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高校生向け新書 3 《理論社 YA新書 「よりみちパン!セ」》

7月
2009
30
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「よりみちパンセ」シリーズは,ちょっと独特です。

執筆陣も,学者(白川静,養老孟司,小熊英二,小倉千加子など)あり,作家(重松清,田口ランディ,伊藤比呂美)あり,社会的実践者(徳永進,村瀬孝生,湯浅誠)あり,その他,芸人(玉袋筋太郎),右翼活動家(鈴木邦男),エッチ系クリエーター,正体不明(叶恭子)など,ちょっと他では見られないくらいバラエティに富んでいます。

テーマも,学問的なはなしよりも,若い世代の人(中高生が主な対象)の悩み・苦しみに正面からぶつかる内容が多く,恋愛・性・世の中・酒・ドラッグにいたるまで,昔の大人が見たら目をむいちゃいそうな内容を含んでいます。

もちろん,それがあなたになにか大切なものを与えてくれるかは,その筆者とあなた次第でしょう。まとはずれかもしれないし,人生を変えてくれるかもしれません。

 

なお,このシリーズは「新書」と名前がついていますが,ちょっと大きめです。

 

アマゾン: →    理論社YA新書「よりみちパン!セ」

 

1 みんなのなやみ 重松 清 10代の悩みや疑問という「生の声」に、直木賞作家の重松清さんが、「正解」以上にバリエーション豊かな考え方で答えてくれる、心強い相談室。
2 神さまがくれた漢字たち 白川 静 監修 山本史也 著 その昔、人間がいまほど自分中心じゃなかった時代、人間と自然、そして神さまとの豊かな関係から、漢字というものは生まれたのです。漢字を見る目が180度変わる、刺激的な物語。
3 いのちの食べかた 森 達也 魚は切り身で泳いじゃいないって、TVで見て知ってるよ。じゃあ、毎日食べてる大好きな「お肉」は、どんなふうに食卓に届くの? 誰も教えてくれない、食べものといのちの、たいせつな関係。
4 さびしさの授業 伏見憲明 どうしたら自分が「生きられる場所」をみつけていくことができるのか。「世界」と「君」の間に生じる亀裂に対して、君自身のかけがえのないプライドを保ちつづけながら、ひとり向き合っていく方法を提案する。
5 正しい保健体育 みうらじゅん 「どうしてセックスしてはいけないの?」「包茎は手術したほうがいいの?」──若者に伝えるべき本当の「セックス」とは何か? 性教育の旗手みらうじゅんが放つ、童貞時代を生き抜くスタンダード!
6 14歳からの仕事道(しごとみち) 玄田有史 やりたいことがわからなくても大丈夫。まだイメージの定まらない自分の将来にひそむ、「仕事」や「働くこと」そのものへの不安に向き合うための真摯なヒント。
7 不登校、選んだわけじゃないんだぜ! 貴戸理恵+常野雄次郎 「不登校は病気じゃない、自分で選んだんだ。」そう言った瞬間にこぼれ落ちていく本当の気持ちと現実、背負わされていく責任。もと小学校不登校者である若き研究者と、もと明るい不登校エリートがリアルなことばをさぐる。
8 こどものためのドラッグ大全 深見 填 なぜ人間はドラッグに関心を持ってしまうのか。ドラッグと人間の関係の長い歴史、効果の裏の危険性、中毒者たちの自助グループの様子や連絡先などのSOSラインまでを網羅する。
9 ハッピーになれる算数 新井紀子 「数学」と聞いただけで、つい視線が宙に泳ぐキミはおもいきって「算数」までもどろう。そもそものしくみを考えるのって、算数や数学にかぎってだけ必要なことじゃない。キミがハッピーになれるための、秘訣でもあるんだから。
10 ひかりのメリーゴーラウンド 田口ランディ どうして私は「私」なんだろう。私たちはいったいどこから来て、どこへ還ってゆくのだろう。少女が向き合いつづけた、光と影に彩られたある初夏からの一年間──。若い世代へ贈る、著者初めての純愛小説。
11 バカなおとなにならない脳 養老孟司 「最近のワカモノどもの考えてることは理解できん!」……そんなこと、それこそいまどきのバカなおとなたちに言われたくないよ! でも、どうしたらいいんですか、脳ミソの専門家、養老先生。中学生から高校生たちの、迷問、奇問、素朴な疑問に答えます。
12 みんなのなやみ 2 重松 清 子どもたちを主人公とするたくさんの物語を描いてきた作家が、10代の「悩み」をとおして、子どもたちに贈る言葉。第一弾につづく、勇気あふれる相談室。
13 オヤジ国憲法でいこう! しりあがり寿+祖父江慎 わが子よ。そして、いまどきの若者よ。オヤジ呼ばわりされ、家では洗濯物だって別に洗われてしまうワタクシだが、キミたちに伝えたい熱い思いがある。「オジサン」が語る、おかしく、かつ、アナーキーな人生のルール。
14 日本という国 小熊英二 ぼくたちがいま暮らしているのは、「日本」という国。じゃあ、「日本」って、いったいいつ、だれによって作り出されたのか、きみは知っている? みずから 「学ぶ」ことの意味とそのための技法に触れながら、いまにつながる「歴史」を知り、未来を探るために描かれる、刺激的な近代史。
15 気分はもう、裁判長 北尾トロ 「裁判なんて、カンケーないよ」と思っているキミ。でも、いちど気軽に「法廷」をのぞいてみよう。法律をルールにした真剣勝負のやりとりに、世間とはいかに広く、深いものであるかということを、キミは身をもって知るはずだ。
16 いま生きているという冒険 石川直樹 降りかかってきたすべてのことを、自分の五感すべてで引き受けて、堂々と世界と向き合っていけばいい──。最年少で世界七大陸最高峰登頂を達成し、自然だ けをたよりに進む航海術を学び続けるなど、世界を素手で旅する若き<冒険者>による、ことばを超えた出会いへの、やさしいいざない。未発表カラー写真多 数。
17 だれか、ふつうを教えてくれ! 倉本智明 両手が使えなければ口をお皿に近づけて食べる。行儀が悪い! と「ふつう」の人なら思うけど、その「ふつう」とは一体、誰にとっての「ふつう」なんだろう。子どもむけの障害学の一冊。
18 演劇は道具だ 宮沢章夫 「演劇」と聞いただけでなんだかこそばゆい。そう感じるからだを大事にしよう。自分のからだと他人のからだを出会わせて、わくわくするなにかを「いま、ここ」に生み出そう。刺激的な演劇入門。
19 死ぬのは、こわい? 徳永 進 鳥取のホスピス「野の花診療所」を開業する書き手による、いちばんやさしいデス・エデュケーション。こどもの、そして大人にとっても永遠の謎である「死」について考える。
20 男子のための恋愛検定 伏見憲明 たった一人を好きになる、不可思議な心のメカニズムから、セックスにひそむリスクを回避するためのノウハウまで、「恋」がもつ可能性とかけがえのなさを説いた男子のための「恋愛論」。
21 世界を信じるためのメソッド ぼくらの時代のメディア・リテラシー 森 達也 メディアと情報の洪水のなかで、ぼくらはなにを疑い、なにをどう信じ、考えていったらいいんだろう? いまもっとも子どもたちに、若い人たちに、そしてわれわれおとなにとって切実に必要で、もっともビビッドなメディア・リテラシー。
22 コドモであり続けるためのスキル 貴戸理恵 コドモはみんな「一人前のおとな」にならなきゃいけない。……そういわれればなにも言えない私たち。でもちょっと待て! そんなおとなが作り出している世 の中、ホントにそんなにいいもんか? おとなが隠してる、この世の中の仕組みの「公然の秘密」を探りながら、コドモのまま生きるためのスキルを伝授!
23 生き抜くための数学入門 新井紀子 とりあえず公式覚えて数学をやりすごしてるあなた、はっきり言ってやばいです。数学は、わけわかんないこの世界を生きぬくための、ナイフみたいに基本的な 道具。「そもそも、それってなに?」から始めて、リアルな答えを探そう。「数学」というナイフの研ぎ方、使い方を、愛をもって伝授します。
24 男子のための人生のルール 玉袋筋太郎(浅草キッド) ひとは、男に生まれるのではない。男に「なる」のだ──自らのからだやコンプレックスへの向き合い方、人との関係のいちばん基本の姿勢、世間という大海原 へ漕ぎ出していく方法など、自分だけの矜持をもつ本物の「漢(おとこ)」になりたいすべての少年へ満を持しておくる、最強の「人生のルール」。
25 おばあちゃんが、ぼけた。 村瀬孝生 谷川俊太郎氏大推薦の老人通所施設「宅老所よりあい」の若き所長による、笑わずにはいられない、泣かずにはいられない仰天レポートの数々。「ぼけた」お年寄りたちに日々振り回されることで見えてくる、人間の最大限の不思議とどうしようもない魅力。
26 「美しい」ってなんだろう? 美術のすすめ 森村泰昌 美しさ、ってなんだろう? 一見きれいじゃないものも、大したように見えないものも、いつもの見方をちょっと変えれば、すごく美しく見えてくるものがある。新たな美しさの発見と人生の豊かさの関係を、トップアーティストが、身近な形式で特別講義。
27 オンナらしさ入門(笑) 小倉千加子 「女の子って、何でできてる?」お砂糖とスパイスと、素敵なものいろいろでできている。でも、誰がそう決めたの? 私は誰にとっての「甘い」ものなの? 家や学校、世間で経験することになる女の子の困惑と生きがたさをのびやかに笑い飛ばせるよう、フェミニズムがとっておきの勇気ある知恵を伝える。
28 ひとりひとりの味 平松洋子 人間はいろいろだ。もちろんおうちの姿だって、それぞれいろいろ。だから、じつは、全ての人に共通する「おいしい味」なんていうものはないんです。フード・ジャーナリストとして、また稀代のエッセイの名手として絶大な人気を誇る著者がおくる、ひとりひとりの「味覚道」。
29 ひとはみな、ハダカになる。 バクシーシ山下 子どもがセックスを知ることに、眉をひそめる大人がいる。でも、戦争や飢餓や病気とかかわりなく生きることは可能かもしれないけれど、「セックス」とかか わりなく生きていくなんて、不可能なんじゃない? アダルトビデオをめぐる事柄や物語から、ひとがハダカになることをセキララに、かつ、まっすぐに考え る。AV界の鬼才と呼ばれる監督が伝える、世界でいちばん「ふつう」な特殊講義。興味本位で、問題なし!
30 ついていったら、だまされる 多田文明 しつこいセールスや勧誘、はたまた、ポストに入っている身に覚えのない請求書まで、世の中には身近なところにキミをだまそうとする人がいっぱい。「自分だ けは絶対にだいじょうぶ」なんて頭から思い込む前に、どんな危険があるのか、冷静になって知ることがたいせつ。「自ら、あえてだまされにいく」という仰天 の方法でキャッチセールス評論家の名をほしいままにする書き手が、街にあふれるサギやワナのテクニックから自分の身を守る方法を大公開します。
31 あのころ、先生がいた。 伊藤比呂美 初めて会う人、初めて行く場所──そんな「初めて」の印象深さとともに、日々のくりかえしのなかでじんわり、ゆっくり、何かを伝えてくれたり、さよならを して何年もたってからふと大切なことに気づかせてくれるような「出会い」がある。子どものころ、親の次に身近な存在だった「先生」たちの数々の思い出か ら、等身大のおとなの姿と「出会い」のかたちを豊かに描き出す一冊。
32 家を出る日のために 辰巳 渚 「暮らし」とは、生きることそのもの。代々さまざまなかたちで受け継がれてきた「暮らしの技術」を失いつつある私たちが、「いい加減」に、背筋を伸ばして生きていくためのやさしくて新しい技法を、「家事塾」を主宰する著者がおくる。
33 「悪いこと」したら、どうなるの? 藤井誠二+武富健治(マンガ) 悪いことをしたらどうなるの? 身近なことなのに、私たちは「その後」のことをちゃんと知らない。「加害者」「被害者」、それを受け止める「わたし」。少 年犯罪を長年取材するノンフィクション作家・藤井誠二と、教育問題を異色の手法であぶり出したマンガ鈴木先生の作者・武富健治が、全国の少年院や少年 刑務所をまわって拾い上げた現実を描く。子ども自身が「少年犯罪」を考えるために絶対に欲しかった一冊。
34 失敗の愛国心 鈴木邦男 巷でなにかと話題の「愛国心」。あるものへの「心」を数値で計る意味はなんだ? 歴史と書き手みずからの失敗を軸に、ぼくたちの過去/現在/未来について根本的に問いかける一冊。
35 カレーになりたい! 水野仁輔(東京カリ~番長) 寝ても覚めてもカレーカレー! 各メディアで大活躍、カレーに脳みそと全身を侵略された著者による、前代未聞のカレー本。カレーはみんなの気持ちを、そし て人生をハッピーにする最高のスパイスだ! 巻頭と巻末に、びっくり仰天のフルカラーおまけを付し、楽しさ満載でお届けします。
36 続・神さまがくれた漢字たち 古代の音 山本史也 既刊に 続いて、故・白川静の愛弟子による、学校でも家庭でも教えてもらえない、本当の漢字の物語、第2弾! 自然あるいはかたちないもののおとずれから、人間が 謙虚に学んだものとしての「漢字」レッスンに、「おもいッきりイイ!!テレビ」で、みのもんたもゲストの面々も、思わず驚嘆!
37 叶恭子の知のジュエリー12ヵ月 叶 恭子 ゴーイング・マイウェイと自分勝手は、似て非なる最たるもの。みずからの経験を実学とする、人生の硬派としての著者による珠玉の名言の数々が、あなただけ のかけがえのない人生を導き出す。親や学校の先生からは聞くことのできない、徹底したフェアネスと心からのいつくしみの言葉に満ちた、世界一美しい日めく りカレンダー万年版。
38 恋と股間 杉作J太郎 いかなるピンチのときにでも、力強くマイルドな笑みを浮かべよう。「成功とは、人生における異常事態である」と熱く説く杉作氏が、世間に蔓延するま ちがいだらけの情報をなで切りにしつつ、真に男子の血肉となる、ハードボイルドに超絶な「恋愛術」を指南する。これを読めば、キミにも彼女ができる! た ぶん!!
39 建築バカボンド 岡村泰之 「家」づくりは自分を知り、家族を知り、他人を知るための、心楽しいプロジェクトでもあり、壮絶なバトルでもある。つまり家づくりとは、人生そのものなの だ! 当代の人気建築家がさまざまな角度から丁寧に、そしてときに野蛮に指南する、小学生からの「おれんち」「あたしんち」づくり入門。
40 この世でいちばん大事な「カネ」の話 西原理恵子 なぜわれわれは、子どもに「金」の教育ができないのだろう!? カネがなければ一家離散、カネがなければ一家心中。カネがなければ人生、貧しい。これは真 実だ、ああそれなのに。経済学者やカネの地獄を見ないものにはけっして語れない、そんな、カネと労働のリアルをみつめ、人生の根本を哲学する書。
41 だれでも一度は、処女だった。 千木良悠子+辛酸なめ子 それはもうまさにそれぞれ、正解がないのが正解です。とはいえ消せない不安と好奇心……先輩諸氏がつれづれなるままにあなたに語ってくれる、「そのとき」 のおそるべきバリエーションの数々を、2名の女子ががっつりとご案内。「処女」に関する豆知識と、悩めるあなたへのアドバイスも満載!
42 こどものためのお酒入門 山同敦子 お酒は「飲む」「酔う」ためだけのものじゃない。その以前にこそ、知っておきたいお酒の魅力とその偉大さがある。自然と人間とが生み出すそんな「たからも の」の魅力を、あらゆるお酒に精通することで知られる著者が、心を込めてスケッチする、画期的な「未成年向けお酒入門」。
43 童貞の教室 松江哲明+古泉智浩(マンガ) 映画童貞。をプロデユースにて一世を風靡した映画監督が、今度は活字で自身の童貞時代をドキュメンタリーする!? 男子の絶望と希望を描いて右に出る もののない古泉智浩の巻頭マンガとともに、リアル童貞の「疾風怒濤」が持つ意味を、軽やかに、かつ、深く優しく徹底解剖する。
44 阿修羅(あしゅら)のジュエリー 鶴岡真弓 国宝「阿修羅像」は、キラキラでエキゾティックなジュエリーをまとった、天平のファッションリーダーだった! そしてあまりにも有名なこの少年顔の鬼神の装飾には、現代のアクセサリーや携帯ストラップの持つ秘密が隠されていたのです。
45 きみが選んだ死刑のスイッチ 森 達也 ホームルーム/裁判員制度/死刑。この3つに共通する、最大の注意点はなんでしょう?その答えは、この本のなかにあります。手遅れになる前に、ぜひいま、読んでおいてください。マンガ「小学生にもわからない裁判員制度のイロハ」入り。
46 どんとこい,貧困 湯浅誠 日本社会を覆う「貧困」の問題を、困った「だれか」、さぼった「だれか」の自己責任論ですますのはこれで終わりにしようじゃないか。そして、生きて幸福な社会を、いま、みんなの手で確かに作りだそう!派遣村村長が、静かな情熱をもって初めて子どもたちに語る、希望の書。
47 前略、離婚を決めました 綾屋紗月 前略、離婚を決めました。お母さんがどうしてそう決めたのかを、いとしいあなたたち、お父さん、おじいちゃん、おばあちゃん、親戚や職場の人たち、そして私の知らない人たちにきちんと説明したいと思って、これを書き始めました――。「自立」ではなく「ともに生きる」ことの困難さとかけがえのなさを、画期的な書発達障害当事者研究の書き手がおくる。

 

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by rickie | Posted in その他(高校生向け), 学問を知る, 文献リスト | No Comments »

A Scandal in Bohemia 「ボヘミアの醜聞」 — 9

7月
2009
29
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今回で初めて事件の概要が明かされる。すべてホームズと国王による会話のやりとり。

掛け合い漫才のように,テンポのよい短いことばの応酬です。

 

 

<― 朗読

"Then, pray consult," said Holmes, shutting his eyes once more.

"The facts are briefly these: Some five years ago, during a lengthy visit to Warsaw, I made the acquaintance of the well-known adventuress, Irene Adler. The name is no doubt familiar to you."

"Kindly look her up in my index, Doctor," murmured Holmes without opening his eyes. For many years he had adopted a system of docketing all paragraphs concerning men and things, so that it was difficult to name a subject or a person on which he could not at once furnish information. In this case I found her biography sandwiched in between that of a Hebrew rabbi and that of a staff-commander who had written a monograph upon the deep-sea fishes.

"Let me see!" said Holmes. "Hum! Born in New Jersey in the year 1858. Contralto — hum! La Scala, hum! Prima donna Imperial Opera of Warsaw — yes! Retired from operatic stage — ha! Living in London — quite so! Your Majesty, as I understand, became entangled with this young person, wrote her some compromising letters, and is now desirous of getting those letters back."

"Precisely so. But how — "

"Was there a secret marriage?"

"None."

"No legal papers or certificates?"

"None."

"Then I fail to follow your Majesty. If this young person should produce her letters for blackmailing or other purposes, how is she to prove their authenticity?"

"There is the writing."

"Pooh, pooh! Forgery."

"My private note-paper."

"Stolen."

"My own seal."

"Imitated."

"My photograph."

"Bought."

"We were both in the photograph."

"Oh, dear! That is very bad! Your Majesty has indeed committed an indiscretion."

"I was mad — insane."

"You have compromised yourself seriously."

"I was only Crown Prince then. I was young. I am but thirty now."

"It must be recovered."

"We have tried and failed."

"Your Majesty must pay. It must be bought."

"She will not sell."

"Stolen, then."

"Five attempts have been made. Twice burglars in my pay ransacked her house. Once we diverted her luggage when she travelled. Twice she has been waylaid. There has been no result."

"No sign of it?"

"Absolutely none."

Holmes laughed. "It is quite a pretty little problem," said he.

"But a very serious one to me," returned the King reproachfully.

"Very, indeed. And what does she propose to do with the photograph?"

"To ruin me."

"But how?"

"I am about to be married."

"So I have heard."

「では,そのご相談を伺うことにいたしましょう。」そうホームズは言って,もう一度目を閉じた。

「事実はあらましこういうことだ。つまり,5年ほど前のことだが,ワルシャワへの長期の訪問の最中に,ひとクセもふたクセもある女として名高い女性と知り合いになったのだが,名前はアイリーン・アドラーという。あなたもおそらく名前はご存知かもしれない。」

「すまないが,博士,僕の例の索引で調べてくれないか。」ホームズは目を開けずにつぶやいた。長年にわたり,彼は人事万端に関してありとあらゆることの要点を記録しておくというやり方を採用してきたので,どんなテーマ,どんな人物であれ,その場ですぐに情報を引き出すことは造作もないことだった。この時はその女の経歴が,とあるユダヤ教のラビの記述と,深海魚についての論文を書いた参謀本部の中佐の記述にはさまれているのを見つけ出した。

「ちょっと見せてくれ。」ホームズが言った。「ふむ。1858年ニュージャージー生まれ。コントラルト歌手。ふむ。スカラ座で上演。ふむ。ワルシャワ王立オペラでプリマドンナ。そうか。オペラ界から引退。ほぉ。ロンドン在住。なるほどね。ということは,陛下はこの若い女性に親密な間柄となって,表沙汰にはできないような手紙を出され,今はそれを取り戻したい,というわけですね。」

「まさにそうなのだ。だが,どうしてそれを…」

「ひそかに籍を入れられたなどということは?」

「ない。」

「法的に有効な書類や証明書などは?」

「それもない。」

「となると,陛下,よくわかりませんな。この女性が仮に恐喝なり何なりの目的で,手紙を持ち出したところで,それが本物だと証明できるでしょうか?」

「筆跡というものがある。」

「ははは,偽物だと言えばよいのでは。」

「私用で使っている便箋なのだ。」

「盗まれたと言えばよいでしょう。」

「私の封印が押してある。」

「偽造だと。」

「私が映っている写真もある。」

「買ったものだとでも。」

「ふたりいっしょに映っているのだ。」

「なんと!それはいただけない。陛下ともあろうお方が軽率なことをなさいましたな。」

「まともじゃない,どうかしていたのだ。」

「ずいぶんと不名誉なことをなさったものです。」

「当時はまだ皇太子だった。若かったのだ。今年ようやく30になったばかりだ。」

「取り戻すしかありません。」

「手は尽くしたが,うまくいかないのだ。」

「金で解決なさればよい。買い取ればすむことです。」

「彼女が売ろうとしないのだよ。」

「では,盗む,というのは?」

「5回ほど試してはみた。泥棒を雇って家捜しさせたのが2回。彼女の旅行中に荷物を奪い取ったのが1回。待ち伏せしたのが2回。どれも成果なしだ。」

「手がかりのようなものは?」

「まったくない。」

ホームズは吹き出した。「これはまた,なかなかの事件ですな。」

「私にとっては深刻な問題なのだ。」と,国王はとがめるようにことばを返した。

「仰せの通り。で,彼女は写真をどうしようというのですか?」

「私を破滅させたいのだ。」

「でも,どうやって?」

「私は結婚することになっている。」

「そうらしいですね。」

 

  • Then, pray consult ― pray = please 。(既出)
  • The facts are briefly these: ― briefly 「簡潔に」は,ここでは文修飾副詞(動詞・形容詞・副詞にかかっているのではなく,文全体にコメントを加える働き)で,briefly speaking 「簡潔に言えば」と同じ。 英語では,this, these などは前のことばを指すだけでなく,後ろに来ることばも指せる。つまり, this, these は「次のこと」を意味することがある。(ex.) I’ll say this: she’s innocent. 「このことだけは言っておく。彼女は無実だ。」
  • Some five years ago ― 数字の前の some は「およそ,約」 = about 。
  • lengthy visit ― lengthy 「長ったらしい」 ( very long, often too long, in time or size (OALD))
  • made the acquaintance of the well-known adventuress, Irene Adler.make the acquaintance of ~ 「~と知り合いになる」。 adventuress 「女冒険家,女山師,手段を選ばず富や地位を手に入れようとする女」 ここでホームズが初めてアイリーン・アドラーの名を知ることになりますが,国王の口からは女山師,あばずれ,スベタ扱いされています。
  • The name is no doubt familiar to you. no doubt (副詞)「おそらく,きっと」 be familiar to ~ 「~にとってなじみ深い,~に知られている」
  • "Kindly look her up in my index, Doctor" ― kindly は命令文の前につけて「恐れ入りますが」の感じを付け加える。 look A up in B 「B(本など)でAを調べる」。(ex.) look up the word in the dictionary 「辞書で単語を調べる」。
  • a system of docketing all paragraphs concerning men and things, ― docket 「~の概要を記録する」 paragraph 「(新聞などの)短い記事」 concerning ~ (前置詞)「~に関して」
  • so that it was difficult to name a subject or a person on which he could not at once furnish information. ― 結果の so that …  「したがって,だから...」。 name 「挙げる」, furnish 「供給する,与える」。
  • I found her biography sandwiched in between that of a Hebrew rabbi and that of a staff-commander who had written a monograph upon the deep-sea fishes. ― sandwiched は過去分詞で, find O + C のC(biography にかかると解釈しても同じこと)。 in between ~ 「~の中間に,~にはさまれて」。 that of の that = biography。 monograph 「(短い)研究論文」。
  • Let me see ― Let me see. は「ええと」ぐらいに訳す,ことばを探す時に使う表現でもあるが,ここでは文字どおり「私に見せて下さい」の意味。
  • Hum! Born in New Jersey in the year 1858. ― このへんはそのインデックスの断片を読み上げているところ。
  • Contralto ― 「コントラルト」。アルトと同じで声楽の女性のパートの低音域。
  • 19世紀のスカラ座

    19世紀のスカラ座

  • La Scala ― イタリア,ミラノにある「スカラ座」。
  • Prima donna Imperial Opera of Warsaw ― 「プリマドンナ」はオペラの女性主役歌手。
  • Retired from operatic stage ― retire from ~ 「からを引退する」。ここは過去分詞で完了を表す。
  • quite so! ― 「まったくそのとおり」(英)。
  • became entangled with this young personbe entangled with ~ 「からに巻き込まれる」。
  • wrote her some compromising letters ― compromise 「名誉を汚す」
  • is now desirous of getting those letters back. ― be desirous of ~ 「~をのぞむ」(= desire)。
  • "But how —"  ― 「でもどうして(それがわかったのだ)?」ということ。まだ,手紙のことは言っていないのに...と驚いている。
  • No legal papers or certificates? ― certificate 「証明書」
  • Then I fail to follow your Majesty.fail to V 「Vできない」。 follow 「ついていく,理解する」。
  • If this young person should produce her letters for blackmailing or other purposes,if S should + V は「もし万一~したら(しても)」という意味の仮定法の一種。このshouldを使った if 節があると,主節は仮定法でも直説法でもよい。つまり,ここで how で始まる主節の中では,仮定法のwouldなどがないことに注目。 produce 「(証拠などを)提出する」。 blackmail 「恐喝する,ゆする」。
  • how is she to prove their authenticity? ― be to V(原形)が使われている。 be to V は主に未来のことを示し,「Vすることになっている,Vすべきだ」などいろいろな意味になる。ここでは How will she prove …? とあまり変わらない。 prove + O 「証明する」 ←→ prove + C 「Cだとわかる」。authenticity 「本物であること」。
  • writing ― ここでは「筆跡」。
  • "Pooh, pooh! Forgery." ― Pooh = used to say that you think somebody’s ideas, suggestion, etc. is not very good or that you do not believe what somebody has said (OALD) 「誰かの考え・提案などがあまり優れたものではないことや,誰かの発言が信じられないと言う時に用いる」 forgery 「偽造」
  • My private note-paper. ― note はここでは「手紙」。国王の便箋が特殊なものだったことは前に語られていた。
  • seal   印

    seal   印

  • My own seal. ― seal 「封印」。日本では印鑑を用いる時,欧米ではふつうサインで済ませるが,貴族・国王ともなればsealを使う。これは,朱肉の代わりに溶かした赤い(ろう)を紙の上にたらして,その上に印を押すことで作成する。
  • Oh, dear! ― dear! 「おやまあ」(驚き,悲しみ,失望などをあらわす)。
  • Your Majesty has indeed committed an indiscretion. ― commit 「(犯罪・まちがいなどを)おかす」。 indiscretion 「軽率」だが,抽象名詞に a をつけたり,複数形にしたりすると具象化されて,「~なこと,~なもの」になる。ここでは「(ひとつの)軽率なこと・行動」。
  • insane ― 「正気でない」。
  • You have compromised yourself seriously. ― compromise 「名誉を汚す」(既出)。
  • I am but thirty now. ― この but は副詞で only と同じ。 「~にすぎない」。
  • It must be recovered. ― recover 「とりもどす」
  • "Your Majesty must pay. It must be bought." ― 金を払って解決しろという提案をしている。
  • She will not sell. ― このwillは未来のことと解釈すれば「売らないだろう」。will には現在の意志・固執を表す用法もあり,その場合は「どうしても~しようとする(しない)」となる。翻訳では《延原訳》は未来,それ以外は固執で解釈している。未来なら,まだ売ってくれとアイリーンに申し出ていないことになるが,これだけ手を尽くしているのだから,「もう何度も申し出ているが,どうしても売ろうとしない」の方がいいと思う。
  • Five attempts have been made. ― make attempts 「試みる」の受け身。
  • Twice burglars in my pay ransacked her house. ― burglar 「強盗」。 in one’s pay 「~に雇われて」。 ransack 「~をくまなく捜す」。いくら国王とはいえ,自分の火遊びの証拠を消すために犯罪行為(+他国の主権侵害)を平然と命じ,「それをヨーロッパの歴史に影響を与えかねない」とか言って正当化して,アイリーンを悪役に仕立ててしゃべる男も尋常ではない。
  • Once we diverted her luggage when she travelled. ― divert は「そらす」という意味だが,ここは彼女の手を離れた隙に荷物の行き先をそらす(というか,かっぱらう)こと。
  • Twice she has been waylaid. ― waylay 「待ち伏せする」。
  • It is quite a pretty little problem ― pretty (副詞)「かなり,けっこう」。ここはもちろん皮肉で言っている。
  • "But a very serious one to me," ― one = problem。
  • returned the King reproachfully. ― return はここでは「返答する,言葉を返す」。 reproachfully 「非難がましく」 < reproach 「非難する」。
  • And what does she propose to do with the photograph? ― 直訳すると,「で,彼女はその写真で何をしようともくろんでいるのですか?」 この propose は「もくろむ,企てる」。
  • To ruin me. ― ruin 「だめにする,破滅させる」。 to は前文の propose to を受けて。
  • I am about to be married. ― be about to V 「まさにVしようとしている」≒be going to。
  • So I have heard. ― 「それは聞いています」。新聞などで知っている,ということ。

 

 

 

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If you hate a person, you hate something in him that is part of yourself. What isn’t part of ourselves doesn’t disturb us. (Hermann Hesse)

7月
2009
27
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「君が誰かに憎しみを感じているのなら,それは彼の中にある,君自身の一部を憎んでいるのだ。自分の一部ではないものは,私たちの心を乱したりはしないものである。」 (ヘルマン・ヘッセ)

 


 

「デミアン」(Demian) の一節。

something in him that is part of yourself において,関係代名詞 that の先行詞はsomething。「君自身の一部でもある何か,それが彼の中にもあってそれを憎む」ということ。

 


好きな自分と嫌いな自分がいる。

でも,嫌いな自分など,見たくはないし,見せられたくもない。

 

好きな人と嫌いな人がいる。

好きな人といっしょにいると,好きな自分を見せてくれる。

嫌いな人といっしょにいると,嫌いな自分を見せつけられる。

 

ってなところか。

 

ヘッセが好きだったのは,中学生の頃だ。「デミアン」もその頃読んでいる。

好きといっても,単なる青春小説として読んでいたような気がする。大学生くらいが主人公の青春後期小説(いま作ったことばだが)ではなく,青春前期小説である。いつの時代にもある,大昔なら石坂洋次郎みたいなやつ。今ならば誰だろう。綿矢りさ?島本理生?作者が若いというだけか。あさのあつこ?いや,ケータイ小説があったか...

 

上のヘッセのことばを「デミアン」で知ったのかどうか,記憶ははっきりしない。でも,そのことばの思想にはずいぶん昔からなじんできたような気がする。今自分が感じている憎しみ,嫌悪は,結局彼のせいではなく,自分の中に淵源があるものにすぎない。他人に責任を押しつける方が楽だから,こういうものの考え方は精神衛生上よろしくないように見えるかもしれないが,そうでもない。他人を憎むことも十分ストレスであり,人によっては自分で背負った方が楽な場合もある。

そんなふうに思ってきたのだが,さてそれも結局,背負っている自分の姿に悦に入っているだけではなかったのか。まあ,そこから先は堂々巡り,無限の穴掘りになってしまうので,とっとと切り上げよう。

 

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by rickie | Posted in 引用 | No Comments »

A Scandal in Bohemia 「ボヘミアの醜聞」 — 8

7月
2009
26
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ホームズの部屋に入ってきた男は,妙に派手な格好で態度もすこし尊大です。

ワトソンを見て,あんたは出てってくれと言わんばかりの態度を取りますが,その言い方も大時代的な芝居がかった口調です。

 

I rose to go, but Holmes caught me by the wrist and pushed me back into my chair. "It is both, or none," said he. "You may say before this gentleman anything which you may say to me."

The Count shrugged his broad shoulders. "Then I must begin," said he, "by binding you both to absolute secrecy for two years; at the end of that time the matter will be of no importance. At present it is not too much to say that it is of such weight it may have an influence upon European history."

"I promise," said Holmes.

"And I."

"You will excuse this mask," continued our strange visitor. "The august person who employs me wishes his agent to be unknown to you, and I may confess at once that the title by which I have just called myself is not exactly my own."

"I was aware of it," said Holmes drily.

"The circumstances are of great delicacy, and every precaution has to be taken to quench what might grow to be an immense scandal and seriously compromise one of the reigning families of Europe. To speak plainly, the matter implicates the great House of Ormstein, hereditary kings of Bohemia."

"I was also aware of that," murmured Holmes, settling himself down in his armchair and closing his eyes.

Our visitor glanced with some apparent surprise at the languid, lounging figure of the man who had been no doubt depicted to him as the most incisive reasoner and most energetic agent in Europe. Holmes slowly reopened his eyes and looked impatiently at his gigantic client.

"If your Majesty would condescend to state your case," he remarked, "I should be better able to advise you."

The man sprang from his chair and paced up and down the room in uncontrollable agitation. Then, with a gesture of desperation, he tore the mask from his face and hurled it upon the ground. "You are right," he cried; "I am the King. Why should I attempt to conceal it?"

"Why, indeed?" murmured Holmes. "Your Majesty had not spoken before I was aware that I was addressing Wilhelm Gottsreich Sigismond von Ormstein, Grand Duke of Cassel-Felstein, and hereditary King of Bohemia."

"But you can understand," said our strange visitor, sitting down once more and passing his hand over his high white forehead, "you can understand that I am not accustomed to doing such business in my own person. Yet the matter was so delicate that I could not confide it to an agent without putting myself in his power. I have come incognito from Prague for the purpose of consulting you."

僕は立ち上がって出て行こうとしたのだが,ホームズに手首を捕まれて,いすに押し戻されてしまった。「ふたりでお聞きするか,それともまったくお聞きしないか,どちらかにしていただきます。」と彼は言った。「私にお話しになることは,この男の前でならどんなことでもおっしゃって下さって大丈夫です。」

伯爵は広い肩をすくめてから言った。「ではまず最初に,お二人に2年間絶対に秘密を守ると約束していただかねばなりませんな。2年がたてば,この件はどうでもいい問題になる。だが現在のところは,欧州の歴史に影響を与えかねないほどの重みのある問題だと言っても過言ではないのです。」

「お約束いたします。」とホームズは言った。

「わたくしも。」

「マスクのことはお許し願いたい。」と,奇妙な客人は続けた。「私の雇い主である高貴な方のご希望で,その方の代理人は名を明かさないことになっているのです。それに実を言えば,先ほど名乗った名前も本名ではないのですが。」

「それはわかっております。」とホームズはあっさり言った。

「事情はたいへん微妙なもので,とてつもないスキャンダルでヨーロッパの一王家の名誉を深刻に汚してしまうかもしれない事態に発展するかもしれず,その芽を摘んでおくためには用心に用心を重ねなければならないのです。はっきり申し上げれば,ボヘミアの正統の王室,オルムシュタイン家に関わる問題なのです。」

「そのことも承知しております。」ホームズはつぶやくように言って,ひじ掛けいすに身を沈めて,目を閉じた。

ヨーロッパでもっとも鋭敏な推理家,もっとも精力的な探偵だと,おそらく聞かされてきたであろう人物が,物憂げにだらりと腰掛ける姿を見て,客人はいくぶん驚いた様子だった。ホームズはもう一度ゆっくりと目を開くと,この大柄な依頼人をもどかしげに見つめた。そして言った。

「事件について,恐れ多くも陛下おんみずからご説明下されば,もう少しご助言申し上げることも可能かと。」

客人はいすから(おど)り上がると,動揺が抑えきれないように部屋の中をせかせか歩き回った。そして,もはやお手上げだとぱかりに,顔からマスクをむしりとり,床へ放り出した。「そのとおりだ。」と彼は叫んだ。「私がその国王だ。なぜ隠そうなどと思ったのだろう。」

「まさにそのとおりです。」と,つぶやくようにホームズが言った。「陛下がひと言もお話しになる前から,わたくしにはいま目の前でお話ししている方が,ボヘミアの正統の国王,カッセル=フェルシュタイン大公,ヴィルヘルム・ゴッツライヒ・ジギスモント・フォン・オルムシュタイン殿下であることは承知しておりました。」

「だがわかってほしいのだが」と奇妙な客人は言いながら,もう一度腰をかけて,色白の秀でた額に手をやった。「わかってほしいのだが,自分の手でこうした問題を扱うのは慣れておらんのだ。といって,事はあまりに微妙で,余人の手に託せばその者につけ込まれる恐れもある。だから,貴殿に相談すべく,忍びでプラハからやって来たというわけなのだ。」

 

  • I rose ― rise 「立ち上がる」
  • Holmes caught me by the wrist catch + O + by the hand [arm, wrist] 「Oの手[腕,手首]をつかむ」 もちろん,catch my wrist とも言えるが,捕まえる人を先に言ってから「手首のところで」(by the wrist)と付け加えるのが英語的表現。 この表現では his wrist ではなく the wrist になる。
  • It is both, or none ― 「(あなたの話を聞くのはホームズとワトソン)両方か,または誰も聞かないか,のどちらか」
  • You may say before this gentleman anything which you may say to me. ― anything which … が say の目的語。
  • shrug one's shoulders (学研 "I SEE ALL カラー図解英語百科辞典"より)

    shrug his shoulders (学研 「I SEE ALL カラー図解英語百科辞典」より)

  • shrugged his broad shoulders. shrug one’s shoulders 「肩をすくめる」(不快・絶望・疑念・無関心・当惑・不賛成などを表す)
  • Then I must begin," said he, "by binding ― begin by Ving 「Vすることから始める,はじめにVする」
  • binding you both to absolute secrecy bind O to ~ 「Oに~を義務づける」
  • of no importance ― of + 抽象名詞 の形(既出)。 of no importance = not important
  • At present ― at present 「今のところ,現在は」
  • it is not too much to say that It is not too much to say that … = It is no exaggeration to say that … 「・・・と言っても言い過ぎではない」
  • it is of such weight it may have an influence upon European history. ― of weight = of importance 。 such ~ that … 「とても~なので・・・」の that が省略されている。
  • august ― august 「威厳のある,高貴な」 アクセントは,augúst。
  • wishes his agent to be unknown to you ― wish O to V 「OがVすることを願う」。
  • confess at once that the title by which I have just called myself is not exactly my own ― confess 「告白する,打ち明ける」 title 「称号,肩書き」 call A by B 「Bという名でAを呼ぶ」
  • I was aware of it ― be aware of ~ 「~に気づいている,知っている」
  • of great delicacy― これまた of + 抽象名詞。 of great delicacy = very delicate
  • precaution has to be taken ― precaution 「用心,警戒」 take precautions 「警戒する」
  • quench ― quench 「(火を)消す,抑える」
  • what might grow to be an immense scandal grow to be ~ 「成長して~になる」(結果を表す不定詞)。 immense 「ものすごい,巨大な」
  • seriously compromise one of the reigning families of Europe.― compromise 「(名誉などを)汚す」 reigning family 「王族,王家」(既出)。
  • To speak plainly ― 「はっきり言えば」
  • implicates the great House of Ormstein― implicate 「関係づける」
  • hereditary kings of Bohemia. ― hereditary 「遺伝の,代々の,相続権のある」
  • settling himself down in his armchair and closing his eyes. ― settling と closing は分詞構文。 settle 「落ち着かせる,置く」 settle oneself 「身を置く,落ち着く」
  • glanced with some apparent surprise at the languid, lounging figure of the man― glance at ~ 「~をチラッと見る」 with some apparent surprise は挿入句。 apparent + 形容詞 「一見~にみえる,どうも~みたいな」。 languid 「物憂げな,けだるい」 lounge 「だらだらする,ゆったりする」。 figure 「(人の)姿」。
  • who had been no doubt depicted to him as the most incisive reasoner and most energetic agent in Europe. ― no doubt 「おそらく,きっと」。 depict 「描く,描写する」 depict A as B 「AはBだと描き出す」。この him は「客人」。過去完了になっているので,以前に誰かからホームズはヨーロッパ最高の探偵だと言う描写を聞かされたのである。
  • impatiently ― 「せっかちに,もどかしげに」
  • gigantic client ― gigantic 「巨大な」 [dʒaigǽntk]
  • もはやお手上げだとぱかりに,顔からマスクをむしりとり

    もはやお手上げだとぱかりに,顔からマスクをむしりとり

  • If your Majesty would condescend to state your case, I should be better able to advise you.― 全体は仮定法だが,ていねいさを演出するために「あり得ないことですが...」という非現実性のニュアンスをこめている。condescend to V 「Sという目上の人物が目下の人物に対してへりくだって・謙遜して・気さくにVする」。 be able to の比較級は, be better able to と be more able to がある。 Majesty 「陛下」ということばは国王・君主,またはその一族に対して用いる。ここで,ホームズは相手が代理人などではなく,国王本人であることを見抜いていると告げたことになる。2人称として(つまり呼びかけや,you の代わりに) your Majesty (複数なら your Majesties)を使い,3人称(つまり,第三者的に語ったり,he, she の代わり)としては,his [her] Majesty (複数なら their Majesties)を用いる。国王以外では,Your Excellency (大使,知事,司教など), Your Lordship (貴族など), Your Honor (裁判官など)を使う。これらは日本語の「閣下」にあたる。
  • sprang from his chair ― spring 「とび上がる」
  • paced up and down the room ― pace 「(心配事などで)歩き回る」 up and down 「行ったり来たり」
  • in uncontrollable agitation ― in agitation 「興奮して,動揺して」 uncontrollable 「抑えきれない,手に負えない」
  • with a gesture of desperation ― desperation 「必死,自暴自棄,絶望」 < desperate = feeling or showing that you have little hope and are ready to do anything without worrying about danger to yourself or others (OALD) 「もう希望が持てず,自他への危険をかえりみず何でもやってしまえ,と感じている状態」
  • tore the mask from his face ―  tear[teɚ] – tore –torn 「引き裂く,引きはがす」
  • hurled it upon the ground ― hurl 「ほうる,投げつける」
  • Why should I attempt to conceal it? ― why や how の疑問文で should を使うと,意外感を出し「いったいなぜ・どうして」という感じになる。
  • "Why, indeed?" ― 国王のことばを受けて,「実際なぜ(正体を隠そうなどとなさったのでしょうか)?」ということ。
  • Your Majesty had not spoken before I was aware ―  … had not p.p. … before S + V(過去形)~ 「・・・しないうちに,~した」。直訳は,「SがVしたよりも前には,・・・・していなかった」だが,この構文では before の右側に話題の焦点がある。
  • I was addressing Wilhelm Gottsreich Sigismond von Ormstein, Grand Duke of Cassel-Felstein, and hereditary King of Bohemia. ― address 「~に話しかける」。次の3つは同格。 Wilhelm ~ Ormstein が名前, Grand Duke 「大公」が貴族としての位階(王になる前?),そしてhereditary King が現在の王位。
  • his high white forehead ― high forehead 「広い額」。
  • I am not accustomed to doing such business in my own personbe accustomed to Ving 「Vすることに慣れている」 in person 「(代理人を使わず)本人自ら」。
  • Yet the matter was so delicate that I could not confide it to an agent without putting myself in his power.
  • incognito ― so ~ that 構文。 confide A to B 「(信頼して)AをBに打ち明ける,AをBにゆだねる,託す」。 put myself in his power は「自分自身を彼(信頼した相手)の意のままの状態に置いてしまう」→「相手につけ込まれる,なすがままにされる」。 S is in my power. 「Sは私の思いのままだ」。全体は cannot V1 without V2ing 「V1すると必ずV2する」←「V2せずにV1できない」。
  • for the purpose of consulting you ― for the purpose of Ving 「Vするために,Vする目的で」

 

 

 

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by rickie | Posted in 英語の作品を読もう | No Comments »

超・長文問題を考える -2

7月
2009
25
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今回は,超長文問題の出題傾向を大ざっぱに考えてみます。

なお,このシリーズで用いているデータは,入試問題データベース EXAM (JC教育研究所)に収録されているデータを独自に集計したものです。このデータペースは必ずしも全大学・全学部・全日程の全問題を収録しているわけではありません。よってそこから導き出されたデータも完全なものとは言えませんが,サンプル数はかなり大きく,特に偏りがあるわけでもなさそうなので,大きな意味での方向性は明らかになるだろうと思います。

 

超・長文問題を前回,「900語以上の長文読解問題」としましたので,それで,2000年~2009年(最新)を集計すると以下のようになります。[1]

 

年度 私立 国公立 うち国立後期 合計(a) 読解総問数 (b) 超長文占有率 (a/b)
2000 12 15 3 27 1509 1.79%
2001 12 18 4 30 1511 1.99%
2002 20 16 5 36 1276 2.82%
2003 29 24 7 53 1346 3.94%
2004 31 25 5 56 1336 4.19%
2005 27 23 6 50 1345 3.72%
2006 33 34 9 67 1318 5.08%
2007 49 35 16 84 1508 5.57%
2008 60 31 10 91 1529 5.95%
2009 36 23 5 59 1404 4.20%

 

morethan900
percentage-mt900

 

ざっと,傾向をまとめると,

  • 2000年には例外的な問題であったが,2008年まで私立・国公立とも,ほぼ着実な増加傾向にあった
  • もともと,超長文問題は,入試レベルが,MARCH またはそれに準じる大学以上のレベルの大学に集中する傾向があるので(私立の場合),それだけで考えると「超長文占有率」はさらに上がるはずで,無視できないタイプの問題になった
  • ところが,2009年入試では大きな下落が見られた

 

「入試問題の英文が長くなっている」というのは,かなり前から,おそらくこの二十年くらい言われてきたことでした。かつては,特に国公立には短い英文の和訳問題が多く出題されていましたが,短ければ文脈が取りにくく,文脈と切り離された形で和訳するということに,果たして英語力を調べる上で意味があるのか,という疑問や批判が起きるのも無理はありません。文章の断片ではなく,一つの文章の論理をできるだけまるごと提示する,というのはある意味で当然なあり方で,かつて言われた「入試英語の長文化」には十分根拠のあるものでした。[2]

毎年出版されている旺文社「全国大学入試問題正解」の巻頭の出題傾向分析は90年代を通じて,「長さは大半が600語(最初の頃は500語)以内」とあり[3] ,1000語以上のものは慶應・文やSFCくらいしかありませんでした。今世紀になって,その例外が例外の範囲を超えた,ということになります。

かつての「長文化」は理由があるものでした。しかし,「超長文化」にも根拠はあるのでしょうか。複雑な文構造をパズルを解くように知恵を絞って解釈するというあり方から,コンテンツの把握を重視した英語教育へ,という流れからすれば,「超長文化」は「長文化」の延長線上にあるものに過ぎないと考えることもできなくはないでしょう。でも,一方で「学力低下」を嘆いている大学が,片方で入試問題を難しくしているのであれば,どこか別の意図をかんぐりたくもなります。少子化のために大学は生き残り策を模索せざるをえず,そして「偏差値」は大学の「プレスティッジ」のひとつとされていますから,それを上げるために問題を難しくしているのでしょうか。

だとすると,2009年にこれが減少したのは,ひとまず歓迎すべきことなのかもしれません。大学間の競争が落ち着いたのか,現実離れした傾向に大学が気づきはじめたのか,理由はよくわかりませんが。

むろん,「超長文化」=難問化,というわけではありません。比較的読みやすい英文を大量に出題する,というあり方があってしかるべきでしょう。しかし現実は,英米の新聞や雑誌の論説をそのまま出題するという形の超長文が多く,とても高校3年生に読めたものではないという英文もしばしば見かけます。大学院入試の問題では?と思わせるようなものもあります。

 

シリーズ [超長文問題を考える] のもくじ

  1. 超・長文問題を考える -1
  2. 超・長文問題を考える -2

 

 


  1. 今回の集計はあくまでも1問の長文の長さ(語数)を基準にしている。生徒の側から見れば,1問ではなくその年の英語問題全体でどのくらいの長さ(語数)を読まされるかも重要なファクターであり,また,どのくらいの時間で読まされるのかも考慮した統計が必要になる。 [▲ 戻る]
  2. かつての「長文化」は,文法問題の比重が低下したことによる副次的効果の面もあった。 [▲ 戻る]
  3. 2009年でも75%程度が600語以内。ただし,会話文問題を含む。 [▲ 戻る]

 

 

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by rickie | Posted in その他(高校生向け) | No Comments »

A Scandal in Bohemia 「ボヘミアの醜聞」 — 7

7月
2009
23
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第7回にいたって,依頼人の登場です。

「ボヘミアの醜聞」の雑誌連載当時の下の挿絵(Sidney Paget による)でもわかるとおり,かなり謎めいた,悪く言えばエキセントリックな人物のようです。言葉遣いも,かなりもったいぶった言い回しが使われています。それもそのはず,彼こそは...

 

As he spoke there was the sharp sound of horses’ hoofs and grating wheels against the curb, followed by a sharp pull at the bell. Holmes whistled.

"A pair, by the sound," said he. "Yes," he continued, glancing out of the window. "A nice little brougham and a pair of beauties. A hundred and fifty guineas apiece. There’s money in this case, Watson, if there is nothing else."

"I think that I had better go, Holmes."

"Not a bit, Doctor. Stay where you are. I am lost without my Boswell. And this promises to be interesting. It would be a pity to miss it."

"But your client — "

"Never mind him. I may want your help, and so may he. Here he comes. Sit down in that armchair, Doctor, and give us your best attention."

A slow and heavy step, which had been heard upon the stairs and in the passage, paused immediately outside the door. Then there was a loud and authoritative tap.

"Come in!" said Holmes.

A man entered who could hardly have been less than six feet six inches in height, with the chest and limbs of a Hercules. His dress was rich with a richness which would, in England, be looked upon as akin to bad taste. Heavy bands of astrakhan were slashed across the sleeves and fronts of his double-breasted coat, while the deep blue cloak which was thrown over his shoulders was lined with flame-colored silk and secured at the neck with a brooch which consisted of a single flaming beryl. Boots which extended halfway up his calves, and which were trimmed at the tops with rich brown fur, completed the impression of barbaric opulence which was suggested by his whole appearance. He carried a broad-brimmed hat in his hand, while he wore across the upper part of his face, extending down past the cheekbones, a black vizard mask, which he had apparently adjusted that very moment, for his hand was still raised to it as he entered. From the lower part of the face he appeared to be a man of strong character, with a thick, hanging lip, and a long, straight chin suggestive of resolution pushed to the length of obstinacy.

"You had my note?" he asked with a deep harsh voice and a strongly marked German accent. "I told you that I would call." He looked from one to the other of us, as if uncertain which to address.

"Pray take a seat," said Holmes. "This is my friend and colleague, Dr. Watson, who is occasionally good enough to help me in my cases. Whom have I the honor to address?"

"You may address me as the Count Von Kramm, a Bohemian nobleman. I understand that this gentleman, your friend, is a man of honor and discretion, whom I may trust with a matter of the most extreme importance. If not, I should much prefer to communicate with you alone."

彼がそう語った時,おもてからは,馬のひづめの鋭い音と,車輪が縁石に当たってきしる音が聞こえてきた。つづいて呼び鈴を引く強い音が響いた。ホームズが口笛を鳴らした。

「あの音からすると,二頭立て馬車だな。」と彼は言い,窓の外を見やりながら「うん,たいそうな小型の四輪馬車に,見事な馬が2頭。1頭あたり150ギニーってところだな。何はなくとも,金にはなりそうな事件だな,ワトソン。」と続けた。

「そろそろ失礼するよ,ホームズ。」

「センセイ,冗談じゃない。そのままにしててくれ。ボズウェル君がいなけりゃ,僕もお手上げだよ。それに今回はおもしろいことになりそうだよ。見逃すには惜しい。」

「でも,君の依頼人が...」

「気にするな。君の助けが必要になるのは僕かもしれないし,彼かもしれない。ほら,彼が来たぞ。センセイはそのひじ掛けいすに座っててくれ。集中して見ててくれよ。」

先ほどから聞こえていたゆっくりとした重々しい足取りが階段から廊下へ移り,そしてドアのすぐ前で止まった。そして大きな,いかにも偉そうなノックが響いた。

「どうぞ」とホームズが言った。

入ってきた男は身長が6フィート6インチを下るまいと思えた,ヘラクレスのような胸と手足を持った人物であった。服装は豪勢だが,イギリスでは悪趣味に近いとみなされるような豪勢さだ。ダブルのコートは,袖と前襟が厚ぼったいアストラカン皮の見返しがついていて,肩に羽織ったダークブルーのマントには深紅の絹の裏地が施されて,首のあたりの輝く緑柱石のブローチで留めている。ふくらはぎ半ばほどまで蔽うブーツは上端にふさふさした茶色の毛皮をあしらってあり,外見全体から感じ取れる野蛮なまでに豪華な印象に仕上げをかけていた。手にはつばの広い帽子を持ち,顔の上半分にかけて,ほお骨まであふれるくらいに広い黒い覆面をしていたが,ちょうどマスクの調整の真っ最中だったようで,中に入ってきた時も手はまだマスクのところから下ろしていなかった。顔の下半分からすると,強固な性格を持った人物らしく,唇は厚く突き出ていて,長くまっすぐな顎は頑固とまで言ってよさそうな不屈さをかもしだしていた。

「わたしの手紙は受け取られたかな?」ひどくしゃがれた声で,強いドイツ語なまりを交えて彼はたずねた。「訪問のことはお聞きだと思うが。」彼は,私たちふたりのどちらに話しかけたらいいのかわからないかのように見比べた。

「どうぞおかけ下さい。」とホームズが言った。「こちらは友人で同僚のワトソン博士。わたしの事件では時々手伝ってもらっています。で,何とお呼びすればよいでしょうか?」

「ボヘミアの貴族,フォン・クラム伯爵とでも呼んでいただきましょう。こちらの紳士は,あなたのご友人だそうだが,きわめて重大な問題を打ち明けてもかまわないほどの信義と分別とをお持ちの方とお見受けする。だか,もしそうでないなら,あなただけとお話しした方がいいと思うのだが。」

 

king

 

  • As he spoke ― 直前でホームズは「謎を解決してくれるご本人がやって来たようだ。」と依頼人がやって来たことを察知します。「そう語った時に」ということ。時間の as。
  • hoofs
  • grating wheels against the curb ― grate 「きしむ,きしる」 curb 「(道路の)縁石」 against は接触をあらわし,「~とぶつかって」。
  • followed byA is followed by B. 「AにつづいてBが起きる」 ここはその分詞構文 being followed by の being が省略された形。
  • a sharp pull at the bell ― 当時のベルのしくみがよくわからないので何とも言えないのですが,実際に「引っ張る(pull)」ことを言っているのか,それとも a pull 「(酒の)一飲み,(船の)一漕ぎ」に類するような(1発のような)意味なのか。《小池訳》では「呼び鈴が強く鳴りひびいた」,《阿部訳》では「ベルが強く鳴った」,《延原訳》等もあまりちがいはない。
  • A pair, by the sound ― pair は「2頭立て」ということ。1頭でなく,2頭で引くタイプの馬車。当然,所有者の裕福さを示している。音からそう判断したわけである。
  •  
    ブルーム

    ブルーム

  • brougham ― ブルーム。小型の馬車の種類の一つ。
  • a pair of beauties ― このbeauty は「美しいみごとな馬」。
  • A hundred and fifty guineas apiece ― guinea 「ギニー」は,今は使われていない貨幣単位。 apiece は「1つにつき」。
  • Not a bitnot a bit 「少しも~ない」「とんでもない」。 a bit と a little は同じようなものだが, not a little と not a bit はまったく異なる。 not a little 「少なからず,大いに」。
  • Stay where you are ― 接続詞のwhere 「・・・ところに」。「君が今いるところにとどまれ」ということ。
  •  
    ボズウェル

    ボズウェル

  • I am lost without my Boswell ― be lost 「途方に暮れる,道に迷う」。 Boswell は英国文学史の中で名高い James Boswell (1740-1795) のこと。18世紀の文学者 Samuel Johnson の伝記を書いたことで名高い。つまり,ホームズはワトソンを自分の業績を記述する伝記作者になぞらえたわけ(Holmes 自身も Johnson 並みの大物ということになる)。Boswell も Johnson も有名なので,当時のイギリス人なら,my Boswell と書くだけでわかる。
  • promises to be interestingpromise to V 「(1)Vすることを約束する (2) Vする見込みがある」 ここは,(2)。
  • It would be a pity to miss it ― a pity 「残念なこと」。 miss 「見逃す,のがす」。
  • But your client ― 君の客人が(何と言うか? 承服しないだろう), などと言いかけたのである。
  • so may heSo + 助動詞(be動詞) + S.  「S もそうだ」。ここは, he may want your help, too. ということ。
  • Here he comes ― Here he comes. 「彼が来たぞ」。既出。
  • A slow and heavy step, which had been heard ― had been heard が過去完了形になっているから,「過去のある時点以前に起きたこと」。ここではそれ以前にすでに足音は聞こえていた,それがドアの前で止まった,ということ。
  • immediately outside the door ― immediately は時間的に「すぐ」,だけでなく空間的な「すぐ」にも使う。 ここはoutside 以下にかかって,「~のすぐ外」。
  • authoritative tap ― authoritative  「権威ある,横柄な」 ,tap 「軽く叩くこと」ここではノックの意味。
  • in height ― 「身長は」。直訳すると「身長の点では」。
  • the chest and limbs of a Hercules ― limb は「手足(の1本1本)」。Hercules はギリシャ神話の「ヘラクレス」(ローマ神話の「ハーキュリー」)。マッチョな英雄である。ここもやって来た人が,今で言えばプロレスラー並みのガタイをしている,ということ。 a + 有名な人物名 「~のような人」「~の作品」。
  • a richness which would, in England, be looked upon as akin to bad tastelook upon A as B 「AをBとみなす」。would で仮定法過去を表し,「ほかではいざ知らず,イギリスでなら~とみなされるであろうような豪華さ」。 akin to ~ 「~に近い」既出。
  • astrakhan ― アストラカン。ロシアのアストラカン地方で産出する羊の毛皮。
  • were slashed across the sleeves and fronts ― be slashed 「(衣服で)あき口がついている」 ここは,開いて裏地が見えていることだろうと思われる。 across ~ 「~のあたりにかけて」。
  • double-breasted coat ― スーツなどの「ダブル」が, double-breasted 。
  • cloak ― マント。
  • was lined with flame-colored silk ― be lined with ~ 「~の裏地がついている」 (ex.) The skirt is lined with silk. 「スカートには絹の裏地がついている」
  • secured ― secure 「固定する,安定させる」
ベリル(緑柱石)

ベリル(緑柱石)

  • a brooch which consisted of a single flaming beryl ― brooch 「ブローチ」([broʊtʃ])。 consist of ~ 「~から成る,~で構成されている」。 flame 「燃え上がる」 beryl 「緑柱石」
  • Boots which extended halfway up his calves ― halfway 「中間で,途中に」 calf 「ふくらはぎ」
  • which were trimmed at the tops with rich brown fur ― be trimmed with ~ 「~で飾られている」
  • opulence ― 「豪華さ,ぜいたく」
  • which was suggested by his whole appearance ― suggest 「ほのめかす,暗示する,連想させる」
  • broad-brimmed hat ― brim 「へり,(帽子の)つば」
  • while he wore across the upper part of his face, extending down past the cheekbones, a black vizard mask ― wore の目的語は a black vizard mask で間は挿入句。across ~ 「~を横断するように」,extending down 「下へ伸びる」ここは分詞構文。 past は前置詞で「~を過ぎて」。つまり,マスクが顔の上の部分を覆い,なおかつ下へはみ出てほお骨を越えたあたりまで隠していること。vizard = mask 。
  • apparentlyapparently 「どうも~らしい,一見~ように見える」
  • that very moment ― very は形容詞「まさしく,ほかならぬ」。
  • for his hand was still raised ― for は接続詞「というのは,・・・だから」。
  • From the lower part of the face ― この from は,judging from ~ 「~から判断すると」と同じ。マスクで隠れていない下半分から判断すると,ということ。
  • hanging lip ― hang 「突き出る」
  • suggestive of resolution pushed to the length of obstinacy ― suggestive は直前のa long, straight chin にかかっている。 be suggestive of ~ = suggest 「~を暗示する」。 length は「極端な程度」を表し, pushed to the length of ~ 「~という極端な程度まで押し出された」が resolution 「決断力,不屈の精神」にかかっている。
  • harsh voice ― harsh 「しわがれた」
  • a strongly marked German accent ― marked 「著しい」
  • as if uncertain which to address ― as if he were uncertain の he were が省略。 address 「話しかける」。
  • Pray ― ふつうの pray は「祈る」だが,命令文と組み合わさると please と同じ意味になる。
  • good enough to help me ― good = nice = kind 「親切にも手伝ってくれる」
  • Whom have I the honor to address? ― 直訳すると,「わたしはどなたに話しかける名誉を得ているのでしょうか?」。つまり,「あなたの名前は何ですか?」という意味を,クソていねいに言っているわけだ。
  • a man of honor and discretion ― a man of honor 「信義を重んじる人」, discretion 「思慮分別」。どちらも of + 抽象名詞。 of honor = honorable, of discretion = discrete。
  • whom I may trust with a matter of the most extreme importancetrust A with B 「(信頼して)AにBを預ける,打ち明ける」。ここでは, A が whom = a man of … 。 matter of the most extreme importance も of + 抽象名詞で,結局 one of the most extremely important matters と同じこと。

 

【おまけ】

現代にもそういう作家はいますが,特に19世紀の小説では,長々と人物の外見・服装,場所の情景,部屋や家具のようすが描写されることが多いことに気づくかもしれません。外見を描写することが,その人物についての内面を語ることにもなる,と信じられた時代でした。

もっともこの小説の服装の描写はこれでも長いほうではありません。この時代の小説の中では,あっさりしている部類に入ります。

 

 

 

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高校生向け新書 2  《ちくまプリマー新書》

7月
2009
22
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高校生・ヤングアダルト向けの新書である,筑摩書房の「ちくまプリマー新書」のリストです。

「岩波ジュニア新書」に比べると,薄手ですがそれほど堅苦しくなく気楽に読めるものが多いのが特徴です。逆に言うと重厚感には欠け,淡泊な感じもしますが,切り口は伝統的な「岩波ジュニア」よりも新鮮です。

 

リストは2009年7月現在。出版順年月順(古い→新しい)。

ちゃんと話すための敬語の本 橋本 治
先生はえらい 内田 樹
死んだらどうなるの? 玄侑 宗久
熱烈応援!スポーツ天国 最相 葉月
事物はじまりの物語 吉村 昭
勉強ができなくても恥ずかしくない 1 どうしよう・・・の巻 橋本 治
学校で教えない性教育の本 河野 美香
奇跡を起こした村のはなし 吉岡 忍
勉強ができなくても恥ずかしくない 2 やっちまえ!の巻 橋本 治
世にも美しい数学入門 藤原 正彦 小川 洋子
勉強ができなくても恥ずかしくない 3 それからの巻 橋本 治
人類と建築の歴史 藤森 照信
変な子と呼ばれて ―ミッシェル・近藤の人生 吉永 みち子
ある漂流者のはなし 吉岡 忍
お金持ちになれる人 邱 永漢
人はあなたの顔をどう見ているか 石井 政之
ピカソに見せたい! 山本 容子
数え方でみがく日本語 飯田 朝子
こころの底に見えたもの なだ いなだ
<いい子>じゃなきゃいけないの? 香山 リカ
木のことば 森のことば 高田 宏
漢方的スローライフ 幸井 俊高
目玉の学校 赤瀬川 原平
憲法はむずかしくない 池上 彰
英語の論理 日本語の心 牧野 高吉
君はレオナルド・ダ・ヴィンチを知っているか 布施 英利
世にも美しい日本語入門 安野 光雅 藤原 正彦
「ビミョーな未来」をどう生きるか 藤原 和博
環境問題のウソ 池田 清彦
包帯クラブ The Bandage Club 天童 荒太
娘に語るお父さんの歴史 重松 清
病魔という悪の物語 チフスのメアリ 金森 修
はじめの哲学 三好 由紀彦
おもしろ古典教室 上野 誠
野球はベースボールを超えたのか R・ホワイティング 松井 みどり 翻訳
俳優になりたいあなたへ 鴻上 尚史
サルが食いかけでエサを捨てる理由(ワケ) 野村 潤一郎
詩への道しるべ 柴田 翔
おはようからおやすみまでの科学 佐倉 統 古田 ゆかり
「無言館」にいらっしゃい 窪島 誠一郎
思春期のこころ 大渕 憲一
日本の歴史を作った森 立松 和平
自分のためのエコロジー 甲斐 徹郎
おいしさを科学する 伏木 亨
「ゆっくり」でいいんだよ 辻 信一
夢みるクラシック 交響曲入門 吉松 隆
和算を楽しむ 佐藤 健一
おしえて! ニュースの疑問点 池上 彰
ブッダ ─大人になる道 アルボムッレ・スマナサーラ
君はピカソを知っているか 布施 英利
問題がモンダイなのだ 山本 貴光 吉川 浩満
これが正しい!英語学習法 斎藤 兆史
物語の役割 小川 洋子
われわれはどこへ行くのか? 松井 孝典
話し上手 聞き上手 齋藤 孝
ニッポンの心意気 ─現代仕事カタログ 吉岡 忍
詩に誘われて 柴田 翔
クリエイター・スピリットとは何か? 杉山 知之
データはウソをつく ─科学的な社会調査の方法 谷岡 一郎
音楽を「考える」 茂木 健一郎 江村 哲二
ファッションのチカラ 今井 啓子
「世界征服」は可能か? 岡田 斗司夫
川を旅する 池内 紀
未来形の読書術 石原 千秋
民主主義という不思議な仕組み 佐々木 毅
自然を感じるこころ ─ネイチャーライティング入門 野田 研一
「科学的」って何だ! 松井 孝典 南 伸坊
いのちはなぜ大切なのか 小澤 竹俊
西洋館を楽しむ 増田 彰久
高校生のためのメディア・リテラシー 林 直哉
現代日本の小説 尾崎 真理子
笑ってお料理 平野 レミ
新しい道徳 藤原 和博
生命科学の冒険 ─生殖・クローン・遺伝子・脳 青野 由利
ほんとはこわい「やさしさ社会」 森 真一
僕らの憲法学 ─「使い方」教えます 田村 理
ブッダの幸福論 アルボムッレ・スマナサーラ
読み上手 書き上手 齋藤 孝
幸せになる力 清水 義範
友だち幻想 ─人と人の〈つながり〉を考える 菅野 仁
SFはこれを読め! 谷岡 一郎
「見えざる手」が経済を動かす 池上 彰
いちばんさいしょの算数1 ─たし算とかけ算 橋本 治
古代から来た未来人 折口信夫 中沢 新一
いちばんさいしょの算数2 ─わり算とひき算 橋本 治
ケータイ小説は文学か 石原 千秋
遺伝子がわかる! 池田 清彦
若い人に語る戦争と日本人 保阪 正康
進化論の5つの謎 ─いかにして人間になるか 船木 亨
男の子のための軍隊学習のススメ 高田 里惠子
食べるって何? ─食育の原点 原田 信男
教科書の文学を読みなおす 島内 景二
手に職。 森 まゆみ
受験生のための一夜漬け漢文教室 山田 史生
景気ってなんだろう 岩田 規久男
目と耳と足を鍛える技術 ─初心者からプロまで役立つノンフィクション入門 佐野 眞一
大学受験に強くなる教養講座 横山 雅彦
ゲームの教科書 馬場 保仁 山本 貴光
英語は多読が一番! クリストファー・ベルトン 渡辺 順子 翻訳
なぜ「大学は出ておきなさい」と言われるのか ─キャリアにつながる学び方 浦坂 純子
経済学はこう考える 根井 雅弘
めげても立ちなおる心の習慣 岡本 正善
地学のツボ ─地球と宇宙の不思議をさぐる 鎌田 浩毅
独学という道もある 柳川 範之
あなたの勉強法はどこがいけないのか? 西林 克彦
環境問題の基本のキホン ─物質とエネルギー 志村 史夫
多読術 松岡 正剛
京都美術鑑賞入門 布施 英利
女が読む太宰治 雨宮 処凛 井上 荒野 太田 治子 香山 リカ 佐藤 江梨子 辛酸 なめ子 平 安寿子 高田 里惠子 津村 記久子 中沢 けい 西 加奈子 山崎 ナオコーラ 筑摩書房編集部 編集
若いうちに読みたい太宰治 齋藤 孝
百姓たちの江戸時代 渡辺 尚志
負けない 勢古 浩爾
宇宙がよろこぶ生命論 長沼 毅
ALMA電波望遠鏡 石黒 正人
中学生からの哲学「超」入門 ─自分の意志を持つということ 竹田 青嗣

 

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超・長文問題を考える -1

7月
2009
21
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大学入試(英語)においての超・長文問題について考えてみたいと思います。

超・長文問題といっても,特に統一的な定義があるわけではありません。長文問題というからには,ふつうの長文問題だって,じゅうぶん長いわけです。

とりあえず単純に1つの長文が901語以上の英単語から成り立っている(設問・選択肢部分は除いて)問題を「超・長文問題」と呼ぶことにします。

 

今年(2009年)に「超・長文問題」を出題したのは以下の59の大学,学部です。

 

大学 学部学科 単語数
関西大学 総合情報 商 政策創造 文 901~1000
関西大学 外国語 経済 社会 法 901~1000
関西大学 総合情報 商 文 法 901~1000
関西大学 システム理工 化学生命工 環境都市工 1001~
関西大学 外国語 経済 社会 政策創造 901~1000
関西大学 センター利用中期・全学部日程 901~1000
関西大学 センター利用中期・全学部日程 901~1000
関西学院大学 経済 人間福祉 901~1000
慶應義塾大学 1001~
慶應義塾大学 1001~
慶應義塾大学 経済 1001~
慶應義塾大学 経済 1001~
慶應義塾大学 総合政策 1001~
慶應義塾大学 総合政策 1001~
慶應義塾大学 環境情報 1001~
慶應義塾大学 環境情報 1001~
甲南大学 S日程 901~1000
甲南大学 B・B日程C方式(センターPLUS) 1001~
成城大学 文芸 901~1000
中央大学 1001~
中央大学 総合政策 1001~
明治大学 経営 国際日本 商 情報コミュニケーション 政治経済 農 文 法 理工 1001~
明治大学 理工 1001~
明治大学 国際日本 1001~
明治大学 901~1000
明治大学 1001~
立教大学 901~1000
立教大学 901~1000
立教大学 コミュニティ福祉 観光 経営 現代心理(2/12) 901~1000
立教大学 コミュニティ福祉 観光 経済(2/13) 901~1000
立教大学 コミュニティ福祉 現代心理 社会(2/14) 1001~
早稲田大学 国際教養 1001~
早稲田大学 国際教養 1001~
早稲田大学 1001~
早稲田大学 1001~
早稲田大学 政治経済 901~1000
大分大学 医(前期) 1001~
岐阜大学 教育 1001~
群馬大学 医(前期) 1001~
埼玉大学 教育 教養 経済-昼(前期) 1001~
千葉大学 法経 1001~
千葉大学 法経 1001~
東京大学 前期 901~1000
東京医科歯科大学 医 歯(前期) 1001~
奈良女子大学 901~1000
浜松医科大学 医(前期) 901~1000
福井大学 教育地域科(前期) 901~1000
福井大学 医(前期) 901~1000
福井県立大学 海洋生物資源 看護福祉 経済 生物資源(前期) 1001~
宮崎大学 教育文化 901~1000
宮崎公立大学 人文(前期) 1001~
横浜国立大学 教育人間科(前期) 901~1000
横浜国立大学 教育人間科(前期) 1001~
横浜市立大学 医(前期) 1001~
横浜市立大学 医(前期) 1001~
和歌山大学 システム工 観光 教育 経済(前期) 1001~
国際教養大学 国際教養B日程 1001~
国立看護大学校 看護 第1次 1001~
国立看護大学校 看護 第1次 1001~

 

ちなみに,条件をすこしゆるめて,801語以上とすると,以下の大学・学部が上に加わります。

 

関西大学 (政策創造・文・システム理工・化学生命工・環境都市工),関西大学 (総合情報・商・政策創造・文),関西大学 (外国語・経済・社会・法),関西大学 (総合情報・商・文・法),関西大学 (システム理工・化学生命工・環境都市工),関西大学 (外国語・経済・社会・政策創造),関西大学 (センター利用中期・全学部日程),関西大学 (2/8,センター利用中期・全学部日程),関西学院大学 (商・人間福祉・文・法(F方式)),関西学院大学 (総合政策),北里大学 (獣医),慶應義塾大学 (医),甲南大学 (知能情報・理工),甲南大学 (B日程C方式(センターPLUS)),上智大学 (外国語・総合人間科・法),上智大学 (外国語・総合人間科・文),中央大学 (経済),東京理科大学 (薬),同志社大学 (全学部日程(文系)),同志社大学 (経済・文),同志社大学 (社会・理工),日本大学 (理工),法政大学 (GIS(グローバル教養)),法政大学 (現代福祉・経済・社会),明治大学 (商),名城大学 (人間),立教大学 (全学部日程),立教大学 (異文化コミュニケーション・経済・法),立命館大学 (国際インス(国際関係)・国際関係),早稲田大学 (政治経済),大分大学 (医(前期)),大分大学 (医(前期)),岐阜大学 (医(後期)),九州大学 (経済(後期)),群馬大学 (教育(前期)),埼玉大学 (教育・教養・経済-昼(前期)),埼玉大学 (工・理(後期)),札幌医科大学 (医(前期)),滋賀大学 (経済-昼主(後期)),静岡県立大学 (国際関係(前期)),下関市立大学 (経済(中期)),下関市立大学 (経済(中期)),都留文科大学 (文(中期)),首都大学東京 (前期),名古屋工業大学 (工1部・工2部(前期)),名古屋工業大学 (工1部(後期)),名古屋市立大学 (薬(中期)),奈良県立医科大学 (医(前期)),奈良女子大学 (生活環境・文・理(前期)),宮崎大学 (教育文化・農(前期)),琉球大学 (前期),国際教養大学 (国際教養(A日程))

 

シリーズ [超長文問題を考える] のもくじ

  1. 超・長文問題を考える -1
  2. 超・長文問題を考える -2

 

 

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A Scandal in Bohemia 「ボヘミアの醜聞」 — 6

7月
2009
20
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ホームズのもとに舞い込んだ奇妙な手紙を分析していくところです。そしてそれが終わるとすぐに,依頼人登場,とストーリーは間を置かず展開していきます。

 

"This is indeed a mystery," I remarked. "What do you imagine that it means?"

"I have no data yet. It is a capital mistake to theorize before one has data. Insensibly one begins to twist facts to suit theories, instead of theories to suit facts. But the note itself. What do you deduce from it?"

I carefully examined the writing, and the paper upon which it was written.

"The man who wrote it was presumably well to do," I remarked, endeavoring to imitate my companion’s processes. "Such paper could not be bought under half a crown a packet. It is peculiarly strong and stiff."

"Peculiar — that is the very word," said Holmes. "It is not an English paper at all. Hold it up to the light."

I did so, and saw a large "E" with a small "g," a "P," and a large "G" with a small "t" woven into the texture of the paper.

"What do you make of that?" asked Holmes.

"The name of the maker, no doubt; or his monogram, rather."

"Not at all. The ‘G’ with the small ‘t’ stands for ‘Gesellschaft,’ which is the German for ‘Company.’ It is a customary contraction like our ‘Co.’ ‘P,’ of course, stands for ‘Papier.’ Now for the ‘Eg.’ Let us glance at our Continental Gazetteer." He took down a heavy brown volume from his shelves. "Eglow, Eglonitz — here we are, Egria. It is in a German-speaking country — in Bohemia, not far from Carlsbad. ‘Remarkable as being the scene of the death of Wallenstein, and for its numerous glass-factories and paper-mills.’ Ha, ha, my boy, what do you make of that?" His eyes sparkled, and he sent up a great blue triumphant cloud from his cigarette.

"The paper was made in Bohemia," I said.

"Precisely. And the man who wrote the note is a German. Do you note the peculiar construction of the sentence — ‘This account of you we have from all quarters received.’ A Frenchman or Russian could not have written that. It is the German who is so uncourteous to his verbs. It only remains, therefore, to discover what is wanted by this German who writes upon Bohemian paper and prefers wearing a mask to showing his face. And here he comes, if I am not mistaken, to resolve all our doubts."

 

「こりゃ,実に奇妙だ。何を言いたいんだろう?」と僕は述べた。

「まだデータがないからね。データを手にする前に分析するのは重大なミスだよ。無意識に理論に合わせて事実をゆがめるようになってしまうんだ。理論の方を事実に合わせなくちゃいけないのに。だが,この手紙そのものはデータと言っていい。君ならここから何を推論するかな?」

僕は筆跡や,それが書かれている紙を念入りに調べてみた。

 

「これを書いた人物はおそらくかなり裕福だろうな。」友のやり方をまねようと努めて言った。「こういう紙はひと束あたり半クラウン以下では買えそうもないからね。妙な強さと硬さがある。」

「妙,というのは当たってるね。」とホームズは言った。「イギリスの紙じゃないんだよ。光にかざしてみろよ。」

やってみると,紙の繊維に織り込まれて,大文字の E と小文字の g,次に P がひとつ,つづいて大文字の G と小文字の t が見えた。

 

「どう思う?」と尋ねられた。

「たぶん製作者の名前だろう。というか,そいつの頭文字とか。」

「ちがうね。G と t の組み合わせは Gesellschaft (ゲゼルシャフト)のことで,ドイツ語の「会社」を表してるんだ。英語の Co. みたいな習慣的な短縮形だよ。P はもちろん Papier (パピーア: 紙)のことだね。では,Eg は何だ?「大陸地名辞典」を見てみよう。」そう言って,彼は本棚から重たげな茶色の本を取り出した。「エグロウ,エクロニッツ,あった。エグリアだ。ドイツ語圏の国にある。ボヘミアにある。カルルスバードからも遠くはない。『ヴァレンシュタイン終焉の地として,また多くのガラス工場,製紙工場で著名である。』ハハハ。ほらね。これでわかるだろ?」彼は目を輝かせ,勝ち誇ったような大きな紫煙をひとつはき出した。

 

「この紙はボヘミア製ってことか。」と僕は言った。

「そのとおり。そして手紙を書いた人物はドイツ人だ。文の構造がおかしいのに気づいたかい?『貴殿についてのこの報告は各方面から受け取ったものである。』ときた。フランス人やロシア人ならこんなふうに書くわけがない。動詞をこんなにぞんざいに扱うのはドイツ人に決まってる。だから,残るは,ボヘミア製の紙を使い,顔を見せないでマスクをつけたがっているこのドイツ人がいったい何を望んでいるのかがわかりゃいいんだが,でも僕の間違いでなければ,謎を解決してくれるご本人がやって来たようだ。」

 

I carefully examined the writing, ...

I carefully examined the writing, ...

  • "What do you imagine that it means?" ― what は means の目的語で,do you imagine that が挿入的(それは何を意味している?+と想像しますか?)。 What do you think it means? とほぼ同じ。
  • It is a capital mistake to theorize before one has data. ― It is ~ to V の構文。 capital (形)「主な,重要な」。
  • Insensibly ― 「無意識に」
  • instead of theories to suit facts. ― これはちょっとおもしろい表現。本来なら,Instead of changing theories to suit facts とあるべきところ。
  • But the note itself. ― 手紙の中身についてはまだ推理できないが,物としての手紙そのものはデータとなりうる,ということ。
  • the writing, and the paper upon which it was written ― "writing" は《鮎川訳》では「文面」,それ以外の訳では「筆跡」,the paper は《鮎川訳》では「紙」,それ以外の訳では「紙(の)質」となっている。ホームズが言いたいこととしては,後続の文章からも「筆跡」,「紙質」でいいのだが,この文中の it はthe writing を指すため,「それ(文面 or 筆跡)が書かれている」では文面の方がつながりがいいこともあって訳しにくいところだ。writing は「書くこと」「書いたもの」(=文面)「書かれ方」(=筆跡)のどれにもなる。
  • presumably well to do ― presumably 「おそらく」。 well to do = well off 「裕福な」
  • endeavoring to imitate ― これは分詞構文。 endeavor to V 「Vしようと努力する」
  • my companion’s processes. ― my companion はホームズのこと。
  • Such paper could not be bought under half a crown a packet. ― a crown 「5シリング銀貨」現在はない。packet 「(紙の)(たば)」。
  • peculiarly strong and stiff ― peculiarly 「妙に,独特に」 stiff 「かたい,こわばった」
  • that is the very word the very + 名詞 「まさにその~」
  • Hold it up to the light ― hold up to ~ 「~に向かって(to),持ち上げる(hold up)」
  • woven into the texture of the paper. ― weave-wove-woven/woʊvn/。 weave A into B 「AをBに織り込む」
  • "What do you make of that?" What do you make of ~? 「~をどう考えるか[どう解釈するか]?」  make A of B 「BからAを作る→BをAととらえる,理解する」
  • no doubt ― 「たぶん,おそらく」
  • his monogram, rather. ― monogram 「頭文字をデザイン化したもの」
  • The ‘G’ with the small ‘t’ stands for ‘Gesellschaft,’ ― stand for ~ 「~をあらわす」
  • which is the German for ‘Company.’ ― for は「~を表す」の意味。 (ex.) What is the French for ‘flower’? 「『花』にあたるフランス語は何ですか?」
  • a customary contraction ― contraction 「短縮(形)」
  • like our ‘Co.’ ― our は「わが国の,英語の」くらいの意味で使っている。 Co. の読み方は[koʊ],またはcompany。 Co. Ltd. だと, limited (liability) company 「有限責任会社」の意味だが,日本の「株式会社」に近い。
  • Now for the ‘Eg. ― for ~ 「~に関しては」
  • Continental Gazetteer ― gazetteer 「地名辞典」。 こういう地名辞典は当時なかったようである。
  • Eglow, Eglonitz — here we are, Egria.  ― アルファベット順に Eg で始まる地名を探しながらつぶやいている。 Here we are. 「(探し物をしていて)あったぞ」「さあ着いたぞ」。3つの地名とも実在しないが,問題の Egria は,実際には Eger (エゲル,エーガー)。ただしこれはドイツ語名で,チェコ語ではCheb (ヘプ)。チェコのボヘミア地方の都市でドイツとの国境に近い。
  • not far from Carlsbad. ― ヘプに近いのがCarlsbadだが,ドイツ語綴りだと Karlsbad,チェコ語だと Karlovy Vary (カルロヴィ・ヴァリ)。 Carlsbad も Karlsbad も「カールの街」という意味で,あちこちに同名の都市がある。
  • ‘Remarkable as being the scene of the death of Wallenstein, and for its numerous glass-factories and paper-mills.’ ― ここは「地名辞典」の記述を読み上げている箇所。remarkable はここでは famous に近い意味で使われている。 famous as ~ 「~として有名」, famous for ~ 「~で有名」。Wallenstein (ヴァレンシュタイン)は,ヨーロッパ全土を荒廃させた「30年戦争」(Thirty Years War (1618-48)) にボヘミアの将軍として歴史上名を残す人物。ヘプ(=エゲル)で暗殺された。なお,ボヘミアのガラスは現代でも有名だが,紙で有名というのはコナン・ドイルの創作か。
ウ゜ァレンシュタインの暗殺

ウ゜ァレンシュタインの暗殺

  • my boy, ― 呼びかけで,「ねえ」「ねえ,君」。
  • Precisely. ― Yes の強意形。「そのとおり」
  • Do you note the peculiar construction of the sentence — ‘This account of you we have from all quarters received.’ ― peculiar construction of the sentence 「奇妙な文構造」。ドイツ語では,助動詞を使う場合,助動詞が文の最初から2番目の要素,動詞の片割れが文末に来る。英語で言うと,He has come here. が He has here come. になるようなものである。
  • A Frenchman or Russian could not have written that. ― could not have written は仮定法過去完了 「書いたはずはないだろう」。主語に if 節の意味が潜在し,「もしフランス人かロシア人だったら」の意。
  • It is the German who is so uncourteous to his verbs. ― It is … who ~ が強調構文。uncourteous 「無礼な」 < courteous 「礼儀正しい」。
  • It only remains, therefore, to discover ― It ~ to V の形式主語構文。「Vすることがまだ残っている。」
  • prefers wearing a mask to showing his face. ― prefer A to B 「BよりAの方が好きだ」。A, B に入るのは名詞か動名詞。
  • And here he comes, Here comes S. 「(ほら)Sが来たよ」。Sが名詞の時は倒置になるが,代名詞の時は, Here S comes. となる。
  • if I am not mistaken ― be mistaken 「間違っている」 この mistaken は受け身ではなく,形容詞。
  • resolve ― 「解決する」

 

 

 

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「ボヘミアの醜聞」 英語解説について

7月
2009
18
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現在,コナン・ドイル原作シャーロック・ホームズ・シリーズ中の「ボヘミアの醜聞」の英語解説(連載)が進行中です。

といってもこれがなかなか進まない。もう5回めなのに全体の15%くらいか?(語数ベースで今計算したら15.7%) まあ1パラグラフずつくらいのペースなんでこんなもんかな。1日あたり3%ということは,33回前後の連載が必要になる。週3回やっても11週間,約3ヶ月。かかりすぎかぁ。週2回だと....

 

テキストプロジェクト・グーテンベルクの The Adventures of Sherlock Holmes を基本とし,うちにある"The Penguin Complete Sherlock Holmes" で多少修正していますが,テキストの校訂についてはあまり厳密にはやってません。

原文で手に入りやすいのは,以下のもの。

 

 

翻訳・注釈はオリジナルです。翻訳については「予告編」で述べた5冊を参考にさせてもらう場合があります。

  • 「詳注版 シャーロック・ホームズ全集 3」 小池滋 訳(筑摩文庫 1997)
  • 「シャーロック・ホームズの冒険」 阿部知二 訳 (創元推理文庫 1960)
  • 「シャーロック・ホームズの冒険」 鮎川信夫 訳 (講談社文庫 1973)
  • 「シャーロック・ホームズの冒険」 延原謙 訳 (新潮文庫 1953)
  • 「新訳シャーロック・ホームズ全集 シャーロック・ホームズの冒険」 日暮雅通 訳 (光文社文庫 2006)

小池滋は英文学の泰斗,阿部知二は英文学者兼小説家,翻訳家,鮎川信夫は戦後を代表する詩人(あとのふたりはよく知らないんだけど翻訳のプロのようです)。さすがホームズだけあって,翻訳家のラインナップも強力です。

これ以外にも翻訳は児童向けを含め山のようにあります。

 

音声を各回につけましたが,これもプロジェクト・グーテンベルクにある Audio Book です。リストの中のMP3ファイルのうち,最初の2つが「ボヘミアの醜聞」です。ここではそれを連載各回の長さに合わせてカットしています。AudioBooksForFree.comの制作のようです。

 

画像・イラストは原作で使われた Sidney Pagetのものがネット上に散在しているので,それを使っています。それ以外に注釈内で参考になりそうな画像を使っています。

 

全体のテキストのpdf を載せておきます。

A SCANDAL IN BOHEMIA (The Adventures of Sherlock Holmes) by Sir Arthur Conan Doyle A Scandal in BohemiaA Scandal in Bohemia pdf

各回ごとではなく,テキスト全体です。ただ,解説をつけるたびにコーテーションの入れ方やレイアウトを修正しているので,最終版ではありません。全部終わったら,もう一度出すつもり。

 

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