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大学入試と英語学習のバックアップ・サイト

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「この国」というかたち

2月
2009
27
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―― 自分の国のことを日本語では「我が国」といいますね。でも英語には this country 「この国」という言い方があるんです。

 

予備校の英語教師はそんな言い方をしたと思う。今から35年くらい前のことだ。

「ふーん,『この国』ねえ。変な言い方だけど,でも,いいかもね」

教師の言葉を満員の大教室の中で聞いていた浪人生の僕が思ったのもそんな感じのことだったろう。

現代の日本では自国を「この国」と呼ぶのは珍しくも何ともない。でも少し前まではそういう言い方は存在しなかった。「この国」という表現は外国語(西洋語)起源である。

this country 「この国」。 「この」って「どの」? どこかの国の話してたっけ? 最初にこの表現に出会った時の意外感はそのようなもので,「この人」といえば,直前で言及された人のことを表すのだから,直前に「国」の話をしていない文脈でいきなり「この国」と言われても戸惑うわけだ。

しかし,思い返すとこの表現はなかなかよかった。「我が国」という言葉の,力こぶの入り方,時として不遜・傲慢なひびき,内輪意識,そういうものが「この国」という淡泊な言い回しにはすっかり消えていて,無色透明な客観性が新鮮であったのだろう。時には胸をそらせて「我が国」という言い方をしたい気持ちもわかるが,何の思い入れもこめない語り口は案外日本語には欠けていて,なにかと重宝する表現なのだ。

You は「あなた」ではない。相手が同性だろうと異性だろうと,親・兄弟だろうと,一国の元首だろうと,何の敬意も持っていなくても,けんかを売るのでなくても,さらりと使える言葉である。「この国」という言葉も,とかくいろいろなニュアンスで着色されやすい「国」という名詞をきれいに脱色する表現であるように思えた。「この国」にどんな思い入れがあろうがなかろうが,そんなことはとりあえず脇に置いて語り出すことができる。もちろん,ことばはたとえ漂白されていようと,時がたつにつれて色がついていく宿命にあるのだけれど。

いつの間にか,「この国」という言葉は日本語の一部として市民権を得ている。最初に使用したのがいつ・誰なのかはよく知らない。少なくても,普及するに当たっていちばん貢献したのは,やはり司馬遼太郎,とくに一連の『この国のかたち』シリーズだろう。「我が國の國軆」とは違う,頭に血が昇った至情とやらとは別の語り方にふさわしいことばが「この国」,「かたち」であったのだと思う。

市民権を得たとはいえ,まだいくらか改まった文脈で登場する語彙である。日常会話でそれほどお目にかかるわけではない。以前大河ドラマで徳川慶喜(今をときめく本木雅弘)が「この国」を連発していたが,どこか「この国」行く末を考える時にふさわしいことばになってしまった。「色を抜いた」表現であっても,「色を抜いた」色がついているというべきか。

by rickie | Posted in ことばをめぐる散歩 | No Comments »

「おくりびと」の受賞

2月
2009
26
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映画「おくりびと」(英語タイトル: Departures )がアカデミー賞外国語映画賞を受賞した。めでたいことである。この賞を日本の作品が受賞するのは初めてだという。

 

でも,それってそんなにすごいことなの?

カンヌの「パルム・ドール」なら,過去に「地獄門」(衣笠貞之助),「影武者」(黒澤明),「楢山節考」(今村昌平),「うなぎ」(今村昌平),ベルリンの「金熊賞」なら「千と千尋の神隠し」(宮崎駿),ヴェネツィアの「金獅子賞」なら「羅生門」(黒澤明),「無法松の一生」(稲垣浩),HANA-BI(北野武)が受賞している。

これらは『国際映画祭』であり,アメリカ映画,すくなくとも英語の映画をメインにするアカデミー賞とはちがっている。だからアカデミー賞はわざわざ『外国語』映画賞とことわっているわけだ。カンヌ・ベルリン・ヴェネツィア・トロントなどには「外国語」という断り書きのついた賞はない。どの言語,どの国籍の映画もスタートラインは同じである。

映画に順位をつけて何がおもしろいの?というまっとうな疑問は,とりあえず脇に置いておくことにする。

アカデミー賞はアメリカのお祭りであって,世界の映画の最高峰を決める祭典ではない。芸術性が基準になっているわけでもない。そんなことは自明なのだが,それでも知名度も影響力もずば抜けて高いのは,もちろん商業的な意味でのインパクトがいちばん持っているからだろう。アメリカは最大の市場であり,アメリカで興行的に成功しなければ,世界で成功したとは呼べない。

だからアカデミー賞が世界最高の映画賞であるといっても,商業的な意味ならそれほど外れていないということになるのでしょうね。アメリカのベースボールの大会にすぎない『ワールド・シリーズ』が,その年の世界最強のチームを選出する大会であると言ってもそれほど外れていないのと同じレベルで。

 

《アメリカ=世界》,《英語=世界共通語》という固定観念には誰もがうんざりしつつも,一朝一夕には改まりそうもないどころか,ますます強化されている。それに対抗しうるものも見当たらない。わたしたちはどこかで,対抗しなくてもいいやと思っているのかもしれない。世界というものをわたしたちは必要としていて,それに一番近そうなのがこの固定観念だからである。

 

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by rickie | Posted in 社会・時事 | No Comments »

無料のオーディオブック  英語学習情報 [全レベル向け]

2月
2009
25
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オーディオブック,つまり本(ここでは英語の本)をまるごと一冊朗読したもの,については以前紹介しました。

以下のページにあります。

  1. オーディオブック-1 英語学習情報 [全レベル向け]
  2. オーディオブック-2 英語学習情報 [全レベル向け]

今回は,無料版,ただでダウンロードできるものを紹介します。

 

ただし,無料で一般に開放されている,というからには,著作権切れの書物に限ります。著作権保護期間は,アメリカ・EUでは,著作権者の死後70年(日本では50年。欧米並みにすべきとの議論もあるが僕は反対です)なので,現時点だと1939年以前になくなった人の作品がメインです。つまり,かなり古い作品しかないということです。古い作品だと,概して英語はむずかしく感じられることが多いので,初心者には向かないかもしれません。

一冊の本のオーディオブックだけ単発でアップしてあるサイトもあるようなのですが,まとめてたくさん閲覧できるところは何と言っても有名な「プロジェクト・グーテンベルク」(Project Gutenberg)です。

「プロジェクト・グーテンベルク」は,本をネット上に公開しようという企画で,3万弱のタイトルが公開されています(パートナーサイトの英語以外のものを含めると10万タイトル)。そのうち一部が,「オーディオ」化されているわけです。

古いものが多いということ以外で,いくつか欠点を挙げておきましょう。オーディオ化といっても,これには電子音声(音声合成で読み上げたもの)もあり,はっきり言ってこれはあまり聞けたものではありません。人が読んだもの(human-read)となるとタイトルはずっと減って,500程度になります。さらに,もともとオーディオ化の動機の一つは,視覚障害を持った人の読書のためです。したがって,「人が読んだ」といっても,アマチュアのボランティアが読んだもので,商品化されているものと比べると質的にはいまいちのものが混じっています。録音環境もあまり良くないものがあります。

とはいえ,何と言ってもタダです。試す価値は十分です。

英語を聞くだけで理解するのはなかなかむずかしいので,テキストも入手して読みながら聞く,または読んでから聞くというのが無難です。

 

 

どんなタイトルがあるか一覧するためには,

  1. Project Gutenberg の メインページを開ける → こちらgoup
  2. 左のサイドバーから,Advanced Search をクリック
  3. サーチページの Language の項で English を, Category の項で Audio Book, human-read を選択して,Search ボタンをクリック

です。(このリストの PDF (2009.02.23現在))pdf

たとえば

  • イソップ童話  Aesop
  • グリム童話  Grimm & Grimm
  • アンデルセン童話 Andersen, H.C.
  • 不思議の国のアリス (Alice’s Adventure in Wonderland) Carroll, L.
  • 小公女 (Little Princess) Burnett, F.H.
  • 若草物語 (Little Women)  Alcott, L.M.
  • ドリトル先生 Lofting, H.
  • 赤毛のアン (Anne of Green Gables) Montgomery, L.M.

といった児童向け文学や,ホームズ(Doyle, A.C.)やブラウン神父(Chesterton, G.K.)といった古典的推理小説,19Cから20C初頭にかけての英米の古典(Jane Austen, Joseph Conrad, O. Henry, Henry James, Charles Dickens, Rudyard Kipling, Jack London, Katherine Mansfield, Edgar Allan Poe, Mark Twain, H.G. Wells, Oscar Wilde)などなど,バラエティに関してはタダにしてはお得です。

 

著作権の問題から1939年以前になくなった著者のものがメインだ,と先ほど書きましたが,リストには1939年以降に死去した作家の作品でも公開されているものがあります。サイトの性質から見て非合法のものではなさそうで,おそらく著作権者の承認があるのだと思われます。その中には,学術書もありますが,児童文学系も多いようで,初心者にいいかもしれません(ただし,子ども向けの本の英語がやさしいとは限らないので注意)。

 

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by rickie | Posted in 英語学習情報, 英語学習情報(中~上), 英語学習情報(初~中) | No Comments »

村上春樹のエルサレム賞受賞スピーチの英語解説

2月
2009
20
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村上春樹がイスラエルで行った「エルサレム賞」受賞スピーチを取り上げます。英語のスピーチです。全文と翻訳を載せたいところですが,現役作家のオリジナルですから,版権の問題がありそうですので解説だけを載せることにします。原文については,イスラエルの新聞社のサイトにあります。

       Always on the side of the egg (by Haruki Murakami)

便宜上4つのパートに分けました。

 

PART I

「小説家はプロの嘘つきだ」というところから,スピーチは始まる。だが,この「嘘つき」は巧みなウソであればあるほど賞賛される。なぜか。真実をそのまま正確に描きとることは困難で,それゆえ小説という手段で真実を「おびき寄せる」ことで,より真実に近づくことができるからだ。

  • which is to say …  ― 「それはすなわち・・・」 that is to say 「すなわち,つまり」 の that を関係代名詞に変えたもの。
  • spinner of lies  ― 「嘘をつむぐ人」   spin 「つむぐ」
  • S is not the only one who …  ― 「・・・するのはSだけではない」 この onlyは「唯一の」という形容詞
  • on occasion  ― 「時々」
  • as do used car salesmen ― 「中古車のセールスマンと同じように」  do (=tell lies) と salesmen が倒置されている。 as 節では時々倒置が起きる。中古車のセールスマン(時には弁護士も)はアメリカなどではよく嘘をつく,口先だけ,の典型として扱われる
  • in that S + V  ― 「・・・という点で」
  • Indeed, the bigger and better his lies and the more ingeniously he creates them, the more he is likely to be praised by the public and the critics.  ― 「それどころか,嘘が大きくうまければうまいほど,巧みに作られていればいるほど,大衆や批評家にほめられるだろう」   The + 比較級, the + 比較級 「…すればするほど~」の形だが,比較級が合計で4つある。この公式では,前半と後半の切れ目はふつう and ではなく,カンマになることに注意。 The Xer and the Yer, the Zer. は「XとYすればするほど,Zになる」, The Xer, the Yer and the Zer. なら「Xすればするほど,YにそしてZになる」
  • Why should that be?   ― 「いったいどうしてこういうことになるのか」 疑問文(特にwhyやhow)中のshouldは,意外感を強めるはたらき。強いて訳せば「いったいぜんたい」
  • namely  ― 「つまり」 (= that is to say)
  • that by telling …   ― この that は「…ということ」の接続詞。ここではなくてもいいが,後の文に which ~ true までの挿入が入って複雑なのでつけている。
  • bring a truth out   ― 「一つの真実を引き出す」 the truth でなく a truth (いろいろあるかもしれない真実の一つ)と言っていることに注意。
  • virtually impossible  ― 「ほとんど不可能で」 virtually = practically = almost
  • This is why …   ― 「こういうわけで・・・」 why は関係副詞
  • grab its tail by luring the truth from its hiding place,  ― 「真実を隠れ家からおびき寄せてしっぽを捕まえる」 lure 「おびき寄せる,誘惑する」 by 以下に luring, transferring, replacing という3つの動名詞がつづく
  • replace A with B ― 「AをBと取り替える,置き換える」
  • we first have to clarify where the truth lies within us. ― 「まず,わたしたちの中のどこにその真実が潜んでいるのかを明らかにしなければならない」
  • qualification ― 「資格,適性」

 

PART II

ウソと真実の話は,次の本題が自分の真実の声であることを言うための前置きだった。

多くの反対にもかかわらず,この式に出席しているのは自分で直接この現実に触れてみたかったからだ。語りかけたかったからだ。といっても,政治的メーセージを送ろうというわけではない。それが次のような,自分の小説家的な核心に関わるからだ。

"Between a high, solid wall and an egg that breaks against it, I will always stand on the side of the egg."

「高く,堅固な壁と,それにぶつかれば割れてしまう卵の2つのうちで,わたしは常に卵の側に立つ」

わたしはたとえ「壁」の方が正しく「卵」の方が誤っていたとしても,「卵」の側に立つ。

このメタファーは,「壁」が戦闘を仕掛ける国家,「卵」が殺されていく民衆を意味するだけではなく,「システム」と「個人」との関係をも意味する。「システム」はわたしたちを守りもするし,殺し殺させもする。わたしは「個人」のかけがえのなさに光を当てつづける。

  • engage in ― 「~に従事する」
  • today happens to be one of them ― 「今日はたまたまそういう一日だ」 them は「わたしが嘘をつく仕事をしていない,年に数日しかない日」
  • A fair number of people  ― 「かなりの数の人々」
  • instigate a boycott  ― 「ボイコットをよびかける」 instigate 「そそのかす,扇動する」
  • the fierce battle that was raging in Gaza ― 「ガザで激しさを増している戦闘」 rage 「荒れ狂う」
  • The UN  ― = the United Nations 「国際連合」
  • the blockaded Gaza City ― 「封鎖されたガザ市」
  • Any number of times  ― 「何度も」
  • notice of the award ― 「受賞の知らせ」
  • ask oneself whether ― 「自問する,~ではないのかと考える」
  • the impression that I supported one side in the conflict ― 「争いの一方に加担したのではないかという印象」
  • endorse ― 「支持する,認める」
  • a nation that chose unleash its overwhelming military power ― 「圧倒的軍事力を行使することを選択した国家」 もちろん,イスラエルのこと。 unleash 「(押さえていたものを)解き放つ,爆発させる」
  • Neither, of course, do I wish to see my books subjected to a boycott ― 「むろん,わたしの本がボイコットの憂き目にあうのを見たくもない」Neither + V + S  「Sも・・・ない」  subjected to ~ 「~にさらされて,~を受けて」 see + O + C 「OがCなのを見る」
  • all too many people ― 「あまりに多くの人たち」 all too ~ 「あまりに~すぎる」
  • It’s in my nature, you might say, as a novelist. ― 「それは言ってみれば,小説家としてのわたしの性分だ」
  • a special breed ― 「特殊な生き物」 breed 「(生物の)品種」
  • stay away ― 「近づかない,遠ざかっている」
  • I chose to speak to you rather than to say nothing. ― 「何も言わないよりも,語りかけることを選択した」
  • This is not to say that  ― 「だからといって,~というわけではない」
  • deliver a political message ― 「政治的メーセージを発信する」 deliver 「送り届ける」
  • It is left to A to V  ― 「VすることはAにゆだねられている」
  • the form in which he or she will convey those judgments to others ― 「彼または彼女(作家)が他人にそうした判断を伝える方法」
  • transform them into stories ― 「それら(の判断)を小説という形に変える」 transform A into B  「AをBに変える」
  • the surreal ― 「超現実的なもの」 the + 形容詞 「~なこと,もの」
  • keep in mind ― 「覚えておく,銘記する」
  • I have never gone so far as to write it on a piece of paper and paste it to the wall ― 「それ(わたしのモットー)を紙に書き付けて壁に貼りつけるなんてことまでやったことはない」 go so far as to V  「Vすることさえする」
  • carved into the wall of my mind ― 「心の壁に刻みつけられて」
  • "Between a high, solid wall and an egg that breaks against it, I will always stand on the side of the egg." ― 「高く,堅固な壁と,それにぶつかれば割れてしまう卵の2つのうちで,わたしは常に卵の側に立つ」
  • no matter how right the wall may be and how wrong the egg, I will stand with the egg. ― 「壁がどれほど正しかろうと,卵がどれほど誤っていようと,わたしは卵とともにある」
  • If there were a novelist who, for whatever reason, wrote works standing with the wall, of what value would such works be? ― 「理由は何であれ,壁の側に立って作品を書く小説かなんてものがいたとして,そんな小説に何の価値があるだろうか?」
  • bombers ― 「爆撃機」
  • white phosphorus shells ― 「白燐弾」 ガザ攻撃でイスラエルが使用したといわれる兵器。毒性が強く,国際法上禁止されるべきとの議論が強い。
  • Each of us is a unique, irreplaceable soul enclosed in a fragile shell ― 「わたしたちひとりひとりが,もろい殻につつまれた,取り替えのきかないただ一つの魂だ」
  • be true of ~ ― 「~にあてはまる」
  • to a greater or lesser degree ― 「多かれ少なかれ」 to a ~ degree 「~の程度まで」
  • The System ― 「システム,体制,社会秩序を形成する機構」
  • be supposed to V ― 「Vすることになっている」(そういう建前になっている,ということ)
  • it takes on a life of its own ― 「それ(システム)は,それ自体の生命を持つようになる」 take on ~ 「~を帯びる」
  • that is to bring the dignity of the individual soul to the surface and shine a light upon it. ― 「それ(わたしが小説を書く理由)は個人の魂の尊厳を浮かび上がらせ,それに光を当てることだ」
  • sound an alarm ― 「警報を鳴らす」
  • keep a light trained on The System ― 「システムに光を当て続ける」 keep O + C 「OをCのままにする」 train A on B 「A(の照準)をBに向ける」
  • prevent it from tangling our souls in its web ― 「それ(システム)によって,わたしたちの魂が網の目に絡め取られないようにする」 prevent O from Ving 「OがVするのを妨げる,はばむ」 tangle 「からめる,まきこむ」
  • concoct ― 「調合する」
  • fictions with utter seriousness ― 「きわめて真摯なフィクション」

 

PART III

話題は,亡き父の話へ。昨年物故した父は教師兼僧侶でもあり,戦時中は中国戦線に投入された経験を持つ。戦後,彼は毎朝読経をしていた。かつての敵と味方の死者たちを弔うためだという。今も父のその後ろ姿が目に焼き付いている。

  • graduate school ― 「大学院」
  • was drafted into the army  ― 「陸軍に招集された」 draft 「招集する」
  • offering up long, deeply-felt prayers at the Buddhist altar in our house ― 「我が家の仏壇の前で,長い哀切に満ちた読経をささげる」 deeply felt 「痛切な」(死者の弔いの時に使われることが多い表現) prayer 「祈り」 altar 「祭壇」
  • I seemed to feel the shadow of death hovering around him ― 「彼(父)のまわりに死の影が漂っているのを感じ取れる気がした」
  • the presence of death that lurked about him remains in my own memory ― 「彼(父)のまわりに潜んでいた死の存在が,今もわたしの記憶に残っている」
  • It is one of the few things I carry on from him ― 「それは,わたしが彼から引き継いだ数少ないものの一つである」

 

PART IV

そしてまとめ。「システム」に対して,わたしたち個人は勝ち目はない。ただ,個人というものが,自分も他者もかけがえがないものなのだと信じ続けることしかできない。希望は存在する。

  • individuals transcending nationality and race and religion ― 「国籍,民族,宗教を超越した個人」 transcend 「超越する」
  • To all appearances ― 「どうみても」
  • If we have any hope of victory at all ― 「少しでも勝利の希望があるとするなら」 if + at all 「そもそも(かりに少しでも)…なら」
  • it will have to come from our believing in the utter uniqueness and irreplaceability of our own and others’ souls and from the warmth we gain by joining souls together ― 「それ(勝利の希望)は,わたしたちが自分と他者の魂の独自性,かけがえのなさを信じること,魂と魂が結びつくことで得られる温もりからやって来る」
  • Take a moment to think about this ― 「少しこれについて考えてみてください」 直訳は「これについて考えることに,少しの時間をかけてください」
  • tangible ― 「てごたえのある,確固とした」
  • exploit ― 「搾取する,利用する」
  • I am grateful to have been awarded the Jerusalem Prize ― 「エルサレム賞をいただいてうれしく思います」 be grateful to V 「Vしてうれしく思う,ありがたく思う」

 

エルサレム賞受賞とイスラエル訪問に関しては,周知の通り多くの批判があります。村上自身も,受賞と訪問が持つ政治的意味(そしてあえてイスラエル批判を受け入れる自由で寛容なイスラエルというイメージ作りも含め)を熟慮したことでしょう。その上で彼はただ「語りかける」ことを選択したのだと思います。イスラエルという「壁」を批判するというよりも(ハマスもまた「壁」であろう),「ひとり」(ガザ市民だけでなく,イスラエル市民も)を見つめたいという,ある意味で村上の「オウム事件」の際の立場に通じる想いに発する行動でしょう。

村上の直接の社会的発言は,「オウム事件」以来のことですが,ある意味でわかりにくく,歯切れが悪く,「甘い」といえば甘いのですが,わたしはそれが彼の良さでもあると思っています。彼は社会的発言に際して既存の言い回し,手垢のついた言葉を使うまいと決意しているようです。そしてそれが「わかりにくさ」「歯切れの悪さ」を生んでいるように見えます。「システム」と「個人」という対比は,確かに手垢がついていなくもないですが,今の時点で紡ぎ出せる精いっぱいのタームであるのかもしれません。

イスラエル訪問というあまりプラスにならない選択を彼はあえてしました。プラスにならないからこそ,そう選択したのでしょう。彼のスピーチも小説家としてのアンガジュマン的発言というより,たまたま小説家であった「ひとり」のつぶやきに似ているような気がします。

決して強いメッセージでもなく,心揺さぶるスピーチというわけでもないですが,「ひとり」の人間の誠実なことばを感じることはできます。

 

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by rickie | Posted in 英語の作品を読もう, 英語の落としもの, 英語を読む | No Comments »

梅は咲いたか

2月
2009
17
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関東近辺は土日まで春の陽気だったのに,月曜の晩からは一転,真冬に戻ってしまった。まだ2月半ばなのだから,「真冬」には違いないのだが。

 

梅は咲いたか

梅は咲いたか

わたしの住む町は梅の名所らしく,駅からつづく坂を登り切ると梅林もあるし,庭に白梅・紅梅の植栽を見かける家も多い。「観梅会」なるものも間近だ。酒屋が地元でとれる梅から造った梅酒を売り出すのはいつ頃だったか。

 

梅。学名 Prunus nume。英語では,Japanese apricot とも,Chinese plum とも言う。春の季語。日本や原産の中国のみならず,韓国,ベトナムなど東アジアで広く愛でられてきた。

 

奇妙によじれた枝から,花そのものがつぼみとみまがうほどの小ぶりでつつましい咲き方は,桜の華やかさとはちがった風情で,愛らしく,どこかほほえましい。「春告げ草」という別名があるらしい。

桜はまだかいな

桜はまだかいな

 

 

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by rickie | Posted in 雑記 | No Comments »

自由英作文のためのいろいろな表現 2

2月
2009
6
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昨日のつづきです。

即席でそれなりの答案を作る方法について『パターンで書く自由英作文 【合格最低ラインを狙う】』をまとめましたが,そこで触れたパターンで使う小道具がこれです。ばらばらの文の羅列を,まとまった論理的構築物にするためには,どうしててもこうした小道具が不可欠です。

 

「第一に・・・,第二に・・・」 ― ポイントを列挙する

  • First, ・・・・. Second, ・・・・. 「・・・・」の部分は,いくつもの文からなる長い論述でもいいし,単語だけの短い列挙でもOK。
  • Firstly, ・・・・. Secondly, ・・・・. 上と同じだけれど,こちらの方が硬い表現だと言われます。

序数(first, second)を使うと,最初からいくつのポイントを述べるかが決まっているようで,頭良さそうだけど少し堅苦しいと感じる場合は,次のように「まず」→「その上さらに」という展開も考えられます。

  • To begin with, ・・・. / First of all, ・・・. / For a start, ・・・. 「まず第一に」
  • Moreover, ・・・. / Furthermore, ・・・. 「その上」「さらに」 これが「第二に」の代わりに使えます。これらと同じ意味を持つものに, besides / in addition がありますが,この2つは「第二に」というよりは「おまけとして言っておくと」というようなやや軽い響きがあります。(さらに弱い「どうでもいいけどついでに言っておくと」という感じなのが for that matter)

上を組み合わせて,To begin with, ・・・ → Moreover, ・・・ という流れになります。

もう少し自由にまとめたければ,There is one problem, which ・・・. And another problem is that ・・・. のような,one … another … を組み合わせて使う方法もあります。

 

「確かに~だが」 ― 譲歩できるところまで譲歩し,その分だけ後の主張を強調する

  • It is true that ・・, but ~     「なるほど・・・だが,~」
  • ・・・ may ・・・, but ~       「・・・かもしれないが,~」
  • ・・・ certainly ・・・, but ~      「 確かに・・・だが,~」
  • ・・・ of course ・・・, but ~     「  もちろん・・・だが,~」
  • ・・・ indeed ・・・, but ~      「 確かに・・・だが,~」
  • ・・・ no doubt ・・・, but ~      「 確かに・・・だが,~」

これらにおいて,前半は but 以下を言うための布石にすぎません。「彼らの言ってることも・・・だし,わかるよ。わかるけど,やっぱり~」という感じ。当然,重点は後半にあります。but を使う代わりに,however を使ったり,前半の最初に Though を使う方法もあります。

 

「しかしながら」 ― 逆接語はその後が強くなる

  • But     「しかし」
  • Yet     「しかしながら、それでも」(文頭)
  • Still     「やはり」(文頭)
  • however     「しかしながら」
  • nevertheless     「それにもかかわらず」

but, yet, still の3つは等位接続詞(yet は and yet,still はbut still という副詞的用法も )で,後には S + V を伴います。それに対し下の3つは副詞(句)なので,文中での位置は比較的自由です。

〇 I made a serious mistake, but she knows about it.

☓ I made a serious mistake, however, she knows about it.

〇 I made a serious mistake. However, she knows about it.

〇 I made a serious mistake. She, however, knows about it.

 

「その一方,それに対し」 ― 対比・対照のパターン

  • on the other hand     「他方で,その一方」
  • in contrast, 「それとは対照的に」
  • ・・・, while ~     「・・・,その一方~」
  • ・・・, whereas ~     「・・・,その一方~」

上の二つは副詞句。ピリオドで切れた前の文とこれ以下の文を対比します。下の二つは接続詞なので, S + V ・・・, while S + V ~ のように文と文をカンマ+ while でつなぎます。

 

「たとえば」 ― 例を挙げる

  • Take ~ for example. 「~を例に挙げて(考えて)みよう」
  • for instance     「例えば」
  • for example     「例えば」
  • ・・・, say, ~     「・・・,例えば,~」
  • such as …     「・・・のような」
  • to name just a few. 「ほんの二,三挙げると」

Take ~ for example[as an example]. は「~の例を挙げて論じてみよう」という感じなので,そのあとでその例についてじっくり書かなければなりません。

say や such as は,その後にふつう名詞が来ます。

to name just a few は, Modern cities have a lot of major problems; about crimes, overpopulation, many kinds of pollution, to name just a few. のように使います。

 

 

 

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by rickie | Posted in その他(高校生向け), 学習アドバイス, 英語ワンポイント | No Comments »

自由英作文のためのいろいろな表現1

2月
2009
4
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『自由英作文のための表現集』をこのサイトの「ページ」の方で計画中なのですが,ちょっと時間がかかりそうなので,こちらに草稿段階のものを載せることにしました。読解の手がかりとしてのつなぎ言葉を扱った Discourse Markers (指標語)というページもあります。

 

「・・・だと思う」 ― 意見をそのまま自分の考えとして提示する

「思う」「考える」をいつも I think で書くのは芸がないし,いちいち「・・・だと思う」と言う必要もない。言い切ってしまってもかまわないから,以下のものを使わない手もある。

  • I think that  S + V これがいちばん当たり前だけど,多用しないこと
  • I guess S + V, I believe S + V これらは I think とほぼ同じように使える
  • I am sure (that) S + V 「きっと・・・だと思う」というやや強めの表現
  • I cannot help thinking S + V 「・・・だと考えざるをえない」 なぜそれしか「考えの選択肢」がないのかの理由も述べておかないとまずいでしょう
  • I have to say that S + V 「・・・だと言わねばならない」 これも強いですね
  • It seems to me that S + V 「・・・ように思える」 逆にこれは弱め。 I seem … ではなく,形式主語を用いることに注意

 

「・・・だそうだ」 ― 伝聞・人から聞いたこと

もちろん, A scholar says … 「ある学者は・・・だと言っている」とか, I once read a newspaper article, which said … 「ある新聞記事を読んだことがあるのだが,それは・・・だと言っていた」というような書き方もアリです。

  • I hear S + V 「・・・だそうだ」 実際に聞いたのは過去でも,現在形を用いることに注意。特定の人に聞いたことというより,世間で言われていること
  • according to ~ 「~によれば」 これはおなじみでしょう。これを使う時は,S + say などを使う必要はない。つまり,☓ According to him, he says …
  • I was told that S + V 「・・・だと聞いた(ことがある)」 こちらは特定の人に聞いたこと。直訳では,「・・・と言われた」。誰に聞いたかも言いたければ, I was told by one of my teachers that … のようになる
  • We often hear it said that S + V 「しばしば・・・と言われるのを耳にする」 形式目的語を用いた表現。当然,世間でよく言われていることや決まり文句などを後にもってくる

 

「言い換えると」「要するに」 ― 同じ内容を,別の言葉で言い換える時

会話では, I mean をつなぎ言葉的に使って,"…, I mean, ~" 「・・・,つまり,~」が便利ですが,書き言葉では次のようになります。

  • In other words, … 「言い換えると,・・・」
  • to put it another way, … 「言い換えると,・・・」
  • By that, I mean … 「その言葉でわたしが言いたいのは,・・・」
  • that is (to say), … 「すなわち,つまり・・・」

これらを使わずに,コロン(:)でつなげる手もあります。There still remains an important issue: how we should spend the money. 「まだ重要な問題が残っている,つまり,いかにその金を使うべきかである」

言い換えは言い換えでも,前言を要約した言い換えは,

  • in short, … 「要するに」 いちばん簡単な表現
  • to make a long story short 「要するに」 直訳すると「長い話を短くすると」
  • to sum up 「要約すると」

この要約を最終部で行えば,次の,結論を導入する表現になります。

 

「結論として」 ― 最終的結論を述べる

最初にすでに同じことを言ってあれば,最後の部分に結論は必要ありません。最初でテーマの提示だけしかしていないなら,結論が必要になります。

  • in conclusion 「結論としては」
  • I [We] can conclude that S + V 「・・・と結論づけることができる」
  • I [We] can draw a conclusion that S + V 「・・・という結論を引き出すことができる」 これらは最終パラグラフに書くのがいいでしょう。 can を must にすることもできます。
  • It may be said that S + V 「・・・と言っていいだろう」これは結論以外でも使えますが,結論として使うとかなり弱め,控えめになります。断言を避けたがる日本人向けではありますが。

 

「だから,だとすれば」 ― 論理を一歩前に進める

<原因 → 結果> を述べる表現。「その結果」「だから」「従って」「それゆえに」などのはたらきです。いちばん簡単なのは, so ですね。

  • accordingly, therefore 「だから,したがって,それゆえ」 文頭だけでなく,文中に挿入することも可能
  • hence, thus 語源的な意味は, hence = from here 「ここから(次のことが言える)」, thus = in this way 「このようにして(次のようになる)」 hence は少し硬い文書で使う。
  • as a result 「その結果として」 「その」と訳すけれども the ではなくて a です。
  • for this reason 「この理由のために」 理由が複数あれば for these reasons。 this(these)の代わりに, that(those)も。
  • That’s why S + V 「そういうわけで・・・」 文法でやったと思いますが, That is the reason why S + V のthe reasonが省略されています。直訳は「それが・・・の理由だ」。 That を This にしてもOK。
  • It follows that S + V 「したがって,・・・ということになる」 直訳すると「・・・ということが後に続く」。前文を受けて,前文の論理的帰結として「・・・」が言える,ということ。
  • If so, … 「だとすれば」 直訳すると「もしそうならば」ということ。

 

 

 

 

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by rickie | Posted in その他(高校生向け), 学習アドバイス, 英語ワンポイント | No Comments »