィズダム英和辞典 第2版 井上永幸・赤野一郎 2007/1/10 9万 2125 ¥3,465 三省堂
ロングマン英和辞典 第1版 監修 Geoffrey Leech・池上嘉彦・上田明子・長尾真・山田進 2007/2/1 10万2000 2040 ¥3,465 桐原書店

  値段は,「並装」のもの。

 

各社の英和辞典ラインナップ

大修館

ペーシック・ジーニアス < プラクティカル・ジーニアス < ジーニアス < ジーニアス大英和

大修館は「ジーニアス」の下位バージョンとしてかつて,「ヤング・ジーニアス」,「フレッシュ・ジーニアス」,「アクティブ・ジーニアス」 というラインナップを持っていたが,これらを整理して改名したのが現行ラインナップ。すべて小西友七(故人)を中心とする編纂者。

研究社

ライトハウス < ルミナス < 新英和大辞典

すべて竹林滋を中心とする編纂者。これ以外の学習英和として,歴史のある「新英和中辞典」を持つが,ラインナップの中での位置づけがよくわからない。

三省堂

ヴィスタ < グランドセンチュリー < ウィズダム < グランドコンサイス

編纂者はバラバラ。

桐原書店

ロングマン英和辞典は,桐原書店唯一の英和辞典。同社で出している「Longman 現代英英辞典」を参考にしつつもゼロから作り上げた。

 

各辞典の特徴をひとことで

  • 「ジーニアス」 従来から「語法のジーニアス」と言われているように,語法説明が詳しい
  • 「ルミナス」 「語法」だけでなく,「文法解説」「リスニング」(上のポイント)「日英語義比較」「語形成」「構文」などの多くの囲み記事を持つ
  • 「ウィズダム」 見やすさ,引きやすさ。辞書作成のために使われたコーパスがwebで利用できる特典。
  • 「ロングマン」 英語コーパスだけでなく,日本語コーパスを使った,一工夫ある訳語選定

 

見た目の印象

ほんとは,画像を公開したいのですが,まあ大人の事情ということで。

研究社さん,見本くらいサイトに載せてください。

「ロングマン」がカラフルで,生徒には受けるかもしれませんが,慣れてくるとちょっとうるさいかも。逆に「ジーニアス」は品詞マークに赤を使っているくらいで,全般的に地味め。

  • 「ジーニアス」は見出し語は黒太字,重要見出し語は黒大活字,メインの訳語を黒太字,それ以外を標準字体
    例)   distinct (1) [・・・と]まったく異なった,別個の(different)[from]; 独特な
  • 「ルミナス」は見出し語は黒太字,重要見出し語は赤大活字,メインの訳語を黒太字,それ以外を標準字体
    例)   distinct 1 別の,違った,異なった
  • 「ウィズダム」は見出し語は黒太字,重要見出し語は黒大活字,メインの訳語を赤太字,それ以外を太字,かっこの中や例文を標準字体
    例)   distinct 1 別個の独特な;《・・・と》まったく異なった « from »
  • 「ロングマン」は見出し語は青字,重要見出し語は赤字,メインの訳語を赤太字,それ以外を標準字体
    例)   distinct 1 《フォーマル》別個の,別々の,別種の [+from]

「辞書を引く」,つまり見出し語に対応する訳語を探す面からすると,「ウィズダム」がいちばん読みやすく感じるでしょう。「辞書は読むもの」と考えるなら,どれでも大差ありませんが。


 

英和辞典比較シリーズ  総評

タグ:

 

 

 

関連する投稿

by rickie | Posted in その他(高校生向け), 英語の周辺, 辞書のはなし | 1 Comment »

和英辞典の憂鬱

2月
2008
29
この記事の印刷用バージョン

「和英辞典はなかなかいいものがなくてね」と,私の学生時代の頃に教師たちはよく言っていた。「そのうち,いいのができるかもしれない」という教師もいた。それからずいぶんの時間が過ぎ,しかし「いいの」はなかなか見当たらない。「英和辞典」も「英英辞典」もかなりの進歩をとげたといっていいのだが,「和英辞典」をめぐる事情はあまり変わらない。工夫はされている。語彙数も,例文も,説明も充実した。しかし根本的なところで変化はない。魅力もない。日本語に対する英単語が列挙され,ちょこっと例文や説明が載っている。それだけだ。もはや期待は持てないのかもしれない。「和英辞典」というものは,その本質上,今のようなものでしかないのかもしれない。

そもそも「和英辞典」は必要なのか,という問いに突き当らざるを得ない。だが,その答えはイエスとしか言えない。必要なのだが,そんなには必要じゃない。というか,必要なのは一瞬で,和英辞典だけ引いて解決することはほとんどないからである。

たとえば,ある目的で英語の文章を書かなければいけないとする。手紙でも,レポートでも,論文でも,エッセイでもいいのだが,あらかじめ翻訳用の日本語の原文はないものとする。当然,自分で全体の組み立てから,ここの英文までを作っていかなければならない。そしてある語句が思い浮かばなかったらどうするか?まあ,和英を引くでしょうね。日本語と英語が一意で決まる語句であれば,これで解決するかもしれない。「在庫って何ていうんだっけ?」 –> inventory 「東京都議会は?」 –> the Tokyo Metropolitan Assembly 。しかしそういうもの以外は,まず和英辞典で得られた情報をきっかけにして,そこで得られた語句を英和や英英で引きなおし,何かしっくりこなければ thesaurus でいい言葉を探す。もちろん「英和活用大辞典」(研究社)にもお世話になる。つまり,和英はきっかけであり,突破口であり,第一走者ではあるが,それ以上のものではない。

というわけで,「きっかけ」にすぎない以上,そこにすべてを求めるわけにもいかない。和英が進歩しない理由はそのへんにあるのか。

いや,待てよ。逆に和英+英和+英英+シソーラス+活用・連語情報辞典 がワンセットになった辞書があればいいのか。「ジーニアス和英」はすでに和英+英和的な構成になっているし,書籍版では不可能だろうが(1巻3万くらいはするでしょうね),電子辞書なら不可能ではないかも。研究社でも大修館でも小学館でもいいから,作ってみませんか?私は買いますよ。ほかの人は知りませんが。

 

関連する投稿

by rickie | Posted in 英語の周辺, 辞書のはなし | No Comments »

電子辞書についての詮無き考察

2月
2008
21
この記事の印刷用バージョン

電子辞書はダメだ,という議論は電子辞書がこれほど一般的になった今でも時々耳にする。しかし,別に調査したわけではないから正確でないかもしれないが,高校生・大学受験生対象の英語教師は,そういう発言をあまりしないような気がする。私も「電子辞書は使うな」とは言ったことがない。ペーパー辞書には,少なくとも現在の電子辞書では持ちえない特性があるのは確かだが,それが電子辞書にしかない優位性を凌駕しうるものなのか,あまり自信がないからである。

辞書つまり,ペーパー辞書は「辞書」である。辞書は単なる書物ではなく,「辞書」という特殊な分類にしか属していない。線条性という拘束の弛緩。いったん目指す語にたどりついても,そこから線としてではなく,面として読まれる。視線は行きつ戻りつし,立ち止まり,目指す語意に出会ったとしても,さらに彷徨をつづける。競走ではなく,散策であり,私たちはそこに情報や知識を求めるのではなく,情報や知識と遭遇するだけである。予期せぬ遭遇に驚き,戸惑い,たじろぎ,悦ぶのである。

電子辞書は,辞書というよりもデータベースである。私たちは,クエリを発して,データを引き出す。データは,「見出し語」—>「語意」—>「用例」・「解説」と,階層構造的に整理・蓄積されていて,そこからデータが検索される。

電子辞書にはデータベースにすぎないという欠点がある。しかし,辞書が「辞書」であることを放棄する代わりに得たものは,魅力にあふれている。いくつもの辞書を格納できる。それらを横断的に検索でき,あちらの辞書からこちらの辞書へとジャンプができる。例文からの検索も可能。語尾からの逆引き。成句の一部から成句そのものを検索できる。辞書の追加も可能(私は独仏を追加,中国語も検討中)。そして何よりも,軽量。

毎日ぶ厚い辞書を持ち歩く宿命の語学教師ならば,この軽量という魅力に抗することはむずかしい。大辞典を机上に並べて,喫茶店でペーパーバックを読む,なんて想像が心揺さぶったのはそんな昔のことではない。だからこそ,生徒が電子辞書を使うのを止めることばを持たないのである。

ペーパー辞書は,初心者にこそ必要なものであり,辞書から知識を得るということがどういうことなのかを知った人が電子辞書に移行すべきである,そういう理屈も百も承知。しかし,「紙の辞書は引く気にならなかったけど,電子辞書にしてから引くようになりました」という声がちらほら聞こえ始め,やがて生徒の机すべてに電子辞書が並ぶようになると(それはそれで壮観だが),紙の辞書を薦める言葉は喉元につまってしまい,せいぜいおまけで貰った安物の電子辞書を使う者や携帯を辞書代りにしている者にダメ出しをするくらいになってしまうのである。

もちろん,電子辞書だってうまく使えば,欠点はかなりカバーできる。便利すぎてみんなうまく使おうとしないだけである。うまく使ってないのに,使えてしまうというのも電子辞書の欠点なのかもしれない。「用例キーを押そう」と何度も言っているはずなのだが,みんなどうよ?

 

関連する投稿

by rickie | Posted in その他(高校生向け), 英語の世界(一般向け), 辞書のはなし | No Comments »

これ以後の記事 »