英和辞典を比較する 総評

ブログ・パートで「英和辞典を比較する」と題して「ジーニアス」「ルミナス」「ウィズダム」「ロングマン」の4英和辞典を比べる企画を行ってきました。軽い気持ちで始めたのですが,12回にわたってしまい,全体量としても,そこそこ増えてしまいました。まだ書き足りなかったこともありますし,全体のバランス的にも語法解説の比較が多くなってしまったきらいがありますが,とりあえずこのへんでまとめておくことにします。

 
 

そこでも書きましたが,どれかの辞書をけなすとか,推奨するとかいう意図があったわけではありませんし, ひとまず終わってみてふりかえっても,どの辞書も「よくできているなあ」と感心しています。英和辞典のおすすめは何か,という情報を求めてこのサイトにたどりついた方もかなりの数いらっしゃるようなのですが,どれもおすすめです,と答えるしかありません。むろん,小さな欠点はあるでしょう。改良の余地もあるかもしれません。あちらこちらで,「語数が少ない」「説明が難しい」「重要な××がのってない」などの批判の声も聞こえないわけではありません。でも,欠点をあげつらえ始めれば,どの辞書でも大差ないでしょう。本来完璧な辞書などありえませんし,欠点も個性と言うべきものかもしれません(バグではなく仕様!)。

日本の学習用英和辞典は,おそらくは大学受験という制度と英語ブームのため,世界各地で発行されている英語-各国語辞書(英仏・英独など)の中ではずばぬけて優れた辞書になっています。日本と同様の入試制度を持つ韓国や中国の英韓・英中辞典についてはよくわかりませんが,英仏・英独などと比べれば問題にならない優越を保っていますし,仏和・独和と比べても,さらには私が受験生だった時代の英和辞書(当時は研究社「英和中辞典」が独走していました)と比較しても,詳しさ・ていねいさ・工夫の度合いなど,現在の英和辞典はこれ以上はなかなか望みにくい水準にまで到達しています。

英英辞典と比べるとどうなのか。むろん,英語を英語で説明している辞書を使う方が学習の面では望ましいことは確かで,その点で英英辞典の必要性は減ることはありませんが,語法などの解説では英和辞典の解説の方が詳しいと言えます。ただし,これは英英辞典の世界では,単語の解説をするふつうの dictionary と,語法解説をする usage dictionary が分業しているためです。逆にいえば,日本の英和辞典は総合英語辞典の観を呈していることになります。

各英和辞典には個性があると言いました。その個性を簡単にまとめてみると,次のようになるでしょう。あくまでも,個人的感想です。

● ジーニアス

「語法のジーニアス」という評判にたがわず,語法面の詳しい解説が特徴。詳しいということは,やや例外的な言語現象についても記述することになるので,時に大学受験のレベルを越える解説がのることもある。その点では,英語が苦手な高校1, 2 年生などには苦しいこともありうる。逆に大学生になっても,それ以降でも十分使える。

● ルミナス

「ジーニアス革命(?)」以前には天下を取っていた研究社の上級学習用英和辞典。用例の解説の仕方や,リスニング,文法への言及の仕方からは,「ジーニアス」よりも高校生の学習という用途への配慮が強いように思える。その分,同社の「ライトハウス」との差別化の意図・効果は微妙。英語が苦手な高校生なら,「ジーニアス」より,これか「ライトハウス」の方がいいかも。むろん大学生(以降)でも使えますが。

● ウィズダム

今回の調査で,あまり期待していなかったのに(失礼),意外に「いいんじゃない」と思ったのがこれですね。十分詳しいのに「ジーニアス」ほど,とんがってなくて(感覚的な言い方ですが),クセが強くない。やさしくはありませんが,万人向きかもしれません。それに,どうでもいいことかもしれませんが,手にとってなぜだが手になじむ感じがあります。紙質のせいか,他の辞書より薄く仕上がっているようです(ページ数は「ルミナス」と同等なのに)。

● ロングマン

英和辞書界期待の新人。見た目が華やかなので,高校生には受けるかも。語法面では,確かに上の3者ほどの詳しさはありません。これは「ロングマン現代英英辞典」(LDOCE)を出自に持つ辞典だからでしょう(まえがきには,『LDOCEを参考にはしているが,独自に作った』むね書かれていますが)。したがって,詳しい語法解説が欲しい人には向かないかもしれませんが,訳語の選び方など随所に工夫は見られます。

 

大学受験とか,高校生の英語学習などの観点からすれば,辞書の優劣よりも,辞書をどう使うかという方がはるかに重要な問題です。辞書を開いて(電子辞書の画面で)英単語の適当な日本語訳をみつけたらおしまい,というような使い方をしている限り,どの辞書も宝の持ち腐れになります。もったいなさすぎです。

 

 ブログ・パート 「英和辞典を比較する」シリーズ

英和辞典を比較する 1 基礎データ

英和辞典を比較する 2 単語の引き比べ 

英和辞典を比較する  3 文法・語法 全般1 

英和辞典を比較する  4 文法・語法 全般2 

英和辞典を比較する  5 語法 名詞 

英和辞典を比較する  6 語法 形容詞・副詞 

英和辞典を比較する  7 語法 動詞 

英和辞典を比較する  8 類義語 

英和辞典を比較する  9 新語 

英和辞典を比較する  10 会話表現 

英和辞典を比較する  11 各種囲み記事 

英和辞典を比較する  12 テスト(?)

 

関連ページ

辞書・電子辞書の使い方 (1) 英和辞典 その1

辞書・電子辞書の使い方 (2) 英和辞典 その2

電子辞書の選び方 (2008年)

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