イギリス人が文法的誤りだと考える20の例(1)

イギリスの BBC News が less と fewer の誤用について取り上げていたことは,前にチョコッと触れましたが,そのフォローアップ記事が出ています。「わたしの気に入らない,最近よく見かける文法的誤り」という体の,読者から寄せられた声が20ほど載っているのですが,「それよく言われるよね」というものもあり,ちょっと意外なものもありで,なかなか興味深いです。投稿者はイギリス在住の人が多いですが,中にはドイツやスウェーデン在住の人も。言語的バックグラウンドはわかりませんが。

以下,かいつまむと,

1. have とすべきところを of にする

これは日本人はまずやらない間違いです。音声からことばを学んだ場合にしか起きない間違いだからです。

たいていの場合この間違いは could have … とか should have … などで, h の音が脱落して /kʊdəv/, /ʃʊdəv/となり,/əv/の部分がof と同じ発音になるために起きます。昔,Faulkner (だったかな?)の小説を読んでいると,登場人物のセリフが should of … と書かれていたのを読んだことがありますが,これもちょっと卑俗な英語をそのまま書写してた形になっています。

 

2. for nothing とすべきところを for free にする

えっ,いけなかったの,という感じです。どちらも「ただで」という意味です。イギリス系の辞書にも出ています。わたしとしては却下。

 

3. 12 pm という表現

正午は午前でも午後でもないという理屈。

pm(p.m., P.M., PM とも表記)は,ラテン語の post meridiem の略(post = after, meridiem = noon)で,am は ante meridiem (ante = before)の略です。12時は,noon そのものだから,beforeでもafterでもないというわけ。ごもっとも。

ごもっともだけど,まあいいんじゃないですか。ほかの時刻にあわせてるだけだし。 

 

4. 動詞 affect と effect の混乱

これはだいじ,かな。

名詞 effect は「効果・影響」。この意味に対応する動詞「影響を与える」は affect です。でも,effect は動詞にも使えて,その場合の意味は「~を引き起こす」という意味。投稿者が使っている例では,

☓ You affect a change in something.

☓ You are effected by something.

などは,それぞれ逆でなければなりません。

 

5. 頭字語(CD とか UFO とか NATO)の複数は,CD’s じゃなくて CDs

うーん,これはどっちでもいい,というのが大勢だと思うけど。Practical English Usage (Michael Swan)の日本語版だと,「略語の複数形の s の前に,ときには,省略符号の (‘) を置くことがある。としています。MP’s または MPs; CD’s または CDs 」

「現代英文法講義」(安藤貞雄)では, 「-‘s をつけるのが原則であるが,アポストロフィー(‘s) をつけないのが最近の傾向」とあります。

 

6. me とすべきところを I にする

ネイティブでもこんな間違いするの?というレベル。

挙がっている例は,

☓ She said some very kind things about George and I.

大学入試の正誤問題で出る場合もこのパターンです。つまり,前置詞 + A and me とすべきなのに,me を I にして間違いを探させる問題。前置詞と離れているぶん気づきにくいわけです。

 

7. you, me にすべきところを yourself, myself にする

再帰代名詞の使える場所については,生成文法でこまかくルール化されていますし,伝統文法でも「主語と目的語が同じものを指す場合」と説明されているはずです。

He1 killed him2. He と him は別人。

He1 killed himself1. Heは自殺した。

yourself や myself で間違えるのは,日本人はしそうにないですね。

 

8. None は単数扱いにすべき

もともとは not + one だから,というのが理屈ですが,現代では,複数扱いも許されていますし,そちらが多いかもしれません。

 

9. different from, compared with とすべきところを to にする

アメリカではむしろ different than が結構多いですね。to を使うのはイギリス用法と辞書にありますが,from が無難なのは確かでしょう。

compared with ←→ to  はとくに過去分詞の後ろではどちらもよく使われています。本来は投稿者の言うとおりですが,もはや to も正用法になっていると,わたしは思います。(BBC は「withを原則とする」と言っています)ただし,「たとえる」の意味では,compare A to B がふつう。

 

10. they opened fire on us でなくて,they open-fired on us が正しい

これは投稿者によれば,軍事用語としては敵に対する射撃は2種類あって,うんぬん。辞書引いても出てこないのでググってみると,イギリスの軍事関係掲示板みたいなところで,この投稿自体が「ほんとかよ」というような議論になっていました。まあ却下しておきます。誤りだとしても,文法的誤りではなくて,語彙上の問題だし。

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