辞書・電子辞書の使い方 (3) 和英辞典

和英辞典が必要になる状況は,大学受験なら和文英訳問題や自由英作文問題,一般には業務用の定型文書や手紙・メール,海外向けの論文・報告書・エッセイなどになります。これらのうちで,業務文書や論文は専門性が高く,それ用の専門辞書がありますから,ここでは取り上げません。

大学受験での英作文や非専門的な英文を作成する時,問題文・課題に与えられた日本語に対応する英語が思い浮かばなければ,「和英辞典」を使うことになります。しかし,「和英辞典」は使い方の難しい辞典です。難しいというか,使わずにすむなら使わない方がいい,使うならちょっとだけ使うための辞典(そして,ちょっとだけしか使えない)なのです。

和英辞典は使い方が難しいと言った理由は,いくつもあります。

  • たとえば,物を表す名詞であれば和英辞典を引けば大方解決するでしょう。「蛍光灯」は a fluorescent lamp,「脾臓」は spleen,「テレビゲーム」は video game です。これらは日本語と英語がほぼ一対一的に対応しているため,和英のその項目にも一つの英語しか出ていません。和英だけで片付く単語と言えます。
  • しかし,こういう単語は少数派であり,少し抽象的な名詞や形容詞,動詞となると候補になる単語がたくさん出ていて,どの語を選ぶべきか迷ってしまいます。しかもその候補のどれもその文には不適格という場合もあります。
  • 英文を作る時は,まず主語と動詞を決定し,文全体の組み立て方を考えなければなりません。日本語の主語動詞をそのまま英語に直すのではなく,全体を組み替えなくてはならなくなる場合が出てきます。そうすると,個々の日本語に対応する単語を探してもだめかもしれません。
  • 英文を作る時は,日本語をそのまま英訳するのではなく,「和文和訳」,つまり同じ意味のまま,英語に直しやすい別の日本文に変える作業が必要になることがよくあります。その際,元の日本語を和英で引いても意味がありません。
  • 仮に使えそうな表現が和英で見つかったとします。しかし,単語だけでは文はできません。その使い方はどうかなどの情報も不可欠です。となると「和英」を引くだけでは不十分です。

結局まとめると,

和英辞典は,英訳する時に,または自分の考えを英文化する時に,ふさわしい英語表現を見つけるための出発点であり,出発点でしかありません。

まず「和英」で使えそうな語の候補を選び,それを「英和」(「英英」まで使えれば理想的)で引きなおして下さい。ここで大事なのは,その文にふさわしい,パクれそうな例文を見つけることです。英和辞典の項でも述べましたが,ここでも辞書で大切なのは単語ではなく,例文です。

昔から,「英作文は英借文(えいしゃくぶん)」というあまり面白くないダジャレがあります(教師がこのダジャレを使ったら,心とは裏腹でいいからニッコリしてあげてくださいね)。単語と文法知識を使って自分で英文を作っても,ネイティヴには「そういういいかたはしない」と一蹴されてしまうかもしれません。そこが英文を作る際の不自由なところです。日本語に直す場合とは違って,外国語で表現することは,自分の創意工夫だけでは自己満足に終わってしまうことが多いのです。独創的な表現はネイティヴ並みの表現力がつかないと無理です。

和英だけでなく,英和・英英を駆使して,よく使われている表現・用例を盗み,問題・課題・文脈にあわせて改造する,これが和英辞典の使い方ということになります。和英だけでは完結しない,ということです。

 

 

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2008.02.22 Ver. 0.6

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