高校・塾・予備校の授業の予習と復習(2) 予習

予習はどうやるか

予習は辞書・参考書などを何も見ずにやるのがいいと思っている人が意外に多いのですが,そうとは限りません。入試本番と同じ条件で問題に取り組む練習は必要ですが,そういう練習は秋以降に徐々に増やしていけばいいことで,最初からテスト形式の予習である必要はありません。特に長文の場合,平均して1行に1つ以上わからない単語があるなら前後関係から意味を推測するのはかなり困難なので,むしろ辞書を引きながらじっくり読む練習の方が長期的には実力になります。

もちろん,単純な単語の意味問題(文法の単語問題や,長文の中の「同じ意味のものはどれか」のような問題)は,辞書を引いてしまうと練習になりませんが(そういう問題は,文脈からの意味推測力をためしています),それ以外の問題では辞書を使って予習するのはむしろおすすめです。

ただし,問題点もあります。問題は,何でもかんでも辞書を使って予習をすると時間がなくなってしまうこと,予習=辞書調べに終わってしまうこと,です。そういう場合は,「この単語がわからないと,先に進めない!」というような単語に絞って,そこだけ辞書を引くことにすればいいでしょう。もっともどの単語が大事かを見分けるのも実力がないとできないことですが。

勉強は,予習 → 授業 → 復習 というセットをワンサイクルとして進みます。だから,理想的なことをいえば,予習や授業の時点で,復習の際にどのように勉強を完成させるかまで考えておくと,あとで楽です。復習が勉強の完結編になるので,予習と授業はそこへ向けた準備作業であり,あらかじめうまく復習できるようにしておくわけです。

 

文法の予習

文法問題の予習は,問題を解けばいいわけですから,予習方法についてはあまり悩む必要はないように見えます。ただし,文法問題はクイズではありません。あっていた,ちがっていた,という結果よりも,なぜ自分はその答えにしたのかが大事です。授業・復習との連携を考えて,

  1. その問題のポイントは知っているし,答えにも自信がある
  2. 出題されているポイントはうろ覚えだったり,自信がないが,たぶんこれが答えかな
  3. まったく手も足も出ない

などに分類し,✔△〇などのマークをつけておきましょう(1 タイプの問題が✔)。もちろん1. の問題でも授業で違っていることがわかったら,〇に変更します。復習の時点でもう一回やり直すときには,〇印の付いた問題に重点を置きます。

何を理解していて,何がわかっていないのか,わかっているつもりになっているが本当に分かっているのか,そのへんをできるだけはっきりさせることが予習の目標です。

 

読解の予習

学校のリーダーと,塾・予備校などの長文総合問題とではやり方が変わりますが,問題形式になっている場合,上で述べたように,辞書を引かず時間を計ってテスト形式でやるのは,2学期(後半)からで大丈夫です。ふだんは1 ~ 2 時間かけて辞書を引き引きじっくり取り組んでいいですが,逆に時間がない時にテスト形式予習に切り替えてみるのもいいでしょう。辞書の使い方については,辞書・電子辞書の使い方 (2) 英和辞典 その2 を参考にしてください。

 ● まず全体を俯瞰ふかんする

入試問題など設問のついている長文であれば,どんな設問があるか目を通す必要があります。解答形式(記述問題はあるかなど)や設問のタイプ(下線部読めば答えられそうか,全体を読まないとできそうもないのか)などもいちおう頭には入れておきたいですが,それよりも読解上の手がかりになりそうなものを探してください。長文の最後には出典・タイトルや語注がある場合があります。設問が内容のヒントになる場合もあります。

次に,各パラグラフに段落番号を付けておきましょう(小説文の場合は不要)。各段落の最初の文が簡単に読めそうなら,各パラグラフの最初の文だけ拾い読みして,全体の見取り図を頭の中に作成するという読解法( first-sentence reading )もあります。段落の最初の文はその段落のテーマを述べることが多い,という事実にもとづいた読み方です。

 ● 次にパラグラフを俯瞰する

わからない単語が1行に1 ~ 2個以下であれば,1つのパラグラフを辞書を引かずに強引に読み切ってから,最初に戻って一文ずつ読むことがお勧めです。パラグラフを読み切ることで「for example とあるから,ここは例だな」「however が出てきたので,前と逆のことを言っているな」という流れが漠然とつかめればOKです。

 ● 精読段階

一文一文の精読で,いちばん避けたいのは「単語の意味をなんとなくつなげて,なんとなく文の意味を想像する」という習慣をつけてしまうことです。実は英語で伸び悩む人(つまり大多数の生徒)はそういう習慣をつけてしまっています。高校入試はそれで乗り切れても,大学入試は無理です。今までそれでうまくいったとしても,一度そのやり方を忘れてください。

なんとなくフィーリングで理解するのをやめるとしたら,どうしたらいいのか。もう分かってると思いますが,英文の構造を理解することです。S とか V とか O とか C とか,どれがどれにかかっているとか,ここで切れてるとか,ここまでひとまとまりであるとか,文法の授業で習う知識を長文に生かすことです。文法の授業で習うことといっても,そんな細かい知識が必要なわけではありません。英文の構造を理解するためには,どのようにSとVとOとCと修飾語という5つの部品が,まとまる-切れるの関係を作っているかを理解すればいいだけです。この太字の部分が英文の構造というものです。文法ではこまかいことばかり覚えさせられますが,読解で必要なのはこのマクロ的文法です。

予習をどこから手をつけていいかわからなければ,まずこのS, V, O, C を文の上に書き込んでみてください。はずれているかもしれませんが,授業ではその部分をしっかり聞けばいいだけです。切れ目にはスラッシュ(/),まとまりは (   ), [   ], {   } などでくくってみましょう。それだけでも予習の第一歩になります。

 ● 全文和訳は必要か?

昔は(といっても10年くらい前)は,やっている生徒が多かったのですが,最近はめっきり減ってしまいました。訳読中心主義に対する反動から教え方が多様化したこと,生徒(教師も)のメンタリティーの変化のため一文一文の精読という労多い作業が嫌われがちであること(あるいはいわゆる学力低下)などが原因でしょう。もちろん,学校などで先生からやるように指示が出ていればやるべきでしょう。やって損にはなりません。

特にそういう指示がないのであれば,ノートに全訳することまでは必要ないでしょうが,ひとつひとつの文をじっくり読んでいく(頭の中で訳す=理解する)ことは必要です。いわゆるパラグラフリーディングは,文と文,段落と段落の関係性を読み取ることですから,文のレベルで読めていなければ,あまり有効な武器にはなりません。

● 理想と現実

予習 → 授業 → 復習 というサイクルに慣れてきて,英語もだいぶ読めるようになってきたら,当然予習のやり方が変わってくるかもしれません。入試が近づいてきたら,テスト形式での予習を増やしていくことも必要でしょう。もちろん,自分で編み出した予習法を守っていくのも悪いことではありません。

特に,秋ごろからは,地歴・物化などの遅れのために英語に時間が使えなくなってくる場合もあります。といって,英語から完全に離れてしまうのは危険です。予習の負担を減らして,授業+復習中心にするという手もあります。

ケースによりさまざまですが,いずれにせよ,浅い予習と深い予習を必要に応じて組み合わせていくのが最善の策だと思われます。

  • 浅い予習   テスト形式で時間を計って問題を解く。問題形式によってかなり異なりますが,一般的には長文の長さがB5版のテキスト1.5ページ程度であれば,20 ~ 30 分くらいが目安。和訳問題など,単語がわからないと白紙になってしまうようなものに関しては,最小限の範囲で辞書を引く。
  • 深い予習   時間の許す限りで,辞書を引きながらじっくり取り組む。わからない部分には実線のアンダーライン,自信のない部分には点線のアンダーラインなどのマークをつけておく。パラグラフごとに余白に内容要約メモをつける。内容真偽問題(「本文の内容と一致するものを選べ」型)では,なぜそれが正しいのか,それ以外が間違いなのかの根拠となる本文中の行番号を書いておく(「l. 15 の~と矛盾する」のように)。結局この長文は何が言いたいのか,を常に考えながら一文一文を読んでいく。

本当の理想は,まず浅い予習をやってから,深い予習をやるという,予習を2回(!)やることなのですが,現実的には不可能でしょう。浅い予習と深い予習の中間くらいで,自分にあった方法を見つけるのがいいと思います。

 

英作文の予習

英作文の場合,予習をしてみてまったく英語になってない文を書くようなら(と教師に言われるのなら),予習はむしろしない方がいいかもしれません。英語の構造を踏まえないで単語を羅列する習慣をつけてしまうと,そこから脱却するのに苦労するでしょう。復習だけでも英作文力をつけることはできます。(復習の項参照)

英作文は数学のように公式に数をあてはめて計算すればできるというわけにはいきません。自分が正しいと思う単語を,文法的に正しいと思えるやり方で組み立てればできあがり,というわけではありません。理屈の上でいくら正しくても,ネイティブの人に「そんな言い方はしません」と言われたらおしまいです。だから,英作文の勉強法としては,ゼロから文を組み立てるのではなく,英語でよく使われる表現パターンのストックを増やしていくことが前提になります。このストックが少ないうちは,簡単な問題以外は予習に重点を置かなくてもいいでしょう。

ある程度英語になっている文が書けるなら,予習は有効ですし,先生が添削してくれるような環境があれば一番理想的です。もっとも,添削されて返って来た答案をじっくりチェックする生徒が少ないのは残念です。

予習の上で大切なのは,自分で自分の書いた英文のまちがいを見つける目を作ることです。大半の生徒の英作文の答案は,基本的な間違いを含んでいます。S – V といった英語の根本的構造がこわれている,動詞の形が間違っている(3単現に -s がついていない,take の過去形が taked になっている,受け身にしなければいけないのになってないなど),というような間違いが,採点者としてはいちばん減点しやすい間違いです。書きながら,または書き上げた後で,文法の正誤問題と同じように自分の答案の間違いを探す習慣をつけてください。a にすべきか, the にすべきかなどはむずかしいのですが,書くときに常に意識するようにすればすこしずつわかってきます。なお,和英辞典の使い方については,「辞書・電子辞書の使い方 (3) 和英辞典」を参考にしてください。

 (3) につづく

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